倍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/16 01:37 UTC 版)
倍(ばい)は、数学上の概念であるが、その定義は東洋数学と西洋数学では異なっている。
- 東洋…(いずれも 0 でない)自然数 m と n に対して、m に同一量 m を n 個分加えた数(m × (n + 1)を求める)。
- 西洋…(いずれも 0 でない)自然数 m と n に対して、m を n 個分加えた数(m × n を求める、即ち乗法である)。
日本における定義・用法
日本では、江戸時代以前においては東洋数学の定義が用いられてきた(例えば、「一倍」とは今日で言うところの2倍に該当する。また同じく「半倍」とは、今日で言うところの1.5倍に該当する)が、近代以後に西洋数字が用いられるようになるとその意味合いも変化して、今日のように乗法を指すようになった。
政府は、1875年(明治8年)12月2日以降の公文書における倍数表記を西洋式に改める旨の布告を出している(太政官布告第183号[1])[2]。
もっとも、こうした理解には異説がある。養老律令の雑令に記された出挙の利息制限について記された「一倍」は現在と同じ1倍(=100%)を指しており、『法曹至要抄』(中巻87条)や鎌倉幕府の追加法でもこれを踏襲している。一方、『今昔物語集』(巻14第38)には、利息としての「一倍」(すなわち100%)と元本と合わせた「一倍」(すなわち、100+100=200%)が併用して用いられている。そして、江戸時代の『日葡辞書』や井原西鶴『日本永代蔵』では、「一倍」は2倍(200%)の意味で記されている。こうした変遷から、本来は100%の利息を指して「一倍」の利息と称していたものが、中世になると元利合計の200%をもって「一倍」と称するようになり、中世後期から江戸時代にかけて「一倍」=200%とする考えが社会に定着したとするものである[2]。
「人一倍」という言葉などに近代以前の用法の名残が見出せる。単独で「倍」と使われた場合、大抵は「二倍」を意味する(例:倍になる)。
西洋数学における n 倍を表す表現
- 「各自然数」の項目も参照
double、triple、quadruple は n 倍を表す倍数詞である。数学などでは主に n 個を組とする表現や n 個重なっている(n 重)という表現(例:二個重ねを指す場合は double)として使用されることが多い。triple 以 降は n 個を組や n 個が重なるとする場合、n -tuple(n の部分はラテン語を由来とする数を表す接頭辞)をつなげて一部形を変化させた表現となり、倍数詞でも n 倍を表すとき同様に表現できる。
- 1倍 - single(シングル)
- 2倍 - double(ダブル)、duple(デュプル)
- 3倍 - triple(トリプル)、treble(トレブル)
- 4倍 - quadruple(クアドラプル、カドラプル、クォドラプル、クワドループル)
- 5倍 - quintuple(クインタプル、クインティプル、クインテュープル)
- 6倍 - sextuple(セクスタプル、セクステュープル)
- 7倍 - septuple(セプタプル、セプテュプル)
- 8倍 - octuple(オクタプル、オクテュプル)
- 9倍 - nonuple(ノナプル、ノニュプル)
- 10倍 - decuple(デカプル、デキュプル、デキャプル、ディカプル)
- 11倍 - Undecuple(アンダカプル)
- 12倍 - duodecuple(デュデカプル)
- 13倍 - Tredecuple(トレドカプル)
- 16倍 - sedecuple(セデカプル)
- 20倍 - vigintuple(ヴィジンタプル、ヴァイジンタプル)
- 30倍 - trigintuple(トリジンタプル)
- 60倍 - sexagintuple(セキサジンタプル)
- 100倍 - centuple(センタプル)
その他「倍」に関すること
- 「また、ほかの種は良い土地に落ち、芽生え、育って実を結び、あるものは三十倍、あるものは六十倍、あるものは百倍にもなった。」(マルコによる福音書 4章 8節)
脚注
- ^ 「自今公文中總テ計算上一倍ノ稱呼ヲ止メ從前ノ諸規則等ニ一倍ト記載有之分ハ二倍ト改正候條此旨布告候事 但譬バ原金高一圓ノ二倍ハ二圓十倍ハ十圓ト計算候儀ト可心得候事」
- ^ a b 阿部猛「一倍・半倍考」(初出:『日本社会史研究』71号(2007年)/所収:阿部『中世社会史への道標』(同成社、2011年)ISBN 978-4-88621-568-0)
関連項目
倍
倍
「倍」の例文・使い方・用例・文例
- 彼女は洋服に多くの金を費やすが宝石にはその2倍近くを費やす
- 最小公倍数
- 腫瘍の細胞は倍増しその成長は抑えようがない
- 倍率100のレンズ
- 倍の収入
- 彼の年齢はあなたの倍だ
- 彼はあなたの2倍の収入を稼ぐ
- 彼はくじ引きでいくらかのお金を当てたが,私はその倍当たった
- 4は2の2倍だ
- 額を2倍にする
- その男の赤ちゃんは6か月で体重が倍になった
- 彼らの収入は私たちの倍ある
- 株が上がったおかげで彼女のへそくりは倍になった
- 4倍の増加
- 彼女は私の1.5倍食べる
- この顕微鏡は物体を2,000倍に拡大する
- その山には我々がこれまでに見つけた2倍もの金があるだろう
- 16は8の倍数である
- その顕微鏡は900倍の倍率である
倍と同じ種類の言葉
「倍」に関係したコラム
-
CFDで取り扱われるコモディティや株価指数、株式、債券では、レバレッジを効かせた取引が可能です。日本国内のCFD業者の場合、コモディティでは商品先物取引法が適用され、株価指数、株式、債券では金融商品取...
-
株式の投資基準とされるPBR(Price Book-value Ratio)とは、時価総額が株主資本の何倍かを示す指標のことで、株価純資産倍率とも呼ばれています。PBRは、次の計算式で求めることができ...
-
CFDを始めるための最低資金は、商品を購入する際に支払う必要証拠金額になります。必要証拠金額は、商品の価格はもとより、レバレッジや取引単位、為替レートなどにより大きく変わります。例えば、日経平均株価(...
-
株式の投資基準とされる純利益連単倍率とは、企業の連結決算ベースの予想純利益が個別財務諸表ベースの予想純利益の何倍かを表したものです。純利益連単倍率は、次の計算式で求めることができます。純利益連単倍率=...
-
2012年5月現在、日本国内のFX業者の法人向けレバレッジの比較一覧です。レバレッジの倍率は個人の場合、「金融商品取引業等に関する内閣府令」により、2011年8月から最大25倍までに規制されています。
-
株式の投資基準とされる売上高連単倍率とは、企業の連結決算ベースの予想売上高が個別財務諸表ベースの予想売上高の何倍かを表したものです。売上高連単倍率は、次の計算式で求めることができます。売上高連単倍率=...
- >> 「倍」を含む用語の索引
- 倍のページへのリンク