各国の意見陳述
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「核兵器の威嚇または使用の合法性国際司法裁判所勧告的意見」の記事における「各国の意見陳述」の解説
WHOが行った諮問に対しては、1994年12月5日までに陳述書を提出したのは最終的に35カ国に達した。その内容は当時非公表であったが、国際反核法律家協会(IALANA)の調査によると、インド、モルドバなど非同盟諸国を中心に21カ国が「国際法違反」と主張したという。日本は当初「核兵器使用は国際法違反と言えない」という記述を盛り込んでいたが、そのことが報道されると反核団体が反発するなど政治問題化したため、最終的な陳述書からこの文言は削除された。 国連総会が行った諮問に対しては1995年5月15日から9月20日までに28カ国が陳述書を提出し、3カ国が他国の陳述書に関する陳述書を提出した。日本は、核兵器の使用は「国際法の基盤にある人道主義の精神に合致しないと考える」とする陳述書を提出し、WHOの諮問に対する内容を踏襲したものとなった。 また、10月30日から11月15日にかけて22カ国とWHOが口頭陳述を行った。これほど多くの国々が同一の事案に対して意見陳述を行ったのは国際司法裁判所開設以来初めてのことであった。 各国の陳述書国提出日(WHO諮問)提出日(国連総会諮問)国際反核法律家協会の評価論旨 ルワンダ 1993年12月8日 核兵器使用は違法 北朝鮮 1994年1月26日 1995年5月18日 核兵器使用は違法 核兵器使用は国連憲章を含む国際法違反である。真剣に核廃絶に向けた議論なされている最中に核の合法性が話し合われていること自体嘆かわしい。 ウクライナ 1994年5月16日 核兵器使用は違法 リトアニア 1994年5月31日 核兵器使用は違法 オランダ 1994年6月6日 1995年6月16日 司法判断などに反対 裁判所は国連総会の勧告的意見要請に応じることはできるが、これは裁判所の義務ではなく任意的なものである。裁判所が核兵器の威嚇または使用を違法と宣言したとしても合法と宣言したとしても、裁判所の判断が現在進行中の核不拡散交渉に悪影響を及ぼしかねない。よって裁判所は意見要請に応じるべきではない。 ロシア 1994年6月7日 1995年6月19日 司法判断などに反対 フィリピン 1994年6月8日 核兵器使用は違法 カザフスタン 1994年6月8日 核兵器使用は違法 パプアニューギニア 1994年6月8日 核兵器使用は違法 イタリア 1994年6月9日 1995年6月19日 司法判断などに反対 モルドバ 1994年6月9日 核兵器使用は違法 メキシコ 1994年6月9日 1995年6月19日 核兵器使用は違法 アメリカ合衆国 1994年6月10日 1995年6月20日 司法判断などに反対 ノルウェー 1994年6月10日 あいまいな態度 フランス 1994年6月20日 1995年6月20日 司法判断などに反対 サウジアラビア 1994年8月9日 態度不明 ソロモン諸島 1994年9月9日 1995年9月20日 核兵器使用は違法 コスタリカ 1994年9月9日 核兵器使用は違法 ニュージーランド 1994年9月13日 1995年6月20日 あいまいな態度 サモア 1994年9月16日 1995年6月15日 核兵器使用は違法 ドイツ 1994年9月20日 1995年6月20日 司法判断などに反対 イギリス 1994年9月20日 1995年6月16日 司法判断などに反対 裁判所が勧告的意見を下したとしても国連総会の活動に対して建設的な効果が望めず、核軍縮交渉に対しても有益な効果は見込めない。さらに国連総会の諮問はあまりに抽象的なものであるのに対し、それに回答するためには核兵器の使用または威嚇の具体的状況を考慮しなければならないが、そうした具体的状況は示されていない。よって裁判所が意見要請に応じるべきではない。 アイルランド 1994年9月20日 1995年6月16日 核兵器使用は違法(消極的意見) 完全な核兵器廃絶という最終目標のためには、核不拡散体制の強化と、包括的な核実験の禁止が必要である。アイルランド政府は核拡散防止条約を世界で初めて批准するなど核廃絶に向けた政治的努力を続けてきたが、国連総会やWHOによる裁判所への諮問はこの問題を政治的試みではなく法的義務の枠組みに組み込もうとするもので、アイルランド政府が続けてきた政治的努力とは両立しないものである。裁判所の意見によって核兵器にまつわる法的問題が明確なものとなることを希望する。 オーストラリア 1994年9月20日 司法判断などに反対 インド 1994年9月20日 1995年6月20日 核兵器使用は違法 スウェーデン 1994年9月20日 1995年6月20日 核兵器使用は違法 コロンビア 1994年9月20日 核兵器使用は違法 日本 1994年9月20日 1995年6月14日 あいまいな態度 核兵器は国際法の基礎たる人道の精神に反する。唯一の被爆国として核兵器廃絶の重要性を主張する。そのためには核拡散防止条約を柱とする核不拡散体制をより実効的かつ普遍的なものにしなければならない。 フィンランド 1994年9月20日 1995年6月13日 司法判断などに反対 スリランカ 1994年9月20日 核兵器使用は違法 マレーシア 1994年9月20日 1995年6月19日 核兵器使用は違法 ウガンダ 1994年9月20日 核兵器使用は違法 イラン 1994年9月20日 1995年6月19日 核兵器使用は違法 ナウル 1994年9月20日 1995年6月15日 核兵器使用は違法 アゼルバイジャン 1994年9月20日 態度不明 ボスニア・ヘルツェゴビナ 1995年6月16日 サンマリノ 1995年6月19日 ブルンジ 1995年6月19日 エジプト 1995年6月20日, 9月 レソト 1995年6月20日 カタール 1995年6月20日 エクアドル 1995年6月20日 マーシャル諸島 1995年6月22日 マーシャル諸島の領土にはアメリカ合衆国による核実験の影響が現在も残っており、今なお国民の健康に深刻な影響を及ぼしている。不必要な苦痛を与え、中立国の環境にまで長期間に渡り悪影響を及ぼしうる核兵器の使用は、国連憲章、ハーグ陸戦条約、ジュネーヴ諸条約追加議定書などを含む武力紛争に適用される法に違反しており、いかなるかたちでの核兵器の使用も違法である。 口頭陳述国・機関代表者肩書代表者陳述日 (1995年)論旨WHO 法律顧問 Claude-Henri Vignes 10月30日 オーストラリア 法務長官 Gavan Griffith 10月30日 外務大臣 Gareth Evans 10月30日 エジプト ジュネーヴ大学ジュネーヴ高等研究所教授 Georges Abi-Saab 11月1日 フランス 外務省法律部門局長 Marc Perrin de Brichambaut 11月1日, 2日 パリ第10大学教授 Alain Pellet 11月2日 ドイツ 外務省法律部門事務総長 Hartmut Hillgenberg 11月2日 インドネシア 在オランダインドネシア大使 Johannes Berchmans Soedarmanto 11月3日 メキシコ 外務次官 Sergio González Gálvez 11月3日 イラン 外務大臣 Mohammad J. Zarif 11月6日 イタリア ローマ・トル・ヴェルガータ大学法学部教授 Umberto Leanza 11月6日 日本 外務省軍縮不拡散・科学部長 河村武和 11月7日 膨大な数の人間を殺傷する力を持つ核兵器は国際法の基礎たる人道の精神に反するとし、広島と長崎の被害状況や非核三原則を説明、その上で国際的な核不拡散体制の重要性を主張した。 広島市長 平岡敬 11月7日 長崎市長 伊藤一長 11月7日 マレーシア 司法長官 Mohtar Abdullah 11月7日 国連全権大使 Razali Ismail 11月7日 ニュージーランド 司法長官 Paul East 11月9日 外務通商省法務局副長 Alan Bracegirdle 11月9日 フィリピン フィリピン大学法学部教授 Merlin M. Magallona 11月9日 在オランダフィリピン大使 Rodolfo S. Sanchez 11月9日 カタール 司法大臣 Najeeb ibn Mohammed Al-Nauimi 11月10日 ロシア 外務省法律部長 A. G. Khodakov 11月10日 サンマリノ 外務省行政理事会主任 Federica Bigi 11月13日 サモア 国連全権大使 Tuiloma Neroni Slade 11月13日 ラトガース大学教授 Roger Clark 11月13日 ジュネーヴ大学ジュネーヴ高等研究所助教授 Laurence Boisson de Chazournes 11月13日 マーシャル諸島 国連全権大使 Theodore G. Kronmiller 11月14日 ソロモン諸島 警察国防相大臣 Victor Ngele 11月14日 ブリュッセル自由大学教授 Jean Salmon 11月14日 ケンブリッジ大学教授 James Crawford 11月14日 ブリュッセル自由大学教授 Eric David 11月14日 東洋アフリカ研究学院講師 Philippe Sands 11月14日 コスタリカ コスタリカ政府特別使節 Carlos Vargas-Pizarro 11月14日 イギリス 法務総裁 Nicholas Lyell 11月15日 アメリカ合衆国 国務省法律顧問代理人 Conrad K. Harper 11月15日 国務省法律顧問副長 Michael J. Matheson 11月15日 国防総省法務担当上級代表 John H. Mcneill 11月15日 ジンバブエ 在ブリュッセルジンバブエ大使 Jonathan Wutawunashe 11月15日
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