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2011.11.17(Thu)

【TPP問題】アメリカの「新封じ込め政策」は成功するか(その1) 

米海兵隊、豪北部駐留へ 中国けん制
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011111702000021.html

オバマ米大統領は十六日、就任後初めてオーストラリアを訪問し、首都キャンベラでギラード首相と会談した。両首脳は会談後の共同記者会見で、オーストラリア北部に米海兵隊を駐留させる方針を発表した。将来的に二千五百人規模にまで拡大させる。最前線で戦闘任務を受け持つ海兵隊を置くことで、南シナ海で海洋権益拡大を狙う中国をけん制する狙いがある。

 米豪両政府によると、来年半ばをめどに二百~二百五十人の海兵隊員を配置し、段階的に増強していく方針。両国空軍の軍事交流も増やす。米国独自の基地は建設せず、オーストラリアの軍事施設を利用する。

 オバマ氏は会見で「われわれは平和的な中国の台頭を歓迎する」と述べた上で「大国には責任も伴う」と強調、南シナ海で周辺国と摩擦を引き起こしている中国に問題解決への努力を促した。

 米国防総省によると、オーストラリア国内の米兵駐留規模は六月末時点で約百八十人。海兵隊はうち二十五人で、本格的駐留は初めてとなる。どこからオーストラリアに展開するかは不明。日本には現在、約一万七千人の海兵隊が駐留している。

 ローズ米大統領副補佐官は十六日、海兵隊のオーストラリア駐留について「日本や他の北東アジアの米軍(の役割)に取って代わるものではない」と述べ、在沖縄海兵隊の移転計画などには影響しないと説明した。

 今年は米豪とニュージーランドの相互安全保障条約(アンザス条約)締結六十周年。両首脳は安全保障面での協力促進を確認したほか、環太平洋連携協定(TPP)を含む通商課題なども話し合った。


この話を聞いて、このブログが最近頻繁に取り上げているTPPに思い当たった人は、なかなか勘が鋭い人だと言えるでしょう。

TPPで、まだ交渉に参加していない(←ここ重要、勘違いしないように!)日本を除いた参加9カ国を見ていると、あることに気が付きます。

2011年11月13日にTPPに大枠合意した9カ国

アメリカ、ペルー、チリ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド


フォントを変えた国の共通点に気づくでしょうか。そうですね。この7カ国は、いずれも太平洋の西側(西太平洋)の国々であるということです。

そうなると、TPPという奇怪なネーミングにも納得が行きます。TPPはTrans-Pacific Partnershipという言葉の略称ですが、Transというのは、transit(乗り換え)やtransfer(移行)、translate(翻訳)といった言葉が表すように、「ある方向から反対側の方向へと渡っていく動き」を表しています。つまり、TPPの本質とは、アメリカが西太平洋に支配力を投射することにあるのです。

しかし、オーストラリアとはANZUS、日本とは日米安保があるにもかかわらず、なぜTPPや、冒頭のような海兵隊駐留という動きが出てくるのかというと、アメリカの支配力が劣化し、その分中国の存在感が大きくなっているからです。

そのような現象を、よく表現した記事があります。1年前のものですが、状況は変化していない(それどころか、より症状が悪化している)と思えるので、取り上げてみます。

中国海軍増強があおる東アジア軍拡(ニューズウィーク誌より)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2010/08/post-1506.php

 東アジアはこの夏、不快な瀬戸際政策の嵐に見舞われている。中国は近年、交易ルートの確保を目指して海軍力を強化してきた。最近は近隣諸国も対抗して軍備を増強しており、中国封じ込めの動きが新たな段階に突入しつつある。

 争いの主な舞台は南シナ海だ。中国、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムが資源の豊富な島々の領有権を主張。なかでも中国は一歩も譲らない構えだ。

 7月にベトナムの首都ハノイで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラムの閣僚会議で、クリントン米国務長官は中国の艦艇による外国船の航行妨害を批判、領有権問題の平和的な解決はアメリカの「国益」だと述べ、各国首脳を喜ばせた。これに対し中国の楊(ヤン)外相は、クリントン発言を中国への「攻撃」と決め付け、この問題を多国間で協議する案に猛反発した。

 折しも、日本海では米韓合同軍事演習が始まっていた。演習には、韓国哨戒艦沈没事件を受けて北朝鮮に米韓の結束を見せつける狙いがあった。だが艦艇20隻、航空機200機、兵力8000人が参加した過去最大規模の演習にいら立ったのは、中国だった。

 とはいえ、気分を害したのはお互いさまだ。中国は今年になって軍事演習を強化。4月には、中国海軍の艦艇10隻(うち潜水艦2隻)が日本のごく近海を無遠慮に通過したと日本当局は主張している。

■アメリカの影響力低下の現実

 この好戦的な態度に、「平和的台頭を主張する中国の真意をアジア太平洋諸国は疑わざる得ない」と、新米安全保障研究センターのエイブ・デンマークは言う。

 東アジアは海軍増強競争の真っただ中にある。日本は36年ぶりに海上自衛隊の潜水艦を増やす方針を固めた。シンガポール、インドネシア、オーストラリアも新たな艦艇を購入している。中国との「友好の年」を祝っているベトナムでさえ、キロ級潜水艦をロシアから購入。中国がインド洋に侵入することを警戒するインドとの防衛協力を強化しつつある。

 一方、アメリカはアジアの安定を保つ役割と「自国の影響力低下という現実」の折り合いをつける必要があると、アジア協会のチャールズ・アームストロングは言う。中国の周辺諸国も米軍の限界に気付き、遅まきながら「自己主張」を始めたということだろう。



中国の国防費(防衛白書より、脚注など一部省略)
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2010/2010/html/m1232300.html

 中国は、2010年度の国防予算を約5,191億元と発表した。発表された予算額を昨年度の当初予算額と比較すると、約9.8%の伸びとなり、これまでの水準は下回るものの、依然として高い伸び率を維持しており、中国の公表国防費は、引き続き速いペースで増加している。公表国防費の名目上の規模は、過去5年間で2倍以上、過去20年間で約18倍の規模となっている。中国は、国防と経済の関係について、「2008年中国の国防」において、「経済建設と国防建設を協調的に発展させる方針を堅持する」と説明し、国防建設を経済建設と並ぶ重要課題と位置付けている。このため、中国は経済建設に支障のない範囲で国防力の向上のための資源投入を継続していくものと考えられる。

 また、中国が国防費として公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられていること(※)に留意する必要がある。たとえば、装備購入費や研究開発費などはすべてが公表国防費に含まれているわけではないとみられている。

 中国の国防費の伸び率

※米国防省「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」(10(同22)年8月)は、中国の国防費について、2009年度の軍事関連支出は1,500億ドル以上であると見積っている。また、同報告書は、中国の公表国防費は主要な支出区分を含んでいない、と指摘している。


>米国防省「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」(10(同22)年8月)は、中国の国防費について、2009年度の軍事関連支出は1,500億ドル以上であると見積っている。

偵察活動にすら当たらない情報の収集分析すらアメリカに依存しているという、我が国の防衛事情の寒々しさをよく表している部分です。

それはともかくとして、中国のパワーが客観的に見て増大してきているのは事実です。そのパワーの増大が形になって出てきているのが、西太平洋における中国海軍の活動です。

中国海軍艦隊、西太平洋上で演習実施へ(人民日報)
http://j.people.com.cn/94474/7406085.html

 「中国海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間の公海を通過した」との外国メディアの報道について、国防部新聞事務局は今月中下旬に西太平洋の公海で演習を実施する計画を明らかにした。同局は「年度計画内の定例訓練であり、国際法に沿っており、特定の国や目標を狙ったものではない」としている。


ここまでご覧になった方は、「なんだ、このブログは、TPPを中国包囲網かなんかのつもりで肯定しているのか?」とお思いかも知れませんが、そうではありません。客観的に、報道記事を並べているだけです。

もっとも、ここで終わると、単なる中国脅威論を煽るネット右翼ブログと大差がなくなってしまうでしょう。そこで、次回は地政学の観点から、アメリカのこれまでの動きの背景や、今後の西太平洋地域における展望について書いてみたいと思います。

(次回に続く)

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