2024-12

2012・2・4(土)ラ・フォル・ジュルネ(7) 井上道義指揮のスクリャービン「火の詩」

    オーディトリウム・プーシキン  12時30分

 スクリャービンの第5交響曲「プロメテウス~火の詩」が、井上道義が指揮するウラル・フィルとウラル交響合唱団、およびアンドレイ・コロベイニコフのピアノで演奏された。

 作曲者自身の原案の一つだった「色光」(照明演出)が付いた上演というのがポイントだったが、その「色光ピアノ」が使用されたのかどうかは聞き漏らした。が、聴いたところと観たところでは、とてもそこまで行っていたとは思えない。
 つまり今回は、ステージ上方から吊るされた3枚の幕(?)に、曲想に応じて様々な色の照明が当てられ、その余波でステージ全体にも若干の色合いの変化が生じる、という程度のものである。

 だがそれも、どうやら単なる趣向に留まったという印象だ。カネと手間をかけた割には、スクリャービンが意図した「音と光が交錯するスペクタクルな舞台芸術として聴き手を法悦状態に導く――」という効果を生むほどのものにはなっていないのである。惜しい。
 日本でやったら、もう少し技術的に巧い効果を作れるかもしれないが・・・・。

 結局、聴くべきは音楽そのものであった。
 井上道義が指揮すると、いつもは頼りないウラル・フィルが、俄然引き締まった演奏をする。
 この音響の悪いホールでは、ウラル・フィルの弦の音は概してこもり気味で冴えないのだが、今日はがらり異なって、明晰さがかなりの程度まで出ていたのだ。なんだ、このオケも、やれば出来るんじゃないか、と。

 しかも、われらのミッキーの風貌が、ステージに登場して来た時から、モロにロシア人みたいな雰囲気なのである。ロシア人ばかりの演奏家たちの中にあって、実にぴったりはまった光景になっているのが、たまらなく愉快であった。

 舞台設営に手間取ったのだろう、開場も遅れ、開演も30分くらい遅れたが、別に文句を言う人もいなかったようである。このへんが、日本と違う。

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