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五月雨日記<仮の宿>

イラスト+漫画やアニメの感想等。 最近はプリキュアと東方多めです。

chapterⅨ-Ⅴ collapse -崩壊-




「まずは――オーソドックスな魔力回復アイテムね」
「回復の程度は……MAX、それなり、普通、少し……やっぱり数値化
 されないとこんな感じなんですよね。値段もやっぱり回復の程度に
 比例して……あれ?こちらは……『お楽しみ♪』?普通と同じ値段??」
「それはランダムでどれだけ回復するか分からないアイテムね。
 運次第というか……あまり信用ならないと思うわ」
そしてショップを訪れた2人――
レイナは初めて買い物をする碧に説明を始める。

「でしたら、運次第はなしで……」
「後は魔力切れになって体力も切れた時の為に、
 念の為体力回復アイテムも買っておいた方が良いわね」
「こちらも同じ感じなんですね……それにしても
 いっぱい買っても邪魔にならないのは嬉しいです!」
「装備品はたくさん買っておいてもゲームだから出し入れ自由……なのは
 ゲームだから助かる部分ね……今日は全品安くなってるから興味が
 ある物は買って良いと思う。それと、こっちはゲーム内の運……
 ドロップ率を上げたりするアイテムとかね」
「わ~……ブレスレットや指輪……キラキラして綺麗ですね……こういう
 アクセサリーってお母さんが持ってるのしか見た事ないので新鮮です!」
そう言って、普段宝石を見慣れていない碧は瞳を輝かせる。

「ゲーム内で運がアップするのはある程度信用できると思うわ。
 試してみる価値はあるわね――まぁこういう運を上げるアイテムは
 現実世界では信憑性に欠けると思うけれど……碧、現実世界では
 変に騙されて買わないようにね」
「……ええっ!? 心配ですか?」
「……碧、騙されやすそうだから」
「大丈夫ですよ~!」
「後は――そうね……護身用の爆弾も持っていた方がいいかもしれないわ」
「ばっ……爆弾!?」
いきなり思いがけない単語を出すレイナに、碧は驚く。

「これ、使用者が爆破を念じない限り勝手に爆破したりはしないし、
 安全性も高いから大丈夫よ」
「ええっ!? 爆弾なんて物騒です~! いいです! 大丈夫です!!」
「そう……でも心配なのよね……
 何かあったらと思うと……だったら――」
「え?」
戸惑う碧をよそに、レイナは自分のお金を出し――爆弾を購入する。

「この爆弾、碧に譲渡するわ」
「ええっ!? いいです! 頂けないですって! それに僕そもそも
 攻撃魔法が使えないから、僕だとそのアイテムも発動しないのでは…?」
「……使用者が限定されているアイテムはこのお札みたいに
 『※東洋魔術系魔法使用者限定』とかみたいに条件が書いてるから
 碧にも使えるはずよ。碧危なっかしいし、私は相手の動き止める系の
 魔法も攻撃魔法も使えるし必要なくて返品もできないから――碧に
 あげる……もらってくれないと――悲しいわ」
そう言って、レイナは――淋しそうな表情を浮かべる。

「……わわわっでしたら頂きます……! ありがとうございます、
 大切にさせて頂きます……!」
「爆弾だから大切にしなくていいわよ……強引に渡してしまった感じに
 なったけど……必要な時は使いなさいよ。別にプレーヤーに使えとは
 言わないし、安物で万が一プレーヤーが巻き込まれても少しの
 怪我程度ですむでしょうし。突然襲ってきたモンスターとか、
 何かしらのトラップ回避とかにも使える事もあるし……
 それと――さっきヒロが無駄遣いしたアイテムも買い足しておく?」
「あっ……はっはい……!」
「これは素早さを上げる薬草で、種類は――……碧?」
「えっ……!? あっはい!」
どこか自分の話に集中できていない……そう感じたレイナは碧の顔を覗く。

「……私が一方的に説明する事も多いから、疲れてしまったかしら」
「いえいえいえ! そんな事ないです! 大丈夫です~!」
「そう……なら良いんだけど」
「……レイナさん、さっきのヒロ君の――全く気にしてない感じだけど
 ……大人っぽいし、もしかしてそういう経験も豊富で慣れて
 いらっしゃるのかな……?」
碧はレイナがヒロの名前、そしてヒロが使用したアイテムから、先程
ヒロが自分の体を使ってレイナの頬にキスをした事を思い出していた
……。レイナは気にしていないようだが、ヒロは碧の体を乗っ取る形で
行動するので、碧もレイナにキスをしてしまった事になる……
それで碧はその事を意識をしてしまっていた……。

「それからこっちは――特に効果のない装備品ばかりだけど、
 一応説明しておこうかしら」
「『飛べない羽』……羽もあるんですね」
最後に2人は――特に効果のない、装備だけのアイテムを見る。
「飛べない羽でも付けたいプレーヤーは付けるみたいね。
 アバターを飾る為……見た目を重視するプレーヤーもいるみたいだし」
「レイナさんの羽は――ちゃんと飛べますしお似合いですよね、天使の羽」
碧は、天使の姿のレイナを思い出しながら微笑む。

「……似合うとは思ってないし、天使って柄ではないと思うけど……」
「そうですか? あっでも……レイナさんは天使さんというより女神様、
 という感じですね……初めてあのお姿を拝見した時は女神様が
 降臨してくださったようで……」
「――女神って器でもないわよ……」
「そんな事は――」
「あれ碧? ――それと……」
そんな2人の前に――1人の少年が現れる。

「竜君!お久しぶりです、こんにちは~! 今日も神のご加護を――」
「いつもサンキューな碧、ほいこれ」
「ありがとうございます、竜君」
竜と再会した碧はいつも通り、竜に最大体力を上げる魔法を使い、
竜は魔力回復アイテムを碧に渡す。

「あっレイナさん、この方は――お友達の竜君です!」
「初めましてレイナ……さん?
 魔導師の竜って言います、よろしくお願いします!」
碧に紹介された竜はレイナに元気良く挨拶をする。

「ええ、よろしく」
「2人で買い物か? でもここって――」
「あっ効果のある装備品は一通り買えたので、
 最後に着飾る用のアイテムについても教えて頂いてたんです」
「へ~なるほど、効果ない系アイテムは
 そんな興味ねーけど、これとかは碧に似合いそうだな♪」
そう言って竜は――突然、碧の帽子に白い兎の耳を付ける。

「ちょっと竜君!? 恥ずかしいですよ~!」
「レイナさん的にはどうですか?」
「……帽子は外した方が似合いそうね――失礼するわ」
楽しそうな竜に対し――レイナは冷静に碧の頭の帽子を取る。

「ええっ!?」
「お~! こっちの方が兎っぽいし可愛いな兎碧!」
「ちょっと竜君、遊ばないで下さい~! ……レイナさんも……!」
「……想像以上に似合ってるわ……
 たまに見たくなった時用に買っておこうかしら」
「えええええ!? たまに見たくなった時用って何ですか!?」
思いがけないレイナの言葉に碧は困惑する……

「この装備品、別に常に付ける必要はないの。
 普段しまっておけば問題ないわ」
「問題ないんですか!?」
「あっはははは♪」
そうして2人は買い物を終える――

----------

「そういえば碧、もしかして――このプレーヤーって前にヒロが……」
「あっ……! そうです! だから今なら――」
「ん? どうした?」
買い物が終わった後、レイナと碧は同じ事を考え、竜の方を見る……

「竜君、少しだけ――お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん? 大丈夫だけど……どうした?」
「以前、僕の強化データ……ヒロ君が以前暴走して竜君を傷付けて
 しまった時の事をすごく反省されていて、ヒロ君が直接
 謝りたいとおっしゃってるんです……だから――
 彼に会って頂けませんか?」
「ああ……良いけど――色々大丈夫……だよな?」
竜は以前の事を思い出し、苦笑いする――
以前ヒロはいきなり竜を襲い、竜は重症を負い……死にかけた。
セーブを使っていない竜は初期化しかけたのだった……

「大丈夫です! ヒロ君は戦闘時以外はああはならないですし
 明るくて面白くて、ぜひ竜君にもお会いして頂きたいんです!!」
「……テンションとか色々変だけどね。
 まぁ妙な事しようとしたら――その時は私がヒロを止めるし」
「なるほどな、だったら――あっそういえばさ“ヒロ”って……
 ナビゲーターと違って……本当に“心”……あるんだよな?」
「……おそらく――あのヒロ君がデータなんて考えられないですよ」
「ふぅん……で、少しってのは――」
「えっと……ヒロ君は1日30分しか発動できなくて……
 今日はクエストで発動したので、ほとんど時間を使い切って
 しまった、というか――」
碧は残念そうな様子――

「――でも、会って少し話す位なら大丈夫よ」
「じゃあ、この辺で会わせてくれるか?」
「はいっ……ありがとうございます!!
 ――きっと仲良くなれると思いますよ」
「そりゃ、楽しみだな」
碧と竜は微笑み合う――

「では、レイナさん……お願いします」
「――分かったわ」
碧は静かにレイナに近付く――
レイナは碧の左耳の真っ黒なピアスに手を伸ばす……

「じゃあ、いくわよ……」
「はいっ……!!」
そしてピアスが外れ、その瞬間、碧は黒い光に包まれ……
強化データ・ヒロが現れた。

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