このご時世に正規雇用を増やす企業もあるという話
私鉄総連秋闘:非正規労働者の正社員化、大手12社前向き
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071129dde001020004000c.html
--------以下引用--------
私鉄の労組などで作る私鉄総連(約230単組加盟)の秋季闘争で、労組の産業別組織としては初めて要求した非正規労働者の正社員化について、28日までの交渉で大手14社のうち12社が前向きな回答をしていたことが分かった。全労働者の3人に1人、私鉄総連でも6人に1人は非正規労働者という状況での経営側の判断は、産業界に大きな影響を与えそうだ。
経営側が労組の要求に応えた背景には、少子化で進む労働力不足へ対応するとの狙いがあると見られる。私鉄総連は、秋闘で3年間継続して就労した非正規労働者を正社員とすることを求める方針を掲げていた。総連などによると、06年の鉄道・バス各社の正社員は約10万人で、非正規労働者は約2万人。運転士や車掌以外で非正規労働者を採用している。
大手では、東急電鉄(東京都)など5社は、3年継続して就労している非正規労働者がいなかったが、正社員登用制度の創設を前向きに検討するとしたり、正社員採用のみで対応するなどとした。また、近畿日本鉄道(大阪市)や東武鉄道(東京都)など7社は、これまでに正社員登用制度の創設を決めたり、すでに実施していた。西鉄(福岡市)が交渉継続中で、小田急(東京都)は交渉を持ち越した。
準大手や中小は大手の交渉結果を参考に、今後会社側と詰めの交渉を行う。私鉄総連は「重い要求だったが、正社員への道筋をつけるという点で意義があった」と話している。
--------引用以上--------
昨今は正社員も労働強化があって大変なのですが、それでも賞与や福利厚生、有給休暇が認められる分、時期が来たらハイサヨウナラという派遣やバイトよりはるかにましだと言えます。
あとは、最低限の将来設計が描けるだけの賃金を支払うことです。
>経営側が労組の要求に応えた背景には、少子化で進む労働力不足へ
>対応するとの狙いがある
これが「日本経済団体連合会」という頭のおかしい連中になると、「じゃあ、外国人でも良いじゃん!」とか言い出すわけですが(証拠は●こちら)、さすがに鉄道関係がそれではまずいと判断したのでしょう。
鉄道だけではありません。外国人労働者導入は社会全体にとって最悪の方策なのです。大企業、特に輸出依存企業は「人件費を抑制して国際競争力を確保できる」などとお得意の与太話を始めるのでしょうが、外国人労働者を受け入れるための枠組み作り、家族や子供への世話、失業者となった場合の社会福祉や、犯罪や社会不安のリスク、こういったものは全て公的機関がカバーすることになります。国民の税金(もちろん経団連が税率を上げろと要求している消費税も含めて)がそのために使われることになるのです。
当たり前ですが、実際に外国人(低所得者層がほとんど)と接するのは庶民であるわけで、そこで文化的軋轢を経験することになります。都会の豪華マンションや大邸宅にお住まいのグローバリスト企業のお偉いさんたちは、そういうことに苦しみません。
面倒ごとを全て行政や一般国民に丸投げし、てめえらだけは低賃金の奴隷を確保できてウハウハのグローバリスト企業こそ、まさに非国民と呼ぶべき存在です。
こういうことを解決するには、外国からの就労者(研修生や留学生バイトも含む)を雇っている企業に対して法人税率を引き上げるべきです。その代わりに、私鉄各社のように、正社員化に熱心に取り組んでいる企業や、労働分配率の高い企業には法人税を優遇するのです。そうすれば、不法就労者外国人犯罪者が減るので、全体として税負担が減ります。
左翼政党である共産党は、支持者にコスモポリタン気取りの人々がたくさんいるので(社民党に比べれば少なそうだが)、こういう主張はできないでしょう。そういう時こそ、維新政党新風みたいな右翼政党が、このような経済政策を打ち出すべきなのです。
もっとも、この●新風の経済政策は相変わらず十年一日のごとき主張をしているだけですね。「わが国の経済は輸出貿易によつて成り立ち、将来においてもそれは不変」などと言っている時点で、トヨタやスズキのようなグローバリスト企業に塩を送っているようなものです。なぜ、日本は貿易依存率が2割程度しかない「内需立国」だと主張しないのでしょうか。
そういう台詞のあとに、あわてて「今日問題になつてゐる外国人労働者の大半は不法滞在者であり、わが国に居住することにより様々な犯罪や治安の乱れ、文化摩擦を生じ、社会秩序を乱してゐる。よつて、外国人の不法滞在労働者の摘発は強化されなければならない」などと言ってみても、全く説得力がありません。ご都合主義も良いところです。ただただ一部の人間にとって耳障りのいい国家主義的主張をわめく「大アジア主義」政党だと思われても仕方がありません。まあ、実際そういう政党なのかもしれませんが。
年金も地方と東京の格差も全てうっちゃって、北朝鮮くらい自力でたたける国になれなんてわめいても、圧倒的大多数の有権者から馬鹿にされるだけですよ。
少なくとも、不安定な非正規雇用が減って、正規雇用が増えれば、購買力が減ることはありません。現実的には、まずは私鉄各社のような内需に貢献する企業を優遇するところから始めるべきでしょう。そうすれば、グローバリスト企業が我欲オンリーの異常者集団だということが鮮明になってきます。
体制よりの連中が打ち出してくる●こういう「おためごかし」でお茶を濁していてはいけません。
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輸出依存企業に依存するという不幸
自動車産業の北部九州シフト進む、アジア市場への近さ武器に
http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/ke_07112401.htm
--------以下引用--------
福岡県を中心とする北部九州が、中部地区に次ぐ第二の自動車産業の集積地として注目を集めている。日産自動車は23日に九州工場で北米向けスポーツ用多目的車(SUV)の新型モデルの本格生産に入り、トヨタ自動車、ダイハツ工業も、九州で生産設備の増強を進めている。
成長が続くアジア市場が近く、部品メーカーの進出が急速に進んできたことが要因だが、現状では、北米向けの輸出が多く、円高や北米市場の成長鈍化など懸念材料も抱えている。
□高まる存在感
北米向けのSUV「ムラーノ」の新型モデルの本格生産が始まった福岡県苅田町の日産自動車九州工場を訪れたカルロス・ゴーン社長は、「九州工場は、すべての日産工場の中でも中核をなす」と重要性を強調した。
九州工場は、ムラーノを含めて、今後、4か月間で四つの新型車の本格生産を始める。現在の年間生産台数は53万台で国内工場としては最大だが、09年には子会社の日産車体の工場も完成し、生産台数は65万台に増える。
□増強続く
北部九州では92年に稼働したトヨタ自動車九州の工場も05年にレクサス車専用の第2ラインを増設したばかりで、電気モーターにエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムの新工場も08年夏に稼働する。04年末に稼働したダイハツのダイハツ九州(旧ダイハツ車体)の工場も、来月に第2工場が稼働し、生産台数は約2倍の46万台に増える。
□北米依存
ただ、北米市場が好調だったため、日産の九州工場の生産台数の約7割は北米など輸出向けで、レクサスが中心のトヨタ自動車九州も41万台の年間生産のうち大半が北米向け輸出に依存している。円高がさらに進んだり、米低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題の影響で、北米市場が落ち込む懸念もあり、アジアなど新興国市場向けとバランスをどう取るかが課題だ。
--------引用以上--------
九州はユーラシア大陸に近いので、そこで生産をした方が効率的である・・・まあ、普通の学校の先生やら、経済学の教授やらが取り上げるならそこでおしまいでしょう。
しかし、このブログはそういう底の浅い見方ではとどまりません。
>日産自動車
>トヨタ自動車
この2社は、グローバリスト(定義は●こちらで)の代表格である「輸出依存企業」です。
日本は加工貿易国で、こういった国々が世界に向けてメイドインジャパンを輸出することで日本は豊かでいられる・・・まあ、学校の教科書なんかをみるとそんな感じで書いてあることと思います。しかし、私はそういう見方をしません。
このような輸出依存企業がその活動を拡大することに、私は明確に反対です。なぜなら、輸出依存企業が利益を追求すればするほど一般国民の生活が危険にさらされるからです。
現在輸出依存企業が熱心に提唱している政策を見てみるだけでも、それがすぐにわかります。関連するリンク先の「晴耕雨読」様の記事を紹介いたします。
「消費税16%をめざす日本経団連会長の破廉恥さ:消費税「輸出戻し税」制度」
http://sun.ap.teacup.com/souun/1254.html
「それじゃあ、「国庫金からの盗み」を政官財が結託してやっていることになる」
http://sun.ap.teacup.com/souun/1255.html
「【国家犯罪にも等しい消費税還付制度】 「輸出戻し税」という還付は誰が受けるべきものか」
http://sun.ap.teacup.com/souun/1256.html
「輸出戻し税」というのは、輸出相手国に消費税分を転嫁するとまずい、ということで、輸出元の企業は、当該製品の消費税分を国から還付してもらうことができるようになっている仕組みです(詳細は●こちらのリンクで)。
晴耕雨読様の記事に、わかりやすい例があるので掲げておきます。
[取引の流れと消費税]
材料納入業者→部品納入業者→最終販売業者という取引の流れで、
材料納入業者:販売価格 20万円
部品納入業者:販売価格 50万円
最終販売業者:販売価格120万円
という取引内容があったとする。
国庫に入るべき消費税額は、120万円×5%の6万円である。
現実の制度趣旨に基づくその納付分担は、
材料納入業者:1万円
部品納入業者:1万5千円
最終販売業者:3万5千円
である。
【現行の輸出戻し税】
上記と同じ流れであっても、最終販売が輸出であれば、
消費税の納付分担は、
材料納入業者:1万円
部品納入業者:1万5千円
最終販売業者:▲2万5千円
となっている。
最終販売業者が、消費税を納付しないだけではなく、逆に、2万5千円の還付を受けている。
最終販売業者が通常支払う消費税は3万5千円だから、差し引き6万円の“節税”になったことになる。
注目すべきなのは、輸出企業が消費税を払うことすらせず、逆に材料と部品の価格に含まれている消費税分を政府から頂いていることです。なんか、おかしくないでしょうか。
輸出企業は節税どころか、実質的な補助金を手に入れているわけです。政府は、国内企業が納入した消費税を輸出企業に回すだけですから、自分自身は痛んでいません。痛んでいるのは消費税を負担している我々です。
つまり、本来我々が負担し、国庫にはいることで社会保障などに使われるはずの消費税が、こうして輸出企業に流れているのです。トヨタ自動車など、1844億円もの戻し税(2005年度)を得ています。トヨタ自動車単体でこの年度に8562億3100万円の利益を得ているのですが、そのうちの2割前後を政府からの還付金でまかなっているのです。これがいかに「おいしい」制度かは簡単にわかるでしょう。
要するに、国内向けに売るよりお得だから、ガンガン輸出した方がいいよ、ということを、政府が暗黙のうちに認めているようなものです。どうりで、新車の販売台数が1985年の水準すら割り込んでも、自動車会社に焦燥感が見られないわけです。
仮に、このような輸出戻し税がなくても、トヨタや日産にとって消費税導入はメリットがあります。それは、デフレによる賃金圧縮が伴うため、国際競争力が高まることです。
当たり前ですが、消費税の税率がアップすると、ものが買いにくくなります。そうなると、企業の売り上げ低下→従業員の給料ダウン→購買力が低下し、さらにものが売れなくなるという経過をたどるのは、小学生でもわかる理屈です。
ところが、輸出企業は外国相手に利益を上げ続けているので、国内の購買力が低下してもそれほど影響を受けません。それどころか、「国内消費の低迷」という格好の理由をつけて、人件費を切り詰めることさえできます。「他の業種が下げているのに、自動車産業だけ下げないのはおかしい」とか、理屈はいくらでもつけられますし、そういうことをしても「国際競争力の強化」という魔法の呪文で、マスコミや識者が守ってくれるでしょう。
トヨタや日産というのは、関連企業や取引先も多く、地域の経済に与える影響が少なからずあると思うのですが、そんなことは関係ありません。自分の企業が利益を出しさえすればいいのです。今の経済の仕組みでは、誰もそのような姿勢を咎めることはできません。
それでも、外国から利益を持ってきてくれるのだから良いじゃないか、という考え方をする人もいるでしょう。
私は、そのような立場に反対です。理由は二つあります。
まず、「外国から持ってきた利益」というのが、日本の社会に全然還元されていないという点です。
たとえば、過去10年で企業の経常利益は15.1兆円(97年)から32.8兆円(06年)と、約2倍の伸びを見せています。しかし、法人税や事業税の合計は12.1兆円から13.7兆円になっただけです。法人税率が引き下げられているなど、税制上の優遇措置が図られているからです。
このような措置は企業が外国に逃げていかないためだ、などともっともらしいことが言われたりしますが、そんなのは嘘です。●海外事業活動基本調査によると、外国進出の理由の多くは「現地での事業展開」や「労働コスト」であり、税金は大きな理由になっていません。この傾向は、1990年代後半からずっと変わっていません。
企業の納める税金の割合が1997年と同じ水準であれば、税収もずいぶんアップし、その分を所得税の恒久減税などに当てることができたのではないかと、容易に推論が可能です。
輸出企業が貢献しているのは、賃金の水準はさておき、輸出に利用している生産施設で人を雇っていること「だけ」です。
もう一つ理由があります。こちらの方がより重大です。
それは、「輸出依存は国家間の相互依存の強化につながる」ということです。
ごくごく簡単にいってしまえば、自分の食い扶持を外国に依存するということです。当たり前ですが、日本と外国では政府が違います。外国がどうなるかについて、日本政府は責任を持つことができません。つまり、輸出を拡大すれば、相手国の行く末に自国の利益が左右される割合が高まるのです。
もし、これを防ごうと思えば、どのような手段があるのか・・・簡単ですね。相手国をなんらかの形で支配するしかありません。戦前の日本は、これを中国相手にやろうとして、傀儡政府(満州国、南京政府、冀東防共自治政府など)を作ったり、中国人相手に戦争をしかけたりしました。
輸出に依存すると、そういう事態に陥ってしまう危険があるということです。
よく言われる●国際分業論(比較優位)などというのは、平時のみ、しかも相手国が自国に対して害を加える意図が全くない場合にしか成立しない虚妄です。これを唱えたのがリカードというオランダ生まれのユダヤ人で、彼がサンプルとしてあげているのが「イギリスとポルトガル」という、支配従属関係にある国家間の取引だというところからも、胡散臭さが満点なのです。
日本の場合、この国際分業が成り立っていたように感じていたのは、安保条約で日本を支配下に置いているアメリカが主な輸出先だったからです。今はともかく、米中国交回復以前のアメリカは、日本の集中豪雨的な輸出に対しても寛容でした。
上の引用記事でも、やはり自動車の輸出先トップは北米(=アメリカ)になっているではありませんか。これもこれで、やはり危険ではあるのです。アメリカが、日本をいつまでもかわいがってくれるという保障など誰もできません。
言いっぱなしではなんなので、貿易、というか、国民経済のあるべき姿というのを最後に述べておきましょう。
まず、経済というのは、基本的に国内で循環させるべきです。
理由は簡単で、そうすれば国内にあまねく貨幣が行き渡るし、何か問題が起こっても国内問題として対処できるからです。たとえば最近、光化学スモッグが増加しているようです。どうやら、●お隣の「あの国」から原因物質が飛来しているようですが、日本政府は基本的に何も出来ません。「なんとかしてください」といっても、実際に規制するのは当該国の政府です。
ひどい場合、その国で光化学スモッグの原因物質を出しているのが日本の資本で作られた企業だったりするのです。つまり、海外進出企業というのは、無法地帯に逃げ込んでいるという見方もできるわけです。戦前、大陸に進出した企業も、きっと同じようなことを考えていたのでしょう。
そういう、自分たちの首を絞めるような真似をさせないためにも、経済は内需中心で回していくべきなのです。
そして、輸出するのは、国内の生産-消費のサイクルから出てきた余り物に限定するべきです。
企業が自主的にそんなことをやるわけがありません。そういうのを考えるのは政府の役割です。企業は「営利団体」ですから、自己の利益のためにしか動かない以上、国民全体の利益を考えるというのは、政府にしかできません(何でもミンエーカしろと叫ぶ馬鹿は、こういう点を意図的に見逃している)。
経団連や外資の言い分をそのまま政策に反映させている自民党や、それにくっついて(というか実質支配して)おこぼれをもらっている公明党に、そのような役割が全く果たせていないのは言うまでもありません。
具体的に言えば、まず、輸出を奨励するような「輸出戻し税」はやめさせることです。政府と輸出企業がグルになった詐欺行為です。消費税を17%に引き上げなければ・・・という政府税調の見解も、全てこの点を覆い隠すためのプロパガンダだと思って構わないでしょう。できることなら、デフレ圧力をなくすために、消費税は税率引き下げ、もしくは廃止をしたいところです。
その分は、2001年から2006年で4倍にも増えたという株主配当利益に対して課税を強化すべきです。もっとも、それだけでは投資意欲(笑)が湧かないというわがままなお金持ちのために、労働分配率(給料や福利厚生費の割合)を高めた企業は税制を優遇するのです。つまり、従業員を経済面で幸福にした会社にはご褒美をあげるのです。これに賛成しない国民はいないでしょう。
こんなのは、政治家がその気になればすぐにできます。それができないのは、企業が従業員(というか国民)にもっと分配すべきだという意見を、マスコミが完全に無視しているからです。
まあ、マスコミというのは成り立ちからして単なる営利企業ですから、そういう「真実の啓蒙流布」など期待しても仕方がありません。できるところから声を上げていくしかないでしょう。
さらに、それらの政策を進めやすくするために、自分のことばっかり考えている企業が逃げ込む先である中国を攻撃する必要があります。勘違いしないでくださいよ。別にミサイルを撃てとか、自衛隊を上海に上陸させろとか、そういう話ではありません。
要するに、中国はどうしようもない国であるという実態を、国民に知らせてあげればいいのです。別に政府が発表しなくてもいいのです。「中国産食品の危険性」と「中国人犯罪者の実数」をきちんと発表して、ニュースに取り上げさせれば十分でしょう。警察24時間みたいな宣伝番組で、中国人犯罪者を毎回必ず入れるというのもいいですね。そういう意味では、最近始まった指紋押捺の義務化は非常にいい傾向です。渡航してきた犯罪者が多い国に対しては、ビザの発給を強化するという方向に進めばなおいいです。
こういう政策の邪魔になっているのは、国土交通省にいる公明党の大臣です。私は、公明党というのは、自民党の集票装置というだけでなく、自民党が中国との一体化政策を進めるためのおとり役なのではないかと思っています。つまり、「ホシュ政党である僕たちは本当は嫌なんだけど、公明党に言われてしょうがなくやってるんだよねー」というポーズを取るためのヒール役が公明党であり、国土交通大臣の冬柴鉄郎なのです。
そういう点では、●民主党議員が公明党の支持団体について突っ込んだ質問をした点は、面白いところです。間接的に、自民党のグローバリスト路線を攻撃しているという見方もできます。現実的に考えて、こういうところを突っついていくしか、今の政府を揺さぶる方法はないでしょう。
なんか、経済関係の記事だと思って書いているうちに、「自エンド」の記事になってしまいましたね(笑)。
まあ、言いたいことは、工場がどこに出来ようが、他人様に自己の生存手段を依存するようなことがあってはいけないということです。経済関係のニュースを見る時は、その点だけは絶対に忘れないでください。
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【PR】生活破壊を許すな~郵政民営化見直しを
テーマ : 政治・経済・時事問題 - ジャンル : 政治・経済
「日々是勉強」の歴史(笑)
「加ト吉」についての報道から見えてくるもの
さて、ブログという情報発信媒体は、非常に画期的であるという反面、ある弱点を持っています。それは、「元になる一次情報を取ってくることが出来ない」という点です。
つまり、マスコミをああだこうだ批判してはいても、結局世界のどこかでニュースになるようなことが起こった場合、それを拾ってくる仕事を、通信社とか大手マスメディアに依存しなければならないということです。
しかし、それでもある視点からバラバラになっている出来事を拾い集めると、世の中の実相が見えてくることがあります。そういう視点を提供するのがこのブログの役割なのではないか、と思ったりもしています。
前置きが長くなりましたが、今回はある企業にまつわるニュースを複数取り上げます。そこから、どんなことがわかってくるでしょうか。一緒に考えてみましょう。
JTと日清食品が共同で加ト吉買収へ…冷凍食品強化狙い
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200711210004a.nwc
--------以下引用--------
日本たばこ産業(JT)が即席めん最大手の日清食品と共同で、冷凍食品大手の加ト吉を買収する方向で最終調整していることが20日、分かった。JTがTOB(株式公開買い付け)で加ト吉の全株式を取得した上で日清に49%を譲渡する方針。加ト吉は上場廃止となり、JTが51%を保有し経営権を握る。月内にも合意する見通し。
冷凍食品事業を強化したいJTと日清に対し、加ト吉は不正取引の発覚で業績が悪化し創業家が経営から退き、抜本的な立て直しを迫られており、3社の思惑が一致した。少子高齢化による市場パイの縮小に加え、巨大流通企業の“価格支配力”が強まるなか、相次ぐ「食」をめぐるM&A(企業の合併・買収)が、一段と加速しそうだ。
JTは、2000年に加ト吉に5%を出資し、資本・業務提携している。今年6月に金森哲治氏を取締役に派遣し、加ト吉創業者の加藤義和氏の社長退任を受け、後任に昇格している。JTは国内たばこ市場が縮小するなか、M&Aなどを活用し食品事業や医薬事業のほか、海外のたばこ事業の強化を急いでいる。加ト吉を傘下に収めることで、課題の食品事業の競争力を高めることができると判断した。
日清食品は、昨年、明星食品を傘下に収め、即席めんでは国内シェア5割を超えているが、少子高齢化で市場規模が頭打ち傾向にある。これに対し、冷凍食品市場は数少ない食品分野の成長市場と期待されている。このため、水産関係を中心とした冷凍食品に強みを持つ加ト吉に出資し、ノウハウを吸収することなどで事業拡大を図ることにしたとみられる。加ト吉は伝票上で売買を繰り返す循環取引問題の発覚に加え、食品業界で相次ぐ食品偽装問題の影響も重なり、業績が悪化。08年3月期の連結売上高が前期比38%減の2145億円、経常利益も50%減に大きく落ち込む見込みだ。
--------引用以上--------
加ト吉は、香川県を本拠とする食品メーカーです。最近はやっていない(というか、筆者自身が家にテレビがない)みたいですが、「加ト吉の冷凍讃岐うどん」のCMが関東地方でも流れていたことがありました。
つまり、「地方有名企業」とでも言うべき存在です。その加ト吉を、食品業界最大手の日清食品と、元専売公社のJTが共同で買収するというのがこの話題です。
最近はやりのM&A(Merger=合併とAffiliate=買収)という風に片付ければ、まあその辺の大学生やサラリーマンのその場しのぎの話題としては十分なんでしょうが、このブログではそこで終わらせません。
>不正取引の発覚で業績が悪化し創業家が経営から退き
加ト吉を巡る不正取引というのは、これです。
県警、加ト吉元常務宅など捜索-循環取引
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20071113000081
--------以下引用--------
加ト吉グループが取引企業と実態のない売買を繰り返し、不正に売上高を水増ししていた循環取引問題で、一部の取引に偽造印が使われた疑いが強いとして、香川県警捜査二課などは12日、有印私文書偽造容疑で、取引に関与した加ト吉の元常務(68)宅、宇多津町の貿易会社など5道府県の関係先約20カ所を家宅捜索した。合わせて観音寺署に捜査本部を設置、これから押収資料の精査などを進め、取引の全容解明に向けた捜査を本格化させる。
調べでは、容疑者は不詳。2006年8月から11月までの間、加ト吉の子会社「加ト吉水産」が大阪市の中堅商社「茶谷産業」から健康食品などを購入する計約38億円の取引で、偽造した加ト吉水産の代表取締役印や社印などのゴム印を使用し、契約書など計42枚に押印した疑いが持たれている。
関係者によると、加ト吉グループは01年から06年にかけ、約30社が関与する5つのルートで、健康食品などを伝票上だけで売買する循環取引などを行い、架空の売上高計1061億円を計上。このうち加ト吉水産と茶谷産業、宇多津町の貿易会社「元光」などが絡むルートで、偽造印が使用されていたという。
加ト吉が07年4月に発表した調査報告書は、一連の不正取引の多くは加ト吉の元常務と元光の社長(58)が関与したと指摘している。
茶谷産業側は取引に基づく約38億円の債権をめぐり、偽造印の使用を理由に加ト吉側に契約の無効を主張され、同年6月に支払いを求める民事訴訟を起こしている。
同課などはこの日、県内をはじめ、北海道や大阪、兵庫、福岡の5道府県にある元光の関係先を中心に捜査員約100人を派遣。予定していた一部を除き家宅捜索を行い、取引に絡む帳簿や伝票、決算書など関連資料を押収した。
今後、45人体制の「循環取引を巡る経済的不正事件捜査本部」(本部長・石川譲刑事部長)が押収資料の分析、関係者の事情聴取などの捜査を実施。関係先の倒産を招いた一連の取引の実態や主導した人物、動機などを詳しく調べる方針。
--------引用以上--------
加ト吉の名前が出てくるのは、この事件だけではありません。こんなこともあったのを覚えていますか?
北海道加ト吉、余剰分のコロッケをミートホープに横流し
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q2/537638/
--------以下引用--------
加ト吉は6月24日、子会社の北海道加ト吉が、廃棄するはずだった余剰の冷凍コロッケをミートホープに横流ししていたと発表した。農林水産省が、ミートホープが行った牛ミンチの偽装について立ち入り検査する中で明らかになった。
北海道加ト吉の社内規程では、出荷単位に満たない端数分の業務用冷凍コロッケを廃棄することになっていた。しかし同社の茨木工場長は、2002年4月から約2年間、これら余剰のコロッケを1個5―10円の単位で少なくとも3万個、最大8万個ミートホープに販売し、代金として30万―40万円を得ていた。代金は北海道加ト吉の利益に計上せず、懇親を目的として使用されたという。
北海道加ト吉は24日付けで茨木工場長を解任した。加ト吉の本社は今後、社内調査チームと外部調査委員会を通じ、北海道加ト吉の不祥事についていきさつや内容の詳細を究明するとしている。
--------引用以上--------
加ト吉の絡んだ二つの「不祥事」が、同社の信用に打撃を与えた・・・ということになりそうです。
待って下さい。そこで終わりにしないで、一個だけ考えてみましょう。日経新聞やフジサンケイビジネスアイでは絶対に出来ないことがこれです。
結局、この三つのニュースを通して見て、一番得をしたのはどこの誰だ?ということです。
もっとも妥当な答は、「日清食品」です。なぜなら、一連の不祥事(何か、どこかでさんざん言われているような感じがして嫌だが)が起こったことによって、加ト吉の業績が低迷し、この会社が得意とする冷凍食品部門の買収が簡単になったからです。
実は、「循環取引」や「コロッケの横流し」というのは、加ト吉という企業にとっては核心部分ではないのです。この企業は、麺類の冷凍事業という、全国的な競争力を持っている分野を持っているのです。しかし、そうではない、いわば枝葉の部分で出た不祥事によって、結局その事業を手放す羽目になったわけです。
さらに、こういうことも考えることができます。
ある大企業が弱点としている分野があり、それを強化したいと思いちいち開発費用を計上してこつこつ地道にその分野を補強するよりもはるかに楽な手段があるのです。それが、ある特定の分野に強みを持っている小規模な企業を買収することです。
買収される会社は、長年に渡ってその分野で競争力を培ってきたのですから、かなりのノウハウがあるはずです。さらに、営業網もそっくりそのまま受け継げればいうことがありません。
折しも、我が国の金融当局は、いざなぎ景気を超える成長だとか言いながら、いまだに公定歩合を低く抑えています。そのせいで、銀行に資金がだぶついているのです。
その代表的な行き先が国債の購入だったりするわけですが、それ以外にも企業のM&A資金として貸し付けるという方法があるのです。銀行が金を貸してくれれば、自己資本を調達できなくても大がかりな買収を仕掛けることができるのです。●ライブドアが日本放送を買収しようとした時、リーマンブラザーズに転換社債を発行したことがその典型です。
もっとも、銀行が貸さなければダメなわけですから、現実的には、銀行に対して信用がある企業、すなわち日清食品のような大企業でなければ、M&Aに向けた貸付を受けられないでしょう。
何が言いたいのかというと、こういう状況下では、必然的に起こることがあるのです。
「地方の優良企業が、次々と大企業に吸収される」
という現象がそれです。
加ト吉のように、ブランドネームもノウハウもある地方企業など、一番に標的になるでしょう。
もっとも、その会社が健全な経営を行っていれば、会社の値段(株価や純資産額)は相当高くなります。何よりその会社を応援している銀行や信用組合が抵抗するでしょう。
そこに、もし「不祥事」が起きてくれたらどうでしょうか?しかも、企業のコア・コンピタンスと関わりのない分野で・・・。
以前に「赤福」や「比内地鶏」の問題を取り上げた時も書きましたが、●公益通報者保護法という法律が出来て、企業の内部告発が激増しています。
そして、その内部告発の対象になっている企業、つまり最近「不祥事」が取りざたされている企業の多くが、地方のブランド企業だということです。
もしかしたら、そういう企業を狙って、「不祥事」が起き、それが大々的に報道されているのかもしれません。そういう風に考えてみた方が、おそらく「日本の企業も信用できない」(=中国産でも構わない)という自暴自棄に陥らずには済むでしょう。
別に、日清食品が加ト吉をはめた、などというつもりはありません。日清食品は近年の大企業にしてはまれに見る、消費者に対して誠実な企業であるという点は、私も評価しています。たとえば、日清のめん製品から殺虫剤が検出されることはほとんどありませんし、●不正を行っていたK-1選手が出るとスポンサーからも即座に撤退した点も褒め称えるべきことでしょう。
しかし、そういうことが問題ではないのです。内部告発が正当化されれば、防衛手段を持っていない中小規模の会社は、そういう攻撃から免れる方法がないということを言いたいのです。
さらに恐ろしいことは、大企業との合併によって、特定の地方の雇用が激減、もしくは消滅しかねないことです。
加ト吉も、日清食品の傘下に入ったら、香川県の生産設備がそのまま存続するかわかりません。経営合理性を考えたら、きっとその設備だけを中国に移すということになるでしょう。しばらくは人の目や地元マスコミの批判もあるのでやろうとしないでしょうが、徐々に人を入れ替えて、やがて香川から「加ト吉」が消えるということにするでしょう。香川より中国の方が人件費が安いので儲かるのです。企業として当然と言われれば、誰もそれを非難できません。
こういうことを言うと、「そういう企業が不正をやっていたのは事実だ」と、訳知り顔で言い出す人間がいます。だから、社会的制裁は当然だというわけです。以前の自民党が腐敗していたとか、日本は政官財が癒着しておかしなことがまかり通っていると言いたがる人間に、その傾向が強いようです。
しかし、このような批判者は、ある重大なミスを犯しています。それは、こういう不正が出てくるのは、地方の企業が売り上げ至上・利益至上の経営を強いられているという点を見逃していることです。
赤福のところでも言いましたが、地方の企業が「背伸び」をせざるを得ないのは、銀行の貸し付けに金利という自爆装置がつけてあるために、経営のパイを大きくして返済しなければならなくなるからだと言いました。また、中国のチープ・レイバーをテコにしたデフレ促進で、非常にきつい価格競争を強いられているのだということも述べました。
加ト吉の水増し取引を弁護するように聞こえるかもしれませんが、そうやって帳簿上の数字をかさ上げしなければ、融資している人間や株主から思わぬ突き上げを食らっていたかもしれませんし、もっと早く潰れる羽目になったかもしれないのです。
そういう企業が、不正したくてしていると決めつけていいのでしょうか。従業員やその家族の生活を考えて、仕方なくやった面もないとは言い切れないはずです。
法令を全て遵守し、適正な利益を上げ、株主も従業員も地域社会も全て笑顔が絶えない企業・・・そんな企業があったら教えてください。商法だか経営学だかの教科書の中にしかないということにすぐ気づくでしょう。
もしあったとしても、そんな「偏差値75」の企業の真似を全ての企業が出来るわけがありません。偏差値50でもなんとかやっていけるような社会の仕組みを作らなければ、やがてみんな死に絶えてしまうのですから。
何にせよ、危険な兆候です。今後、地方企業は常に「不祥事報道」に怯えながらやって行かざるを得ないでしょう。
そして、そのような風潮は、大弁護士事務所を顧問に持ち、法律を味方につけることの出来るグローバリスト企業にとっては願ってもない状況になります。低価格で、優良企業を簡単に買収できるのですから。
私なら、読売・朝日・日経(なんなら、日経だけでもいい)に金を払って、「この会社をやってくれ」と頼むかも知れません。こういう行為を明確に罰する法律は今の日本にはありません。なにしろマスコミがグルなのですから、ばれる危険はないでしょう。単体の企業としては難しくても、経団連とか経済同友会のような業界団体単位で動けば、主要マスコミを全部押さえることが可能になります。
マスコミも、まあよくここまで食品関連の不祥事を継続的に報道できるものです。「ミートホープ」が終わったと思ったら「赤福」、それが終わったらこんどは「御福餅本舗」、それが終わったら「船場吉兆」・・・ここまでくると、不祥事が出てくるというより、意図的に「出している」としか思えません。
外国からデフレ製品を輸入して利益を上げるグローバリスト、それを支援するマスコミ、キックバックを受けて法整備をする一部の官僚と政治家・・・そういう構図が浮かんでくると思うのですが、どうでしょうか。
ブログを書いている人やそれをコメントにつける人にも言いたいのですが、その程度のことも分からずに、ただ出てくるニュースを端から取り上げて愚にもつかないコメントをつけているだけでは、かえってマスコミの拡声器、大企業や与党の権力の補強道具になっているだけです。
朝鮮や中国を叩いたり、左翼を罵倒する(もちろんその逆もある)だけが社会をよくしたり、国を愛する方法だとは思えません。僭越な言いぐさですが、そういう姿勢は改めていただきたいものです。
ではどうすればいいのか・・・同じことの繰り返しになってしまいますが、やはり地方がある程度自律的な経済を営むことが出来るようにならないとダメだと思います。そのためには、「地域通貨」という道具が非常に有効だという話は、もう何度となくこのブログで紹介しています(たとえば、●この記事)。
現実的には、いきなりの導入は無理だと思います。当面は、都市と地方のいがみ合いをやめて、国内経済でいかに富を還流させていくか、地方がいかに自活手段を与えるかという点を重視すべきです。財政支出を行うのもいいでしょうし、小規模の農家でもやっていける仕組み作り(たとえば有機や無肥料農法の税制優遇)でもいいでしょう。私が首相なら、まず、大規模小売店舗法を見直しますね。
また、最近の記事でも言ったように、グローバリストがデフレを起こすためのテコの役割をしている中国との関係を切るというのも重要です。当たり前ですが、「アジアゲートウェイ構想」だとか「東アジア共同体」だとか言って中国と相互依存したくて仕方がない自民党・公明党は政権の座から蹴落とすべきです。
なんにせよ、まずはマスコミが騒ぎ立てる「不祥事」に対して冷静になることです。
そして、公益通報者保護法に見られるような、「コンプライアンス」(法令遵守)や「透明性」といった、外来の概念には十分注意することです。その概念の紹介自体が、日本にグローバリゼーションを持ち込むための誰かの策略かもしれません。
それを証拠に、アメリカの学者やアナリストは、中国に対してコンプライアンスや透明性などといった概念を突きつけて自己変革を迫ったりはしていません。外国人が口にしていたら先進的で良いことだという「鹿鳴館メンタリティ」からはさっさと卒業すべきです。
ともかくも、実際に自分が直接被害にあったわけでもない企業の名前がギャアギャア騒がれ始めたら、「へえ、そうなんだ」という位でちょうど良いと思います。余裕があったら、新聞社やテレビ局にこういう感じのメールを送りつけてもいいかも知れません。
「そんな小さいことを騒ぐより、中国産の食品に関する記事を書け!」
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【東京都】看護師足りない→フィリピン人看護師導入?
「比看護師」誕生、都が支援…合格へ日本語指導
p://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071114-OYT8T00168.htm
--------以下引用--------
東京都は来年度、フィリピンから計約100人の看護師と介護福祉士を都立病院などで受け入れる方針を固めた。
日本とフィリピンが昨年9月に締結した経済連携協定(EPA)に基づくもので、自治体が外国人看護師らの受け入れを表明するのは初めて。国家資格の取得が最大の難関とみられるが、厚生労働省は支援策を打ち出していない。個人教師の派遣など、都は国に先駆けて具体的な支援プログラムを策定し、フィリピン側にアピールしたい考えだ。
厚労省などによると、看護師は全国で4万人以上、都内でも約3000人不足している。高齢者や障害者の介護を行う介護福祉士など、介護職員も人手不足が深刻な状態で、少子高齢化がさらに進む10年後には、全国で40万~60万人が足りなくなるという。
EPAに基づく制度では、厚労省の委託を受けた国際厚生事業団が、日本での勤務を希望するフィリピン人の看護師らを、受け入れを希望する全国の病院に振り分けることになる。受け入れ数は、看護師400人、介護福祉士600人の計1000人を予定する。
この制度では、半年間の日本語研修の後、看護師は3年、介護福祉士は4年、助手として病院などで働きながら、国家試験の合格を目指す。特例のビザが発行され、資格取得後は、希望すれば永続して働けるが、期限内に合格できなければ、帰国しなければならない。このため、受け入れる側の支援体制の充実が課題となっている。
試験に出る医療関係の用語は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、膀胱(ぼうこう)、大腿部(だいたいぶ)など、日本人にとっても難解なものが多い。都では「このままでは合格者が出ない恐れがある」(福祉保健局)と判断した。資格試験用の日本語教材を英語訳したり、専門教師を派遣したりするなどの教育プログラムを策定し、入国後から受験まで手厚く支援する。
EPAは、フィリピンの国会で批准後、発効されるが、都は「発効は時間の問題」としており、今月、プログラム策定の参考にするため、都職員を現地に派遣し、現地の看護師協会などで聞き取り調査を実施した。来年度予算にも支援費用を盛り込む方針だ。
都では、都立病院など都施設で約10人を受け入れ、残る約90人は、都医師会などを通じて、民間で受け入れるよう働きかける。
経済連携協定(EPA) 工業品や農産物などの関税を削減・撤廃する貿易自由化のほか、労働力の受け入れや知的財産権の取り扱いを定める包括的な取り決め。日本はタイやフィリピンなど8か国と締結済みで、現在、別の七つの国・地域と交渉している。
--------引用以上--------
(注:以前類似のテーマでコメント欄が荒れたことがあったので、本文を十分理解していない、もしくは専ら筆者の意見を否定するためだけに書き込まれているコメントは直ちに削除し、以後アクセス禁止といたします)
いきなり主張に入る前に、「看護師」という職業の現状について見てみましょう。
>看護師は全国で4万人以上、都内でも約3000人不足している。
>高齢者や障害者の介護を行う介護福祉士など、介護職員も人手不足が
>深刻な状態で、少子高齢化がさらに進む10年後には、全国で
>40万~60万人が足りなくなる
「足りない」というのは、二つの状況が考えられます。まず「なり手が少ない」という状況、そして「就職しても定着がよくない」というものです。
●こちらのPDFによると、2007年3月の看護学校卒業生は19,340人です。このうち8割ほどの16,000人が看護師として就職したとして、3年あれば4万人の不足は補える計算になります。それほど、足りていないとは言えないようです。
そうだとすれば、就職しても定着率がよくないということが考えられます。
看護師の年間離職者数は、●こちらのニュースにあるように、年間で12,3%(2005年)です。つまり、1年経つと9人中1人が離職していることになります。
もちろん、再び看護師に就職する人もいるでしょうから、単純に言えませんが、問題は病院の規模によって離職率に大きな差が生じていることです。
先述のPDFによると、2006年12月時点での離職率は、ベッド数300床以上の病院では0.8%に過ぎないのに対して、50床未満の病院の場合1.8%になっています。
准看護師の場合は離職率が全体的に高めですが、大病院は1.6%、50床未満の病院は2.0%と、やはり小規模の病院の方が看護師が離職しやすいことがはっきり分かります。
実は、この格差は就職の時点から生じているのです。
2006年3月と2007年3月の看護学校卒業生の進路の変化を見ると、500床以上の病院に就職した卒業生は35.4%から39.2%となっており、大病院に就職している看護師が多いという現状が見えてきます。小規模の病院が経営難から閉鎖され、大規模病院がその分規模を広げているということなのでしょう。
また、進路先を経営主体で見ても、2006年の卒業生の場合、大学病院が15.5%、国公立病院が17.1%だったのに対して、2007年3月の卒業生はそれぞれ17.6%、17.9%となっています。特に、大学病院への伸びが大きいのがわかりますね。
このような格差の一番の原因になっているのは、待遇の格差です。●こちらのリンクにもあるように、多数を占める女性の看護師で見ると、勤務する病院の規模が小さくなるに従って、年収も下がるのです。事業所の規模が1,000人以上なら515万1,000円なのに対し、10~99人の場合だと425万1,000円と、80万円以上の開きがあります。
80万円あれば私立中学の授業料くらいまかなうことが出来ます。そう考えると、かなりの差です。こういうものは、努力で詰めることの出来る差ではありません。
病床数の少ない病院というのは、当然人口規模が少ない場所にあることが多いわけです。そうなると、結局看護師の離職率の格差は、東京のような大都市と地方との格差ということになりそうです。
ここで改めて表明しておこうと思いますが、私はgooブログの時期に「格差問題など存在しない」という主張をしていました。
しかし、それは大きな間違いだったと、深く反省しています。どうも、あの時期の私は、典型的なネット右翼的発想、すなわち「格差を主張するのは左翼のプロパガンダだ」という考えに染まりきっていたような気がします。コメント欄で加えられた批判に対しても、かなりの詭弁を弄していたように覚えています。(だからこそ、ネット右翼や自称保守の見苦しさは実感として分かるのですが・・・)
もちろん、同時に唱えた「中国との断交」や「林業の活性化」とい点については、今でも考えを変えてはいません。しかし、私自身が体制派を気取って、弱者の現状に目を向けようとしなかったという点については、深く反省しています。
さて、そんな医療格差の中で、なぜ比較的恵まれていると考えられている東京が、フィリピン人看護師を導入しようとしているのでしょうか。
理解する鍵は、ここです。
>日本とフィリピンが昨年9月に締結した経済連携協定(EPA)に基づくもの
・・・何か、どこかで嗅いだことのある臭いがしませんか?(笑)
次回は、さらにこの問題を掘り下げて行こうと思います。
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ダライ=ラマ猊下記者会見の意味
来日中のダライ・ラマが会見、「宗教の調和が使命」
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071117AT2M1701I17112007.html
--------以下引用--------
来日中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は17日、三重県伊勢市の皇学館大学で記者会見した。自らの活動について「異なる宗教の相互調和を図るのが使命」と強調し、今後も外国の宗教家らとの交流を続ける決意を語った。インド亡命中の立場に触れて「亡命中に死ぬ場合は、中国以外で生まれ変わりが発見され、使命を引き継ぐ」などと中国への反発をにじませた。
来年の北京五輪を前に、中国がダライ・ラマを「分裂主義者」とする批判を強めている点には「(自分は)チベットは中国に属すると言明している。批判理由が分からない」と反論。「チベット亡命政府は2001年に主席大臣を民主的に選び、政治的決定権は主席大臣に移っている」とも指摘した。
後継者の選出法にも言及。(1)選挙で高僧の中から決定する(2)自分が死ぬ前に指名する(3)自分の死後に生まれ変わりを探す――の三つの可能性があると説明した。
--------引用以上--------
中国は1950年、冷戦が始まってざわつく国際情勢の隙を突くようにして、独立国であったチベットを侵略しました。そして、現在に至るまで、不法な占領と、チベット国民に対して屈辱的な占領政策を継続しています。
たとえば、●こちらのリンクなど見ていただけると分かりますが、以下のような悪辣極まりない行動に出ています。
*中国共産主義イデオロギーに反するような意見はどんな表現であっても、逮捕の対象となる。
*中国政府は、ダライ・ラマ法王に対する忠誠心、チベット民族主義、およびあらゆる反対意見を組織的に覆い隠している。
*チベット人は、恣意的な逮捕・拘禁をされている。
*現在収監されているチベット人達は法的代理権は与えられず、また中国の訴訟手続きは国際基準を満たさないものである。
*国際の拷問等禁止条約に矛盾しているにもかかわらず、中国の刑務所や拘置所では、今でも拷問がはびこっている。
*チベット人女性は、不妊手術・避妊・中絶手続きを強要する対象にされている。
*生計困難、不十分な設備や差別的な方策のため、多くのチベット人の子供達は、適切な健康管理や就学の権利を与えられていない。
*政治的理由による投獄率が、中国支配下の他の地域に比べ、はるかに高い。
*子供でさえ、言論の自由に対する中国の抑圧から免除されることはない。18歳未満のチベット人の政治犯がおり、子供の僧尼たちは自分達の宗教施設から ことごとく放逐されている。中国は近年、チベットは非仏教地区になりつつあると宣言した。
*強制収容され、詳細な拘留理由も明らかにされることなく、失踪を余儀なくされるケースが続出している。
*パンチェン・ラマ11世は、1995年の報告以来、行方不明のままである。
*70パーセント以上のチベット人は 「チベット自治区」に住んでおり、現在、貧困線(最低限の所得水準)以下の生活をしている。
もし、中華人民共和国による併合が適法だったとしても、「民族共和」を唱える裏でこのような悪逆非道を自国内の少数民族に対して行うことが許されるはずがありません。
しかも、最近にはこんなニュースまで入っています。
ダライ・ラマ:漢民族のチベット大量移入、「人口侵略」と非難
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/11/html/d62511.html
--------以下引用--------
チベット亡命政府精神指導者のダライ・ラマ14世(72)は11月3日に、中国当局がチベットに対して「人口侵略」を行っているとし、中国共産党統治下でチベットにおけるチベット人は少数民族に追いやられていると非難した。
宗教及び平和団体は11月3日、ニューデリーにて集会を開き、チベット最高指導者ダライ・ラマ14世が10月17日、米国が市民に与える最高勲章「ゴールド・メダル」の受賞を祝った。ダライ・ラマは、今回の受賞および1989年のノーベル平和賞は共に、宗教の調和およびチベットのために奔走した努力に対するものだとした。
報道によると、ダライ・ラマは「チベットの首都ラサの人口は過去では5~6万人しかいなかったが、現在では30万人にも達している。その内の20万人が漢民族だ」と明らかにし、チベット人は、チベット言語の学習機会が奪われ、寺院も政治化とかしたことから、まさに文化絶滅だと嘆いたという。ダライ・ラマは昨年の青蔵鉄道の開通は「天然資源の剥奪」に利用されると指摘した。
ダライ・ラマは、寺院でダライ・ラマを非難するのを拒否したチベット人は、拘束される場合があることについて、「ダライ・ラマを批判することはとても愚かだ」と苦笑した。
--------引用以上--------
>チベットの首都ラサの人口は過去では5~6万人しか
>いなかったが、現在では30万人にも達している。
>その内の20万人が漢民族だ
ラサのような高原地帯で、ここまでの人口が集中しているということは、ゴミや都市周辺の開発で、相当環境が悪化しているのは間違いありません。
もちろん、人道的にも許せないのは間違いありませんが、そうでなくても我々の生活に対する現実的な驚異になりうる事例です。チベットの現状は、中国人に門戸を開くと社会がメチャクチャになるというお手本なのです。他人事と考えてはいけません。
そこで、冒頭の引用記事です。
私が面白いなと思ったのは、ここです。
>三重県伊勢市の皇学館大学で記者会見した。
伊勢市というのは、●以前の記事でも紹介しましたが、あの伊勢神宮のお膝元です。皇學館大学は、伊勢神宮が設立した神職養成学校だとお考えいただければいいでしょう。
そこで、ダライ=ラマ猊下が記者会見をされた・・・私は、ここに伊勢神宮という、神道の元締めの何らかの意志が働いていると考えています。
最近、「伊勢市」ということで、大きくニュースになったことがありませんでしたか?
そうです。「赤福」と「御福餅本家」の食品偽装問題です。
私は、●以前の記事で、地方の有名企業に食品偽装事件が起こっているのは、グローバリスト(意味は●こちらで)が地方企業を壊滅させるためにやっているのではないか、という推測を書きました。
その中でも、伊勢神宮のお膝元である伊勢市は格好の標的なのです。
伊勢神宮というのは、日本の神道の中核的存在ですから、ここが荒廃すれば日本人の精神風土も荒廃していく可能性があります。少なくとも、神道の権威はがた落ちになるでしょう。そうすれば、あとは科学的世界観をバックにして「合理的」な経済活動をするグローバリストたちの思うがままになります。
たとえば、日本人の「国産」や「日本製」に対するこだわり、「衛生」や「安全」を求める性質というのは、外国製のデフレ商品を扱っているグローバリストには邪魔でしょうがないはずです。それさえなければ、狂牛病検査をまともにやろうとしない牛肉も、安いだけが取り柄の水銀ウナギや大腸菌入り冷凍ホウレンソウも、いくらでも売れるからです。
そのためには、簡単に言えば日本人が日本人でなくなってしまえばいいのです。伊勢神宮や皇室の権威が失墜してしまえば、日本人は簡単にアノミー(無規範)状態に陥るでしょう。敗戦の時の玉音放送を耳にした時のように・・・。
だから、日経新聞が昭和天皇の声を騙った奇妙なメモを「スクープ」したり、テレビや新聞総出で赤福や御福餅を異常な情熱を込めて叩くのでしょう。マスコミはアメリカ寄りでも中国寄りでもありません。「グローバリスト寄り」なのです。
グローバリスト、たとえば筋金入りの新自由主義者にとっては、日本が憎くてたまらないでしょう。「日本人らしさなんかがあるから、日本はアメリカのような合理的で、競争力や活力のある国になることができないんだ」というわけです。
そのグローバリストたちの価値観をもっとも忠実に反映し、彼らの利益の源泉となっているのが、中華人民共和国という国です。人命も自然環境も尊重せず、面倒ごとは金で片がつき、都合の悪いことは国家権力が情報統制や隠蔽工作をしてくれる、グローバリゼーションに対抗する保守的な価値観も存在しない・・・これほどコストパフォーマンスのいい投資先はありません。中国という「ゴミ捨て場」「掃きだめ」があるからこそ、グローバリストたちは先進国(特に日本)にデフレを起こし、資産を買いたたき、体力のない中小企業を叩きつぶして寡占市場を作り上げることができるのです。
そう考えると、我々がデフレの泥沼から抜け出し、グローバリゼーションが生み出す負の側面を回避するためには、国内の各種の政策修正はもちろんのこと、グローバリストたちのテコの役割をしている中国という国を攻撃し、その力を弱めることが必要になってきます。
何も、神社に参拝したしないの低レベルな喧嘩や、武力攻撃や、暴力的なデモをやれなどとは言っていません。中国という国がいかに非道な国であり、関わり合いになるべきでない存在かを知り、彼らとの経済的・文化的な交流をギリギリまで制限することができればいいのです。
なにしろ、中国は自前の技術やノウハウ、知的遺産を何も持っていない国なのです(あれだけ人口がいて、大学生や研究者の数も多いのに、なぜかノーベル賞も世界的発明も何も生み出していない)。先進国からの投資、特に日本からの技術移転や生産拠点の移転がなければ、すぐに経済が回らなくなります。
もしかしたら、伊勢神宮はそこまで考えてダライ=ラマ猊下を招いたのではないか・・・そういう気がしてならないのです。
そうでなくても、神道の世界が中国には屈しないという意思表示をしていることは、ある種の救いです。
政権が、自民党町村派(清和会)というグローバリストの犬どもに支配されている以上、我々に出来ることは一つしかありません。グローバリゼーションで不利益をこうむる人たちが連帯し、自民党・公明党に代わって政権につく勢力に対して、彼らのエージェントになることは許さないという意思表示をし続けることです。
ダライ=ラマ猊下の伊勢市での記者会見は、そういうみんなが、ちょっとだけ勇気を与えられるニュースだったのではないかと思います。
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「日米交流強化のためのイニシアチブ」を、少し斜めに読んでみる
福田首相:日米交流強化へ人材育成 首脳会談で表明へ
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071114k0000m010161000c.html
--------以下引用--------
福田康夫首相は13日、ワシントンで16日に行うブッシュ大統領との日米首脳会談で、日米同盟の土台を担う人材を育成する「日米交流強化のためのイニシアチブ」を表明し、日米両国の人的交流を一層深化させる必要性を訴える方針を固めた。
イニシアチブは(1)知的交流(2)草の根交流(3)日本語教育--の3本柱。知的交流分野はブルッキングス、戦略国際問題研究所(CSIS)など米国の政策に強い影響力を持つ主要シンクタンクと長期にわたって連携、安全保障、経済、環境などのセミナーを開催する。
草の根交流分野は在米総領事館を中心に在日米軍OB、米日協会などを組織化するなどの交流を活発化させる。また、日本語学習ブームに着目、大学で日本語を学ぶと飛び級をしやすくするなどの施策を働きかける。
これに関連して首相は首脳会談後、シンクタンク研究員、日系人、日本語教師ら約30人との懇談を予定している。
--------引用以上--------
さて、このニュースが持つ意味です。
0点の答えを先に紹介しておきましょう。
「日米同盟の強化のための布石」
「アメリカとの関係強化によって国際政治をやりやすくする」
申し訳ありませんが、こういう答えをすぐに出してしまう人は今後の世界情勢や国際関係について論じるのはやめた方がいいです。メディアや相手国の公的発言に簡単に騙されて、ババをつかまされることは間違いないからです。
あくまで私の考えですが、外国が何かをするというのは、その国の利益になるからです。
この法則に、ほとんど例外はありません。唯一例外と言えそうなのは、不平等条約を結んでいるなど、外国が当該国に支配を受けている場合だけです。この場合でも、被支配国は支配国に害を与えられないように振る舞っているのがほとんどですから、マイナスを打ち消すという意味での利益は得ていると言えます。
こういうのは、ある意味、人間というものを徹底的に信用しないドライな視点ですが、この程度の考えも出来ない人間が国際関係だの外交だのを論じる資格はありません。希望的観測を現状認識より優先させる人間、要するに「こうあってほしい」という感情で物事を眺める人間のは、こと国際政治というものを考えるべきではないということです。
そういう点を踏まえて、今回のニュースを見ると、どんなことが見えてくるでしょうか。
思うに、何とかイニシアチブと呼ばれる措置(たとえば、●いわゆる「年次改革要望書」)をいくつか拾い上げて眺めてみると、全て日本においてアメリカもしくは米国企業が活動を拡大するための措置になっていることが分かります。
これに対して、「日本は規制が多すぎるからカイカクが必要だ」という反論をしても全く意味がありません。何とかイニシアチブによって、米国企業が日本での活動を活発化させていることは現実に起こっていることであり、これを「カイカクが必要」という価値判断で否定することはできないからです。
この、「価値判断と現状認識をごちゃまぜにする」というのは、日本の政治当局や評論家、知識人が陥ってしまう一番典型的な間違いです。みなさんも、くれぐれも注意してください。
上のような「現状認識」から、合理的に推測します。そうなると、今回の「日米交流強化のためのイニシアチブ」も、何らかの形でアメリカや米国企業にとって有利に働く措置が盛り込まれているのだということになります。
具体的に検討します。
>米国の政策に強い影響力を持つ主要シンクタンクと長期にわたって連携
米国の政策立案についての情報を提供してもらうつもりなのでしょうが、現実はそうはならないでしょう。日本にとって正しい情報を与えればアメリカが不利になるという場合、アメリカ側がそのような情報を与えるわけがないからです。
それどころか、「こうすれば日本のためになるのだ」という、誤った情報や提案を授かる可能性すらあります。そうすれば、政府の公的声明という形すら通さず、直に日本政府をコントロールできるからです。
上の二つの考えは、「アメリカはアメリカの利益を考える」という原則、というか公理に乗っ取って考えれば、全く無理はありません。
アメリカ側に100%日本にとって有益な情報を出させるには、日本側に何らかの担保が必要です。しかし、日本にはバーターに出来る情報もありません(すでにCIAが入手しているだろう)し、そのようなバーター取引をしようとする人材もいません。100%アメリカ側の善意に期待するしかないという形になっているのです。
断っておきますが、私は別に民族感情など交えてはいません。アメリカの立場に立てば当然そうなるという論理的帰結を述べているだけです。
>在米総領事館を中心に在日米軍OB、米日協会などを組織化
>するなどの交流を活発化させる。
これは、活発化させたあとの結果を考えてみるといいでしょう。こういう団体が、日本に対してロビー活動を行いやすくなるという結論が出てきます。
「日本のシンパをこういう団体の中に作り出せばいいのだ」と考えた方がいらっしゃったら、繰り返しになりますが、もう貴方は国際政治とか外交について考えるのをやめてください。米軍OBというのは退役軍人省から年金をもらっている人たちなのです。日本のために動くマリオネットになることに何の利益もありません。
私が外務省の担当者だったらこんなことをしません。軍人なら、帰化移民の軍人、それもイスラム系の元軍人だけを狙います。団体であれば米日協会ではなく、マイノリティが組織している団体(ヒスパニック、ムスリム、黒人など)との交流を深める方を選びます。
こういうやり方で次々と外国を侵略していった国があります。イギリスです。インドでは、イスラム系のムガール帝国を潰すためにヒンドゥー教徒のラージプート族を使い、分割統治に成功しました。日本に対しては、江戸幕府に薩摩長州をぶつけて倒幕に成功させました。中国に関しては、そんなことをする必要もなく、勝手にアヘンという害毒を摂取してくれましたが・・・。
マイノリティーは現状に不満を持っており、外国と提携してもマイナスがありません。だから、協力してくれる可能性が高いのです。
こういう話は、道義的に正しいかどうかとか、あの民族は好きだとか嫌いだとかいう価値判断と全く別の話です。
>日本語学習ブームに着目、大学で日本語を学ぶと飛び級を
>しやすくするなどの施策を働きかける。
日本語を学ぶ人間が多くなると、日本を好きになってくれて、アメリカが日本にとって有利な政策を選んでくれるようになる。この何とかイニシアチブを立案した人間は、そう思っているのかもしれません。そういう日本人がかなり多いからです。
こういう因果関係を頭の中で作り上げることができるというのは、ある意味幸福です。ただし、その幸福さは、日本という国の利益とは全く結びついていません。ていうか、有害です。
今の政府は「日本は財政危機だ」(国債があれほど低金利なのに)とか言っているのですから、そういう活動につかう無駄金は日本にはないはずなんじゃないでしょうか?
だいいち、日本語ブームというのも怪しいものです。向こうの当事者から伝えられたこと(たとえば、捏造したした日本語学習者数増加のデータ)を、よく調べもせずに政策に取り込んでいる可能性があります。
そうしてしまう時点で、外国との交渉や条件闘争に従事するには不適切です。
このように、何とかイニシアチブの例に漏れず、アメリカが日本をおいしく食べるための調味料だというのが正解のようです。
福田首相が訪米に当たって、このような「手みやげ」を持参した理由は何となく分かります。あまり頭のよろしくない前任者が、アメリカを差し置いて中国韓国を訪問したことを、福田はよく覚えているのでしょう。だから、まずアメリカを手みやげ持参で訪問し、飼い犬としての優秀ぶりをアピールしておきたかった・・・そんな感じでしょう。
もしかしたら、交換条件やブラフもなしに、そうやってアメリカに尽くしておけば、あとで見返りが返ってくると思っているのかもしれません。よく、親米保守やそれに近い立場の方のブログを見ると、「アメリカはロシアや中国と違って約束を守る」とかいう言葉が出てきます。
では、そういう方におききしたいのですが、日本はアメリカに具体的に何か約束をさせているのですか?
約束が破られた時、どうやって担保するのですか?
そういうことを考えない、考えようともしないのは、貴方が現状認識よりも希望的観測(アメリカは日本と同じ民主主義国家だから、中国や北朝鮮よりも丁寧に扱ってくれるはず)を優先してしまっているからです。
そんな貴方にはっきり言っておきましょう。「その程度のものの見方で、偉そうに国際関係や外交を論じるな」と。
そういう自分が嫌なら、●こちらのサイトや、●こちらのブログで国際政治を動かしている法則なり傾向をきちんと勉強すべきです。
念のため言っておきますが、「日本とアメリカはシーパワー同士だから仲良くできる」という希望的観測なんかしないように(笑)。
さて、今回の記事をまとめておきましょう。
「ある国は、その国の利益だけを考えて動く」
「そのような国に自分の要求を呑ませるには、交換条件が必要」
「外国を動かしたいなら、主流派でなくマイノリティーを狙う」
そして、何より、
「希望的観測を現状認識に優先させない」
勉強になった・・・と思っていただければ幸いです。
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森と暮らしを破壊する「バイオエタノール」を拒否しよう
バイオブーム 燃料化、CO2増の恐れ―アジアの最前線から
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200702100187.html
------------以下引用------------
インドネシア・スマトラ島はイモの一種、キャッサバの産地だ。島の南部にあるインドネシア技術評価応用庁のバイオマスエネルギー開発センターの周辺にも広大なキャッサバ畑が広がる。
キャッサバはもともと焼酎や工業用エタノールの主原料だが、センターはエタノールをバイオ燃料として自動車に活用する研究を進めている。高さ約5メートルの実験プラントの蛇口からコップに注ぎ込まれた透明の液に顔を近づけると、強烈なにおいが鼻をつく。
ある研究者は「代替燃料の研究は70年代の石油ショック直後に盛り上がったが、その後停滞していた。今回の政府の姿勢は真剣だ」と言う。
(中略)
インドネシアの首都ジャカルタでは昨年9月から、アブラヤシから採ったパーム油を、エンジンに支障の出ない5%だけ軽油に混ぜたバイオディーゼルの販売が始まった。市内のガソリンスタンドには「バイオ」をPRする看板も見える。
東南アジアのバイオ燃料導入のきっかけは、石油価格の高騰だ。経済発展が続くインドネシアは04年に石油の純輸入国に転落し、自動車燃料の値上げが続いた。植物由来のバイオ燃料を使えばその分、石油への依存度を下げられるし、二酸化炭素(CO2)の排出削減も期待できる。
(中略)
ただ、ブームの陰で、さまざまな弊害を指摘する声も強まっている。
パーム油のプランテーション開発のあおりでインドネシア、マレーシア両国などでは熱帯森林の減少が続いている。サトウキビなどをバイオ燃料にすれば食糧需要と競合するとの指摘もある。
さらに思わぬ懸念が持ち上がった。開発によってCO2がかえって増えるというのだ。
両国では、泥炭の混じる湿地帯の森林に火をつけたり、排水したりすることで栽培地を確保する開発業者が少なくない。
ところが国際NGO(非政府組織)の国際湿地保全連合(本部・オランダ)が昨年末に公表した調査報告によると、湿地を乾燥地に変えると泥炭から大量のCO2が排出されるという。パーム油1トンを生産するのに必要な土地の開発などで最大33トンのCO2が排出され、それなら石油を使ったほうがましとの試算も報告に盛り込まれた。
バイオ燃料がかえって地球温暖化を進めるという報告の波紋は大きい。オランダ環境相は、パーム油を使ったバイオディーゼルの推進政策を見直し、政府補助金の対象から外す方向で検討しているという。
年末ごとに開かれる温暖化防止の国際会議は今年、インドネシアで開かれる。同国環境省のマスネリヤルティ副大臣は「政府の指定地域に開発を限定しようとしている。泥炭地の火災を防ぐには自治体や警察との協力が必要」と話す。
------------引用以上------------
インドネシアでのバイオエタノール用作物の栽培が異様な活況を呈しているのは、以下の記事でも分かります。(注:英語です)
Indonesia: Oil palm expansion for biofuel bringing more exploitation than development
http://www.wrm.org.uy/bulletin/112/Indonesia.html
The country now has some 6 million hectares of land under oil palm and has cleared three times as much, some 18 million hectares of forests, in the name of oil palm expansion. Existing regional plans have already allotted a further 20 million hectares for oil palm plantations, mainly in Sumatra, Kalimantan, Sulawesi and West Papua, and new plans are currently under discussion to establish the world’s largest palm oil plantation of 1.8 million hectares in the heart of Borneo.
「インドネシアは現在600万ヘクタールのパームやし用地を有し、同用地の拡張という名目でその3倍に当たる1800万ヘクタールの森林を伐採してきました。今後さらに2000万ヘクタールのパームやし農園が開発される計画で、その主な場所はスマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ諸島、および西部パプア(イリアンジャヤ)が予定されています。また、180万ヘクタールという世界最大規模のパームやし農園がボルネオ(カリマンタン)島の中心部に設立されるという計画も持ち上がっています。」
パーム椰子は、バイオエタノールを作るときに大変効率がいいということで知られています。この植物は、熱帯でないと育ちません。もともとは食用油を精製する目的で作られていました。
非常に問題なのは、このパーム椰子の農園を作るために、大量の熱帯雨林が破壊されていることです。
インドネシアというのは熱帯雨林大国です。世界に存在する原生林の40%がインドネシアに存在していると言われるほどです。しかし、すでにその70%が消滅しています。以前は、紙・パルプ、熱帯木材目的の森林伐採が問題となっていたのですが、今度はそこにパーム椰子目的の森林伐採が加わってきたのです。
これだけでも十分問題なのですが、インドネシアにはもう一つ大きな問題があるのです。それが泥炭地の乾燥による二酸化炭素の増加です。
泥炭というのは、石炭になる前の段階の炭素の固まりです。インドネシアには泥炭地がたくさん存在していますが、耕地が足りなくなった近年はこのような泥炭地も開発する必要が出てきています。泥炭地は湿地なので、排水して乾燥させる必要がありますが、これによって、かなりの泥炭が分解し、大量の二酸化炭素が排出されるのです。
さらに、泥炭は燃料としても用いられてきたものなので、簡単に火がつきます。だから、インドネシアでは、大規模な山火事がしばしば発生します。十分な消防設備のないインドネシアでは、初期消火ができず、泥炭地に延焼するという結果になってしまいます。
こんなことを繰り返していたら、国土や現地住民の生活の荒廃が広がってしまいます。しかも、それが二酸化炭素を新たに排出しないということで話題(笑)のバイオエタノールによって引き起こされているのです。馬鹿馬鹿しいことこの上ありません。
口を開けばシーオーツーだのカーボンニュートラルだの馬鹿の一つ覚えのように言っている企業や役人は、目に見えるインドネシア人の生活よりも、目に見えない二酸化炭素の方が大事だと考えているようです。
環境だけでなく、経済問題もあります。食用油に用いられていたパーム油の需要が逼迫し、価格が高騰していることで、食料品全体の値段が上昇しているのです。それだけでなく、企業は原材料費が高騰した分を合理化で吸収しようとするので、人件費の削減につながり、デフレが促進されてしまいます。
物価が上昇しながらデフレになるのは、スタグフレーションといい、一般庶民にとっては最悪の状況だといえます。我が国の政府と来たら、こういう現象を指をくわえてみているだけではなく、バイオエタノールの導入を推進し始めている(たとえば●こちらのリンク)のですから、怒りを通り越して笑いすらこみ上げてきます。
どうせバイオエタノール推進派は「バイオ燃料推進が世界的な潮流」だとか「石油依存を減らす」だとかいった白々しい根拠を挙げるのでしょうが、ブラジルのようなごくごく一部の例外を除いて、ほとんどの国がガソリンに混ぜる程度のおためごかしで終わりにするのですから、石油依存は解消されるわけではありません。前者に至っては「バスに乗り遅れるな」の現代版であって、何の理由にもなっていません。
バイオエタノールを導入するのなら、あくまでエネルギーの自給と地産地消を目的にし、本気で石油依存を解消する努力をすべきです。
●以前の記事でも書きましたが、そのためには、廃材や藁くずといった「セルロース系バイオマス」からエタノールを作る、もしくは膨大な資源量を確保できる「海藻バイオエタノール」といった方法をとるべきです。
インドネシアのパーム油を輸入してバイオエタノールを作っても、森林破壊や二酸化炭素増加というマイナスがあり、しかもインドネシアという他国にエネルギー供給手段を依存することになるというリスクを負うのです。これでは、中東に石油を依存している現在と変わりません。
そして、結局日本の家庭や企業と、インドネシアのパーム椰子畑の間をつないで中間搾取を得ようとするグローバリスト(穀物メジャーやアグリビジネス企業、さらには商社)の利益になるだけなのです。しかも、「日本のせいで破壊された熱帯雨林」という汚点を残しながら・・・。
日経新聞やニュース番組が取り上げ、企業が熱心に取り組んでいるからといって、バイオエタノールに飛びついてはいけません。地球を破壊し、国民を貧しくするだけのバイオエタノールには断固としてノーを突きつけましょう!!
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商人の歴史(4)~グローバル帝国・唐の誕生
隋というのは、非常に短命な王朝です。たったの4代で、30年続きませんでした。
しかし、この王朝は、次の唐王朝への重要な橋渡しをすることになります。それが「大運河の建設」です。下記の画像をご覧下さい。
このときの大出費と国民への負担が仇になって、隋はあっけなく滅びてしまうわけですが、だからといってこの運河建設を過小評価してはいけません。
大陸の川というのは、日本の川のように、急激に上流から下流に向かって流れていきません。どういうことかというと、遡上が可能なんです。ということは、船舶を使った大量の物資の移動が可能だということです。
そして、この運河建設によって、中国は初めて南北が完全に結ばれたのです。具体的に言うと、通済渠と江南河が揚子江と黄河を結び、永済渠が天津と黄河を結びました。
こういうものができて、一番嬉しいのは誰だと思いますか?もちろん、隋の皇帝は嬉しかったと思うんですが、一番嬉しいのは大商人だと思うのです。
なぜなら、大きな商人なら、船を使って大規模な輸送ができるからです。私は●以前の記事で、「商社」が利益を出すコツは、ものが頻繁に動くこと(大量性・反復性)と、遠くからものを仕入れること(遠隔性)だという話をしましたが、そのためには有利な輸送手段が絶対に必要になります。
だから、商人の歴史というのは、輸送手段・交通手段の発達の歴史でもあるのです。おそらく、隋の皇帝が勝手に考えたと言うより、御用商人のような連中、おそらくはシルクロードで中央アジアやヨーロッパと取引していた商人が考えたのでしょう。
そういう人間たちが、メリットを訴えて権力者を動かしているのです。隋が滅んだのは、もちろん最大の敵である高句麗に対する遠征で過大な出費を強いられたという面もあるのですが、実は商人たちの「ニーズ」に応えすぎたことが原因じゃないかと考えています。
完全に余談ですが、この隋を取り巻く国際関係を見ると、非常にためになることが多いです。
当時、隋は高句麗という強敵を抱えていました。今の中国東北部から北朝鮮にかけて存在した、ツングース系の国です。この高句麗が、万里の長城の北にいる突厥(とっけつ)という遊牧民と手を組もうとしたことが、隋に高句麗遠征をさせた原因だったと言われています。
このような隋の苦しい立場を的確に見抜いていたのが、当時の日本、要するに聖徳太子です。まあ、この人も実在したかどうかわからない人なんで、あえていうなら「蘇我氏を中心とした当時の大和朝廷中枢部」とでもいうべきかもしれません。彼(ら)は、隋から優れた制度や文物を仕入れる必要性を感じていました。そのためには、朝貢、つまり奴隷契約でない形で国交を結びたかったわけです。だから、「天子」なんていう、中国の皇帝しか使えないような称号をわざと用いた国書を届けたんですね。隋は、この失礼な国書に対して、返礼の使者をよこしました。要するに、対等にやりましょうという日本の主張を認めてしまったわけです。
これは、現代の国際関係でも応用可能ですね。北朝鮮の存在する意味はそこにあるといっても過言ではありません。朝鮮人があれほど「高句麗・渤海史」を自分の歴史だといって譲らないのを、もっと利用した方がいいです。
さて、そういう無理繰りをしていた隋は、簡単に滅亡しました。しかし、これはある意味、次の唐王朝の露払いをしたのだと思えば、納得がいきます。
唐王朝は、中国の中では結構長続きした王朝です。7世紀初めに登場して、10世紀まで存続しました。
この時代の中国というのは、はっきり言って世界最強国家といっても過言ではありません。これは、単に軍事力のことを言っているのではありません。
この時代は中国が空前の豊かさを享受した時代でもあったわけです。もちろん、中国のことですから、別に庶民が豊かになったわけじゃありません。皇帝やその下にいる貴族連中が豊かだったということです。
そのことは、唐代の文化にも現れています。今でも残っている「中国文化」というのは、大半がこの時代です。李白や杜甫に代表される「唐詩」、空海も学んだと言われる「書道」、今でも通用する高い技術を誇った陶磁器の「唐三彩」、それに歴史研究(修史)や真言宗・天台宗に代表される仏教の隆盛です。遣唐使船は、このような文化を日本に伝える役割をしました。
唐が比較的簡単に全国統一を成し遂げることができたのは、隋のおかげです。隋の最後の皇帝が、李淵という北方の豪族に地位を譲り渡した、まあ禅譲というやつを行ったのもあるんですが、何より大運河が出来ていたおかげで、軍事作戦を非常に行いやすかったということがありました。
これは推測ですが、おそらく隋代に力をつけた商業資本、隋の煬帝に運河を造らせた人々が、李淵の一族の方に乗り換えたというのが本当の原因かもしれません。もともと隋も唐も「武川鎮軍閥」といって、3世紀から6世紀にかけての南北朝時代に万里の長城の内部に移り住んだ騎馬民族でした。だから、黄河以南の漢民族と違って武力はあるわけです。この連中が内部での競争を経て強大になって、隋や唐になったということです。
隋がなぜ中国を完全に統一できたのかと言えば、漢と同じで、シルクロードの起点に当たる中原といわれる地域を支配できたからです。具体的に言うと、今の陝西省です。
あ、すみません。今軽くびっくりしたんですが、私の使っている一太郎2007というワープロは、「しゃんしー」って入れて変換すると、「陝西」という漢字が出てくるんですね。そういう文字入力をするニーズが相当あるんでしょう。日本と中国の相互依存がかなり進んでいる証拠ですね。
こういう時代は、前にもありましたね。普通の人が上海を「しゃんはい」と呼び始めた時代です。ええ、第一次世界大戦後です。大陸進出のあと、ハシゴを外されて戦争へ・・・なんていう風にならないといいんですが。
戻ります。この中原という地域を支配する、もしくは支配しそうな連中に、おそらく中国の商人たちというのは積極的に支援してきたんじゃないかという気がするんです。
ここはシルクロードの拠点でもあるわけですが、同時にすぐそばにモンゴル高原があるのがおわかりでしょうか。要するに、遊牧民という危険な連中が商売の邪魔をしてくる可能性が高いわけです。だから、中国の支配者というのは、ここをきちんと守れる勢力でないといけないわけです。
隋は、この点では失格でした。高句麗という、中原と何の関係もない場所にいる敵とダラダラダラダラ3回も戦って、しかも全部負けてる(笑)。だから、大運河作りに協力した商人たちに見放されてしまったんじゃないかと勝手に考えています。
なにしろ、ローマ帝国の国庫が空になってしまうほど、中国側はシルクロード貿易で儲けていたのです。それを流通させている商人たちも、当然金を持っていたと見るべきでしょう。そして、そういう人たちが隋より唐を選んだというのが、禅譲の真相という気がしています。
唐は、中国の支配者としてはもう文句のつけようのないくらい「優秀」でした。まず、東にいる高句麗を新羅と組んで叩きつぶし、大陸に干渉してこようとする日本とその傀儡である百済を白村江の戦いで叩きのめして、新羅を子分にして朝鮮半島を安定させました。
これで、何の憂いもなくなった唐は、万里の長城の北にいる宿敵・突厥に大軍を差し向けて服属させます。これは大きいです。シルクロードの東端でちょっかいを出してくるチンピラ野郎が、もう悪さはしませんと誓うことになり、中国の商人たちは安心して貿易ができるようになったからです。
こうすると、まるで何か唐の皇帝が商人たちの使いっ走り、用心棒みたいな感じすらしてきますが、それが本当なんです。つまり、大商人というのは常に国家権力と二人三脚であり、互いに補完し合っているのです。
だから、国家権力と経済は別だという、新自由主義的な考え方というのは歴史の法則を無視した空理空論もいいところなんです。まあ、そういう連中も、国家権力を動かして自分たちが収奪しやすいキセーカンワだとかミンエーカなどという仕組みを作っているだけなんですがね・・・。
そうやって、前代未聞の繁栄の時代を迎えた中国ですが、実はここにすでに落とし穴があったのです。歴史というのは面白いもので、ある国が繁栄の絶頂にある裏で、滅亡への青写真ができあがっていることがあまりに多いのです。唐もその例外ではありませんでした。
というところで、次回に続きます。
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商人の歴史(3)~中国と国際貿易
前回は、中国の商業の歴史を見ているといろいろ分かるという話をしました。今回は、「地政学」に入れても、「経済とグローバリゼーション」のテーマに入れてもいいような中身です。しかも、尻切れトンボになっています(笑)。まあ、ペースの遅い学校の授業だと思って聞いてください。
さて、秦の始皇帝が「半両銭」という全国共通の貨幣を使ったということは前回言いました。
これは、コメントでしょうたさんがご指摘されたことと関連しますが、経済を支配しようと思ったら、貨幣の発行権を握るのが一番手っ取り早いのです。
16世紀から17世紀にかけては、スペインの銀が一世を風靡しました。新大陸、具体的に言えばボリビアのポトシ銀山でインディオを牛馬のごとく酷使して得た銀を、世界中にばらまいたのです。
ちなみに、日本もその後を追っかけるみたいな形で銀をばらまいています。今度世界遺産に登録される●「石見銀山」がその証拠です。いつかお話しようと思っていますが、そのせいで日本は叩きつぶされました。秀吉の朝鮮遠征がそれだと思っています。
18世紀から19世紀にかけては、イギリスのポンドです。日本はこれを手に入れるために、必至こいて「殖産興業」というのを行うんですね。理由は簡単で、ポンドで鉄鋼と武器を買うためです。
最近で言えばアメリカドルがこれに当たるんでしょうか。1944年のブレトン・ウッズ会議で決まった方針です。しかし、石油の高騰と、ロシアの台頭で、どうもうまく行かなくなっています。●こちらの「或る浪人の手記」さんの記事が面白いので、是非ご覧下さい。
こうやってみると、時代の主役というのは、貿易決済用の通貨の発行権を握っていた国だと言えそうです。
では、なぜ事実上の貿易決済通貨ができるのかといえば、その国がたくさん輸出入をするからです。実は、中国というのは、歴史的に見ると、長い間そういう国でした。
もちろん、今のアメリカみたいに、ドル札を刷ればどんどんものを買えるというほど自由だったわけではありません。
しかし、中国の歴史を見てみると、我々が今日当たり前だと思っている、というか、思わされているような「国際分業」だとか「相互依存」といった状態が、かなり早い時期から存在していることに気づきます。
まず、紀元前3世紀から紀元1世紀にかけて栄えた漢王朝(前漢)です。この国は、「大秦国」という国と貿易をしていたことで知られています。この大秦国というのは、実はローマ帝国のことです。中国の北部、黄河の中流域あたりから、カザフスタンやウズベキスタンを抜けてイランにいたり、ヨーロッパへ向かう交易路があったということが知られています。いわゆる「シルクロード」です。
養蚕技術は、この時代は中国の専売特許でしたから、ローマやイランではかなりの人気だったようです。ローマ帝国なんて、絹織物禁止令を出しているくらいです。なぜかというと、貿易の決済に金や銀を使っていて、貿易赤字が膨大になってしまったからというのがその理由のようです。ちなみに、中央アジアの人たちからは、絹の代わりに馬をもらっていたみたいです。
まるで、日本の自動車とアメリカドルの関係を見ているようですね。そういう問題は、実はもうこの時代から存在していた訳です。歴史を学ぶ意義はここにあります。今地球上にある問題の多くは、実は世界や日本の歴史のどこかで繰り返されていることなのです。
歴史の知識について、細かい間違いの指摘や学説の対決を、専門家がやることには意義はあります。そういうものを何十年という大きな単位で眺めると、ある一つの流れになっていくからです。最近中学校の教科書でも、江戸時代はエコロジーだったとか取り上げられるようになってきたのは、そういう成果でしょう。
しかし、史学科以外の学生や、一般の歴史好きな人がそういうことをやってしまってはいかんと思います。歴史というのは、知識を学ぶと言うよりも、そこに出てくる一定の法則を見抜いて、現在の政治や経済や生活に生かすことにあると思うのです。このシリーズというのは、そういう観点で書いています。
話を戻します。ローマ帝国側もこれではいかんと、産業スパイ(笑)を派遣して中国の養蚕技術を盗もうとしていたみたいですね。それに成功したのは、6世紀の東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスです。なんでも、キリスト教の宣教師を使ったみたいです。これ、重要ですね。戦国時代や、敗戦直後を見ていてもそうですが、キリスト教の宣教師って、スパイだと思って見ていた方がいいみたいです。公安も、日本共産党なんかより、上智大学を見張った方がいいんじゃないかと(笑)。
そのおかげで、東ローマ、今のギリシャやトルコあたりで、養蚕が一大産業になります。そのくらい、絹織物というのはいい商品だったということです。
当然、その過程で中国には貴金属や他国の商品が流れ込んでいます。しかし、面白いことに、前漢以降の中国は、ごくわずかな時期を
のぞいて分裂状態に入ります。
おそらく、これは中国が大変広い国土を持っていたことと関係があります。中央権力が何かをやろうとしても、命令が行き届かないし、すぐに自立されてしまうんです。
貨幣についても同じで、漢の時代に鋳造された五銖銭という貨幣がずっと用いられます。これは別に漢の作った貨幣が優れていたとかいうのではありません。諸国が分裂したので、貨幣を造って全国に流通できるほど強力な政権ができなかったということです。
しかし、これが隋・唐という二つの王朝の時代を境にして完全に変貌します。この時代は重要です。私は、世界の歴史で重要だったと思われる国を一つあげろ、といわれたら絶対に「唐」と答えます。そのくらい大事です。
・・・というところで、明日、絶対に記事を挙げるので、ここでいったん切らせてください。なんか、「続きはCMの後で!」みたいな感じがして嫌ですね・・・(笑)。
どうぞ、今後ともよろしくお願いします。
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商人の歴史(2)~日本と中国ではどうか
さて、●前回は、商人は御用商人として生まれてきたのではないか、という話をいたしました。今回は、それを具体的に、日本や中国で見てみましょう。
まず我が国からですが、我が国は商業というものが出てくるのは相当遅れています。
その理由はわかりませんが、理由に近いものだったら言えます。日本では「都市」というものが形成されるのが非常に遅かったということです。
都市というのは、商人の住処です。ちょっとそれは乱暴すぎる定義じゃないかと思われるでしょうが、そういってしまった方がわかりやすいと思いますし、それほど本質から外れてはいないと思います。
前回の記事で紹介した「フェニキア人」というのが典型的ですが、海外では都市住民というのは、一次産品を生産していないんですね。その代わり何をしているのかというと、都市の真ん中に住んでいる権力者の周りにいて、そのおこぼれをもらっている(笑)。たとえば、権力者の仕事の一部を代行したり、身の回りの世話をしたり、お城や屋敷の周りを警備したりしています。つまり、ごくごく原始的な形の都市の住民というのは「公務員」なんですね。もちろん、権力者が彼らを養えるのは、それだけ余剰生産物があるからです。
そうすると、そこから需要が生まれてきます。権力者の周りにいる人たちのために、サービスや物を提供する人たちも集まってくるわけです。そうやって、都市というのは成長していったのだと考えています。
日本では、そういう都市が形成されたのが、おそらく飛鳥時代くらいですね。それ以前にも九州北部あたりにあったのかもしれませんが、記録がありません。都市とおぼしき遺跡もありませんから、おそらく農村に権力者が直接居着くという形で来たのでしょう。
しかし、飛鳥時代になると、中央集権化を目指すという近畿地方の勢力の方針もあって、権力者の周りに公務員が集まってきます。これも推測になってしまうんですが、おそらく渡来人の影響だと思うんですね。農村にバラバラに豪族が住んでいるより、真ん中に集めた方が効率がいいよということを、当時の天皇家、近畿地方の大権力者にアドバイスしたんじゃないでしょうか。あるいは、そういう渡来人系の人間が直接権力者になり、大陸式のやり方で国を作り始めたのが飛鳥時代だったのかもしれません。
このへんは、その前の古墳時代の史料があまり残っていなかったり、古事記・日本書紀に依拠しているところが大きいので、なかなか正確なことがわかりません。皇室の出自とも結びついている問題なので、触れたがらないのかもしれません。私は、飛鳥地方の王朝というのは、渡来人が大きく関わっている気がしますね。
で、そのとき人を集めるために使われたお題目が「仏教」だったのだと。当時の仏教は平地に寺があります。日本で山寺が建設されるようになるのは、密教を最澄・空海が持って帰ってきてからです。つまり、当時の仏教はある中心を作ってそこに人を集める名目としては非常に有力だったわけです。
だから、仏教推進派の蘇我氏は渡来人で、中国にならって中央集権を進めようとしたんじゃないかと睨んでいるのです。まあ、もうこうなってくると妄想に近くなってきますが(笑)。でも、そう考えると何もかもすっきりするんですよね。
そういうわけで、飛鳥時代に仏教をテコにして都市が形成され始めます。完全にそれが定着するのは、「大津京」です。私は高校で日本史をやっていなかったのでこんな言い方をしてしまいますが、用語としては「近江大津宮」というのが正しいようです。いわゆる計画都市で、中国式の大都市でした。
これが何で出来たのか、日本書紀にも書いていないんでよくわからないんですが、やはり渡来人の影響だと思います。大津宮遷都の前に、「白村江の戦い」という対外戦争があり、そこで朝鮮半島の日本権益は全て新羅に奪われることになります。新羅に滅亡させられた百済の遺臣たちが、みんなそろって日本に逃げ込んできて、天智天皇を動かしたのかもしれません。
余談ですが、天智天皇というのは、白村江の戦いにしても、お母さんの斉明天皇が急死したにもかかわらず外国遠征を決行した人です。それプラス大津宮が渡来人の発案だったとすると、ずいぶん外国人の言いように利用されている人だということになりそうです。
このあとまた都が飛鳥に移ったり、京都府南部に行ったりと、いろいろありますが、そういう飛鳥時代の末期に「富本銭」と「和同開珎」という二つの貨幣が造られているのは非常に注目に値します。つまり、単なる物々交換や権力者からの分配を超えた経済がここで成立し始めたということです。「富本銭」は出土も少なく、厭勝銭、つまり「おまじない」用のお金の可能性があると言われているんですが、和同開珎については間違いなく交換機能を持った貨幣と言えます。
こういうものはもちろん、都の遺跡で発見されていますが、注目すべきなのは和同開珎が渤海王朝の遺跡でも発見されているということです。当時の技術からすると、銅は相当数が少なく、貴金属みたいなものだったので、外国との取引でも使われていたのでしょう。
そして、こういう貨幣を用いて物をやりとりしていたのは、おそらく権力者のそばにいる御用商人だったと推測できます。和同開珎なら、和銅(不純物の少ない銅鉱石)の鉱脈が今の秩父市で見つかったのを記念して年号を「和同」にしたという経緯があります。そういう感じですから、発行したのも権力者、すなわち朝廷で、それを使って物を買いつける役割を果たした人たちがいたはずなんですね。
貨幣がないと、なかなか商業は発達しません。物が持っている価値を抽象的に表すことができるのが貨幣というものの利点です。持ち運びや保存が楽だから、物を右に左にいちいち動かすのが面倒になった(笑)権力者がこういうものを使うようになったのでしょう。
このへんが、日本における商人という職業が生まれてきた経緯じゃないかと思っています。
さて、上で私は何度となく「渡来人」という言葉を出しましたが、何が言いたいのかというと、商人が生まれるきっかけになった「都市」の形成、そしてその後の「貨幣」の鋳造、この辺は全て、渡来人が中国側でやっていたことをそのまま持ってきた仕組みじゃないかと思っているんです。そういう意味で、中国における商人の誕生とその発展というのは非常に重要なテーマです。
中国というのは、農民が多い国です。昔は75%くらいが一次産業に従事していました。今は50%くらいにまで落ち込んでいるようですが、それでも日本の10%前後よりは多いです。
しかし、中国の「都市」の歴史は古いです。舜堯の時代は神話みたいなものですからよくわかりませんが、周王朝や秦の始皇帝の時代にはもう「咸陽」という都が存在しています。春秋戦国時代に書かれた「論語」や、この時代の故事成語にも、都市の存在を伺わせる記述があります。
同様に、中国の貨幣の歴史も古いです。ごく初期では、貝をお金の代わりに使っていたのではないかと言われています。財産の「財」、貯金の「貯」でも分かるように、お金を示す字には貝が使われているのがその証拠です。でも、これは正直地域でバラバラで、今の貨幣と言うよりは、●直近の記事で書いた「地域通貨」に近いものだったと思われます。
全国的な貨幣が使われるようになったのは、秦の始皇帝の時代です。始皇帝の業績として、世界史の教科書なんかには必ず「度量衡の統一」が出てきますが、中国全土の統一に伴って、貨幣の統一もやっています。半両銭というお金です。
きたねぇなあ、と思うのは、実はこの半両銭は統一前の秦で使われていた貨幣なんですね。つまり、自分が好きなだけお金を作って、それで物を買いまくるということができるようになったと(笑)。こうなると、当然御用商人の活動も活発になったでしょう。
実は、中国の話はこれからかなり長く続きます。なぜそんなに中国のことを扱うんだ、このブログの管理人は中国が嫌いなんじゃないのか(笑)と思われるかもしれませんが、私が思うに、中国の歴史をきちんと追いかけると、今の日本および世界経済がメチャクチャな様相を呈している理由もわかってくると思うからです。
そういうわけでこのシリーズはまだまだ続きますので、おつきあいよろしくお願いします。
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