浅野晃とは? わかりやすく解説

浅野晃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 02:02 UTC 版)

浅野 晃(あさの あきら、1901年8月15日 - 1990年1月29日)は、日本詩人国文学者立正大学文学部教授を経て、立正大学名誉教授。滋賀県大津市出身。

来歴

広島市中心部にあった偕行社済美小学校原爆で廃校)、東京本村小南山小青山師範付属小卒業。1914年、東京府立第一中学校(現・都立日比谷高校)入学。同級生に蔵原惟人飯島正富永太郎河上徹太郎足利惇氏杉本栄一森永太平らがいた。一年上に五島茂池谷信三郎、一年下に小林秀雄、正岡忠三郎など。1919年9月、第三高等学校文丙入学。同級生には文丙の飯島正、島田叡北川冬彦ら、文乙の大宅壮一中谷孝雄山口誓子、理科の梶井基次郎岡潔らがいた[1]

1925年東京帝国大学法学部を卒業。

在学中大宅壮一らと第7次『新思潮』を創刊[2]1923年には新人会に入る。東大経済学部大学院を退学し、野坂参三産業労働調査所所員。1926年日本共産党に入党、福本イズムの信奉者となった。1927年秋、社会運動家伊藤千代子と結婚。1928年三・一五事件で検挙されるが、同じく検挙されていた水野成夫が「日本共産党脱党に際して党員諸君へ」と題した声明を発表して転向すると、浅野も同調して転向するに至った[3][4]1930年6月、水野らによる「日本共産党労働者派」(いわゆる解党派)の結成に参加したがほどなくしてこの運動は消滅する。

その後はショーペンハウアー『意志と現識としての世界』(姉崎正治訳)を読んでマルクス主義と訣別し、岡倉天心の英文著書『東洋の理想』を読んで「日本回帰」を果たし翻訳も行った。以後、国粋主義の立場から評論を書き、皇道文学の確立を主張した。大東塾出版部顧問、また同塾系列の新国学協会同人。なお度々誤解されるが、日本浪曼派の同人だったことは一度もない[5]

1955年立正大学文学部教授となり、1976年の定年まで勤める。1964年には詩集『寒色』で第十五回読売文学賞を受賞。

1990年、心不全で逝去。

人物

三島由紀夫は1967年に、浅野が大東亜戦争太平洋戦争)海戦戦没者を弔った詩集『天と海』1965年に惚れ込み自ら朗読し、レコード録音を行っている。1970年11月25日三島の自決に際しては、追悼回想と詩「哭三島由紀夫」を捧げている。

著書

  • 『帝国主義論の武器を如何に把握すべきか』叢文閣 1927
  • 『マルクス的方法の形成 「哲学の貧困」に於ける問題の提起と問題の解決』叢文閣 1927
  • 『詩歌と民族』平凡社 1936
  • 『時代と運命』白水社、1938
  • 『青墓の処女』作品社 作品文庫 1938
  • 『文化日本論』作品社 作品文庫 1938
  • 『岡倉天心論攷』思潮社 1939
  • 『読書と回想』赤塚書房 1939
  • 『悲劇と伝統 評論集』人文書院 1939
  • 秀衡の女 他二篇』赤塚書房 1939
  • 楠木正成』ぐろりあ・そさえて 1940
  • 『歴史の精神』黄河書院 1940
  • 『国民文学論』高山書院 1941
  • 『古典の精神』黄河書院 1941
  • 『青春の再建』実業之日本社 1941
  • 『西洋二千年史』第一書房 1941
  • 『日本精神史論攷』文明社 1941
  • 『浪曼派以後』協力出版社 1941
  • 『国学綱要』大同印書館 1942
  • 『古典と純粋』小学館 1942
  • 『文芸の道』中央公論社 1942
  • 樗牛と天心』潮文閣 1943
  • 『米英思想批判』旺文社<日本思想戦大系> 1943
  • 『明治の精神』新潮社<新潮叢書> 1943
  • 『遠征前後』日本文林社 1944
  • 『ジャワ戡定余話』白水社 1944
  • 橘曙覧大日本雄弁会講談社 1944
  • 大楠公』大日本翼賛壮年団本部 1944
  • 『明治文学史考』万里閣 1944
  • 山本元帥遺詠評釈醜の御楯』金星堂 1944
  • 『快癒期の諸思想 浅野晃文芸論集』東京玄文社 1949
  • 石川啄木』祖國社 1949
  • 『贖(あがない) 賀川豊彦の小説化』東光書房 1952
  • 『共産病患者の病理 わが体験と同志の批判』民主日本協会 1953
  • 『現代の詩』元々社 民族教養新書 1954
  • 『主義にうごく者』日本教文社 教文新書 1955
  • 『明治大正昭和史物語』偕成社 新百科 1955
  • 『現代を生きる』明徳出版社 師友選書 1957
  • 『岡倉天心』明徳出版社 師友選書 1958
  • 『英雄色を好む はだか交友録』大樹書房 1961
  • 『雨ニモマケズ 宮沢賢治の生涯』教育新潮社 昭和仏教全集 1965
  • 『戦記物語の女性』日本教文社 日本人のための国史叢書 1965
  • 『天と海 英霊に捧げる七十二章』翼書院 1965
  • 『忘却詩集』黄土社 1966
  • 『剣と美 私の岡倉天心日本教文社 1972
  • 芥川龍之介 青春と文学』すばる書房 1977
  • 『現代を生きる』高文堂新書 1978
  • 『ものぐさ手帖』経済往来社 1982
  • 『明治・大正・昭和史 父母や祖父母が生きた日本の100年』偕成社 1984
  • 『定本浅野晃全詩集』わこう出版社 1985 鈴木敏幸編・限定版
  • 『浪曼派変転』高文堂出版社 1988
  • 『岡倉天心論攷』永田書房 1989 改訂新版
  • 『淺野晃詩文集』中村一仁編 鼎書房 2011

児童向け作品、日本および外国文学再話

  • 『少年太閤記 地の巻』玉村吉典絵 金鈴社 1944
  • 今昔物語 日本古典』多賀正絵 偕成社 世界名作文庫 1953、新版「少年少女世界の名作」
  • 吉田松陰 幕末の先覚者』伊藤幾久造絵 偕成社 偉人物語文庫 1953
  • 『戦国名将伝 肚と智勇の達人』木俣清史絵 偕成社 偉人物語文庫 1954
  • 源頼朝 鎌倉文化の建設者』安以行孝絵 偕成社 偉人物語文庫 1954
  • 宮沢賢治 愛と土の詩人』高木清絵 偕成社 偉人物語文庫 1954
  • 宮本武蔵 剣聖』伊藤幾久造絵 偕成社 偉人物語文庫 1954、集英社「世界偉人伝全集」1977
  • 『明治昭和文学物語 明治大正から現代まで』偕成社 新百科 1954
  • 夏目漱石原作『坊ちゃん・わが輩は猫である』岩田浩昌絵 偕成社 世界名作文庫 1956
  • ロマン・ローラン原作『ジャン・クリストフ』田村耕介絵 偕成社 世界名作文庫 1956、新版「少年少女世界の名作」
  • 『世界近代文学物語』偕成社 新百科 1957
  • 「少年少女日本史談」偕成社、1958-59
    1. 『古代の英雄たち 上代から平安朝まで』梁川剛一
    2. 『源氏と平家 源平合戦から鎌倉時代へ』柴宗広絵 1958
    3. 『蒙古来と南北朝 鎌倉時代から室町時代へ』柳瀬茂絵 1959
    4. 『戦国の名将 応仁の乱から戦国時代へ』伊勢良夫絵 1959
    5. 信長秀吉 織田・豊臣の天下平定』佐藤広喜絵
    6. 『徳川盛衰記 関が原合戦から江戸時代へ』柳瀬茂絵
    7. 『幕末の風雲 黒船から維新へ』柳瀬茂絵
    8. 『明治・昭和の嵐 近代日本の躍進』柳瀬茂絵
  • 「少年少女世界史談」偕成社、1960-61
    1. 『ギリシアの英雄』梁川剛一絵 1960
    2. 『ローマ盛衰記』石田武雄絵 1961
    3. 『アジアの嵐』村上松次郎絵 1961
    4. 『新時代の巨人』武部本一郎絵 1961
    5. 『自由の叫び』梁川剛一絵 1961
    6. 『皇帝ナポレオン』松田穰絵 1961
    7. 『風雲のヨーロッパ』武部本一郎絵 1961
    8. 『二つの世界大戦』柳瀬茂絵 1961
  • 『世界の英雄』柳瀬茂絵 偕成社 少年少女ものがたり百科 1961
  • 『世界歴史のひかり』梁川剛一絵 偕成社 少年少女ものがたり百科 1962
  • 『戦国名将伝 智・情・勇の達人』加藤敏郎絵 偕成社 世界偉人伝全集 1962

翻訳

編著・共著

  • 『尊皇歌人撰集 勤皇烈士篇 学者篇』竹下数馬共編 文松堂書店 1943
  • 『石川啄木詩歌集』編 白凰社 青春の詩集 1965
  • 高村光太郎詩集』編 白凰社 1965 青春の詩集
  • 『宮沢賢治詩集』編 白凰社 1965 青春の詩集
  • 室生犀星詩集』編 白凰社 1965 青春の詩集
  • 『フランス詩集』編 白凰社 1966 青春の詩集 外国篇
  • 『名訳詩集』西脇順三郎神保光太郎共編 白凰社 1967 青春の詩集 外国篇
  • 『現代日本詩集』編 新学社文庫 1968 新書判
  • 不二教職員連絡会『殉国の教育者 三島精神の先駆』編 日本教文社 1971
  • 『転向-日本への回帰 日本共産党解党派の主張』影山正治対談 暁書房 1983
  • 『随聞・日本浪曼派』聞き手檜山三郎 鳥影社 1987

監修

  • 『短歌を作る人のために』監修 鷺の宮書房 1957

脚注

  1. ^ 淺野晃先生略年譜 鈴木敏幸作成、中央大学
  2. ^ 浅野晃 あさの-あきら デジタル版日本人名大辞典+Plus
  3. ^ 妻千代子も同時期に検挙されたが、浅野の転向を知らされてからも非転向を貫き、1929年病死した。
  4. ^ 浅見雅男『反逆する華族』平凡社、2013年、50-51頁。ISBN 978-4-582-85697-2 
  5. ^ 神谷忠孝「浅野晃論」(『国文学 解釈と鑑賞』1983年8月)

関連項目

外部リンク


浅野晃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 02:46 UTC 版)

梶井基次郎」の記事における「浅野晃」の解説

第三高等学校同年入学浅野は文丙(フランス語必修)。東京一中(現・東京都立日比谷高等学校時代からの文芸仲間飯島正入った寄宿舎北寮第5室に遊びにいき、同室の基次郎知り合う三高卒業後は疎遠となったが、東京帝国大学内の芝生で会うと、基次郎下宿地図書いて渡し、「遊び来てくれ」と誘っていた。

※この「浅野晃」の解説は、「梶井基次郎」の解説の一部です。
「浅野晃」を含む「梶井基次郎」の記事については、「梶井基次郎」の概要を参照ください。

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