冤罪疑惑とは? わかりやすく解説

冤罪疑惑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 09:01 UTC 版)

和歌山毒物カレー事件」の記事における「冤罪疑惑」の解説

本事件最たる特徴として、被告人林眞須美による犯行動機一切なく、直接的な証拠存在しないという点が挙げられる。 そのため、例えば「実際に家族知人が毒を入れた可能性」や「被告人がその家族知人庇っている可能性」、「誰かに陥れられた可能性」などを否定できず、冤罪疑惑ある事件として有識者からも問題点指摘されている。 証拠動機もない 「批判承知であえて言えば本人容疑否認し確たる証拠はない。そして動機もない。このような状況死刑判決確定してよいのだろうか?」(田原総一朗)。 「私のわだかまりも、この『状況証拠のみ』と『動機解明』の2点にある。事件に、被告にあったヒ素使われたことは間違いない。ただし、そのヒ素に足があったわけではあるまいし、勝手にカレー鍋飛び込むわけがない。だれかが被告宅のヒ素カレー鍋まで持って行ったことは確かなのだ。だが、果たしてそれは本当に被告なのか、どうしたって、わだかまりが残るのだ。」(大谷昭宏)。 「動機解明有罪にすること自体ありえますが、動機というのは非常に有力な状況証拠です。動機がないなら証拠一部欠けているということなので、他の証拠そのぶんしっかりしてないといけません。しかし、他の証拠をみても、自白はなく、鑑定問題はあり、原則禁じられ類似事実による立証やっている本件場合動機がないなら、全体的な証拠構造問題です」「人は普通、動機がないと人を殺しません。しかもこの事件場合犯人が誰を殺そうとしたのかもわからない動機がないと真相わからない事案だけに、余計に動機なしでいいのかな、と思いますね」(白取祐司黙秘権侵害2審判決は『誠実に事実語ったことなど1度もなかったはずの被告人が、突然真相吐露し始めたなどとは到底考えられないと言ったが、これは実質的に黙秘権侵害です」(小田児 - 林1審2審上告審弁護人曖昧な目撃証言 事件当時から目撃証言などの状況証拠積み重ねてきたが、その中には不自然でつじつまの合わない証言多く関係者から疑問視されるケースもある。 被告次女は、「死刑囚カレー鍋見張り離れた時間20分以上あり、他の人物毒物入れ機会はあった」と主張している。なお、身内による証言ということもあり、和歌山地裁はこの証言証拠採用しないことを決定した。 「林眞須美しか、カレーヒ素混入する機会がなかった」という結論は、警察住民らの証言をもとに1分刻みタイムテーブル作成し、「消去法」によって導き出したものであった。ところが事件直後朝日新聞報道では、時間証言裏付けのある人はまれで、総合すると最大50前後開きがあった。ここから、1分刻みタイムテーブル作ったことが疑問視されている。 事件発生直後カレーライス担当した主婦のうち1人が、「知らない人も出入りしたが、当番コンビ組んだ相手知り合い思った」(朝日新聞)と述べている。それにも関わらず、「犯人夏祭り関係者中にいる」という前提で、「消去法」による捜査が行われた。 眞須美が「調理済みカレー入った鍋のふたを開けるなどの不審挙動をしていた」という目撃証言についても、服の色や髪の長さなどから、目撃者見たのは眞須美ではなく次女である可能性が高い。しかも次女がふたを開けた鍋は、2つあったカレー鍋のうち、ヒ素混入されていないであったヒ素混入された鍋は、目撃者からは死角になり見えなかったことが、死刑確定後再調査によって明らかになっている。 鑑定不確かさ 裁判犯行断定され上で唯一の物証決定的な証拠となっていた亜ヒ酸鑑定において、犯行使われとみられる現場付近見つかった紙コップ付着していたヒ素亜ヒ酸)、宅の台所プラスチック容器についていたヒ素カレー混入されヒ素3つ東京理科大学教授中井泉による鑑定結果組成同一とされた。しかし、中井鑑定依頼内容を、宅のヒ素紙コップヒ素カレーヒ素3つにどれだけの差違があるかを証明することではなく3つの試料を含む周辺にあったヒ素のすべてが同じ輸入業者経由入ってきたものだったかどうか調べることだと理解し、それを鑑定確認したに過ぎなかった。このため有罪決め手となった3つの試料差違詳細に分析はせず、3つの試料を含む10試料ヒ素がすべて同じ起源であることを確認するための鑑定行っていたにすぎなかった。自宅にあったヒ素紙コップカレー入れたことを裏付けるためには、3つのヒ素起源が同じであることを証明しただけでは不充分であり、その3つがまったく同一なければならない2012年弁護側の依頼鑑定結果再評価行った京都大学大学院教授河合潤により、この3つの間には重大な差違があることがわかり、3つ同一ではないと評価された。また、河合最高裁でも有罪とした根拠とされる被告人頭髪からも高濃度ヒ素検出されたとする鑑定結果についても、過誤があったと指摘している。 夫への誘導尋問問題司法取引疑惑 死刑囚の夫・林健によれば逮捕された際捜査員より「眞須美オトせない!頼むから眞須美ヒ素飲まされと書いてくれ!書いてくれたらあんたを八王子医療刑務所入れるようにしてやると言われたという。これは現在では司法取引該当するが、当時司法取引認められていなかったことに留意が必要である。 上記の件に関しては、2020年10月27日公開されYouTube動画でも林健自身詳しく語っている。それによると、逮捕から約1週間後19時ころに検察庁から小寺検事事務官2名が健治の拘留されている警察署訪れた。健治が「確たる証拠証人もなく、ワシ口割ってないのに、なぜ逮捕し勾留しているのか」と質問したのに対し小寺は「アホこんだけ世間騒がしてマスコミ騒いで、パクッて今さら間違えましたではすまんやろ」と返答したため、健治が「死刑事案なのに、想像でパクッてしまうんか?」と質したところ「いや、今からそのストーリーワシ考えてやる」、「しかし、証拠がないから困っていると言い、健治に向かって須美ヒ素飲まされ殺されかかった被害者として初公判で「私、今でこそ須美憎くて仕方ない。どうぞ、この女死刑してやってくれ」と言って泣けと言った。さらに、小寺は健治の事件公判担当することから、求刑自分が出すので塩梅してやるワシ乗れワシ乗ったらお前は身体が不自由だから、エエとこに放り込んでやると言って八王子医療刑務所パンフレット出し健治に見せたが、そこにはMRIなど最新鋭医療機器写っていたという。さらに、今、八王子には角川春樹収監されているので、彼に本を書いてもらえと言った小寺は「この事件ワシ出世させてくれ」「ワシもお前と同じで4人子供がいる。よい正月迎えさせてくれ」と事務官2人とともに土下座をしたという。さらに「お前がどうしても口を割らないのなら、眞須美ひとこと言わせてやる。"私は元日本生命の外交員です。あの日昼頃帰って主人が何か紙コップ入った薬品のようなものを私に渡して、これカレー中に入れたら隠し味になって美味しいんで持っていって入れてこいというので、何かわからずに入れましたヒ素主人から預かっていたもので、私は知りません。主人の言うままにやっただけです"-これひとこと、眞須美にしゃべられたら、一生お前の人生裁判になってしまうぞ!」と恫喝したというが、健治が応じなかったため、小寺手を上げてしまったという。健治も眞須美検察供述調書には1枚サインをしなかった。 ノンフィクションライターの片岡健も2021年5月28日公開されYouTube動画で、上記の健治の主張裏づけるような話をしている。片岡によると、「林眞須美保険金目的ヒ素睡眠薬飲まされ被害者」とされた男6人のうち、健治を含む多くの者がカレー事件発生以前は眞須美保険金詐欺共犯関係にあったという。そして健治以外の者たちの何人かは警察によって山奥警察官官舎3、4カ月隔離されるなどしており、このことは、死刑判決でも認定されているという。 科捜研主任研究員による証拠捏造 2012年カレー事件捜査していた和歌山県警科捜研主任研究員が、他の事件証拠捏造したとして証拠捏造有印公文書偽造および行使容疑書類送検されたことが判明した。しかし、捜査関係者によれば研究員携わったカレー事件での捏造はなかったと結論づけている。

※この「冤罪疑惑」の解説は、「和歌山毒物カレー事件」の解説の一部です。
「冤罪疑惑」を含む「和歌山毒物カレー事件」の記事については、「和歌山毒物カレー事件」の概要を参照ください。

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