常時使用労働者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 07:46 UTC 版)
20世紀中盤に整備された古い労働法規は、常勤にあたる概念として「常時使用する労働者」という考え方をしばしば用いた。これは時間に関わらず職場で常態的に労働している者を意味し、必ずしも「就業規則上限の労働」「正規雇用契約者」を意味しなかった。 例えば、労働安全衛生規則は、常時使用労働者に健康診断を受けさせる義務などを定めているが、常時使用労働者の定義について国通達「労働安全衛生法および同法施行令の施行について」(平成47年9月18日付け基発第602号)は、労働時間こそ明記していないもののパートタイマーも含むとしている。 また、健康保険や厚生年金保険について、「昭和55年6月6日付け厚生省保険局保険課長・社会保険庁医療保険部健康保険課長・社会保険庁年金保険部厚生年金保険課長内かん」は、常用的使用関係にある者が加入対象であることを前提とした上で、その定義を「所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上」としている。(いわゆる3法加入の4分の3基準。ただしこの内簡は、「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて」(平成28年5月13日付け保保発0513第1号・年管管発0513第1号)により廃止された。) また、医療が高度化・専門化が進むにつれ、「出張医」などと呼ばれる短時間勤務の医師が生まれるようになり、労務管理などにおいて常時使用労働者である医師を定義する必要が生じたため「医療法第25条第1項に基づく立入検査要綱」(平成13年6月14日付け医薬発第637号・医政発第638号)により、週に32時間以上労働する医師が常勤であると規定された。 しかし20世紀後半以降、日本で長時間労働社会が急速に進展し、終身雇用された正規労働者は愛社精神のままに長時間時間外労働を行うのが当然となり、日本の労働者は労務管理のほぼ全ての面で正社員(就業規則の上限ぴったり(実質的には加えて大量の時間外労働)で働く者)と正社員以外の者(短時間のみ働くパートタイマー、及び正社員と同様の勤務を行うが有期雇用である者(契約社員、常勤並み非常勤者等))の2区分に断絶した。行政も考え方の転換を余儀なくされ、例えば21世紀初頭の国通達「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成19年10月1日付け基発第1001016号・職発第1001002号・雇児発第1001002号)では、所定労働時間が正社員と比較してわずかでも短ければ無条件で短時間労働者であると定義している。 このような状況の中で、21世紀初に非正規雇用の大量動員により急拡大した福祉分野において常勤(=正規労働者)・非常勤(=非正規労働者)という概念が整備された。
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