心の処方
6月15日、午前7時。
仕事場に向かういつもの道。緑々とした背の高い雑草と真横に陣取る低木が重なり合い、生い茂る川の堤防を上り詰めると、草藪の方から、極めて遠くではあるが、小さな、低い、それでいて何となく不満げな野良猫の鳴声が夢の中に彷徨うように聞えて来る。
数分もする内に追々にその声は近附き、間もなく私の歩く後ろに近寄り、振り向けば止まり、歩き出せば近寄るというような繰り返しの動作を10分も続けば大体の予想が読み取れるわけである。
よほど腹が減っているのだろう。仕事場で食する弁当をその場に差し出し彼の行動を見定める。弁当の中身は焼き魚、だし巻き卵、鶏のから揚げ、そしてイワシの缶詰である。
彼は私に近寄って無警戒にも前足を「ちょいちょい」するしぐさをしたかと思えば頭を膝に「スリスリ」しながら、私と弁当を交互に直視する。
今日の昼飯は残念ではあるがコンビニで済ませようと心に処方したのである。
家内に謝罪の念と明日また会えるかな!
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笑! 吾輩は猫である。名前はまだない。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかしながら飯をごちそうになった爺さんから「みけちゃん」と呼ばれた。照れるではないか。