「いっそ「労働組合LLP」を作って、社員はすべてそこから派遣する」は既に存在する
小飼弾氏の「404 Blog Not Found」の今日のエントリで、興味深い一節がありました。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51411909.html
といっても、本論の
金融日記氏の
>ひとことでいえば、ピンハネで搾取されていると思うなら辞めればいいじゃんということです。
先進国はどこでも職業選択の自由が保障されているので、何人たりとも強制労働させられることはありません。
に対して、
>この論法のどこが詭弁かというと、本来は定量的な「自由」というものを、あたかも定性的なものであるかのごとく語っていること。
>資本主義社会において、金に不自由であることは、即、副詞抜きの不自由につながる。
と批判している点ではありません。そのあとの
>かといって、私は派遣労働そのものが悪いとは思わないし、ピンハネという行為そのものが悪いとも思っていない。「利益」というのはピンハネの言い換えにすぎないのだから。問題はピンハネ率が「不自由」な人ほど高く、にも関わらずそれが不自由な人には知られていないということにある。
のすぐあとで、一見突飛なことを言っているかのように、
>いっそ「労働組合LLP」を作って、社員はすべてそこから派遣する、すなわち「正規雇用」そのものを廃止した方がいいのではないかとすら考えている。
まあ、正規雇用廃止論はまた別に論じることにして、ここで取り上げたいのは「いっそ「労働組合LLP」を作って、社員はすべてそこから派遣する」」という発想です。
これについて、小飼弾氏は以前にこういうエントリを書かれていたそうですが、
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50725321.html
>まず、労働者(workers)は、「労働組合LLP」のメンバーとなり、同時にそこの「社主」ともなる。LLPなので株式会社と違って議決権は出資額に比例させなくてもいい(一人一票でも構わない)。この会社は、Job Descriptionを定義した上で、その条件の元、株式会社に社主たる労働者を派遣する。この労働組合LLPには、パートタイマーも所属するものとする。
そして営利法人は、「従業員」を直接雇用することは出来ず、それに相当する者は必ず労働組合LLPからの派遣を受ける形で採用する。この際、株式会社は労働組合LLPが用意した「メニュー」の中からこうしたjob descriptionsの下で何人というリクエストを出す事はできるが、具体的な人員の取捨は基本的に出来ない。
おそらく小飼弾氏は現行日本法令など一切参照することなく、ご自分の脳みそだけでこれを考え付かれたのだと思いますが、実はこれは、(それが強制されることがないという一点だけ除けば)終戦直後の1947年に職業安定法が制定されて以来、60年以上にわたって、この日本国の法制として現存してきた仕組みそのものなのです。
そう、職業安定法に規定する労働組合の労働者供給事業とは、まさに一人一票で運営される労働組合がその組合員を企業に「供給」する仕組みであり、その際、人員の取捨はできません。
ところが、なまじ派遣法に詳しい人ほど、労働者供給事業というのは悪の根源という言い方しかしなくて、労働組合が堂々とやれる立派な事業であるという認識が欠落していることが多いのです。
現行法自体、労働者派遣や労働者供給を頭から悪とみなしているわけではありません。直接雇用の正社員だけが正しい在り方だと決めつけているわけでもありません。
現在も、新運転をはじめとする少数の職種別労働組合は、労働者供給事業を運営してきています。
企業別組合だけが日本の労働組合であるわけでもないのです。
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-722a.html(日々雇用の民間需給調整事業の元祖)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_4a8d.html(登録型派遣は労働者供給なんだが・・・)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-10a7.html(労供労連集会にて)
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