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けやきのき

あれもこれも楽しみたい、理系大学院生の個人的で気ままな覚え書き。

白熱灯のように光る蛍光灯じゃダメらしい。 

照明探偵団サロンに行ったことは以前書きましたが、中身については全然書いていませんでした。

もう時間が経ってしまいましたが、興味深い話を聴けたと思いましたので、遅ればせながら少し書きます。


テーマは、「住まいのあかり 過去・現在・未来」
第2回、現在に焦点を当てた「白熱ランプが住宅から消える?」でした。

流れとしては、
・面出団長の挨拶。
・照明探偵団のレポート『白熱灯vs蛍光灯 お宅訪問調査』『暮らしの中のムダさがし!』 
・ゲスト:パナソニック電工(旧松下電工)岩井彌氏のプレゼン。
・対談 面出薫×岩井彌『白熱ランプが住宅から消える?』

となっています。

団長挨拶のとき、当初は団長の周りだけ明るくて周りが暗い、という照明になっていたのですが、これはいけない、フロアとフレンドリーに対話をしたいのだから、と、団長が全体の照明を明るくさせました。

内容は、白熱灯と蛍光灯の対比が中心です。照明探偵団としては、白熱灯を残していきたい、との主張。ゲストの岩井氏も同意見のようでした(パナソニック電工の意見ではなく、岩井氏個人として)。

私自身が完全に素人でしたので、ごく簡単におさらい。

白熱灯は、昔ながらの電球です。
オレンジ色のやわらかい明かりで、フィラメントに電流を流して熱を発生させることによって光らせます。食べ物がおいしく見えるとか、調光に強いなどの特徴がありますが、蛍光灯に比べて消費電力が大きく、近年のエコブームでどんどん蛍光灯に取り替えられていっています。

蛍光灯は、白い光でおなじみ。
紫外線を蛍光物質に当てて、可視光に変換します。自然光に近い白熱灯に比べると、人工的な感じに見えるので、写真を撮るときなどには向かないようです。でも、どんどん技術が発展し、改良が重ねられ、だいぶ白熱灯に近いものが出てきているそうです。白熱灯に対して消費電力はかなり小さく、今はこちらが主流になってきています。


現時点では白熱灯と蛍光灯にいくつか違いはあるようですが、技術の進歩により、蛍光灯はどんどん白熱灯に追いついていっています。
ただ、おそらく今後も両者の違いとして残るであろうと考えられているのが、それぞれが発する光の波長です。

白熱灯では、低波長から高波長までブロードに出ていますが、蛍光灯の場合は局所的に出ています。
こんな感じ。←2番目が白熱灯です。ちなみに白熱灯は赤外も出ています。
こちらのページから。

白熱灯は、光の三原色(赤・緑・青)を出すことによって、白く見せています。そうしてヒトの目をごまかしているわけですが、ごまかしきれない微妙なニュアンスの違いが、白熱灯と蛍光灯の光の違いになるそうです。

そして、ここに、蛍光灯が"エコ"である秘密もあります。

蛍光灯は限られた波長の光しか出さない。余分な波長をカットしているからこそ、消費電力が小さいのです。だから技術的には、すべての波長の光を白熱灯と同様に出す蛍光灯も作りうる、が、作らない。それだと、消費電力まで白熱灯に近くなっていくので意味が無いそうです。

パナソニック電工の岩井さんに、懇親会のときに聞きました。できるけど、意味が無いからどこもやっていないし、やらないだろう、と。
いかに少ない波長で、いかに自然に見せるか、そこが開発のポイントのようです。


こういう話(白熱灯と蛍光灯の波長の違い)って実は常識なのでしょうか。私はよく知らなかったので、興味深いものでした。

白熱灯の赤外の部分だけカットしたら、どうなんでしょう?
それだと節電効果が低いのでしょうか。それとも、赤外の光も、実は白熱灯の微妙なニュアンスに一役買っていて、カットすると白熱灯らしさがなくなってしまうのでしょうか。


ただ、白熱灯と蛍光灯の違いは、本当に小さいものになりつつあって、プロでも、目の前で両者を比較しないと間違えることもあるそうです。そんな状況にあって、いかに白熱灯の存続を訴えていけるのか。

レポートした団員も、観客として来ていた人々も、白熱灯を愛していて、無くしたくないと思っていることはひしひしと伝わってきました。白熱灯は文化だ、などの発言も聞かれました。
なんとなく、こんなところにもサイエンスカフェと通じるものを感じつつ。


ここに来ていない、興味の無い人にいかに訴えていくか、が難しいところなのでしょうね。


照明探偵団、キャンドルナイトやライトアップニンジャなど、いろいろやってるみたいです。
#キャンドルナイトに行ったときのエントリはこちら



[ 2008/10/28 15:50 ] セミナーのまとめ | TB(0) | CM(0)

ワトソン&スタイツ。 

ワトソンとスタイツが語る未来の生命科学に行きました。

おととい本郷で。
今日は岡崎でやっているはずです。

残念ながらまとめている余裕がないので、大変よくまとまっているページにリンクを張っておきます。
ワトソンとスタイツが語る、未来の生命科学 に行ってみた:生々一歩

↑このページは先輩のエントリで知りました。


スタイツは優雅で明晰でかっこよかったです。
ワトソンは、予想に違わず強烈でした。

プログラムや進行が少々微妙だったのですが、お2人のお話はどちらも面白かったです。
やっぱり一角の人物ですね。




[ 2008/10/24 16:58 ] セミナーのまとめ | TB(0) | CM(0)

新しい植物ホルモンのお話。 

先日聴いてきたセミナーのまとめです。

植物の分枝を制御する新しい植物ホルモン"ストリゴラクトン"の発見に至る仕事の話です。
理研プレスリリース

私の所属する学科では週に1回ゲストを招いてのセミナーをやっています。普段は別キャンパスにいるのでわざわざ参加はしないのですが、今期のプログラムを見た時に、これはぜひ行かねば!と思っていたものです。

話としては、非常にシンプル。

植物の枝分かれを制御するホルモンがあるはず、との仮説の元、新しい植物ホルモンを見つけるための戦略を2つ立てました。

1.植物からの抽出液を活性で分画していって精製
2.あたりをつけた化合物を植物に与えてみる

1.は王道の生化学ですが、大変で、根気のいる作業です。下村先生のGFPの発見などはこの手の仕事です。ところが今回は、どうもこの方法では行き詰ってしまったようです。

そこで、2.に挑戦。
以前から、根より分泌されていることがわかっていた物質(=ストリゴラクトン)を植物に与えてみたところ、見事分枝が抑制され、また逆に、分枝が過剰な突然変異体ではストリゴラクトンの量が減っている、ということも明らかになった、とのこと。

細かな実験などは他にもありましたが、基本は本当にこれだけ。ごくごくシンプルな仕事です。

ストリゴラクトンにあたりをつけた、というところがこの仕事ではなにより画期的なことでした。もちろん先人の研究によって、それを示唆するような知見が蓄積されていたからこそなのですが、でも、これまでは誰もそこにいきつかなかった。独創的な発想があったからこその仕事でした。

それに、シンプルとは言いつつ、"ちゃんと効果がある、化合物の植物への与え方"を構築するだけでも一仕事です。実は、卒研の時にそういう仕事をしてました。

発想があって、それを実現するための系を構築して、そして、実行に移し、実験によって確かめる。
その全てをきちんと成したからこその仕事で、シンプルであるからこそ、かっこいい仕事でした。


植物は遺伝学の方が先に進んで、生化学はちょっと遅れています。なので、現象がわかっても、実体がわからないことも結構多い。今回の仕事は生化学がバックグラウンドにある方のもので、こういう仕事は個人的にとても好きです。




[ 2008/10/17 12:21 ] セミナーのまとめ | TB(0) | CM(0)

生命環境科学系セミナー。 

昨日はうちのラボが所属する"系"のセミナーでした。
私がこちらに来てから初めて参加しました。

全体の人数は多くはありませんでしたが、先生方が結構いらしていました。

演者は、ドイツのマックスプランクで7年間研究した後、日本に戻っていらした先生です。
テーマは、シナプス小胞膜上のグルタミン酸トランスポーターの発見と機能について。

実験の組み立ても、データもとてもきれいで、大変かっこいい仕事でした。自身の専門と比較的近い分野であるということと、生化学的な話がメインでしたので、速いテンポながら、聴きやすく、興味深いお話しでした。

生化学はとてもパワフルなツールであるとは思うのですが、私は化学の方から入ったのではなく、生物の側から、単純に、生き物が好きだったところから入ったので、実際の生体で見られる現象や反応と、生化学的にきっちり詰めていったデータ、両方をきちんと押さえてある仕事というのがやっぱり憧れです。

今回の話は生化学がメインでありましたが、実際の組織や生体内での様子も合わせて調べていて、美しい写真もみられましたし、満足度の高いセミナーでした。


私はシナプス小胞と細胞膜が融合した時に起こる事柄についてちょっと質問したのですが、
後から師匠に
「僕も同じところを疑問に思ったんだ、やっぱり、気になるところは似てくるよね」
と言われました。
私はきっちり師匠の弟子をやっているんだなぁ、と思いつつ、偏らず、幅広く、様々なセミナーに出たり、異なる分野、手法の人とディスカッションすることも大切だと感じました。


夕方、演者の方がうちのラボをちょっと覗きに来ました。
#師匠とは元から知り合いだったそうです。

その方も日本でラボを持って間もないようで、うちはスペースも人も少ないのですが、十分だねぇ、と仰りながら、ぐるっと眺めていかれました。


最近、海外から帰られた方のセミナーを聞いたり、お話しをする機会が多いです。
母国以外の国できっちり仕事をして業績をあげて帰ってこられた方は、やはり力強く、逞しい方が多いように思います。



[ 2008/09/30 21:21 ] セミナーのまとめ | TB(0) | CM(2)

サーカディアンリズムのお話し。 

理研のポスドクの方を招いて、哺乳類のサーカディアンリズム(慨日リズム)の研究についてセミナーが行われました。

真っ暗なところにいても、だいたい24時間を体が感じて、活動や体温がリズムを刻みます。
そのサーカディアンリズムを司る遺伝子および組織の生理学的機能について、マウスやラットを用いた研究の様子をお話しくださいました。

実際、自分たちの体に起こっていて体感できる事象なので、聴衆も皆興味津々で、レクチャー後の質問が後を絶ちませんでした。私もセミナーでは必ず何か質問しようとは決めているのですが、途切れることのない質問に、(時間も気になっていたので)あきらめようかな、と思っていたところ、なぜか私の顔を覚えてくださっているT先生が、それじゃあ最後にsuikyoさん、と指してくださいました。どうもすみません。


ある遺伝子の発現がきれいにリズムを刻む様子は美しいものでした。でも、どうしてその、リズムを司る組織が、リズムを司り得るのか、というものすごく大きな命題が分かっていない、ということでした。


お子さんが生まれたばかりのうちのラボのポスドクさんが、大人から見ると昼も夜もないように見える赤ん坊でも、そのリズムは刻んでいるのか?と質問していました。
生まれる直前の胎児で、すでにこのリズムはできているそうです。

生理学的な話がメインだったので、この遺伝子が発現すると、細胞や組織、個体がどうなる…という議論が主だったのですが、私は普段の研究がら、実際に機能しているタンパク質は何なのか?その現象の基盤はいったいどのようなメカニズムなのか?ということが気になりました。そこはまだまだ解明されていないところ、というか、あまり関心の高いところではないようでした。


セミナーに参加すると、大変集中して聴いて、頭を働かせるので、1時間でどっと疲れたりもするのですが、とても勉強になるし、楽しく貴重な時間です。



[ 2008/09/25 11:03 ] セミナーのまとめ | TB(0) | CM(0)