《料理する》(その1) - ルパンの結婚(6-9)
※以下の文章は「ルパンの結婚(6-9)」の内容に触れています。※
「ルパンの結婚(6-9)」はサルゾー=ヴァンドーム公爵が身に覚えのない結婚式の招待状を手にすることから始まる。その内容たるやアルセーヌ・ルパンと我が娘が結婚するというもので、怒りに身を震わせてる公爵の元に、ルパンから電話が届いたり、新聞記者が取材にきたり、友人に偽の記事を教えられたり…。追いつめられた公爵は警察に相談に行く。
恥を忍んで彼は警視総監を訪ねたところ、総監は逆に慎重に事に処するようにと、しきりに勧告した。
「当局としてはあの人物のやり方には慣れています、奴があなたに仕向けているのはその得意技の一つです。妙な言い方ですが、奴はあなたを料理(※)しているわけです、奴の罠にかかるようでは駄目ですぞ」
「技とは、罠とは、どのような?」公爵が不安そうに尋ねた。
「あなたをいきり立たせて、冷静な時にはなさりそうもない行為を、おどかしによって、やらせようという仕組みです」(※「料理」に傍点。新潮文庫「ルパンの告白」P337。以下ページ数のみの引用はこの本による。)
この忠告あったにも関わらず、さらなるルパンの攻撃に耐えられなかった公爵は、ブルターニュの自分の領地に行くことを決める。対策をとり、やっと安心できたと思った矢先、ルパンの目論見が分かってしまう。のみならず、その目論見がすでに完遂していたことを悟るのだった。公爵が、ある人物からルパンの目論見を教えられながら思い浮かんだ言葉がある。
時々、先きに警視総監から与えられたあの警告〈公爵、あなたを料理(※)しているわけです〉の記憶が心によみがえって来た。(※「料理」に傍点。P352)
新潮文庫では「料理」に傍点が振られている。原文では、P337の「料理」は括弧付きで<< cuisiner >>(「il vous << cuisine >>」)と表現されている。P352の箇所は言葉全体が括弧で括られているので、これも括弧付きで<< cuisiner >>と捉えてもよいだろう。(「<< On vous cuisine, monsieur le duc On vous cuisine. >>」)。
《料理する》とはどういうことだろうか。
cuisiner
1 …を料理する
2 ((話))…を尋問する、問い詰める
3 ((話))《悪い意味で》(計画、論など)を抜け目なく作り上げる、入念にこしらえる
(「ロベール仏和大辞典」)
警視総監が言う《料理する》とは3番の意味だ。さらに言うならば、ルパンが、相手を自分の思い通りに操るための計画を作り上げること、ということになるだろう。公爵はすべてがあきらかになったあとで、自分が《料理》されていたことに気づくのである。
※以上の文章は「ルパンの結婚(6-9)」の内容に触れています。※
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