2024-12

2014・12・12(金)佐渡裕指揮ケルン放送交響楽団 「第9」

   サントリーホール  7時

 東日本大震災の直後、佐渡裕は、ケルン放送響とデュッセルドルフ響とを振って(「合同演奏」と解説には書いてあるが、そうなのか?)両市でベートーヴェンの「第9」のチャリティ・コンサートを行なったそうだ。また彼は、ケルン放送響には2010年以来、何度か客演しているとのこと。

 それらの縁で、今回は東京・川崎で計7回、大阪で3回、「第9」を演奏することになったという。協演は、スザンネ・ベルンハルト(S)、マリオン・エクシュタイン(A)、西村悟(T)、アンドレアス・バウアー(Bs)、東京オペラシンガーズ、晋友会合唱団。
 さすが人気の佐渡だけあって、客席は満杯。

 演奏は、第4楽章では予想どおり盛り上がったが、前半2楽章では、もう少し白熱したものがあってもいいように思う。第1楽章および第2楽章の魔性的な世界と、束の間の安息たる第3楽章を経て、第4楽章の全人的な歓喜に至るというのがベートーヴェンのイデーだとするなら、今日の前半での演奏は、かなり物足りなかった、といえるだろう。

 彼の指揮を聴いていると、第1ヴァイオリンのカンタービレのみが重視されて、ハーモニーの妙味は二の次になっているように感じられる(少なくともそう聞こえる)。同じように合唱も、ソプラノばかりが異様に絶叫気味で、和声的な美しさが蔑ろにされているきらいがあるだろう。それに1階席で聴いた所為もあるのか、弦のみが前面に出て、管が浮き上がって来ない。オーケストラの演奏に力感が乏しかったのは、そのためではなかろうか。
 しかし、その特徴ゆえに成功していたのは、叙情的な美しさが目立つ第3楽章だった。

 声楽ソリストのうち、バスのアンドレアス・バウアーが、最初のレチタティーヴォの個所で両手を少し拡げ、左右を軽く見回しつつ歌っていたのには、ちょっと可笑しくなった。
 以前、尾高&札響の「第9」の時に、その時の外国人のバス歌手が、やはり同じようなジェスチュアを更に大きく、オペラみたいに派手にやっていたのを見たことがある。
 しかし、考えてみるとこの個所はシラーの作ではなく、ベートーヴェン自身の作によるものだし、広く世界中の友に「もっと歓びに満ちて・・・・しようじゃないか」と呼びかけているわけだから、こういう身振りで演奏家たちや聴衆に呼びかけたとしても、理屈は充分合うだろう(これは以前にも書いたことがある)。

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