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2010年12月 1日 (水)

自殺を経済コストで計るな!

だいぶ前、9月初め頃のことになるが、自殺による経済損失が、1兆9000億円に及ぶという調査結果が厚労省から発表された

自殺者が死なずに働いていたとすれば、上げられたであろう経済的利益が1兆9028億円に上るという。自殺したためにこの利益が得られなかったから経済損失だというのだ。

自殺者の中には、働くことに疲れ切って、自殺したという人も少なくないだろう。

その人たちは、もうこれ以上、働きたくないから自殺したのである。

ところが、政府は、自殺した人にまで、働けという。働いて利益を挙げられた筈だと迫る。

この国は、いつから、国民を利益を生み出す道具のように考えるようになったのだろう。

厚労省は、自殺対策のために敢えてこうした数字を発表したのだという。

これも逆転している。

命が大事だから、対策を取ろうというのではない。

自殺が国家経済に損失を与えるから自殺・うつ病対策をしようというのだ。

お金のことを持ち出さないと、人の命を救おうという当たり前のことさえ言うことができないのだ。

この国は徹頭徹尾、人の命をお金で計算するのだ。

この国で生きるのはとても生きづらいと思う。

 

 

人は自殺しなくても、いずれ死ぬ。

医療技術が極端に発達した現代では、死ぬときには治療費は必ずかかると思った方がよい。

長患いすれば、治療費は一層、増大する。

いっそ、きれいに自殺した方が、国にかかる治療費は軽減するのではないか。

自殺者は、ことによれば、国家財政に貢献すらしているのである。

自殺した人が、自殺せずにうつ病から完全に回復して生き生きと健康な状態で働き続けられるなどというのは粗雑な仮定に基づく推計だ。現に研究資料

「自殺予防によって、自殺でなくなられた方がなくなられることなく働くことができると仮定すれば、自殺でなくなられた方の人数だけより多くの方が労働市場に参加することになる。

例えば、2009年に20代、30代、・・・60代の人は、賃金プロファイル(次のページに示す表の賃金の横方向の並び)にそって、それぞれ年齢が上がるにつれて変化する賃金所得をえていくことができる。

こうした2009年でみた年齢別の生涯所得に、年齢別の自殺者数をかけて得られる額の合計が、自殺予防によって得られる生涯所得(の期待値)という経済的便益になる。」

としている。

こんな粗雑な推計が許されるなら、むしろ逆に「自殺の経済的効果」だって推計できるだろう。

長生きするよりは、自殺した方が、治療費が抑制される。年金に関する財政負担も軽減され、失業保険給付や生活保護給付も軽減されるので、社会保障の改善に資することもできる。

政府が展開する議論は、この程度の議論とどれほど違うのであろうか。

人の生き死には、経済の問題ではない。その個人の尊厳をどれほど尊重するかという基本姿勢の問題である。

政府のいうことは個人の尊重を最大の基本原理とする憲法(13条)の精神から遠く離れているというほかない。

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