私、他にもこれ観たので
2024年11月17日
「まる」
荻上直子監督の最新作は堂本剛を主演に迎えた・・・風刺劇? 心理ドラマ? ジャンル付けがムズい。
美大を出たものの、アーティストになれたわけでなく、高名な現代美術家のアシスタントとして下っ端仕事に明け暮れる沢田(堂本剛)。
ある日、彼は自転車事故で腕を骨折したことから仕事をクビになる。
部屋で悶々としながら見つけた一匹の蟻の動きに沿って描いた「○」が何故かあれよあれよと言う間に世間の注目を浴び、革新的なアーティスト「さわだ」として持て囃される沢田は次第に日常が○に侵食されてゆく・・・・・
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荻上直子監督にしては珍しく毛色の違う作品。
これは現代アートへの皮肉ですかね。 批判ではないのですが。
マーク・ロスコって画家をご存知でしょうか。
もう随分前に亡くなられてるアメリカの画家ですが、あの人の絵はキャンバスを一色または二色で塗りつぶしただけの絵ですからね。
分からない人からすれば「こんなもん子供でも描けるやんけ」みたいな絵が何十億という値がついたりするんですからね。 エグいもんです。
ロスコよりぃ 普通にぃ ラッセンが好きぃーっ! はぁぁぁいっ!
言われてみれば「○」という形は奥の深い小宇宙。
どんなシンプルなものにも意味があり、もちろんマーク・ロスコの絵にだってちゃんと意味はある。 分かんないけど。
絵を描いて何の役に立つって? 役に立つ立たないじゃないよ。
台詞に出てくる「働きアリの中の2割の働かないアリ」もコロニーを存続させる意味を持つ。
役に立たなくても絵を描く・描きたいという、天性のクリエイティブ精神から放たれる表現の美しさは意味のあるなしを越えて尊いもの。
不思議な映画だけど、これはこれで悪くない。
森崎ウィンのコンビニ店員さんがいい味。 「福徳円満、円満具足」。 いい言葉だ。 あっ、これにも「円・○」がありますね。
吉岡里帆があれだけの役というのはもったいないなあ。
古道具屋の店主の「おじさん」と思ってたら、片桐はいりだったのぉ?!
「ランボー/怒りの脱出 4Kレストア版」
シルベスター・スタローン主演で一世を風靡したアクション映画「ランボー」の公開からはや40年超。
何の風の吹き回しなのか、「ランボー」シリーズの中の80年代の3作が4Kレストア版で一挙公開。
一作目の「ランボー」を観たかったのですが都合がつかずに2作目の「怒りの脱出」を観ることになりました。
監督は「カサンドラ・クロス」のジョージ・P・コスマトス、共同脚本にはジェームズ・キャメロンが参加。
そんでもってラジー賞4部門を受賞したというファンキー極まる一品。
のちのち数々のシーンがパロディに使われたり、何かとイジられる映画ですが、戦場に行った多くの勇者の想いを蔑ろにしない熱き魂は存分に台詞などからも伝わります。
名台詞も多々。
「マードック、命をもらいにいくぜ」はクーッ!ってなりますね。
「ソウX」
「ソウ」シリーズのプロデューサーでもあるジェームズ・ワンは倉庫のような部屋の中、椅子に座らされている状態で目を覚ました。
ここは一体どこなんだ? 誰かに襲われたような記憶が最後にある。
俺はラチられたのか?
手も足も首も動くが立ち上がれないように体は椅子にガッチリ固定されている。 横の台にはワイヤーチェーンソーが置かれていた。
隣りの椅子にも誰かが縛られていた。
ジョン・クレイマー役でお世話になってるトビン・ベルだ。 意識はないようだ。
そこへ不気味な人形が三輪車をキコキコと漕いでやって来た。
ビリー人形だ。 このシチュエーションは・・・
「ハロー、ジェームズ。 2004年以来の長い付き合いだな」
「ジ、ジグソウなのか。 ということはつまり」
「I Want To Play a Game」
「やっぱり」
「ゲームを始めよう、ジェームズ」
「ちょっと待ってくれ。 俺が何か悪いことをしたか?」
「君はこれまで「ソウ」シリーズを10作も作ってきた。 2年に一本という割合だ。 ものづくりの人間としての創作意欲は素晴らしい」
「そりゃどうも」
「だがその分、あまりにもシリーズを安売りし過ぎた。 ジョン・クレイマーとアマンダが死んだ3作目で辞めておけばいいものを、ホフマン刑事を回し役にしては色々と理屈っぽい話でダラダラと引っ張り、シリーズそのものの価値をおとしめてきた」
「なんだかんだで興行収入がいいもんで」
「いや、グダグダなのもあった。 「6」は期待したほどではなかったから君たちは7作目で終了させることにしたのだ」
「実際そうするつもりだったんだよ」
「しかし君たちは約束を破った」
「約束したつもりは・・・」
「7作目の際に日本の配給会社が製作サイドに確認を取ったのだ。 「続編やスピンオフや前日譚とか作りませんよね?」と聞いて「作らない」という確約をもらったから邦題のタイトルに“ファイナル”と付けたのだ。 だが7年後にその約束はホゴにされた。 日本の配給会社は赤っ恥をかいた」
「あれは俺じゃなくてマーク・バーグが言ったんだよ」
「君も連帯責任だ」
「そんなあ」
「今度の10作目に対する君たちの姿勢は特に姑息だ。 結局トビン・ベルが演じるジグソウことジョン・クレイマーが出てこないと作品がパッとしないということを認めざるを得なかったのだろう。 ジョン・クレイマーを引っ張り出すために『1』と『2』のあいだの前日譚を無理からにこしらえて一儲けしようとはクリエイターらしからぬ姑息さだ」
「ジョン・クレイマーのカリスマ性たっぷりなキャラクターは魅力だからなあ。 死なせてしまったのは失敗だったな」
「君たちはこれからもジョン・クレイマー頼みの『ソウ』を作っていくのだろう。 なんならジョン・クレイマーには双子の兄弟がいたあっ!みたいな設定を作りそうだ。 そうしてトビン・ベルをずっと出演させて死ぬまで働かせる腹づもりではないのか?」
「考えすぎだよ」
「ルールを説明しよう。 今から5分がリミットのタイマーが作動する。 スタートと同時にこの部屋は一酸化炭素の濃度が徐々に増す仕掛けになっており、5分で致死量の濃度に達するようにセットされている。 5分を過ぎれば君も隣りで眠ってるトビン・ベルもお陀仏だ」
「勘弁してくれよ」
「だが手元にあるワイヤーチェーンソーで君の両足を切断し、両足分の重さが無くなったことを椅子のセンサーが感知すれば一気に部屋は換気され、尚かつ椅子のロックも外れるシステムになっている。 君自身助かりたいのはもちろんだろうが、トビン・ベルも死なせたくないだろ? シリーズを続けれるのなら両足くらい安いものではないのかな?」
「『ソウX』のバレンティーナのシーンみたいだ」
「あのシーンは最高だったのでもう一度やってみたくなった。 だがバレンティーナの場合はさらに骨髄液まで抽出しなければならなかったし、それに制限時間は3分だなんて無理ゲーにもほどがある。 君の場合は5分の大サービスだ。 足を切り落とすだけでいい。 『ソウ』を終わらせるか続けるかは君の選択次第だ。 では健闘を祈る」
「ちよ、ちょっと待って!」
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結果はおわかりでしょう。
早くも11作目の『SAW XI』は2025年9月に全米公開。
それにしても今作はなかなか良かったですね。 多少強引なところもあるけど、ストーリーはシンプルでテンポよく仕掛けの数々も面白かったです。
腸のシーンは「そんなアホな」と笑いそうになりましたが。
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さて、足を切り落としたジェームズ・ワンは・・・
「ううっ、痛えよぉ・・・だけどこれでいい。 トビン・ベルも助かったし」
「フッフッフ、ジェームズ、ご苦労だったな」
「ええっ! トビン起きてたの?」
「最初っからな」
「ど、どういうこと?」
「さっきまで君が話してたのは隣りにいた私だ。 腹話術とボイスチェンジャーで君の相手をしていたのだ」
「なんでこんなことをするんだよ」
「君の“ソウ愛”を確かめさせてもらうことにしたのだ。 もしも君が、新しいことをやろうというチャレンジ精神とインスピレーションを失い、続編という安易な逃げ道として『ソウ』シリーズに頼り、小銭稼ぎに走っているとしたら私は断じて許さない。 しかし本心からこのシリーズを愛してるのなら、足を切り落としてでも『ソウ』の存続を選ぶだろう。 それを確かめたかったのだ」
「時間が間に合わなかったら君も死んでたんだぞ」
「めでたいなジェームズ。 一酸化炭素などというのは嘘だ。 目に見えない道具でしかも人体破壊もないような殺し方など『ソウ』シリーズには無い」
「なんてこったよ」
「私は君を信じていたぞ。 必ず決断すると。 君のソウ愛は本物だ。 これからも遠慮なく“ジョン・クレイマー”を頼るがいい。 私も俳優人生を賭けて君に協力しよう。 これからもよろしくな」
「・・・よろしく」
「八犬伝」
昔、NHKでやってた人形劇の「新八犬伝」。 観てましたがアレは本当に面白かったですね。
坂本九の語りが素晴らしい。 「玉梓が怨霊ぉ~」
アッシの好きな犬士は犬山道節。
薬師丸ひろ子主演の角川映画など、何度か映画化されてる滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」ですが、今回の映画化は山田風太郎が1982年に発表した小説を原作としています。
「南総里見八犬伝」の執筆に28年もの歳月をかけた滝沢馬琴(役所広司)の「実」のエピソードと、八犬伝の「虚」の物語が交錯する構成の大作です。
これは面白かったですが、いい意味で物足りないですね。 いい意味でね。
もっともっとぉ~って感じですね。
2時間半ありますが全然足りないですね。
滝沢馬琴の話と八犬伝の話を両方やるのにはこの尺ではどうしても駆け足な語り口になります。
人物も多いので感情移入してる間もない。
人形劇の「新八犬伝」では犬江親兵衛のエピソードに話数を割いてた記憶があって、これも好きなキャラだったのですが、本作では「犬江親兵衛、出てこんなあ」と思ってたら他の誰にも関われることなく突然馬に乗って現れて、アッサリ仲間に入るという超特急描写で腰が抜ける寸前。
まあ、しょうがないかね。
八犬士のキャストですが、ほとんど詳しく存じ上げない方ばかりで、勉強不足のこちらは申し訳ない。 皆さんオトコマエですな。
犬塚毛野は女性と見紛うほどの美貌の持ち主というのは原作通りなのですが、観たときは本当に女優さんが演じてるのかと思いましたよ。 ああ、どん兵衛のCMやってる人ですか、そうですか。
犬江親兵衛は藤岡弘、の息子さんでしたか、そうですか。
「トラップ」
M・ナイト・シャマラン監督の最新作は、指名手配中の殺人鬼と警察の攻防を描くリアルタイムサスペンス。
私はクーパー・アボット。
今日は娘のライリーと一緒に今人気絶頂のアーティスト、レディ・レイヴンのライブ会場に来ております。
ライリーはレディ・レイヴンを熱狂的に推しておりますが、私は正直詳しくないんですよね。
チケット代はお目々飛び出るくらいの値段でした。
まあ、娘孝行ってやつですよ。
かわいい娘のためなら私はいつでも火の中水の中。 本当に飛び込みませんがね。
三万人も入るのか。 でかい会場だね。
それにしてもやたら警官が多いな。 何かあったのかな? あったんだろうな。 警官がこれだけいるんだから・・・・いや、多いな! 多すぎるな。
どこから湧いてきたんだというほどの警官が会場の周辺をぎっしり埋めるように配置についている。
・・・嫌な予感がする。 まさかな・・・
私はスマホで、ある一つの映像を確認した。
大丈夫だ。 逃げてはいない。
では何なんだ、このおまわりさんの大量発生は?
グッズ売り場の店員と軽くコミュを取って情報収集だ。 何かあったのかい?
「ここだけの話だぜ」
ありがたいことにお喋り好きの男のようだ。
「今、世間を騒がしてる切り裂き魔がいるだろ」
いるねえ。 怖いよねえ。
「その切り裂き魔がライブに来るってタレコミがあったんだよね」
おや。
「そこで警察は作戦を立てた。 このライブ会場自体を犯人捕獲のためのボックストラップにしたんだ」
入るときに調べるんじゃなくて、一旦観客もろとも“箱”の中に入れて仮拘束するわけか。
「あとは蟻一匹外に出さないようにあらゆる所を警官で固めて、切り裂き魔の手がかりの特徴である手首にタトゥーをした男を引っ張ろうって算段じゃないの?」
私は思わずジャケットの裾を引っ張って手首を隠した。
「うまくいくといいけどなあ。 でも本当にそいつがここに来てんのかなあ」
いるよ。 あんたの目の前に。
もう一度スマホを見た。 この映像を見るとどうしてもニヤける。
私が拉致して、とある一軒家の地下室に拘束している青年は「助けてくれー!」と泣きわめいていた。 ふふっ。 殺される前の獲物がピーピー泣くぶざまな姿は楽しいね。
しかし、こうしちゃいいられない。 行動は早いほうがいい
ここからどうやって出るかだ。
警察ってバカなのかと思っていたが案外したたかなんだね。
いいだろう。 このトラップ、受けて立とうじゃないか。
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細かいところでご都合主義的なところはあるものの、ほぼリアルタイムで進行していく「難関突破型」のサスペンスのグイグイ感はなかなかのモノ。
警察側が少々だらしないので、駆け引きと言うほどでもないのですが、クーパーがあの手この手で脱出へと一歩一歩近づいていく抜け目の無さや、ゾッとするような残虐さを垣間見せつつ、一見子煩悩な父親の仮面が剥がれていくくだりの語り口は秀逸。
しかも後半からはクーパーvsレディ・レイヴンという第2ラウンドが勃発して視点的にも攻守交代するという展開が面白い。
ここで終わりかと思ったら、まだあんのかいという第3ラウンドは妻vsクーパー。
そして、いよいよ終わりかと思うのですが、ひょっとして続編もアリ?
シャマラン監督の娘サレカが演じるレディ・レイヴンの歌が普通に良すぎるんですけど。
ライブシーンも素晴らしい。
一時期ハリウッドから距離を置いていたジョシュ・ハートネットだけど、今やボチボチしたペースで頑張ってらっしゃいますね。
「スパイダー 増殖」
「増殖」と聞くと、どうしてもYMOを思い出す人いませんか?
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分類が難しいのですが、犬や猫以外に「そんな生き物をペットにしてるの?」みたいな人がいますよね。
イグアナとかニシキヘビとか。
こういうのを「エキゾチックアニマル」と言うのですが、たまに「逃げ出した!」っていうニュースがあったりします。
この映画はソレ。
エキゾチックアニマルの愛好家の青年が珍しいクモを手に入れて一時アパートの自室で、スニーカーの空き箱に入れて(そんなとこに入れんなや)保管したのですが・・・・
クモがおらんっ! ほれ、見たことか。
そのクモがアッという間に大量に増殖。 しかも、「まあこんなに大きくなっちゃって」。
短期間で増えるわデカくなるわと、ちょっと有り得ない生態のクモがアパートを瞬く間に占拠して人を襲う。
ウィルスを疑った警察によってアパートは封鎖。
住民たちはクモクモパニックと化したアパートから脱出するための決死のサバイバルを強いられます。
ボロいアパートに暮らす自分勝手な大人の連中が喧嘩ばかりしながら右往左往。
リアルっちゃあリアル。
要は、別に地球を侵略しに来たわけではない、ただ単に繁殖・成長を辿った外来生物の営みと、ガキのまま成長した大人を対比させてるということでしょうか。
いずれにしても、クモがそんなに怖くない。 これは致命的。