弁護士ドットコムから転載 岡口基一裁判官事件で弁護士らが記者会見 「裁判官にもつぶやく自由はある」
またしても後世の歴史に残りそうな事件である。
重要な事件であるにも関わらず、マスコミの扱いは、極めて小さく、せいぜいが変人裁判官の懲戒事件程度の扱いである
この記者会見に至っては、取り上げたメディアが皆無に等しいので、以下に弁護士ドットコムニュースから全文を転載しておく。
むろん、マチベンも共同声明の賛同者に名を連ねている(^^ゞ
「裁判官にもつぶやく自由はある」岡口裁判官の分限裁判で声明文、弁護士269人が賛同
有志の弁護士が10月1日、「裁判官にも『つぶやく自由』はある 裁判官の表現の自由の尊重を求める弁護士共同アピール」と題した声明文を発表した。
Twitterの投稿によって訴訟当事者の感情を傷つけたとして、東京高裁民事部の岡口基一裁判官が裁判官の免官・懲戒に関する「分限裁判」にかけられたことを受けてのもの。弁護士269人の賛同が集まっており、声明文は近く最高裁に提出する。
●「つぶやく自由に対する侵害」
声明文は今回の懲戒申立てについて「裁判官の表現の自由『つぶやく自由』に対する侵害にほかなりません」と指摘。「今後、従業員の私的なSNSやブログ等への書き込みが、些細な理由で雇用主から懲戒処分の対象とされるのではないかとの不安が社会に広まるなどして、市民間のインターネットを通じた情報交流が萎縮する恐れがある」と社会的な影響を懸念した。
東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた発起人の島田広弁護士は「基本的人権を守る弁護士が声を上げなくていいのかと思い、まとめ上げた」と説明。賛同者は28日金曜日午後に集め始め、3日間で呼びかけ人46人、氏名を公表した賛同者214人、公表なしの賛同者9人の計269人が集まった(1日午後3時時点)。
島田弁護士は「基本的人権が損なわれることだけではなく、人権の守り手である裁判所が、人権侵害を行ってしまう。これがどれだけ裁判所に対する国民の信頼を傷つけることになるのか、慎重に判断してほしい」と裁判所を批判。「懲戒申し立てされたこと自体、憤りを感じている。不当な懲戒を阻止するために、弁護士の皆様にご協力いただきたい」と呼びかけた。
また、賛同者で会見に同席した海渡雄一弁護士は「裁判官自身が口を開いて意見をいうことは独自の価値がある」と話した。
岡口裁判官は9月11日、最高裁で開かれた審問のあと、司法記者クラブで会見を開き「ありえないことが起きている」などと反論。弁護士ドットコムに登録する弁護士を対象に行われた緊急アンケートでは、懲戒申し立ての妥当性について、回答した弁護士326人の9割弱が「妥当でない」との見解を示している。
●呼びかけ人、賛同者登録は以下
呼びかけ人、賛同者登録は以下のウェブフォームで行っている(弁護士に限る)。
https://business.form-mailer.jp/fms/8e4fb72b94029
呼びかけ人一覧:http://www.asahi-net.or.jp/~bg6h-smd/yobikake.pdf
この分限裁判は、最高裁の大法廷によって裁判官全員15名によって審理される。
15名の内、14名がすでに安倍政権によって任命された裁判官となっている。
安倍内閣が退陣しない限り、来年の3月には、15名全員が安倍政権によって任命された裁判官になる。
同じ内閣によって任命された裁判官によって最高裁判所が構成されるのは、最高裁の歴史始まって以来の出来事であろう。
いうまでもないが、司法と行政の間には一定の緊張関係が存在しなければ、権力分立という近代憲法の本質的要請すら満たされないことになる。
最高裁が、今後も政府との最低限の緊張関係を維持していけるのか、我が国の司法は、極めて危うい岐路にある。
この間には、ずいぶんと不審な人事もあった。
最高裁の裁判官の構成については、慣例があり、裁判官、弁護士、検察官、行政官、法律学者の出身者から一定の比率で任命されることになっている。
裁判官枠 6
弁護士枠 4
検察官枠 2
行政官枠 2
学者枠 1
この数字は、行政官枠と学者枠の間で1984年に若干の変動があったが、1961年以来半世紀以上、変わっていない。法律専門家の中で一定の均衡を保ってきたということだろう。
2017年2月に山口厚氏が弁護士出身者として最高裁裁判官の後任として任命された。
しかし、同氏は、著名な刑法学者であり、弁護士として認知されてはいなかった。日弁連も同氏を最高裁裁判官に推薦してはいなかった(弁護士出身の最高裁裁判官については、日弁連が推薦者のリストを最高裁を経由して内閣に挙げる。このリストの中には当然、同氏の名前はなかった)。
同氏が、弁護士登録したのは、最高裁裁判官に任命されるわずか6ヶ月前の2016年8月であり、学者出身の同氏が弁護士出身枠で任命されるための下準備であったと勘ぐられてもおかしくない。
現に同氏は最高裁裁判官に任命される前月まで、早稲田大学大学院法務研究科教授の職にあった。(wikipedia)
最高裁判所裁判官の辞令を受けて、大学を退職したのだろう。
かくして、弁護士出身枠4の内一つが学者出身者によってかすめ取られた。
日弁連は、同氏の任命に何ら関わることなく、弁護士出身の最高裁裁判官の枠を削られてしまったわけだが、抗議・批判等せず、事態を静観した。
日弁連は、公式には任命経過に関する事情を調査・照会することもなく今日に至っている。少なくともマチベンは日弁連から事情の説明を受けたことはない。
ちなみに、加計学園監事であった弁護士の木澤克之氏が最高裁裁判官に任命されたのは、2016年7月であり、山口厚氏の任官より7ヶ月前のことである。
この任命は、日弁連の推薦リストから任命されている。
まあ、これだけ政権交代がない希有な国では、日弁連内で高名な弁護士ともなれば、多かれ少なかれ、時の権力との距離が近いということが避けられなくなる、というのが日弁連の内情でもあろう(下品なたとえで申し訳ないが、上半身では喧嘩しているように見えても、下半身はつながっている、とか)。
15名の最高裁判所の裁判官が、法律と良心のみにしたがい、独立して職権を行使することができるのか。
歴史は、それで少なからず、変わるだろう。
この事件は、歴史に残る、少なくとも残さなくてはならないのだ。
* ランキングに参加しています *岡口裁判官が懲戒されることになれば、最高裁に倣って、従業員による勤務時間外のSNSへの書き込みを口実にして労働者を懲戒する不届きな使用者が続発しかねない。
このことだけでも、この事件は岡口喜一裁判官一人の事件でもないし、裁判官だけの事件ですらない。
考えれば、考えるほどに恐ろしい事件である。