ある言葉があらゆる可能世界で同じ対象を指すなら、それを<固定指示子>とよぶ。ある指示子が特定の対象を、それが存在する限り常に指示するなら、その指示子はその対象を<固定的>に指示している。
「XYZ (あなたの名前)」というあなたの名前は<固定指示子>である。
さらに、その対象が必然的に存在するものであるなら、指示子は強い意味で<固定的>とよばれる。例えば、「2025年6月のアメリカ大統領」はある特定の男、トランプを指す。しかし、トランプでなく他の誰かが2025年6月のアメリカ大統領だったかもしれない(カマラ◦ハリスとか)。だから、この指示子は固定的でない。
それでは、二つの<固定指示子>を使った同一性の場合にはどうだろうか。
「明けの明星(R1)」は「宵の明星(R2)」であり、どちらも金星を指す(R1=R2)。
ところが、R1とR2が<非固定指示子>で固定されることは、大いにありえる。金星の場合には、
◼️「【朝方の空】の【これこれの位置】に現れる【天体】(D1)」
◼️「【夕方の空】の【これこれの位置】に現れる【天体】(D2)」
という形をとる。
したがって、「R1=R2」は<必然的>(な真理)だが、「D1=D2」は<偶然的>(な真理)だということは大いにありうるのである。
このため、「R1=R2」は別の結果になりえたかもしれなかったという、「誤った見解」が生じる。
ーー
事実、私たちの信念に反することはなにも見つかっておらず、猫は実際に動物なのである。
とすれば、この真理は<偶然的真理>ではなく、<必然的真理>である。
これらの生き物のかわりに、近寄る人に不運をもたらす小さな悪魔が実はいた、という反事実的状況を考えてみよう。
いや、これらの悪魔は猫ではない、と思われる。
「猫はある種の悪魔だったと判明するかもしれない」ということはできるが、