[画像]「株式会社クールジャパン法案(183閣法32号)」の可決後に附帯決議案を提出する民主党の近藤洋介元経済産業副大臣、2013年5月24日(金)の衆・経産委、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
附帯決議(付帯決議)とは、委員会で法案の採決の際に、所管行政機関に対する要望、運用上の注意などを内容とする決議のことで、国会法・両院規則などに定めはありません。
政権再交代と衆参ねじれの第183通常国会で、民主党の副大臣・政務官経験者の衆院議員が各委員会をリードし、「自公民維み」あるいは全会派の共同提出で附帯決議を付けて、閣法を可決させるケースが増えています。
附帯決議の政府の尊重については、法的義務はないようです。そのため、自民党総裁選に出馬した西村康稔・内閣府副大臣や、民主党幹事長の細野豪志さんら40歳代の政治家が、附帯決議を軽視する発言をしています。これは残念なことで、若年寄に感じます。彼らが気づかない間に、国会の様相が変わりつつあります。
「災害対策基本法の改正法案(183閣法56号)」を国会に提出した理由について内閣府は「昨年6月に行った災害対策基本法の「第1弾」改正」「の際、改正法の附則及び附帯決議により引き続き検討すべきとされた諸課題について」「さらなる改正を実施する」ために提出したとしています。この法案は今国会での成立が確実な情勢です。昨年6月というと3党合意があった月で、その余波で衆参ねじれを突破した第1弾改正の「附帯決議」にもとづいて提出した法案だということで、与野党間の審議がスムーズになったというはからいが感じられます。このように役所が超党派国会議員に審議の地ならしをするために、「附帯決議」を次の法案作成につなげる動きがあります。
一方で、興味深かったのは、自民党内での公約作りにも附帯決議が使われていたという大臣の証言です。当選1回在職5年強で初入閣を果たした森まさこ大臣は「子ども・子育て三法が成立した折の附帯決議にも、この幼児教育の無償化については検討を進めることというふうに記載をされているところでもございます。それも踏まえまして、我が党においては公約に書き込ませていただいておりますが、この幼児教育の無償化については、今御指摘のあった、いつ、またその対象年齢、また金額等も含めて、関係府省それから与党とのもとで検討の場を設けるべく準備を進めているところでございます」 と答弁。
昨年8月10日の参・社会保障と税の一体改革特別委員会では、子ども・子育て法の附帯決議について、当時野党自民党の石井準一理事の朗読で19本の附帯決議が付きました。その12番目に「幼児教育・保育の無償化について検討を加え」「当面、利用者負担の軽減に努めること」とあります。この19本の附帯決議については、答弁席で聞いた岡田克也・一体改革担当大臣は同日の記者会見で「やや驚きました」と素直な感想を語っています。「のどうやら森さんはこの附帯決議を盾にして、自民党内財政規律派を押しのけて、自民党2012政権公約に「幼児教育の無償化」を押し込むことに成功して、政権交代で、閣僚の座をつかんだようです。
これを観察していた、民主党の副大臣・政務官経験のある衆議院議員が、筆頭理事を務める各委員会で、自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党など各党を巻き込んで、附帯決議を可決するのが「今国会のブーム」になっています。だいたいとりまとめの主役が朗読していますが、日本維新の会、みんなの党の1期生に朗読を任せており、野党共闘の布石となっているようです。具体的には、日本維新の会の河野正美さん、みんなの党の大熊利昭さん、椎名毅さんらが朗読者になっており、将来的な布石としては良い人選のように感じます。
例えば、地球温暖化対策推進法改正法の衆・環境委の附帯決議では、「7、温室効果ガス排出量の削減に関する中期的な目標については、再生可能エネルギーの最大限の導入及び省エネルギーの最大限の推進を図ることを前提に、我が国の社会経済情勢を踏まえつつ、2020年の野心的な目標を早急に設定すること」とあります。自民党と公明党政府はぜひ「野心的な目標」を早急に制定しなければ、国会軽視の違憲政府になりますから、速やかに野心的な目標を制定すべし。
予防接種法改正法の衆・厚労委で、柚木道義さんが提出した附帯決議では「安定的なワクチン供給体制や継続的な接種に要する財源を確保した上で、平成二十五年度末までに定期接種化の結論を得るように努めること」「二 他の新規ワクチンが薬事法上の手続を経て承認された際には、速やかに当該ワクチンを予防接種法上に位置付けることが適当であるかどうかの検討を行い、その結果に基づいて必要な法制上、財政上の措置を講ずるよう努めること」とあります。
平成二十五年度末とは、2014年3月31日ですから、それまでの衆院解散は難しいかなと感じますが、自民党政府に言行不一致を問う。そして、薬事法の遅い手続きが済んだ後に、法制上・財政上の措置を講じる。そのときの厚生労働大臣はどこの党の誰でしょうか。民主党はとことん前向きです。
ハーグ条約実施法案の審議が難航しています。民主党の考え方はよく分からず、衆参での違いもあるのかもしれません。ただ連休前最終日の衆法務委でハーグ条約実施法案を可決した後の田嶋要さん提出の附帯決議は「政府は、本法の施行後、当分の間、一年ごとに、国境を越えた子の連れ去り事案の実態及び本法の運用実態を調査、検証し、その内容を国会に報告するとともに公表すること。また、本法の施行後三年を目途として、本法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」とし、1年後から1年刻みの実態調査と、3年後の法改正も踏まえた見直しを政府に釘をさしています。民主党として、現在野党なので、「情報をよこせ」と政府に要求している雰囲気です。この辺は田嶋さんが経産政務官として、東電福島原子力発電所現地本部長を務めたときの体験が、衆法務委員会でもいかされているような気がします。
そして一つだけ付け加えるのならば、参院選で、元県会議長だろうと、元有名タレントだろうと、新人の「素人さん」を国会に送るのは、かえって彼ら彼女らを「居場所がない寂しさ」に送り込むことになります。そういう人、参議院の本会議場でよくいますよ。委員会のインターネット中継には初めから登場しないので、名前は知っていても、言われないと気づかないでしょう。
弁護士出身のブレア首相(労働党党首)、党職員出身のキャメロン首相(保守党党首)ら、二大政党のいずれでも、40歳代の首相が生まれる理由。これは国会開設750年のイギリスでは、さまざまな制度の経緯がいろいろと複雑になってきたので、若い頃から法律や政治の教育を受けていないと首相が務まらないという背景があるようです。だったら、在職40年の70歳代の首相が生まれそうにも思いますが、人間とはおもしろい者で、パブリックスクール、オックスフォード・ケンブリッジを出てすぐに法律・政治の仕事をした議員在職15年前後の40歳代が首相に向くようです。
6年前の安倍首相の会期延長に反対して政界引退を表明した自民党のO議員の「次の人生では東大出るかな」の言葉が片隅から離れません。そういうことも考えたうえで、投票すべきです。
相変わらず、「特別措置法(特措法)の改正法案」が多い今国会ですが、太田昭宏国土交通大臣は24日の衆・国交委で「海賊多発海域での日本船舶を警備する特別措置法案」を趣旨説明しました。これまた特措法ですが、これまでは、「シーレーン防衛」だとか「新テロ特措法」だとか「不朽の自由作戦」といった訳の分からない名前でやっていた、日本籍タンカーを警備する法案と似たような物だと思います。ようやくごまかしの利かない政治になりつつあります。一部の実力ある議員が修正案と附帯決議をとりまとめる。ここで汗をかいているのが、副大臣、政務官経験者で、大臣経験者はあまりいないのも、政権交代ある二大政党システムはよく出来ているなあ、と楽しく観察しております。
一方、篠原孝ネクスト環境相は24日の衆・環境委で小林正明・環境省水・大気環境局長に対して「(きょう採決だという)今さら附帯決議(をつける)なんて言わないからしっかりやってください」と述べ、石原環境相から「篠原委員の質疑を聞いていると、どんどんそっちの方にリードされちゃうから気をつけないといけない」とし、附帯決議の力で、与野党がどちらか分からないシーンまでありました。とはいえ、民主党はあくまでも野党です。
附帯決議に盛り込まれた「2020年」、「平成25年度末」、「1年後の検証、3年後の必要な措置」・・・さて、そのときの政府は、自民党の政府か、はたまた、民主党の政府か。
答えは2つに1つ。
神のみぞ知る?
お釈迦様でも分かるまい?
いずれにしろ、決めるのは有権者(納税者)です。
なお、参議院には附帯決議一覧のホームページがありますが、衆議院にはないので、ぜひ、衆議院事務局委員部もこのようなホームページをつくっていただきたいと思います。「附帯決議に盛り込まれた期限の一覧カレンダー」をとりまとめる党政調や衆調査局の職員がいたら、重宝されるかもしれません。あったら、欲しいなあ。
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