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ボリビアのクーデター劇を巡るエボ・モラレスとハビエル・ミレイの奇妙な呉越同舟(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/06/26に起こったボリビアでのクーデター未遂に関して、元ボリビア大統領エボ・モラレスとアルゼンチン現大統領ハビエル・ミレイは共に、これはボリビアのアルセ現大統領が仕組んだ猿芝居だと非難した。これは一体何を意味しているのか。
Evo Morales & Javier Milei Make Strange Bedfellows In The Bolivian Coup Drama



 元ボリビア大統領エボ・モラレスは極左の代表であり、現アルゼンチン大統領ハビエル・ミレイは極右の代表だ。だが奇妙なことにこの2人は、2024/06/26に起こった現ボリビア大統領ルイス・アルセに対するクーデター未遂は、アルセ自身によるやらせだと非難した点で一致を見た。

 クーデターの首謀者であるフアン・ホセ・スニガ将軍は失敗直後、アルセから人気取りの為に一芝居打てと依頼されたと主張した。この話は当初は信憑性の有るものとは見えなかったのだが、政治的に対極に在る2人が今やスニガの主張を支持していることを考えると、この話に妙な説得力が出て来ることになる。

 但しこれには日和見的な政治的思惑が働いている可能性も有る。モラレスは2025年の総選挙で再度4期目を目指しているので、アルセの信用失墜に関心が有る。またミレイはゴリゴリの新自由主義者なので、社会主義者と名の付く者はどんな穏健派であっても憎んでいる。

 それでもこの二人が、アルセが「セルフ・クーデター」を企てたと非難している事実が世論に与える影響力は無視出来ないだろう。両者の世界観は正反対だが、彼等は独自に同じ結論に達したのだ。

 仮にこの主張に真実が含まれているとすれば、モラレスと対立中のアルセは彼に対して自身の人気を高めると同時に、現在進行中の経済金融危機からも国民の注意を逸らし、且つ後になってその件でCIAを非難するつもりだった、と云うシナリオが考えられる(実際、CIAにはボリビアに干渉して来た長い歴史が有る)。

 現時点では真相は不明だが、一般的な今後の予測は可能だ。モラレスがアルセを非難したことは、両者の対立を更に深め、大統領選挙に向けて左派陣営の内部分裂を広げることになるだろう。今後の展開次第では、特にモラレス支持者達が主要道路を封鎖する様な大規模抗議行動を展開した場合には、アルセは彼等を弾圧するのに軍を頼るかも知れない。

 とは言え、ボリビア軍は歴史的に米国と同盟関係に在り、素直にアルセに協力するとは考えられない。また一部の幹部はアルセはスニガを利用したと憤慨しているかも知れない。またスニガがアルセの退去要求に素直に応じたことは、軍が弱体化していることを明らかにしてしまったので、軍の方では屈辱を感じているかも知れない。

 従ってモラレスとの対立によってアルセが弱体化したと察知すれば、軍は今度は本当にクーデターを起こすかも知れない。その場合、彼等はCIAと共謀する可能性が非常に高く、また同じく反社会主義イデオロギーを奉じる隣国アルゼンチンのミレイにも支援を求める可能性も考えられる。ミレイの方ではそうすることで自国の国内問題から国民の目を逸らすことも出来るだろうし、西洋に恩を売れると計算しているのかも知れない。

 これらの変数を念頭に置くと、大統領選挙が近付くにつれ、ボリビアは多面的な危機に陥る可能性が有ると予想される。それを防ぐにはアルセは以下の点を確保しなければならない。
 
 ・経済金融危機が制御不能に陥らないようにする。
 ・軍の不信感を管理する。
 ・反乱を起こしかねないモラレスとの関係を何とかする。

 これらの課題はそれぞれ単独であっても解決が非常に困難な上、アルセはこれら全てを同時に行わなければならないので、彼にはこれらをやり遂げることが出来ないかも知れない。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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