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2007/06/24

「アルセーヌ・ルパン」読書案内

ルパンシリーズを俯瞰できるほど読んでいるわけではないので、読書案内といっても、お薦め作品とこれを読んでおいたほうがいいよというレベルの内容です。


◆◇入門編◇◆
アルセーヌ・ルパンシリーズは全部で21冊です。そのうち、「813(5)」と「虎の牙(11)」は2分冊されていることが多いので、23冊と考えてもいいでしょう。作品一覧は「アルセーヌ・ルパン」作品リストを参照下さい。最初に読むのは短編集がおすすめです。「怪盗紳士ルパン(1)」「ルパンの告白(6)」「八点鐘(12)」「バーネット探偵社(15)」の4つが短編集です。長編なら「水晶の栓(7)」がおすすめです。


○シリーズ読破に向けて
どういう順番で読めばいいか、ベストなのは出版順です。偕成社アルセーヌ=ルパン全集は出版順に並んでいるので、1巻から読めばよいです。順番どおりに読もうとしたら途中で疲れてしまうという場合は、

  • 関連性のある作品の順番はなるべく崩さない
  • 「813」は早めに読む(ネタバレされる可能性があるため)

このあたりを頭に入れておけば多少順番が前後しても大丈夫だと思います。

関連性のある作品というのは、前作を受けて書かれている作品のことです。★印は順番に読むことを推奨します。

  • 「怪盗紳士ルパン(1)」→「ルパン対ショルメス(2)」→「奇岩城(4)」
  • 「奇岩城(4)」→「813(5)」→「虎の牙(11)」★
  • 「金三角(9)」→「三十棺桶島(10)」→「虎の牙(11)」
  • 「カリオストロ伯爵夫人(13)」→「カリオストロの復讐(20)」★
  • 「バーネット探偵社(15)」→「謎の家(16)」→「バール・イ・ヴァ荘(17)」

○翻訳について
比較的入手しやすい本をを「アルセーヌ・ルパン」邦訳一覧にをまとめています。

このうち全部読破しようとすると偕成社アルセーヌ=ルパン全集の一点推しになってしまいます。というのは、今は読めるようになったけれど、私自身創元推理文庫、新潮文庫は昔挫折したことがあるからです。偕成社のほうが馴染みがありますし読みやすい。新潮文庫はフォントは読みやすくなりましたし、ラインナップとしてもいいとこ取りな感があります。創元推理文庫は薄いので手軽に感じます。文章については個人の感覚によるので、実際に手にとって数ページ確かめてみるのが一番でしょう。


○お薦め作品
私は短編をちびちび読むより、長編を黙々と読むほうが好きです。そして登場人物が生き生きとしているところが好き。そういう私が独断で選んだ作品なので、参考までに。
ルパンシリーズ前半は帝国主義バリバリの時代を背景としているので、そこに苦手意識(受け入れがたさ)を感じるかもしれませんが、完成度と緊張感の高さはやはりシリーズ前半に集中しています。

  1. 「怪盗紳士ルパン(1)」
    短編集。やはり1作目がないと始まらない。シリーズの持つ多彩さがこれだけでも出ている。
  2. 「813(5)」
    長編。ルパンシリーズ最高潮。ルパンの人生が凝縮されている。
  3. 「八点鐘(12)」
    短編集。全編にわたる機知とユーモアがいい。

次点「水晶の栓(7)」

○お薦めとはいわないが私は好きな作品

  1. 「奇岩城(4)」
    長編。ルパンシリーズの秘密は「奇岩城」に始まって「奇岩城」に終わる。読むなら岩波少年文庫かハヤカワ文庫で。
  2. 「三十棺桶島(10)」
    長編。アルセーヌ・ルパンを期待して読んだ方から文句を言われるかもしれないのでこちら。でもお薦めでもある。怪奇風味が読んでいてぞくぞくする。
  3. 「特捜班ヴィクトール(19)」
    長編。大人の喜劇です。ああそういうことかと分かっで読むのが面白い。お薦めとは言わないですよ。

次点「虎の牙(11)」


◆◇応用編◇◆
ルパンシリーズは読破した、あるいは面白そうなものは一通り読んでしまったという方向けです。

三宅一郎「奇岩城の大嘘」

新潮文庫編集部編「百年目」新潮文庫、2000年所収。
「奇岩城(4)」の邦訳にまつわる長年の誤り、錯覚を指摘したもの。私にとっては(再)出発点となった本。入手できないので図書館等でぜひ。[詳細]

『怪盗ルパン 奇巌城』江口清訳、集英社文庫、1992年
『世界の名探偵コレクション10(2) アルセーヌ・ルパン』長島良三、堀内一郎訳、集英社文庫、1997年

集英社文庫から出ている2冊は解説が豊富で年表などもついていてお薦め。入門としても良し。(解説・浜田知明)

『戯曲アルセーヌ・ルパン』小高美保訳、論創社、2006年

ルパンシリーズには小説だけではなく戯曲もあり。解説もルブランの伝記や、出版来歴について詳しいけれど、ちょっと上級者向けになってしまうかも。でも非常に参考になる一冊。(解説・住田忠久)[詳細]

雑誌「ミステリマガジン」2005年11月号

ルパン生誕百周年&フランス・ミステリ特集号。ルブラン作の短編「壊れた橋」や、ボアロー=ナルスジャックのパスティーシュ等見所が多い。入手可能なので書店等でお取り寄せを。[詳細]

トマ・ナルスジャック「アルセーヌ・リュパン」

創元推理文庫「二つの微笑を持つ女」所収。
小論。パスティーシュを書くだけあって短文ながら本質をよく見抜いていると思う。

○参考
一冊まるごとアルセーヌ・ルパンを扱っているのは以下の3冊です。どれも入手できないため探してまで読む必要はないと思います。

和田英次郎『怪盗ルパンの時代 ベル・エポックを謳歌した伊達男』早川書房、1989年

ルパンシリーズ中の車や、ロシアなどのキーワードに焦点を当てて書いている。読みやすい。

ジャン・クロード・ラミ『アルセーヌ・リュパン 怪盗紳士の肖像』大友徳明訳、東京創元社、1986年

パスティーシュ風味。一部原作とはパラレルな設定になっていてるので、気をつけて読まないと混乱する。

『名探偵読本 怪盗ルパン』榊原晃三編、パシフィカ、1979年

内容は多彩だけれど、少々古くなっていると感じる。(未入手のため一部閲覧したのみ)
(参考)名探偵読本-7怪盗紳士ルパン 榊原晃三編

○ルパンシリーズの周辺
フランスの推理小説についての研究書です。興味があれば読んで損はしないと思います。

小倉孝誠『推理小説の源流 ガボリオからルブランへ』淡交社、2002年

19世紀からからルブランへいたるまでのフランスにおける推理小説について追ったもの。[詳細]

松村喜雄『怪盗対名探偵 フランス・ミステリーの歴史』双葉文庫、2000年

19世紀から第二次世界大戦後までのフランス・ミステリーについて俯瞰できる。ルパンシリーズに関しては情報が古いところもある。[詳細]

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