映画「怪盗ルパン」(ジャック・ベッケル)
1957年フランス
音声付無声映画、もといフランス語のみで上映されたのを見た。フランス語は分からないので、一応ネットであらすじを見て行ったけれど、それがなくても話にはついていけたと思う。フィルムの中で完結しているし、あとで配布資料のあらすじが詳しくて補完できた。あれを持って行かなかったのはそういうことかとか、言葉が分かったらもっと楽しめたのだろうけれど。あらすじは一部違ってるような気がする。閉じ込められたのはミナであってカイゼルではない。
フィルムの状態はよかった。たまにノイズ(音、影像)が入るものの、カラーも鮮やかだった。冒頭では停電させて闇の中で“お仕事”するのだけど、光と闇と面白いと思った(赤と黒のイメージが残ってるんだけど)。どれくらい時代考証(1910年の設定)をしているか分からないけれど、自動車はガラスがなくタイヤも細かった。この時代はまだ女性の乗馬は横座りが主流みたい。走りにくそう…と思う。
内容は原作とは別物と知っていたせいか案外楽しめた。過度なコミカルや下品さに走ってなくて、それでいて軽妙な笑いのシーンがあったり。絵投げてるし。原作のエピソードは使っていないし、ルブランのアルセーヌ・ルパンではないけど、ビジュアル的にはデクリエール版より好み。デクリエールのルパンは変装によっては体格をもてあましてる感じがするけれど、こちらでは文字通りコンパクトにまとめられてた…まああんな感じ。
主演はロベール・ラムールウ(ロベール・ラムルー)。ポスターや影像を少し見たことがあって、同じ人?と思ってたのだけど、ちゃんと同じ人だとわかった。髭を付けると輪郭が変わって顔がでかく見える。むさいし。化粧で変装していることはうれしい。フードで顔を覆って使用人に何やら言いつけながら中に入っていく。なぜかというに、変装をしているので自分の家に入るのに顔を隠す必要があるわけである。そういうのがきちんと影像で説明されていた。変装するのではなく、それを解く様を見せてくれる。鬘や付け髭などの変装グッズ収納ボックスみたいなのが壁に隠してあった。
Aventures d'Arsene Lupin, Les (1957)
http://www.imdb.com/title/tt0050152/
怪盗ルパン -- キネマ旬報DB- Walkerplus.com
http://www.walkerplus.jp/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=12797
美青年?どこ!?(笑)
この映画は監督であるジャック・ベッケル生誕百年記念シンポジウムの参考上映で見た。シンポジウムもできれば参加したかったけれど、予定があったので基調講演までしか聞けなかった。このシンポジウムは蓮實重彦氏発案の企画で、使われたパンフレットも私物だそうだ(配布資料は当時のパンフレットのコピーと、ベッケル全監督作品紹介の2つ)。
蓮實氏曰くジャック・ベッケルは無条件に擁護せねばならぬ監督らしいです。ベッケルが不当に評価されなかった来歴についてと、あと、異なるモチーフにおいても同じ演出を用いている例として、平手打ちの効果について説明していた。演出の引用として数分影像が流れていろんな作品が見られた。ジャン・ギャバンとファンファン(ジェラール・フィリップ)しか分からなかったけど。「モンパルナスの灯」は12/17に新文芸座で上映してたけど見逃してしまった。
「怪盗ルパン」には平手打ちのシーンはなく、バスローブに着替えたルパンが蓄音機かけて、隣の部屋に行って、ボクシングの練習用の器具みたいなのをバスっと殴るシーン。ちょうどドキュメンタリー「ARSENE」で引用されてたところ。あれ何の意味があるのか良く分からない。このシーンの後読み上げて余韻に浸っていたのはレジーヌ・オーブリからの手紙だったような。空耳かもしれない(他に原作ネタがないので)。
アテネ・フランセ文化センター:ベッケル国際シンポジウム
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2006_12/JBecker.html
シンポジウムの内容は分からないけど、どうやらベッケルベッケルと唱えるといいことがあるらしい。
□メモリンク(今回の上映及びシンポジウムに触れている記事)
Outtakes - Becker likes Americans
http://d.hatena.ne.jp/ulzanaII/20061222
ジャック・ベッケル生誕百年記念国際シンポジウム~ベッケルの偉大さを知る
http://www.cinemabourg.com/2006/12/post_344.html
└基調講演の非常に詳しいメモがありがたい
OUT-1 FILM - 怪盗ルパン★★★★★
http://d.hatena.ne.jp/OUT-1/20061222/1167397451
└机のトリックのところ、気づかなかった
蓮實重彦インタビュー──リアルタイム批評のすすめvol.3
http://www.flowerwild.net/2007/01/2007-01-08_021607.php
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コメント
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はじめまして。
リンクを張っていただき恐縮です。
なかなか観直すことも出来ない『怪盗ルパン』ですが、プリントの状態もよく、すぐにでも再見したいですね。
投稿: [M] | 2007/01/09 09:53
はじめまして。コメントありがとうございます。
非常に詳しいメモで基調講演を振り返ることが出来てありがたかったです。他の映画も見てみたくなりました。
映画のほうは本当にいい状態でフィルムで見ることが出来てよかったです。なかなか見られないのはもったいないですね。
投稿: K-A(管理人) | 2007/01/10 01:06