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(書評)エーコと【トオル】の部活の時間。

著者:柳田狐狗狸

エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)
(2013/02/09)
柳田狐狗狸

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半年前、自らの起こした事件によって周囲から浮いた存在であるエーコ。「エーコ」という名前それ自体が「A子」という報道を受けたもの。そんな彼女は、実質、休部状態の化学部へと入部させられるのだが、そこにある人体模型の「トオル」がいきなり語りだす……。そんな中、エーコに食って掛かってきた先輩が謎の発火事件で大怪我を負い……
第19回電撃小説大賞金賞受賞作。
最初に思ったのが、なぜ、この作品を電撃小説大賞に応募しようと思ったのだろうか? ということだったりする。というのは、作中で起こるのは(一応)合理的な論理性を持った事件だし、雰囲気的には、むしろ、近年の鮎川哲也賞っぽい印象を受けた。まぁ、喋る人体模型はいるけど、それがあるからダメってことはないだろうし、ぶっちゃけ、人体模型でなくても話は出来た気がする。
ともかく、物語は、当初、被害者と一悶着が合ったから、という理由で疑われたエーコが、その事件の謎を解く、というもの。序盤の人体発火事件の物理的トリックが早い段階で判明し、その上で、被害者達の過去やらが明らかになって犯人の絞込みへ……という展開のさせ方などはこなれているし、一応、最後に真相についてのひっくり返しを用意するなど、抑えるべきところは抑えていると思う。
ただ、色々とぎこちないところも当然に感じる。例えば、終盤の真犯人とのやりとりの部分。アクション的な要素を入れたいのだろう、というのはわかるのだけど、何か、単なる擬音大会になってしまっただけの状態。また、エーコの事件があまり、作中の事件とかみ合っていない。一応、似たようなシチュエーションとかにはなっているのだけど、エーコが共感するでもなく、それを見下すとかでもなく、ただ、淡々と語っているだけ。そういうのをもう少し活かせば……と思う。
それなりに楽しめた。ただ、物足りなかったり、というところもあり。新人賞作品らしい作品、という感じじゃなかろうか。

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