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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
ともにプロジェクトに取り組んでいるMITでPh.D.をとった若手の博士の質問力の凄さ

質問せよ、その人が答えられなければ、別のエキスパートを紹介してもらえ。納得する答えにたどり着くまでこれを繰り返せ


について書きました。

彼女の質問するエネルギーは相変わらず強烈で、この木曜と金曜日は午後3時間以上、合計6時間以上マンツーマンで質問に答えることに費やしました。彼女の質問をガイドに私も問題の本質を考え直すためのよい機会を持てたと感じています。よい質問に答え続けることで自分の考えがまとまり(結晶化)し金曜日にオフィスを出るころには、自分の頭の中がかなりスッキリしました。

なかでも、キーとなった質問は「2年で5億円の研究費を与えられれば(金に糸目をつけなければ)、あなたは自分の研究領域で何を(what)どのように(how)研究するか」でした。ほとんどの研究は限られた予算で成果を出すように日々工夫していますが、逆に予算がないことを、最も重要な課題に取り組まない理由にしがちです。そして、そのうち「すべきこと」と「できること」をすり替えてしまうようになります。ですから、「5億円の研究費」で「すべきこと」をとことん考えることは、自分が本当に重要な問題に取り組んでいるのか、(または、本当に重要な問題の方向に向けて進んでいるのか)を改めて考える上で非常によい思考トレーニングになりました。予算の枠をはずして(しかし、期限の枠ははずさず)研究すべき対象と方法を再検討するトレーニングを定期的に持つことは、通常予算の限られたアカデミアの研究者には必要ではないでしょうか。

あともう一つ彼女の質問のスキルで優れたところは、私が質問に答え続けてそのうち、本質に迫る答え(結晶)にたどりついた時には、本当に喜びと感謝に満ちあふれた表情をすることです。頭の中がスッキリし、相手にも感謝されることこそ回答者の最大の贅沢です。

テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術


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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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