毎年、もっもとブラックな企業に贈られる「ブラック企業大賞」を主宰しているブラック企業大賞実行委員会。
2012年の大賞は、もちろん東京電力(株)。
市民賞は(株)ワタミに輝きました。
東電は、ドイツのエテコンが主宰する「ブラックプラネット賞」も受賞しており、押しも推されぬ世界的なブラック・ブランドになりました。
TPPに参加すると、労働法制の改悪が行われる
TPP、ACTAに反対しているPARC(アジア太平洋資料センター)事務局長の内田聖子氏と、社民党党首、福島みずほ議員との対談から、国内でなし崩しに起きている国内法改悪の動きを追う。
今月上旬の録画です。
内田聖子氏は、このブラック企業大賞のコーディネーターでもあります。
福島みずほ「若手と語る」17|内田聖子さん
以下、対談の内容をコンパクトにして文字起こししたもの。
内田聖子氏(PARC):
自由貿易を際限なく許していると、人の命より利潤を追求することに走っていく。
健全な市場がなくなってしまうのに、世界のたった一握りの人たちが利益を追求し続けていく。果ては、破滅が待っている。
日本では、とにかくTPPの持ち出され方が急だった。
2010の秋、※菅直人が突然、TPP参加を言い出した。
たぶん、財界の圧力が相当あったのでしょう。
TPPは、「例外なき関税の撤廃」と、ISD条項を使えば、一私企業が国家を訴えることができる、というもの。
NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコの3国間 北米自由貿易協定)の事例を見てみると、アメリカの企業がカナダ政府を訴えたり、カナダの国内法を変えさせて規制緩和させたという事例はたくさんあります。(下は一部)
ISD条項と、それぞれの条約の関係
TPP参加後の世界がどうなるか。
先に結ばれた国際通商条約NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコの3国間 北米自由貿易協定)と、FTA(アメリカ・韓国)の事例を見ると分かりやすい。両方とも、ISD条項が盛り込まれている。
FTAの事例:
http://twitpic.com/7g5jvt
http://yangkuma.blog81.fc2.com/blog-entry-627.html
TPP後の世界を知るには、NAFTAに参加した国や、FTAを結んだ国の事例を見れば、おおよそ想像がつく、と言われています。
条約そのものの中身については、TPPのほうが圧倒的に威力があるのですが、それより問題は、一私企業が相手国の政府を訴え、勝訴してしまう、という、その国の主権を骨抜きにしてしまうほどの力のあるISD条項なのです。
ISD条項を使えば相手国の法律を変えさせる、ことも可能になるのです。
これこそ、TPPなどのような多国間国際条約が、協定参加国の国内法より上位に位置する、という分かりやすい事例です。
ISD条項が盛り込まれている、あらゆる条約には注意する必要がある、という意味はここにあります。
反対にアメリカが訴えられたというのは、ゼロ。
TPPの本質は、アメリカのルールを強引に世界中に押し付けようとするもので、いったんTPPに参加してしまうと、国の構造自体が変わってしまう。
単に安いものが入ってきていいね、といった単純な問題ではない。
医療の、国民皆保険が崩壊してしまうとか、農業についても、食品の表示の問題もそう。
遺伝子組み換え、公共事業も、TPPがカバーする21分野のありとあらゆることが変わってしまう。
福島みずほ氏:
TPPの中身を見ていると、かつてアメリカが、教書でこういうことをやれ、というのと同じ。
たとえば労働法制についても、規制緩和とか、※見なし管理職は、残業しても残業代は払わなくてもいいとか。
(※小泉構造改革の労働法制改悪「ホワイトカラーエグゼンプション」)
そういうものは、小泉構造改革のときは上程させないように頑張ったが、「日本は外国と(文化が)違うのだから、労働者の労働環境を守ります」と頑張っていたのが、一気にTTPによって、ザブンと流されてしまうようなもの。
これまでは、細かくひとつひとつ防御したり、精査したりしてきたが、TPPは、そんなものおかまいなしにいっきょに流してしまう。
TPPを推進したい経団連は、結局は、「自分のところだけ儲かればいい」
内田聖子氏:
TPPに参加するとなると、条約を結んでから国内法を条約に合わせる、という段取りになるはずが、実は、まだTPPに入ってもいないのに、国内法の改悪がすでに起こっている。
この間の政府の社会保障の一体改革の中で、条文の文言のところに、これまでは、「国民皆保険は堅持する、絶対に守る」という一文があったけれど、それが「原則・国民皆保険にする」と、そういう言い方に変わってしまった。
「社会保険を堅持する」という一文を書かせるために、国民が何十年もの間、運動を続けてきたのに、それが、コロッと書き変えられていて、つまり、「原則」と書かれてしまったら、「それは原則に当てはまらない人は当然、出てきますよね」という話になる。
これはもう、TTP参加後に企業が参入してきて、混合医療の解禁だとか、そうとう見越してやってしまっている。
なんで、TPP交渉の参加もしてしないのに、そこのところを、ドンドン変えてしまっているのか。
相当、ヤバイ。
やっぱり企業の動きだと思います。
これは、ひとつひとつ見ていけば明らかで、たとえば、アメリカにTPPを推進する企業連合っていう、あからさまな企業群があるが、それは、モンサント、カーギル、シェブロンとかウォールマートとか、とにかくTPPで儲けようという企業。
何を隠そう、我が国の経団連の米倉会長(住友化学)、そこはモンサントと業務提携している。
モンサントが儲かるということは、住友化学も儲かるということ。つまり、嘘っぱち。
米倉さんは、いちばん酷い。
日本経済のために、と言っているが、つきつめれば自分のところの会社が儲かりたいだけじゃないか、ということ。
なぜTPPを推進するのか - 経団連米倉会長ボロ儲けのカラクリ
今、TPPを推進しようとしている企業の多くは、原発の企業と重なっている。
こんなに酷い状態というのは、かつてなかった。
福島みずほ氏:
アメリカの共和党のミット・ロムニーさんが当選したら、国民皆保険を止める、と言っている。
国民皆保険がなくなったら、国民は医療に莫大なお金を使わなければならなくなる。
(※TPPによって日本に乗り込んでくる生命保険会社や医療サービスが莫大な利益を上げるためには、人々を病気にさせるように、飲料や食品に毒を入れればいい。
モンサントの人工ホルモン入りのアイスクリームを食べ、ダイエットするために人工甘味料・アステルパームを使ったスイーツを口にし、得体の知れないワクチンを接種し、ラウンドアップを使って栽培したGMO作物を食べ続ければ、ほぼ確実に病気になります。
問題は、こうした資本家たちが同じグループの人々である、ということです。
病気になるような食品を大量に作り、病人を増やして、製薬メーカーや保険会社が乗り込んでくる)
また、途中から文言が変えられていたように、国民皆保険は「原則として」維持されながら、混合診療になれば、結局、保険で使えるのは安かろう悪かろうということになる。
歯の治療にしても、保険外だと、丁寧ないい治療が受けられる、ということになる。
そこで、またお金がある人は保険外でやる。お金のない人は保険でやる。
国民皆保険を原則、堅持するといっても混合診療を導入してしまえば、命の値段をつきつけられることになる。
(※「原則的に堅持する」ということは、100人のうち99人が「例外の適用外」であっても、原則、堅持したことになる。
これは、「原則的に」は、法的な言葉ではなく、単なる「言葉のアヤ」に過ぎない)
TPPに入れば、アジアで日本の企業が暴走するだろう
内田聖子氏:
もうすでに非正規労働で、お金もすでになく、国民健康保険も払えずに、病気になっても、相当悪くならないと病院に行けない。
歯の治療なんて、とんでもないというくらい。
それは、すごく深刻な問題で、TPPに入るとそういう状態が一気に広がると思う。
アメリカなんかだと、中産階級の、あまりお金のない人は、入院するのに家を売ってから、ということになる。
歯の治療をちょっとやるだけで何十万円もかかるし、本当に、貧乏人は死ね、と言われているに等しい。
マイケル・ムーア監督の「Sicko シッコ」という映画を私たちは引き合いに出して話をするが、あの世界が何年後か日本でも起こると考えると恐怖する。
やはり、訴訟というものがたくさん起こってくると思う。日本も訴訟社会になる。
TPPは、国家の主権そのものが剥奪されるというものなので、主権国家ではなく、単なる消費者がロボットのようにたくさんいる、そういう状況になる。
思考を無くした国民という大きなマーケットだけがある世界
もうひとつTPPの問題で忘れがちなのは、日本の農業が壊されるとか、日本の医療がどうとか、実は日本が加害者になる可能性がある。
参加しているのは9ヶ国、マレーシアとかあるが、そういう国でまだまだ経済成長の過程にある国、ベトナムなどはその中に入っている。
かつて日本がアジアに進出して、環境破壊したり、搾取したりして、どんどんやってきたが、ISD条項を使えば、日本の企業もベトナム政府を訴えることができるようになるので、日本がアメリカからの被害者になるだけではなく、加害者になる可能性もある。
はっきり言って、日本の企業が狙っているのは、そこ。
「アジアの成長を取り込む」とか、「アジアの新しい市場で日本は食べていく」と言っているが、それは要するにアジアに進出して、日本の企業がガッポリ儲けましょう、ということなんで、私企業の暴走を有識者が止めようとしても、他国の政府を訴える、ということをやるだろう。
福島みずほ氏:
アメリカが日本に欠陥原子炉を輸出して福島第一原発事故の元をつくったのに、今度は日本がベトナムに原発を輸出しようとしている。
アメリカが日本に対して行ったことを、時間差をおいて、また日本が東南アジアでやろうとしている。
たとえば、フランスのアレバ社は、南アに原発を持っていこうとする。だから、この市場に日本もコミットしなければならい、と思っている。
使用済み核燃料の処分場すら日本は決められないのに、ただ儲ければいいのか、ということについては、私たちはNOと言うべきだ。
内田聖子氏:
企業はそもそも利潤を求めるもの。
ほうったらかしておくと、どんどんエスカレートしていく。
それを監視したり、チェックしたりした、お行儀よくさせないといけない。
日本は、その点が弱かった。
欧米や中南米では、市民社会ができていて、いろいろ抗議するとか、企業の格付けをしたりとか、そういうことを研究者やジャーナリストがやっている。
ダメな企業は、とことんつるし上げて。
具体的には、まずTPPを止めて、いろいろな基準を作っていく。ブラック企業大賞も、その一環。
メディアは、なかなか言わないので。それは実際に人を殺している企業ですから。
そのうしろに何十何人もの声を上げられない人がいると。
しかも、それが業界1位の、すき家とか、ワタミとか、相当社会的なインパクトがある企業で、人を殺しておいて、私は天地神明に誓ってブラック企業ではありません、とか言っていましたが、それは、他の企業にいろいろな影響を与える。
これでいいんだ、と思ってしまうのです。
ブラック企業大賞2012 予告編!
ACTAの裏の目的と思っているのは、インターネットの自由な利用が、政府によって監視される可能性があるということ。
あるいは、医薬品の問題はすごく深刻で、それこそジェネリック医薬品が作られにくくなったり、値段が高くなったりと。
すると、アジア、アフリカのエイズの患者は死んでしまうくらいの危険があって、国境なき医師団などは、ACTAに反対している。
福島みずほ氏:
TPPについては、9月に野田総理がAPECで何を言うか、というのがある。
(※野田首相はAPECで、第14回TPP拡大交渉会合には出席しないことを、ヒラリー・クリントンに正式に表明しました)
だから、前のAPECに野田総理が出かける前に、国会で「今、ここで言ってください。ここで言わないで、外国に行ってから賛成などと言わないでください。ここで言いなさいよ」とやったことがある。
内田聖子氏:
ただ、最後に、たとえば(野田総理に)今、ここでちゃんと言ってください、と言ったとしても、それでも(国民と約束しておきながら)実は本当に言ってしまうのではないか、という疑念がぬぐえない。
つまり、もう信頼ができない。
それは、私たちも官邸で、これだけ言っているのに、まったく届いていないと言う感じがしている。
選挙で国民は信頼して票を入れたのに、全然違うことをやっている。
最初、反対だ、と言っていたのに、賛成だ、と言ってみたり…。
そういう意味では、本当に民主主義の危機を感じているし、多く人がそう思っている。
だから、国民は原発再稼動のときに、官邸前のデモのように直接行動に出る。
みんな、選挙や民主主義というものに、一回、絶望している。
それでも希望を感じるのは、あれだけ多くの人たちが抗議行動を取っている、ということ。
もう一度、民主主義を取り戻したい。
政治家に、国民と約束したことは、ちゃんとやるんでしょ、と言わせてモラルを取り戻したい。
福島みずほ:
その通りだが、一方で、司法や雇用や社会構造を壊した小泉改革に、こりごりしているはずなのに、小泉改革の時の新自由主義的なものが、みんなの党を始め、いろんなところで広がっていて、本当は、小泉構造改革(の復活)に問題あり、という論調にならなければいけないのに、なかなかそうなっていない。
人々は、改革を求めながら、あれまた、新自由主義に拍手喝さいを送るように、とても変になっている。
政治状況が良くないけれど、新自由主義に反対、TPPに反対、反貧困、反原発、そして反消費税、反差別ということろで頑張っていきたい。
管理人:
再び「新自由主義=改革」に騙されている人々。新自由主義=国民総奴隷化」が正しい
内田聖子氏は、「マイケル・ムーア監督のSicko シッコという映画のような世界で起きたことが、何年後かの日本でも起こると考えると恐怖する」と言いました。
また、福島みずほ議員は、「国民は小泉構造改革に、こりごりしているはずなのに、小泉改革の時の新自由主義的なものが広がっていて、人々は、改革を求めながらも新自由主義に拍手喝さいを送るようなっている」と言いました。
日本の国民は、小泉純一郎の改革と称するデタラメな政策に今でも影響されているというのに、また、多くの人々が、新自由主義を求めようとしています。
あれほど嫌なヤツと言われてきたホリエモンの「勝ち組 負け組」(本当は和田アキ子が最初に言った)の世界がいいというのでしょうか。
しかも、今度はTPPという国際条約によって、おそらく、あなたが生きている間は、それに拘束されるのです。
そのもっとも顕著な例は、がん保険の規制です。
日本のがん保険市場は、事実上、外資の保険会社だけに解禁されています。
がん保険などの第三分野保険を日本国内の生命保険会社や損害保険会社が取り扱うことは、米国との合意に基づいて禁止されており、この分野の保険は、外資に独占されているのです。
日本人のがん保険は、アメリカンファミリー生命保険会社(持ち株会社は、ジョージア州コロンバス市に本社があるアフラック株式会社)に独占されてきたし、今でもそうです。
日本における代表者はチャールズ・レイク氏。前身はアメリカ合衆国通商代表部の日本部長でした。
今、TPP実現に向けて、実務レベルで調整しているのがアメリカ合衆国通商代表部です。
現在の米通商代表は、ロン・カークです。
ロン・カークとは、テキサス州ダラスで、TPPの前祝いの祝賀パーティーが開かれたとき、主賓として招かれた男です。
その同じ米通商代表部の日本部長が、アメリカンファミリー生命保険会社に天下りしていたのです。
つまり、このがん保険の外資への解禁措置こそ、TPP日本上陸の前哨戦だったというわけです。
アメリカという国は、数十年かけて大きな戦略を実行に移してきます。
人々は過去のことは忘れてしまっているので、いよいよ正体を現すまでは現実に起きている不可解な事象が相互に関連していることなど想像できないのです。
それが、日本の官僚の重大な欠陥です。
第三分野保険における外資の独占政策は2000年末まで延長された後、2001年にやっと解禁になったものの、日本の会社に市場が開かれたのは、大手生命保険会社と損害保険会社の子会社生保のみ。
現在でも、がん保険は外資が大方のシェアを占めているのです。
清涼飲料水や加工食品に発がん性の添加物を入れて日本人に食べさせ、「日本人の2人に1人はがんになりますよ」と、テレビの健康番組で将来の健康不安を煽ったり、毎日のように、そうしたCMが流されれば、誰でも家族のことを考えて、がん保険に入っておこう、と考えるはずです。
そうした国民への洗脳が功を奏して、アフラックの1999年時点の日本におけるがん保険の販売シェアは85%以上だったのです。
これは、日本政府が日本の生保に、長い間、がん保険市場を閉ざしていたからです。
日本人の命の値段が、外資の保険会社に値決めされているのです。
彼らが儲けるために、次は何をやるか。
それは、国民皆保険を止めて、混合診療にシフトすることです。
国は、急激な少子高齢化で、これ以上の医療費負担は国家の財政を破綻させる、と言います。
真の意味で、本当にそうなるのかは誰も分らないのです。
国が国民の医療費を削るということは、国民皆保険を止めるか、一部だけ適用するか、あるいは金箔のように薄く引き伸ばして、形式的上、「国民全部をカバーしていますよ」でお茶を濁すのか。
国は3番目の方針を採ろうとしているのです。
だから「堅持する」から、「原則、国民皆保険は維持する」に変わったのです。
形式的に残された国民皆保険では、高度ながん治療は受けられないので、高額な医療費を賄える人たちは混合診療を選択するようになります。
それ以外のごく一般的な人たちは、何十年も前から、外資の掛け捨てのがん保険に入って備える、ということになるのです。
しかし、病院に入って高度な治療を受けられても、効かない抗がん剤注射を打たれ、無用な手術を勧められ、結局は退院したものの、長くは生きられませんでしたということになれば、これ以上の悲劇はありません。
さて、今日の夕方から夜にかけて、市民による「世界同時アクション!STOP TPP!!&モンサントにNO!」抗議活動が行われます。
これは、18時からの「STOP TPP!! 首相官邸前アクション」抗議活動の前に銀座4丁目にある日本モンサント社の前でデモを行うものです。
専門家によるゲストトークなどもあったりで、近くの人で会社を数十分抜け出すことができる人はどうぞ。
(管理人と、このグループは関係がありませんが)
この「世界同時アクション!STOP TPP!!&モンサントにNO!」抗議活動は、以前に記事でご紹介した「9月中に世界同時発のモンサント抗議デモが実行される」に呼応したもの。
世界規模の「Occupy Monsanto !」のほうは昨日9月17日に実行されました。
今日のモンサント抗議デモは、午後4時30分くらいから始まる予定。
岩上安身氏のIWJが、IWJチャンネル4でインターネット実況中継してくれます。
大画面で観る方はこちらへ。
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TPP、ACTAに反対しているPARC(アジア太平洋資料センター)事務局長の内田聖子氏と、社民党党首、福島みずほ議員との対談から、国内でなし崩しに起きている国内法改悪の動きを追う。
今月上旬の録画です。
内田聖子氏は、このブラック企業大賞のコーディネーターでもあります。
福島みずほ「若手と語る」17|内田聖子さん
以下、対談の内容をコンパクトにして文字起こししたもの。
内田聖子氏(PARC):
自由貿易を際限なく許していると、人の命より利潤を追求することに走っていく。
健全な市場がなくなってしまうのに、世界のたった一握りの人たちが利益を追求し続けていく。果ては、破滅が待っている。
日本では、とにかくTPPの持ち出され方が急だった。
2010の秋、※菅直人が突然、TPP参加を言い出した。
菅直人の10月1日所信表明演説に「環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します」とある)
たぶん、財界の圧力が相当あったのでしょう。
TPPは、「例外なき関税の撤廃」と、ISD条項を使えば、一私企業が国家を訴えることができる、というもの。
NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコの3国間 北米自由貿易協定)の事例を見てみると、アメリカの企業がカナダ政府を訴えたり、カナダの国内法を変えさせて規制緩和させたという事例はたくさんあります。(下は一部)
ISD条項と、それぞれの条約の関係
TPP参加後の世界がどうなるか。
先に結ばれた国際通商条約NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコの3国間 北米自由貿易協定)と、FTA(アメリカ・韓国)の事例を見ると分かりやすい。両方とも、ISD条項が盛り込まれている。
FTAの事例:
http://twitpic.com/7g5jvt
http://yangkuma.blog81.fc2.com/blog-entry-627.html
TPP後の世界を知るには、NAFTAに参加した国や、FTAを結んだ国の事例を見れば、おおよそ想像がつく、と言われています。
条約そのものの中身については、TPPのほうが圧倒的に威力があるのですが、それより問題は、一私企業が相手国の政府を訴え、勝訴してしまう、という、その国の主権を骨抜きにしてしまうほどの力のあるISD条項なのです。
ISD条項を使えば相手国の法律を変えさせる、ことも可能になるのです。
これこそ、TPPなどのような多国間国際条約が、協定参加国の国内法より上位に位置する、という分かりやすい事例です。
ISD条項が盛り込まれている、あらゆる条約には注意する必要がある、という意味はここにあります。
反対にアメリカが訴えられたというのは、ゼロ。
TPPの本質は、アメリカのルールを強引に世界中に押し付けようとするもので、いったんTPPに参加してしまうと、国の構造自体が変わってしまう。
単に安いものが入ってきていいね、といった単純な問題ではない。
医療の、国民皆保険が崩壊してしまうとか、農業についても、食品の表示の問題もそう。
遺伝子組み換え、公共事業も、TPPがカバーする21分野のありとあらゆることが変わってしまう。
福島みずほ氏:
TPPの中身を見ていると、かつてアメリカが、教書でこういうことをやれ、というのと同じ。
たとえば労働法制についても、規制緩和とか、※見なし管理職は、残業しても残業代は払わなくてもいいとか。
(※小泉構造改革の労働法制改悪「ホワイトカラーエグゼンプション」)
そういうものは、小泉構造改革のときは上程させないように頑張ったが、「日本は外国と(文化が)違うのだから、労働者の労働環境を守ります」と頑張っていたのが、一気にTTPによって、ザブンと流されてしまうようなもの。
これまでは、細かくひとつひとつ防御したり、精査したりしてきたが、TPPは、そんなものおかまいなしにいっきょに流してしまう。
TPPを推進したい経団連は、結局は、「自分のところだけ儲かればいい」
内田聖子氏:
TPPに参加するとなると、条約を結んでから国内法を条約に合わせる、という段取りになるはずが、実は、まだTPPに入ってもいないのに、国内法の改悪がすでに起こっている。
この間の政府の社会保障の一体改革の中で、条文の文言のところに、これまでは、「国民皆保険は堅持する、絶対に守る」という一文があったけれど、それが「原則・国民皆保険にする」と、そういう言い方に変わってしまった。
「社会保険を堅持する」という一文を書かせるために、国民が何十年もの間、運動を続けてきたのに、それが、コロッと書き変えられていて、つまり、「原則」と書かれてしまったら、「それは原則に当てはまらない人は当然、出てきますよね」という話になる。
これはもう、TTP参加後に企業が参入してきて、混合医療の解禁だとか、そうとう見越してやってしまっている。
なんで、TPP交渉の参加もしてしないのに、そこのところを、ドンドン変えてしまっているのか。
相当、ヤバイ。
やっぱり企業の動きだと思います。
これは、ひとつひとつ見ていけば明らかで、たとえば、アメリカにTPPを推進する企業連合っていう、あからさまな企業群があるが、それは、モンサント、カーギル、シェブロンとかウォールマートとか、とにかくTPPで儲けようという企業。
何を隠そう、我が国の経団連の米倉会長(住友化学)、そこはモンサントと業務提携している。
モンサントが儲かるということは、住友化学も儲かるということ。つまり、嘘っぱち。
米倉さんは、いちばん酷い。
日本経済のために、と言っているが、つきつめれば自分のところの会社が儲かりたいだけじゃないか、ということ。
なぜTPPを推進するのか - 経団連米倉会長ボロ儲けのカラクリ
今、TPPを推進しようとしている企業の多くは、原発の企業と重なっている。
こんなに酷い状態というのは、かつてなかった。
福島みずほ氏:
アメリカの共和党のミット・ロムニーさんが当選したら、国民皆保険を止める、と言っている。
国民皆保険がなくなったら、国民は医療に莫大なお金を使わなければならなくなる。
(※TPPによって日本に乗り込んでくる生命保険会社や医療サービスが莫大な利益を上げるためには、人々を病気にさせるように、飲料や食品に毒を入れればいい。
モンサントの人工ホルモン入りのアイスクリームを食べ、ダイエットするために人工甘味料・アステルパームを使ったスイーツを口にし、得体の知れないワクチンを接種し、ラウンドアップを使って栽培したGMO作物を食べ続ければ、ほぼ確実に病気になります。
問題は、こうした資本家たちが同じグループの人々である、ということです。
病気になるような食品を大量に作り、病人を増やして、製薬メーカーや保険会社が乗り込んでくる)
また、途中から文言が変えられていたように、国民皆保険は「原則として」維持されながら、混合診療になれば、結局、保険で使えるのは安かろう悪かろうということになる。
歯の治療にしても、保険外だと、丁寧ないい治療が受けられる、ということになる。
そこで、またお金がある人は保険外でやる。お金のない人は保険でやる。
国民皆保険を原則、堅持するといっても混合診療を導入してしまえば、命の値段をつきつけられることになる。
(※「原則的に堅持する」ということは、100人のうち99人が「例外の適用外」であっても、原則、堅持したことになる。
これは、「原則的に」は、法的な言葉ではなく、単なる「言葉のアヤ」に過ぎない)
TPPに入れば、アジアで日本の企業が暴走するだろう
内田聖子氏:
もうすでに非正規労働で、お金もすでになく、国民健康保険も払えずに、病気になっても、相当悪くならないと病院に行けない。
歯の治療なんて、とんでもないというくらい。
それは、すごく深刻な問題で、TPPに入るとそういう状態が一気に広がると思う。
アメリカなんかだと、中産階級の、あまりお金のない人は、入院するのに家を売ってから、ということになる。
歯の治療をちょっとやるだけで何十万円もかかるし、本当に、貧乏人は死ね、と言われているに等しい。
マイケル・ムーア監督の「Sicko シッコ」という映画を私たちは引き合いに出して話をするが、あの世界が何年後か日本でも起こると考えると恐怖する。
やはり、訴訟というものがたくさん起こってくると思う。日本も訴訟社会になる。
TPPは、国家の主権そのものが剥奪されるというものなので、主権国家ではなく、単なる消費者がロボットのようにたくさんいる、そういう状況になる。
思考を無くした国民という大きなマーケットだけがある世界
もうひとつTPPの問題で忘れがちなのは、日本の農業が壊されるとか、日本の医療がどうとか、実は日本が加害者になる可能性がある。
参加しているのは9ヶ国、マレーシアとかあるが、そういう国でまだまだ経済成長の過程にある国、ベトナムなどはその中に入っている。
かつて日本がアジアに進出して、環境破壊したり、搾取したりして、どんどんやってきたが、ISD条項を使えば、日本の企業もベトナム政府を訴えることができるようになるので、日本がアメリカからの被害者になるだけではなく、加害者になる可能性もある。
はっきり言って、日本の企業が狙っているのは、そこ。
「アジアの成長を取り込む」とか、「アジアの新しい市場で日本は食べていく」と言っているが、それは要するにアジアに進出して、日本の企業がガッポリ儲けましょう、ということなんで、私企業の暴走を有識者が止めようとしても、他国の政府を訴える、ということをやるだろう。
福島みずほ氏:
アメリカが日本に欠陥原子炉を輸出して福島第一原発事故の元をつくったのに、今度は日本がベトナムに原発を輸出しようとしている。
アメリカが日本に対して行ったことを、時間差をおいて、また日本が東南アジアでやろうとしている。
たとえば、フランスのアレバ社は、南アに原発を持っていこうとする。だから、この市場に日本もコミットしなければならい、と思っている。
使用済み核燃料の処分場すら日本は決められないのに、ただ儲ければいいのか、ということについては、私たちはNOと言うべきだ。
内田聖子氏:
企業はそもそも利潤を求めるもの。
ほうったらかしておくと、どんどんエスカレートしていく。
それを監視したり、チェックしたりした、お行儀よくさせないといけない。
日本は、その点が弱かった。
欧米や中南米では、市民社会ができていて、いろいろ抗議するとか、企業の格付けをしたりとか、そういうことを研究者やジャーナリストがやっている。
ダメな企業は、とことんつるし上げて。
具体的には、まずTPPを止めて、いろいろな基準を作っていく。ブラック企業大賞も、その一環。
メディアは、なかなか言わないので。それは実際に人を殺している企業ですから。
そのうしろに何十何人もの声を上げられない人がいると。
しかも、それが業界1位の、すき家とか、ワタミとか、相当社会的なインパクトがある企業で、人を殺しておいて、私は天地神明に誓ってブラック企業ではありません、とか言っていましたが、それは、他の企業にいろいろな影響を与える。
これでいいんだ、と思ってしまうのです。
ブラック企業大賞2012 予告編!
ACTAの裏の目的と思っているのは、インターネットの自由な利用が、政府によって監視される可能性があるということ。
あるいは、医薬品の問題はすごく深刻で、それこそジェネリック医薬品が作られにくくなったり、値段が高くなったりと。
すると、アジア、アフリカのエイズの患者は死んでしまうくらいの危険があって、国境なき医師団などは、ACTAに反対している。
福島みずほ氏:
TPPについては、9月に野田総理がAPECで何を言うか、というのがある。
(※野田首相はAPECで、第14回TPP拡大交渉会合には出席しないことを、ヒラリー・クリントンに正式に表明しました)
だから、前のAPECに野田総理が出かける前に、国会で「今、ここで言ってください。ここで言わないで、外国に行ってから賛成などと言わないでください。ここで言いなさいよ」とやったことがある。
内田聖子氏:
ただ、最後に、たとえば(野田総理に)今、ここでちゃんと言ってください、と言ったとしても、それでも(国民と約束しておきながら)実は本当に言ってしまうのではないか、という疑念がぬぐえない。
つまり、もう信頼ができない。
それは、私たちも官邸で、これだけ言っているのに、まったく届いていないと言う感じがしている。
選挙で国民は信頼して票を入れたのに、全然違うことをやっている。
最初、反対だ、と言っていたのに、賛成だ、と言ってみたり…。
そういう意味では、本当に民主主義の危機を感じているし、多く人がそう思っている。
だから、国民は原発再稼動のときに、官邸前のデモのように直接行動に出る。
みんな、選挙や民主主義というものに、一回、絶望している。
それでも希望を感じるのは、あれだけ多くの人たちが抗議行動を取っている、ということ。
もう一度、民主主義を取り戻したい。
政治家に、国民と約束したことは、ちゃんとやるんでしょ、と言わせてモラルを取り戻したい。
福島みずほ:
その通りだが、一方で、司法や雇用や社会構造を壊した小泉改革に、こりごりしているはずなのに、小泉改革の時の新自由主義的なものが、みんなの党を始め、いろんなところで広がっていて、本当は、小泉構造改革(の復活)に問題あり、という論調にならなければいけないのに、なかなかそうなっていない。
人々は、改革を求めながら、あれまた、新自由主義に拍手喝さいを送るように、とても変になっている。
政治状況が良くないけれど、新自由主義に反対、TPPに反対、反貧困、反原発、そして反消費税、反差別ということろで頑張っていきたい。
管理人:
再び「新自由主義=改革」に騙されている人々。新自由主義=国民総奴隷化」が正しい
内田聖子氏は、「マイケル・ムーア監督のSicko シッコという映画のような世界で起きたことが、何年後かの日本でも起こると考えると恐怖する」と言いました。
また、福島みずほ議員は、「国民は小泉構造改革に、こりごりしているはずなのに、小泉改革の時の新自由主義的なものが広がっていて、人々は、改革を求めながらも新自由主義に拍手喝さいを送るようなっている」と言いました。
日本の国民は、小泉純一郎の改革と称するデタラメな政策に今でも影響されているというのに、また、多くの人々が、新自由主義を求めようとしています。
あれほど嫌なヤツと言われてきたホリエモンの「勝ち組 負け組」(本当は和田アキ子が最初に言った)の世界がいいというのでしょうか。
しかも、今度はTPPという国際条約によって、おそらく、あなたが生きている間は、それに拘束されるのです。
そのもっとも顕著な例は、がん保険の規制です。
日本のがん保険市場は、事実上、外資の保険会社だけに解禁されています。
がん保険などの第三分野保険を日本国内の生命保険会社や損害保険会社が取り扱うことは、米国との合意に基づいて禁止されており、この分野の保険は、外資に独占されているのです。
日本人のがん保険は、アメリカンファミリー生命保険会社(持ち株会社は、ジョージア州コロンバス市に本社があるアフラック株式会社)に独占されてきたし、今でもそうです。
日本における代表者はチャールズ・レイク氏。前身はアメリカ合衆国通商代表部の日本部長でした。
今、TPP実現に向けて、実務レベルで調整しているのがアメリカ合衆国通商代表部です。
現在の米通商代表は、ロン・カークです。
ロン・カークとは、テキサス州ダラスで、TPPの前祝いの祝賀パーティーが開かれたとき、主賓として招かれた男です。
その同じ米通商代表部の日本部長が、アメリカンファミリー生命保険会社に天下りしていたのです。
つまり、このがん保険の外資への解禁措置こそ、TPP日本上陸の前哨戦だったというわけです。
アメリカという国は、数十年かけて大きな戦略を実行に移してきます。
人々は過去のことは忘れてしまっているので、いよいよ正体を現すまでは現実に起きている不可解な事象が相互に関連していることなど想像できないのです。
それが、日本の官僚の重大な欠陥です。
第三分野保険における外資の独占政策は2000年末まで延長された後、2001年にやっと解禁になったものの、日本の会社に市場が開かれたのは、大手生命保険会社と損害保険会社の子会社生保のみ。
現在でも、がん保険は外資が大方のシェアを占めているのです。
清涼飲料水や加工食品に発がん性の添加物を入れて日本人に食べさせ、「日本人の2人に1人はがんになりますよ」と、テレビの健康番組で将来の健康不安を煽ったり、毎日のように、そうしたCMが流されれば、誰でも家族のことを考えて、がん保険に入っておこう、と考えるはずです。
そうした国民への洗脳が功を奏して、アフラックの1999年時点の日本におけるがん保険の販売シェアは85%以上だったのです。
これは、日本政府が日本の生保に、長い間、がん保険市場を閉ざしていたからです。
日本人の命の値段が、外資の保険会社に値決めされているのです。
彼らが儲けるために、次は何をやるか。
それは、国民皆保険を止めて、混合診療にシフトすることです。
国は、急激な少子高齢化で、これ以上の医療費負担は国家の財政を破綻させる、と言います。
真の意味で、本当にそうなるのかは誰も分らないのです。
国が国民の医療費を削るということは、国民皆保険を止めるか、一部だけ適用するか、あるいは金箔のように薄く引き伸ばして、形式的上、「国民全部をカバーしていますよ」でお茶を濁すのか。
国は3番目の方針を採ろうとしているのです。
だから「堅持する」から、「原則、国民皆保険は維持する」に変わったのです。
形式的に残された国民皆保険では、高度ながん治療は受けられないので、高額な医療費を賄える人たちは混合診療を選択するようになります。
それ以外のごく一般的な人たちは、何十年も前から、外資の掛け捨てのがん保険に入って備える、ということになるのです。
しかし、病院に入って高度な治療を受けられても、効かない抗がん剤注射を打たれ、無用な手術を勧められ、結局は退院したものの、長くは生きられませんでしたということになれば、これ以上の悲劇はありません。
さて、今日の夕方から夜にかけて、市民による「世界同時アクション!STOP TPP!!&モンサントにNO!」抗議活動が行われます。
これは、18時からの「STOP TPP!! 首相官邸前アクション」抗議活動の前に銀座4丁目にある日本モンサント社の前でデモを行うものです。
専門家によるゲストトークなどもあったりで、近くの人で会社を数十分抜け出すことができる人はどうぞ。
(管理人と、このグループは関係がありませんが)
この「世界同時アクション!STOP TPP!!&モンサントにNO!」抗議活動は、以前に記事でご紹介した「9月中に世界同時発のモンサント抗議デモが実行される」に呼応したもの。
世界規模の「Occupy Monsanto !」のほうは昨日9月17日に実行されました。
今日のモンサント抗議デモは、午後4時30分くらいから始まる予定。
岩上安身氏のIWJが、IWJチャンネル4でインターネット実況中継してくれます。
大画面で観る方はこちらへ。
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