ゾウの森　虫の森　人の森

アフリカの布はとても綺麗だ。

染め上がりが黒、白、茶色の泥染めなどもあるから
すべて同じとは言えないけれど、
一般的にどこの国でも着ているプリントされた布は、
大きな柄に明るい色で黒い肌にとても映え、
アフリカ人にはとても良く似合う。


ヌアバレ・ンドキ国立公園長官のマダム(奥さん）に会った時、
着ていた服がとても綺麗で、彼女の服を褒めると、
マダムは「お金をくれれば、布を買ってきてあげる」と言う。

嬉しかったが「私はお金を持っていないの。」と返事をした。

私は普段、お金を使う事がない。
食料を買う時は商店があるカボ村でまとめて買うから
普段はお金は持って歩かない。

しかもマダムと会ったボマサ村には商店がない。
お金を持つ必要がない。
これが待たない理由。さらに持たない理由はもう一つある。

商店のあるカボ村を歩いていて知らない子供や大人に挨拶をすると、
挨拶の次に出てくる言葉が
「お金を頂戴」の時がある。
「お金は持っていないんだ～」と返事をしてサッとそこを去る。

＊　＊　＊

時は経ち、私がボマサへ行った時、マダムが娘を伴って私を訪ねて来た。
マダムは首都土産に、私にアフリカの布をプレゼントしてくれたのだ。
柄は何とコンゴ共和国の大統領の顔入り！

お礼言ったものの、布を一目見て、どうしようかと思った。
濃いピンクと緑の配色、大統領の顔写真が散りばめ、
私なら手を出さない色と柄だったからだ。

とは言え、私の為に選んで買ってきてくれた行為を無駄にしてはいけない。
この布で服を作ってマダムに着て見せないよう。

色々考え、着て楽ちんな“ワンピース”を作ろうと決めた。
数か月後に予定していた日本帰国の際、型紙を買おう。

＊　＊　＊

日本では、様々なワンピースの中からムームーの型紙を選んだ。
ムームー作りに必要な糸とファスナーを買い持ってコンゴに戻って来た。

さてムームー作りだ！と思い久しぶりに布を広げて見てビックリ。

人間の記憶というのは、なんと曖昧なのだろう。
思っていたピンクと全然違っていたピンク。
しかも良く見ればピンク以外に
緑、茶色、黒などが入り、思っていた以上に派手ではない。

記憶の中のイメージで買って来たピンク色の糸もファスナーも
本当の布とは明らかに色が違っていた。
これでは布と色が合わない・・・。
仕方なしに持ち合わせの色を使い、ファスナーは買った物を使うしかない。

＊　＊　＊

作業に取り掛かり、型紙の指示通りには布を使う事ができない。

型紙では縦方向に型を取れとの指示。
でも大統領の顔は指示通りにすると皆横に寝てしまうし、
そのそも日本の布の左右の幅さえも全く違う。
生地はタップリある。
布の柄を優先し、指示に従わず自己流で断裁をしよう。

何しろ使っているのが“大統領の顔”だから、粗末に扱うのは失礼に当たる。

スカートの裾にギャサーを入れると大統領の顔が、お笑いの顔になる。
仮止めしては、顔を確認し、却下。
やり直して今度はどうかと確認、まだダメ。
何度やってもギャザーはダメだ。

成り行きでギャザーを入れていたらいつまで経っても終わらない。
型紙の作り方の指示に従わず、
顔の部分にだけはギャザーを一切入れない事でやっと落ち着いた。


生まれて初めて高度な柄合わせにもチャレンジ！
背中にわざと大統領の顔を設け、ファスナーを閉めると
大統領の顔が綺麗につながる様に工夫。

作り始めると止まらない性格。
合間に色々しながら最終的にムームーを３日で仕上げた。
できたムームーはこちら　↓↓↓


マダムに布を貰ったお礼として、余り布でバッグを作る事に。
こうして完成した物はどれもやっぱり可愛い。
バッグはこちら　↓↓↓


＊　＊　＊

マダムにムームーを着て見せに行くと、思った以上に喜んでくれた。
「バッグは、教会に行く時に持っていくわ！」と言い、
本当に翌日早速持って出かけていった。

不思議な事に縫う度に、布に愛着が湧いてきて、目もすっかり慣れてしまった。


記念にと、マダムと写した写真を見ながら自分の体格の貧弱さが目立ち、
まるで借り物を着ている様だ。
日本に居る時はさほど思わない普通の体格も、アフリカではガラリと変わる。

やっぱりこの布は黒い肌をした人達に良く似あう。
私も大柄のアフリカの布をカッコよく着こなす事ができたらな～と
いつも思っている。

アフリカの布は美しい。
その美しさに刺激され、私のアフリカ裁縫はまだまだ続きそうだ。

テーマ：海外生活
ジャンル：日記