回し蹴り
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回し蹴り(まわしげり)は、中国武術、空手、テコンドー、キックボクシング、ムエタイ、カポエイラ、プロレスで用いられる蹴り技の一種である。ラウンド・キックとも呼ばれる。中国武術では旋体脚、テコンドーではトルリョ・チャギ、ムエタイではテツ(またはテ)と呼ばれている。通常、格闘技でハイキック、ミドルキック、ローキックというのは、それぞれ上段、中段、下段の回し蹴りのことである。
- ^ a b 藪根敏和,内田順久,野原弘嗣,岡田修一,山崎俊輔「回し蹴りの蹴り足,支持足の動作と衝撃力について」第26巻第2号、1993年、 doi:10.11214/budo1968.26.2_1、2020年6月3日閲覧。
- ^ a b c 木下まどか,藤井範久「テコンドーの前回し蹴りにおけるバイオメカニクス」『バイオメカニズム』第22巻0、2014年、 143-154頁、 doi:10.3951/biomechanisms.22.143、 ISSN 1348-7116。
- 1 回し蹴りとは
- 2 回し蹴りの概要
回し蹴り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 00:26 UTC 版)
一度狙ったらはずすことはないという伝説の回し蹴りは、蹴り足が相手の首にからみつき、この蹴りを喰らった者は一瞬体が宙に浮き、空中で体が水平になってから床に叩きつけられたという。極真史上では様々な回し蹴りの使い手が輩出されたが、その破壊力と技の華麗さで山崎をしのぐ空手家は未だ現れていないと評されている。山崎の蹴りは極真会館の選手権大会ルールだけでなく、キックボクシングのリングでもその必殺性は実証済みで、極真ルールに沿った戦いの中から生まれた蹴りではなく、どのようなルールの中でも生かせる、最も基本的かつダイナミックな蹴りであり、引きが速くスピードがあったので、相手は構えた状態のまま蹴りこまれていた。 大山茂(証言2) 「 体の柔軟性を見ると大石代悟も松井章圭も開脚して床にピッタリとつくが、山崎照朝はつかない。ところが私が見たところ、山崎の回し蹴りのほうが蹴り足の角度が大きく、外から入ってくる。大石も松井も素晴らしい回し蹴りを放つが、インパクトの時にまだパワーが軸足にやや残っているように見えるのだ。体の柔軟性に恵まれている人は、自分の体に無理なくパワーとスピードを乗せることができる。その反面、体全体の瞬発力やタメを使わなくても蹴りに切れが出るため、軸足にパワーを残す場合が多い。それに対して山崎は柔軟性に恵まれていないゆえに、体全体を目一杯使って蹴る。上体の鋭いリードと両足で床板を跳ねるようにして蹴りこむ。インパクトの瞬間、軸足にパワーもスピードも残さず、出し切ったという蹴り方をする。両足のバネを思い切り使った角度の大きい上段回し蹴りは、受けたとしても、よほど稽古を積んでいないと崩されてしまう。見事というほかない蹴りである。山崎は、回し蹴りをムエタイのトレーナーに習ったという。私は、山崎の天性の才能がムエタイの蹴りとカラテの蹴りを融合し、自分の体にしみ込ませていったのだと考える。もっとも、完全に自分のものにするための努力は、並大抵のことではなかっただろうが…。 」 吉岡幸男(証言1) 「 山崎照朝先輩とも組手をやっていましたよ。山崎先輩は強い…。あの先輩の回し蹴りは効くの! 脇腹に入ったらもう動けなくなっちゃうんだもの。どういうわけか食い込むんですよ。だから、山崎先輩と組手をするのは嫌でした(笑)。 」 佐藤勝昭(証言1) 「 大山倍達館長が「点を中心として円を描く」と円運動がとても大事であることを常々仰ってましたが、山崎照朝先輩の回し蹴りをみて気づいたのです。山崎先輩の蹴りは軸足の親指を軸に、かかとが相手の方まで向くので、ものすごく強烈でした。現役の時は真似をして、ただ見てやっていただけでしたが、指導する立場になり、蹴りは軸足・膝・腰の三位一体だと理論的にわかりました。 」 花澤明(証言1) 「 山崎照朝先輩はヒザから先のスナップでポーン!と蹴る、空手の蹴りと違うんですね。キックボクシングの蹴りはスナップを効かせないで、軸足のモモの付け根の方から体幹でボーン!と回転させて蹴るんです。山崎先輩の蹴りはキックボクシングの蹴りですね。 」 松井章圭(証言3) 「 私は17歳で第12回オープントーナメント全日本空手道選手権大会に初出場して4位入賞しましたが、その数か月前に現役生活を離れて何年も経つ山崎照朝先輩と組手をさせてもらい、床を転がされ、何をされたのかもよく覚えていないほど、3分間ずっと圧倒されてメチャクチャにやられてしまいました。骨が非常に硬く、私が技を当てても痛いんです。山崎先輩は身体が硬いんですが、こん棒で殴られているかのような上段回し蹴りを出し、身体の使い方が巧くて物凄く強烈な蹴りを出していました。山崎先輩が上段回し蹴りを蹴るときは、軸足が親指一本で立っていて、身体全体を使っていました。そこまで到達するにはかなりの稽古をやりこむ必要があると思います。 」 回し蹴り論 「 蹴りの強さは上体の強さに比例するというのが私の持論だ。上体の強さというのは、腕と指の力に比例する。腕力の強い奴が蹴りも強いし、握力の強い人間が強い蹴りを出す。蹴る時に重要なのが、手の握り。手を大きく振ることで蹴りの威力を増し、拳を習慣的に握ってさらに威力を高める。空手では中足で蹴るが、ムエタイの場合は脛で蹴る。中足を返して蹴ると、破壊力は増すがリズムが取りにくくなる。ムエタイはリズムを取ってサンドバッグで回し蹴りの連打をするんだ。ムエタイで学んだことは、左右足をスイッチ して蹴る技術とか回し蹴りのバランスということだね。蹴る時に上体が後ろに倒れすぎてはいけない。蹴った時に顎を引いて、軸足より前に出ていなくてはいけない。そして、頭と軸足を結んだ中心線よりへそが前に出ていなければならない。この中心線が前に傾くほど蹴りに体重が乗る。ムエタイのチャンピオンなんか見ても、みんなこういう蹴りをしている。上体をうしろに倒した回し蹴りは、相手にスウェーバック されて、クルクル回ってしまうが、上体を前に倒して蹴ると、たとえ相手がスウェーしても届かせることができる。しかし上体を前に倒すことばかり考えると、今度は腰の引けた蹴りになる恐れがある。これは、相手が突っ込んできた場合のカウンターならいいが、自分から倒そうとする場合には威力に欠けるので、へそを前に出す必要がある。典型的なムエタイの蹴りだよ。 腰の後ろにいくくらい手を大きく振り、上体が後ろに倒れず、さらに重要なのは膝を上げるときの角度である。膝は腰より高く上げ、外から回すようにして蹴ると、相手のこめかみに垂直に当たり、より衝撃のある蹴りとなり、しかも相手が受けても蹴りはその腕を巻き込むようにして入るのである。顎は相手が交わした場合に入るもので、最初から狙わない。蹴っている時の防御は、顔面に蹴り足と反対の手を顔の前に持ってきてカバーする。このとき、拳は握っていても開いていても構わないが、必ず掌を相手に向けることで、相手の突きのパワーに押されることもない。 私は空手式の左前蹴りをフェイントにして、ムエタイの左上段回し蹴り(ハイキック)をフィニッシュブロー(倒し技)に使っていた。いわば前蹴りはパンチに例えるとジャブ的な技にしていた。なぜそうしたかというと、前蹴りは相手に取られたり、流されたりする恐れがある。そのほかにハイキックを中心に組み立てたコンビネーションでは、お互い左足前の半身に構えた時(※はスイッチ有り)に、 左前足で下段回し蹴り(ローキック)からその足をバックステップ(奥足にすること)して左ハイキック 左ローキックから右ハイキック 相手のどちらか左右の突きを流してからの左ハイキック※ 右ローキックから左ハイキック 左ハイキックを蹴り、相手が前に出てきた場合、戻した足を間髪入れずに左ハイキックを連続して叩き込む ノーモーションで左ハイキックから蹴り足をバックステップして、左中段前蹴りを出す。間合いが近い場合は膝蹴りにする を使っていた。 」 上記で山崎は回し蹴りを中心にしたコンビネーションを語っているがキックボクシングでは「対角線上の攻撃・上下に技をちらす・縦横のコンビネーション」を重視している。 対角線上の攻撃 右ローキックから左ハイキックや右ハイキックから左ミドルキックなど攻撃技が対角線になるように攻めること。 上下に技をちらす 左ジャブから右ローキック、右ストレートから左ボディブロー(下突き)のような攻撃をすること。 縦横の攻撃 前蹴りと回し蹴りと組み合わせることである。 これら3つを複合的に組み合わせれば、何通りも攻撃パターンができる。山崎はムエタイを教わりながら、これらも同時に会得して自らの空手に生かしていた。
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