2016-04-05(Tue)

辺見庸の「ことば」

おとといの日曜日は、大阪で辺見庸の講演会があったので聞いてきた。

10年近く前にも中之島公会堂に聞きに行った憶えがある。
(そのときのブログは これ

あの時の静かに火を吐くような迫力とは違い、今回の辺見氏の言葉は、戸惑いながら絞り出すような重みがあった。

冒頭に10の設問をあげていたけれども、3時間近い講演の中で結局言っていたことは、「ことばはまだ有効か、もう無効か」という問いと「暴力とは何か」 ということではなかったか。

遵法精神も公徳心もないと自称する氏が、それでも物心ついた時から背負ってきた「憲法」。ずっと生きたものを背負ってきたつもりだったけれども、実は死体だったのではないか。今それに気が付いて戸惑っている。
そう、率直に言っていた。

平和憲法は米国の押しつけどころか、天皇=国体護持のために日本の側から提案されたこと。
平和憲法をかかげながら、朝鮮戦争に荷担し、吉田首相がそれを「天恵」と言ったこと。
憲法は生まれた時から死んでいたのではないか、少なくとも瀕死なのではないか。
それに薄々気が付きながら、でも9条を守りたいために見ないふりをしてきたのではないか。

まさに、戦後史の核心とも言うべき問題に、自らの心の問題として切り込んでいた。

言葉がすべて「なんちゃって」になり、言語がすさんでしまった。
見えてみる物は自分が思ってきた物ではない。
ユートピアを語る時代は終わった。
オーウェルがパシフィズムはプロファシズムだと言った意味。
暴力は始まっている。

氏の語った言葉の断片を書き留めてみると、まった救いがない。
平和主義ですらファシズムを後押ししたと批判するジョージ・オーウェルのように、義勇軍として戦わなければならないのか。
そのような可能性をも、言外に言っていたのかもしれない。

しかし、結論は出すことなく、講演は終了した。

嘘をついていないと言うべきではない。
民主主義があると言うべきではない。

少なくとも、最後に言われていたこの言葉は、胸に刻んでおきたい。




ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ  応援お願いします

関連記事

comment form

管理者にだけメッセージを送る

comment

生活フォーラム関西
なんとしても政権交代を!
20140723-3.jpg
カレンダー
11 | 2024/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
リンク1
貴重な情報をいただいています
(順不同)
リンク2
ブログ内検索
twitter
田中龍作ジャーナル
20140723-4.gif
ひとびとの経済政策研究会
松尾匡氏ら気鋭の経済学者による  政策提言と勉強会
ひとびとの
マガジン9条
パレスチナ・オリーブ
パレスチナで作られたオリーブオイルやオリーブ石けん。これはお勧め。
palestineolive.jpg
RSSフィード
blogranKing.net

カウンター
最近の記事
プロフィール

明月 こと 山岸飛鳥

Author:明月 こと 山岸飛鳥
木の家プロデュース 明月社 主宰
一級建築士
趣味 キコリ 畑
取り柄 貧乏
Email : [email protected]

明月社のアルバム
明月社の作品や家づくりのアイディアなど ちょくちょく更新しています
アルバムLOGO
木の家プロデュース明月社
ホームページをリニューアルしました
meigetsusha.jpg
明月社へのご連絡

名前:
メール:
件名:
本文:

明月社 facebookページ
六甲菜園ブログ
郊外楽園プロジェクトの六甲菜園
rokkou-sides.jpg
おすすめの本
こんな時代だから、お薦めしたい本。アフィリエイトではありません。

自伝的戦後史(羽仁五郎) jidentekisengosi.jpg

おすすめの本 2
日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか

nihonhanaze.jpg

おすすめの本 3
日本はなぜ「戦争ができる国」になったのか
nihonnhanaze2.jpg
おすすめの本 4
世界超恐慌の正体

sekaichoukyoukou.jpg

おすすめの本 5
そして、日本の富は略奪される

sositenihonnno.jpg

おすすめの本 6
コンクリートが危ない

conclete.jpg

おすすめの本 7
家を建てる。家づくりはたたかいだ

iewotateru.jpg