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2010/08/31

近代デジタルライブラリー:三津木春影作品

国会図書館に所蔵されている三津木春影の書籍のうち、明治から大正にかけて出版されたものの一覧である。現在19作品が近代デジタルライブラリーに収蔵されている。「書誌」欄は国立国会図書館の書誌情報に、「本文」欄は近代デジタルライブラリーの本文にリンクしている。「本文」欄の“館内”は、近代デジタルライブラリーに収蔵されているが国立国会図書館館内でのみ閲覧可能なもの、“×”は目録にのみ存在し原本の所蔵がないもの。並び順は発行年、発行所名の順とした。

近代デジタルライブラリー
http://kindai.ndl.go.jp/

No作品書誌情報書誌本文備考
1日本青年亜非利加猛獣国探検成功雑誌社、1908年(明治41)書誌本文
2婦人の新修養実業之日本社、1910年(明治43)書誌本文エラ・ウィーラー・ウィルコックス作
3皇帝謁見少年旅行実業之日本社、1911年(明治44)書誌館内ハーリー・スチール・モリソン作
4呉田博士中興館、1911-1912年(明治44-45)書誌1編
2編
オースティン・フリーマン作ソーンダイク博士もの翻案
5日本の危機啓業館、1912年(明治45)書誌本文「日本の危機 間諜の密計」
6孤島の姉妹実業之日本社、1912年(明治45)書誌本文
7大宝窟王中興館、1912年(大正1)
二十世紀探偵叢書・第1、2編
書誌前篇
後篇
モーリス・ルブラン作「奇岩城(4)」
8古城の秘密. 前篇武侠世界社、1912年(大正1)書誌前篇モーリス・ルブラン作「813(5)」
9呉田博士. 3,4,6編中興館、1912-1915年(大正1-4)書誌3編
4編
6編
オースティン・フリーマン作ソーンダイク博士もの翻案
10金剛石〔 〕、1913年(大正2)書誌本文モーリス・ルブラン作「金髪婦人(2-1)」
※発行所は岡村盛花堂・池村松陽堂か?
11コルクの釦磯部甲陽堂、1913年(大正2)
ミステリー叢書・第1編
書誌本文「コルクの釦」「外交探偵の自白」(「日露平和條約の竊取」{露独皇帝の海上密会})
12函中の密書磯部甲陽堂、1913年(大正2)
ミステリー叢書・第2編
書誌本文「函中の密書」「秘密外交探偵の自白譚」(「外交美人探偵の怪腕」「独逸皇帝の入獄」「王女の恋」)
※「函中の密書」はコナン・ドイル作「第二の汚点」(?)の翻案
13少年軍事探偵磯部甲陽堂、1913年(大正2)書誌本文
14密封の鉄凾磯部甲陽堂、1913年(大正2)書誌本文「密封の鉄凾」「海賊船の少年」「怪光の裁判」「禿頭組合」
※「禿頭組合」はコナン・ドイル作「赤毛組合」の翻案
15怪飛行艇実業之日本社、1913年(大正2)書誌×
16黄金の指輪岡村盛花堂、1914年(大正3)
少年少女叢書・第8編
書誌本文「黄金の指輪」「山賊退治」「鍛冶屋の金槌」「船室の時計」
※「船室の時計」はモーリス・ルブラン作「金髪婦人(2-1)」の換骨奪胎
17白金の時計岡村盛花堂、1914年(大正3)
少年少女叢書・第9編
書誌本文「白金の時計」「宝石の行衛」「魔法博士」「火事の晩」
18空魔団岡村盛花堂〔ほか〕、1914年(大正3)書誌本文「空魔団」「海底電信船の少年」「火山の麓」「銀の十字架」「牛の検温器」「密航少年」「古城の怪光」「英露の潜航艇海底戦争未来記」「人間製造博士」「三人馬鹿」
19海底の石牢中興館書店、1914年(大正3)
奇譚文庫・第1編
書誌本文「海底の石牢」「床下の骸骨」「暗黒燈台の秘密」「給仕の号外」
※「床下の骸骨」はモーリス・ルブラン作「ハートの7(1-6)」の換骨奪胎
20不思議の鈴磯部甲陽堂、1915年(大正4)
怪奇叢書・第3編
書誌本文「不思議の鈴」「外交探偵の自白譚」(「露帝の宝石」「間諜を追うて」)
※「不思議の鈴」はコナン・ドイル作「海軍条約文書事件」の翻案
21死人の裁判磯部甲陽堂、1915年(大正4)
怪奇叢書・第6編
書誌本文「死人の裁判」「殺人狂」
※「死人の裁判」はコナン・ドイル作「膚黒医師」、「殺人狂」は同「甲虫採集家」の翻案
22国境線実業之日本社、1915年(大正4)書誌×モーリス・ルブラン作(原作は「La Frontiere」。ノンシリーズ)
23地底の宝玉実業之日本社、1915年(大正4)書誌本文「地底の宝玉」「まぼろしの少女」
24幽霊岩中興館書店、1915年(大正4)
奇譚文庫・第2編
書誌本文「幽霊岩」「噴火魔島」
25噴火島博士中興館書店、1915年(大正4)
奇譚文庫・第3編
書誌本文「噴火島博士」「船中の間諜」
※「船中の間諜」はモーリス・ルブラン作「アルセーヌ・ルパンの逮捕(1-1)」の換骨奪胎
26魔尖塔岡村書店、1916年(大正5)書誌本文「魔尖塔」「水雷捜索」「密偵団」「捕虜の少年」「水海員」「真か偽か」
27三津木春影遺稿. 第1億光社、1917年(大正6)書誌本文内藤鋠策編
28間諜団本郷書院、1917年(大正6)書誌本文
29海魔城本郷書院、1918年(大正7)書誌本文

このほか、松原至文編「小品文範」新潮社、1909年に「病院より(三津木春影)」が収録されている。
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000496907/jpn

未整理のため、以下、羅列にとどめておく。

・「大宝窟王」(7)、「古城の秘密」(8)、「金剛石」(10)はモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンものの翻訳である。以下を参照のこと。
ルパンシリーズの初期翻訳
・「船室の時計」(16の2)、「床下の骸骨」(19の2)、「船中の間諜」(25の2)はルパンシリーズの短編から着想を借りて別な物語に仕立てている。
・「国境線」(22)はモーリス・ルブランのノンシリーズ作品の翻訳である。国会図書館では原資料が確認できない(目録のみに存在)。同じくルブラン著、三津木訳の『祖国の為に』武藤書店、1922年はこの作品の改題と思われる。
・「呉田博士」(4と9)はオースティン・フリーマン作ソーンダイク博士ものの翻案で、一部コナン・ドイル作品の翻案も混在している。末國善己編『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』に詳しい。
・「大宝窟王」(7)、「金剛石」(10)、「函中の密書」(12の1)、「不思議の鈴」(20の1)には共通して保村俊郎が登場する。シャーロック・ホームズ(あるいはホルムロック・シアーズ、エルロック・ショルメス)のことである。


□参考文献
・山蔦恒「信州の児童文学(2)-三津木春影著作略年譜に寄せて-」、「解釈」1984年10月号所収
・伊藤秀雄『明治の探偵小説』晶文社、1986年
・続橋達雄「三津木春影序説」、「野州国文学」48号所収、1991年
・続橋達雄『大正児童文学の世界』おうふう、1996年(「三津木春影序説」並びに追記)
・『少年小説大系』第14巻、「大正少年小説集」二上洋一編、三一書房、1995年
・木戸雄一「「少年探偵小説」の条件―三津木春影『探偵奇譚呉田博士』の場合―」、『図説 児童文学翻訳大事典』第4巻、大空社・ナダ出版センター、2007年所収
・三津木春影著、末國善己編『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』作品社、2008年
・『江戸川乱歩 誰もが憧れた少年探偵団』KAWADE夢ムック、河出書房新社、2003(三津木春影「悪魔が岩」を収録)

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近代デジタルライブラリーで三津木春影「古城の秘密」提供開始
三津木春影「大宝窟王」前篇
三津木春影「大宝窟王」後篇

□2010/09/01 館内閲覧の情報追加
□2010/11/05 「死人の裁判」と「殺人狂」の原作が判明
ホームズ・ドイル・古本 片々録 by ひろ坊 : 三津木春影(3)
http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/51531237.html
□2011/07/07 収録状況の更新
□2012/06/04 収録状況の更新

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