2014・12・5(金)シャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団
ドビュッシー:「ペレアスとメリザンド」
NHKホール 6時
今シーズン期待の大物の一つ、「デュトワのペレアス」である。
演奏会形式上演で、配役はペレアスをステファーノ・デグー、メリザンドをカレン・ヴルチ、ゴローをヴァンサン・ル・テクシエ、アルケルをフランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ、イニョルドをカトゥーナ・ガデリア、医師をデイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン、ジュヌヴィエーヴにナタリー・シュトゥッツマン(!)、羊飼に浅井隆仁。合唱は東京音楽大学。
歌手陣が、主役から脇役まで、見事にバランスよく揃っているのが素晴らしい。最初の3人の歌唱表現の巧さはもちろん、ちょっと異質かなと思われたヨーゼフ・ゼーリヒも、重厚な声で父王の役を貫録充分に歌ってくれたし、ウィルソン=ジョンソンも出番は短いながら実に存在感のある医師役を披露した。ガデリアも良かった。
ナタリー・シュトゥッツマンは、「特別出演」かもしれないが、それにしても、ちょっとしか出て来ない役柄にしては、贅沢な配役である。
デュトワが指揮するN響の演奏も、予想どおり魅惑的だ。1990年にモントリオールでレコーディングした演奏(デッカCD)と同じような洗練された美音を、デュトワは今日のN響からも、特に弱音個所を中心に引き出していた。
しかも、このオペラでは稀にしか来ないドラマティックな部分━━たとえば不気味な地下の穴倉の場面、ゴローがメリザンドを罵倒する場面など━━での音楽の緊張感という点では、今回の方がはるかに優れていたのではなかろうか。
ペレアスとゴローが穴倉から地上に出て来て、不安な緊張感がパッと消え、音楽に陽光が漲りはじめる瞬間などにおけるオーケストラの音色の変化も、鮮やかだった。
彼が振るオペラをナマで聴く機会は決して多くないが、それにしても、彼もやはり「持って行き方」が上手い指揮者だな━━と改めて感心させられた次第である。
この「ペレアスとメリザンド」を、ナマのステージにおける演奏会形式で聴けたのは、何という喜びだろうか。ドビュッシーの精妙な、この上なくニュアンスに富んだオーケストラの抒情美は、ピットからの音でなく、このようなステージでの演奏でこそ、完璧に再現され得るだろう。それに、舞台のさまざまな光景に煩わされず、音楽にのみ集中できるという良さは、何ものにも換えがたいものがある。
30分の休憩時間1回を挟み、演奏終了は9時16分頃。カーテンコールが終ったのは9時25分頃だった。
☞音楽の友2月号 演奏会評
今シーズン期待の大物の一つ、「デュトワのペレアス」である。
演奏会形式上演で、配役はペレアスをステファーノ・デグー、メリザンドをカレン・ヴルチ、ゴローをヴァンサン・ル・テクシエ、アルケルをフランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ、イニョルドをカトゥーナ・ガデリア、医師をデイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン、ジュヌヴィエーヴにナタリー・シュトゥッツマン(!)、羊飼に浅井隆仁。合唱は東京音楽大学。
歌手陣が、主役から脇役まで、見事にバランスよく揃っているのが素晴らしい。最初の3人の歌唱表現の巧さはもちろん、ちょっと異質かなと思われたヨーゼフ・ゼーリヒも、重厚な声で父王の役を貫録充分に歌ってくれたし、ウィルソン=ジョンソンも出番は短いながら実に存在感のある医師役を披露した。ガデリアも良かった。
ナタリー・シュトゥッツマンは、「特別出演」かもしれないが、それにしても、ちょっとしか出て来ない役柄にしては、贅沢な配役である。
デュトワが指揮するN響の演奏も、予想どおり魅惑的だ。1990年にモントリオールでレコーディングした演奏(デッカCD)と同じような洗練された美音を、デュトワは今日のN響からも、特に弱音個所を中心に引き出していた。
しかも、このオペラでは稀にしか来ないドラマティックな部分━━たとえば不気味な地下の穴倉の場面、ゴローがメリザンドを罵倒する場面など━━での音楽の緊張感という点では、今回の方がはるかに優れていたのではなかろうか。
ペレアスとゴローが穴倉から地上に出て来て、不安な緊張感がパッと消え、音楽に陽光が漲りはじめる瞬間などにおけるオーケストラの音色の変化も、鮮やかだった。
彼が振るオペラをナマで聴く機会は決して多くないが、それにしても、彼もやはり「持って行き方」が上手い指揮者だな━━と改めて感心させられた次第である。
この「ペレアスとメリザンド」を、ナマのステージにおける演奏会形式で聴けたのは、何という喜びだろうか。ドビュッシーの精妙な、この上なくニュアンスに富んだオーケストラの抒情美は、ピットからの音でなく、このようなステージでの演奏でこそ、完璧に再現され得るだろう。それに、舞台のさまざまな光景に煩わされず、音楽にのみ集中できるという良さは、何ものにも換えがたいものがある。
30分の休憩時間1回を挟み、演奏終了は9時16分頃。カーテンコールが終ったのは9時25分頃だった。
☞音楽の友2月号 演奏会評
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本当に雄弁なオーケストラだったと思います。登場人物の心情を,音色と緊迫感の使い分けで,見事に描き分けた演奏だったと感じました。これは「オーケストラが主役のオペラ」と感じた次第です。
ただ,できれば,休憩は2回あったほうが聴き手の集中力が続いたと思うのですが・・・。
あと,女性歌手2名の声の音色の対比が印象に残りました。