実用単位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 09:23 UTC 版)
19世紀末、電磁気の単位が体系化され単位系となったころ、単位系の国際標準はCGS単位系であり、電磁気の単位系もcgsを拡張して作られた。しかしそれらは、MKSAのように第4の基本単位を加える4元系ではなく、電磁気の単位も3つの基本単位のみから組み立てる3元系だった。それを可能にするために、自然単位系のように、1つの物理定数を無次元の1と置いた。どの物理定数を選ぶかで、いくつか異なる単位系が生まれた。たとえばCGS電磁単位系 (CGS-emu) では、真空の透磁率 μ0 を1とした。 しかし3元系では、電磁気の単位の大きさが、実験物理学者や技術者にとって不便なものとなった。それらの大きさは、3つの基本単位と物理法則から論理的に組み立てられるものであり、自由に決めることができなかったからである。そこでCGS電磁単位系では、電磁気の単位を適当な10の冪倍した実用単位 (practical unit) が導入された。 1874年、英国科学振興協会 (BAAS) はまず、ボルト (V) とオーム (Ω) の2つの実用単位を導入した。これらは元は別々の由来を持っていたが、V = 108 abV(CGS電磁単位系では通常は単位記号を使わないが、対応する実用単位に接頭辞abを付けて表すことがある)、Ω = 109 abΩ として新しく定義された。1881年から始まった国際電気会議では、それらに加え、アンペア (A)、クーロン (C)、ファラド (F)、ヘンリー (H)、ワット (W)、ジュール (J) も定義されたが、係数はまったく任意に決められたのではなく、ボルト、オーム、秒の乗除で表せるように決められた。たとえば、A = 10−1 abA と定義されたが、これは V/Ω に等しい。このように、実用単位は1つの単位系になった。 しかし、力学のCGS単位系と電磁気の実用単位系を統合しようとすると問題が起こった。これらを統合すると、合計で5つ(CGS・V・Ω)の基本単位を持つ「5元」単位系となる。しかし、4元単位系であらゆる電磁気の単位を組み立てられることから考えれば、5元単位系は冗長であり破綻は避けられない。1893年のシカゴでの国際電気会議では、新しい実用単位として電力のワット (W) と熱量のジュール (J) が、W = VA = 107 abW、J = VAs = 107 abJ と定義された。しかし、電力と熱量とはすなわち仕事率と仕事であり、abW と abJ とは erg/s と erg のことにほかならない(したがって、abW・abJ という表現は実際にはされない)。つまり、W = 107 erg/s、J = 107 erg となる。このように、同じ次元に対し2つの単位ができてしまった。
※この「実用単位」の解説は、「MKSA単位系」の解説の一部です。
「実用単位」を含む「MKSA単位系」の記事については、「MKSA単位系」の概要を参照ください。
「実用単位」の例文・使い方・用例・文例
実用単位と同じ種類の言葉
- 実用単位のページへのリンク