金の羊毛 - 綱渡りのドロテ
※以下の文章は「綱渡りのドロテ」の内容に触れています。※
金の羊毛(金の羊毛皮)はフランス語ではToison d'orと書き、トワゾン・ドールと読む。この言葉はギリシア神話のイアソンという英雄の出てくる話に因んでいる。
テッサリアのイアソンは父亡き後帝位についていた叔父から、「金の羊毛」を手に入れよという難題を与えられ、アルゴ船を建造しギリシアの英雄たちを集いコルキスに向かう。途中いくつもの冒険を経てコルキスに着いたイアソンは、魔女メディアの力を借りて「金の羊毛」を手に入れる。
アルゴ神話
http://home.kobe-u.com/tenken/seiza/88/arugo_sinwa.html
この神話から転じて価値のあるもの、お宝のような意味で用いられることがあるようだ。でも「私の金の羊毛、うるわしのパトリシア」(偕成社「ルパン最後の事件」)と言われて嬉しいものなんだろうか…? 理解しにくいところではある。しかも英語だとゴールデン・フリース…金の羊毛のほうがましかも…今はフリース素材というと安い服の代名詞というイメージがついてしまっているし(本物のフリースじゃないけど)。
さてこの言葉はルパンシリーズの外伝的作品「綱渡りのドロテ」でも使われている。第10章の題「<<金の羊毛>>を求めて」。「お宝を求めて」と言うほどの意味だけれど、「金の羊毛」を使っているのはそれを求めるのがアルゴンヌ大公の娘だからである。アルゴンヌはロレーヌ地方の地名で、第一次世界大戦の激戦地であった。「綱渡りのドロテ」は戦災孤児の物語でもある。そのアルゴンヌのつづりはArgonne、アルゴ船のつづりはArgo、つまりはARGOnneという発想。
アルゴンヌ大公の娘ドロテは、アルゴ船に乗り込み金の羊毛を求めるイアソンなのだ。怪力のヘラクレスや双子のカストールとポルックスら50人の勇者はいないけど、手癖の悪いサンカンタン男爵、双子かどうか分からないカストールとポリュクス(ポルックスのフランス語読み)、寝起きの悪いモンフォーコン隊長がいる。本当に愛すべきキャラクターたちだ。ドロテならずとも見捨てることはできない。
カストールとポルックスといえば双子として有名だけれど、一説にはそれぞれ別に片割れがいる。カストールとポリュクスというのは暗示的な名前なのだろう。
※以上の文章は「綱渡りのドロテ」の内容に触れています。※
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