立憲主義と民主主義と労働法
後出しじゃんけんの気味もなきにしもあらずですが、ここ数ヵ月間もやもやしていたことについて、メモ書き的に。
要は、憲法学者が掲げる立憲主義って、そんなに偉いの?ってことなんですが。
アメリカにおける労働法の歴史をひもとけば、裁判所が、契約自由という至高の原理や共謀は悪だという法原理を掲げて、労働組合などという不逞の輩のやらかすあれやこれやを一生懸命叩いてきたことが分かります。民主主義原理に基づいて、クレイトン法を作っても、ひっくり返されるし、ローズベルト大統領の下で、NIRAを作っても、違憲だとひっくり返される。ワグナー法も違憲なるところを、ローズベルト大統領がむりやり最高裁の判事に自分の側の人間を押し込んで、なんとか合憲にしてしまったわけで、民主主義に批判的な立憲主義の立場からすれば、ほとんど民主的な独裁政権でしょう。
労働法という新たな法原理が産み出される場では、そういうある種の「非立憲」がありうるということは、実は形は違えど、多くの諸国で見られることでしょう。実は日本だって、「8月革命」という「非立憲」がなければ、このようなものにはなっていないはず。
いや、特定の分野の特定の事案についてあれこれ論ずるつもりは全くないのですが、そもそも論として、法と政治全般を広い歴史的観点で眺めるならば、立憲主義を掲げていさえすれば万事がうまくいくという話でもないというのが原点のはず。
後は個別論点についてどう考えるかになる。どこかにデウス・エクス・マキナがあるわけではない。
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>実は日本だって、「8月革命」という「非立憲」がなければ、このようなものにはなっていないはず。
えぐい。
投稿: くみかおる | 2015年10月 2日 (金) 12時45分
「立憲主義に反するから悪だ」とする主張は、結局「悪法も法」という立場を導くことになるのですよね。言っていることは「ルールを守らないのは悪いこと」に要約されるわけで。
そうした安易な主張に対しては、例えば、ナチスのユダヤ人隔離法も守らないのは悪なのか? 当時、ユダヤ人隔離法に反してユダヤ人を匿った人たちは悪なのか? などと歴史のなかから反例が容易にみつかることになるでしょう。先生のおっしゃるニューディール立法、日本国憲法の成立過程と同様に。
法案に対して反対するなら、その目的・内容が自らの信念・良心に反するから、とする他なかろうと思います。まあ、逆に、共通の信念や良心を持たないがために、立憲主義を持ち出さざるをえない、ということなのかもしれません。
投稿: IG | 2015年10月 4日 (日) 00時28分
アメリカの裁判所は、自然権を抑圧しているか否かを判定するのが仕事。
憲法に違反しているかどうかは判断していません。
立憲主義は憲法で自然権を抑圧しようという思想ですからアメリカでは完全に否定されていますし、戦後はどこの国もアメリカと同じようになっています。
日本は明治からやっています。
投稿: めけめけ | 2015年10月 5日 (月) 01時29分
めけめけさんへ
>立憲主義は憲法で自然権を抑圧しようという思想ですから
そんな乱暴なことが何故言えるのですか?自然権の代表的なものが人権です。また、立憲主義は基本的人権をしっかり基本においた主義です。
>戦後はどこの国もアメリカと同じようになっています。
そんなことはありません。
投稿: トミー | 2015年10月14日 (水) 23時05分