モーリス・ルブラン「リュパン、最後の恋」創元推理文庫入手のこと
高野優 監訳/池畑奈央子 訳、2013年
リュパン、最後の恋 - モーリス・ルブラン/高野優 監訳/池畑奈央子 訳|東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488107239
□内容
・序 フロランス・ルブラン(坂田雪子訳)
・モーリス・ルブラン、最後の小説 ジャック・ドゥルアール(坂田雪子訳)
・リュパン、最後の恋…(22)
・アルセーヌ・リュパンとは何者か?(坂田雪子訳)…エッセイ
「最後の恋」のほかに、ルブランの遺族と研究者の小文、エッセイがあるのは、2012年にフランスで出版された原著と同じ構成。ルブランの遺族と研究者の小文が読めるのは創元推理文庫版のみ。
「監訳者あとがき」で断ってあるけれど、翻訳はかなり“盛って”いる。労作だとは思うけど、せっかくの「リュパン」なのだから、引用できる翻訳にしてほしかった。
□序(フロランス・ルブラン)
フロランスさんはモーリス・ルブランの孫(長男クロードの娘にあたる)。「最後の恋」の遺稿を発見した状況と読者へのメッセージが書かれている。フロランスさんの文章を不完全な自動翻訳でなく、自然な日本語で読めるのがうれしい。
□モーリス・ルブラン、最後の小説(ジャック・ドゥルアール)
ドゥルアール氏は、ルブランの伝記や、アルセーヌ・ルパンの関連事項を集めた事典などを執筆なさっている人(邦訳なし)。「最後の恋」の原稿は、モーリスの息子クロードが生きているときに、ドゥルアール氏が閲覧していて、その後行方が分からなくなって、2011年に再発見となった。 だから、アルセーヌ・ルパン事典の中に「最後の恋」の項目もあったりする(ちなみに、事典の内容はけっこうマニアックで日本人にはさっぱり(^^;;)。
この小文では、「最後の恋」成立の事情や、ルブランが晩年まで精力的に執筆していた様子が知ることができて興味深い。これまで何度も〈最後の冒険〉について書かれてきたというのはその通りで、本作がホントに最後の冒険になってしまったのは残念だったけど、アルセーヌ・リュパンという人物がたどった変化、それを知ることができたのが本当に良かったと思う。
□アルセーヌ・リュパンとは何者か?(モーリス・ルブランのエッセイ)
既訳あり。訳が違うと印象が違う個所もあるので読み比べてみたい。(原文には小見出しがないので、その点では創元版のほうが忠実)
□監訳者あとがき
監訳者が「最後の恋」に感じた「無駄な場面やエピソードはひとつもない」作品の最たるものは「奇岩城(4)」だと思う。なのに、あまり理解されてない(嘆息)。「最後の恋」はまだ理解するに至っていないけれど、再読したら、最初は気付かなかった道標が立てられていることに気付いた。
一点。イギリス人とイギリス諜報部は別ではないかと。また会おうといったのは、敵対するイギリス人は嫌いでも、考古学好きのイギリス人は嫌いではないからだと思う。
「リュパン、最後の恋」は実に四半世紀ぶりに創元推理文庫に収録されたモーリス・ルブラン作品となる。アルセーヌ・リュパン・シリーズに限れば40年ぶり。既刊案内に載っているのは「怪盗紳士リュパン」「リュパン対ホームズ」「リュパンの冒険」「水晶の栓」「カリオストロ伯爵夫人」「カリオストロの復讐」の6冊。もっと出てるのに再販しないのだろうか。新潮文庫に「ええとこどり」された短編集なども文庫化けしてほしいのだけど。
→モーリス・ルブラン「ルパン、最後の恋」感想
→「アルセーヌ・ルパンとは何者か」感想(その1)
→「アルセーヌ・ルパンとは何者か」感想(その2)
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