でんぱ‐ぼうえんきょう〔‐バウヱンキヤウ〕【電波望遠鏡】
電波望遠鏡
電波天文学の歴史は、わずか60年あまり
電波天文学とは、宇宙からやってくる電波を受信して天体の性質を調べる学問のことで、その歴史は浅く、わずか60年あまりしかありません。宇宙から電波が届いていることが最初に発見されたのは、1931年のこと。アメリカ人科学者のカール・ジャンスキーが木造アンテナを使い、ラジオなどの雑音がどの方向からくるか調べていたとき、毎日ほぼ同じ方向から電波がくることに気づきました。しかもそれはだんだん早くなり、1年で元にもどるのでした。こうした傾向の電波はそれまで地球に存在しなかったことから、この電波は地球の外からきていると解釈されました。この大発見は、当時はあまりかえりみられませんでしたが、第2次世界大戦後、多くの国で電波観測がおこなわれるようになりました。そして精度の高い電波望遠鏡がつくられるようになってから、電波天文学は飛躍的に発展しました。
最初の電波望遠鏡は、1930年代につくられた真空管のパラボラ受信機
電波望遠鏡とは、天体からの電波を観測するためのアンテナのことをいいます。電波望遠鏡の第1号といわれるのは、1930年代の後半にアメリカのグロート・リーバーという人が、宇宙から届く電波を探すために、自宅の庭につくった直径9.5mのパラボラアンテナです。これは、真空管での原始的な受信機でしたが、彼は電波で見た「天の川」の地図をつくり、天の川の面にそって電波が強いことを発見しました。
銀河系の中心の姿や星が生まれる過程を執と解明
この電波望遠鏡がつくられてから約半世紀がたち、その間にエレクトロニクスなどいろいろな技術の進歩とあいまって電波望遠鏡の性能も進歩してきました。わが国の野辺山宇宙電波観測所にある直径45メートルの電波望遠鏡は、世界でもトップクラスの性能をもつ電波望遠鏡です。電波望遠鏡の性能がよくなるとともに、光では見えない宇宙の銀河系の中心の姿や、星が生まれる過程がよりくわしくわかってきました。電波望遠鏡は、人類が宇宙への理解を深めるのに大いに役立っているのです。
人間の出す電波が少なくかつ、大気の薄いところに設置する
光学望遠鏡の場合、空気の澄んだ場所に設置するのが良いとされていますが、電波望遠鏡の場合は、人間の出す電波が多いところではその性能を十分に発揮することができません。また、電波望遠鏡の技術的な発展とともに、波長が1cm~1mmの電波(ミリ波)の観測もできるようになりました。このミリ波は地球の大気によって吸収されてしまうので、ミリ波の望遠鏡は、大気のうすいところが適しています。そのため、日本では長野県の野辺山が、ミリ波望遠鏡を設置する環境が比較的良いということで選ばれました。現在、これ以上良い環境というと、日本では富士山の頂上ぐらいしかありません。また地球上で、天文台としていちばん適した場所を選ぶとすると、4,000m級の山々があり、-80℃にもなる「南極」が、もっともふさわしいところということになります。
重力波望遠鏡でブラックホールの重力波をキャッチ
最近では電磁波ではないものを使った望遠鏡も活躍しています。その1つは、質量がきわめて小さく電気的に中性である「ニュートリノ」という粒子を利用したニュートリノ望遠鏡です。日本では、岐阜県の神岡にニュートリノ望遠鏡「スーパーカミオカンデ」がつくられています。また、もう1つは、重力波を利用した望遠鏡です。現在、宇宙の重力波をキャッチしようとする試みが世界中でおこなわれています。これは、重い天体が回転するときに生ずると考えられている重力波をキャッチしようというものです。たとえば、ブラックホールのような非常に重い天体が回転するとそこから重力波が出るはずですから、重力波望遠鏡を使い観測を行うと、ブラックホールを発見することも可能になるわけです。現在では、宇宙を見る場合、電磁波以外にも粒子や重力波をふくめて、利用できるものはすべて利用して総合的に宇宙を見ようという時代になっています。
電波望遠鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/03 16:20 UTC 版)
電波望遠鏡(でんぱぼうえんきょう、英: radio telescope)は、可視光線を集光して天体を観測する光学式の天体望遠鏡に対して、電波を収束させて天体を観測する装置の総称。これを専門に用いる電波天文学という分野がある。
- ^ VLBI用語集「鏡面精度」
- ^ Michael A.Seeds、Dana E.Backman『最新天文百科 宇宙・惑星・生命をつなぐサイエンス』有本 信雄 (監訳)、丸善出版、2010年、104頁。ISBN 978-4-621-08278-2。
- ^ 国土地理院VLBI[リンク切れ]
- ^ Astronomers Catch Images of Giant Metal Dog Bone Asteroid
- ^ 国立天文台野辺山「電波天文学の紹介」
- ^ a b 単一で世界最大「天眼」本格稼働 中国の電波望遠鏡『日本経済新聞』朝刊2020年3月8日(サイエンス面)2020年6月24日閲覧
- ^ 「宇宙人に感謝しろ」世界最大の電波望遠鏡で強制退去AFP通信(2016年12月2日)
- ^ 国立天文台「日本のVLBIネットワーク 臼田局」
- 1 電波望遠鏡とは
- 2 電波望遠鏡の概要
- 3 歴史
- 4 関連項目
電波望遠鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 07:24 UTC 版)
宇宙からやってくる微弱な電波を捉えるために設計・製作された望遠鏡。多くはパラボラアンテナの形をしている。
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