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« マムチロさんの短評 | トップページ | 中立を装った現状肯定論者 »

2009年8月29日 (土)

またしても池田信夫氏の捏造

こういう指摘をすると、池田信夫氏がどういう反応をするかはいままでの経験から重々判っています。中身には一切言及せず、もっぱらわたしが労働省なる三流官庁の役人上がりの分際で、修士号もないくせに大学院で教えているとは笑止千万、俺様は博士(政策・メディア)だぞ・・・という悪罵がイナゴの大群とともに怒濤のごとくやってくるのは目に見えています。

とはいえ、これはいかにも捏造というべきでしょう。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/8c0f4f37800d4ba31f00651ee1d40693

>鳩山由紀夫氏によれば、「市場原理主義」が文化や伝統を破壊して、信頼にもとづく社会の秩序を危うくしているそうだが、それは本当だろうか。Francois et al.によれば、規制改革によって労働市場が競争的になると、労働者の信頼は高まるという。

そのフランソワさんたちが実際にどういうことを言っているかは、通常の英語力があれば理解できます。

http://voxeu.org/index.php?q=node/3906

>We test the hypothesis that competition between firms in the sector of one’s employment increases trust.

業界内の企業間の競争が激しければ激しいほど、競争に負けないようにがんばろうと、労働者の間の信頼は高まる・・・・・・・という仮説を検証しているのです。

その検証自体の適切さについてはここでは論評しません。ただ、仮説自体がいかにもそうだろうな、という納得性のあるものであることは確かです。トヨタと日産の競争が激しければ激しいほど、トヨタ社員同士の信頼感は高まったでしょう。

このリンク先の銀行の規制緩和が進むにつれて銀行員同士の信頼が高まったというのもそういう問題意識でしょう。

彼らはその理由についても、

>We think it is because competition disciplines people to act in the group’s interest.

企業間競争が人々を集団の利益のために行動するように鍛えるからだろう、と推測しています。

フランソワさんたちは、「労働市場が競争的になると、労働者の信頼が高まる」などと言うことは一言も言っていません。そもそもそんな仮説を検証しようなどとも考えていません。

まあ、池田信夫氏にとってはいつもながらのやり口ではあるのでしょうが、こういう捏造的紹介をされたフランソワさんたちにとっては、名誉毀損ものではないでしょうか。

(追記)

はてぶでinumashさんが紹介していますが、冒頭の記述のいきさつは、中立的立場から冷静に評論している「天漢日乗」さんの次のエントリが適当でしょう。関係するエントリがリンクされているのも便利です。

http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/12/vs_hamachan_b8c8.html

「品のない罵倒だなあ」という実例も引用されていますので、池田信夫氏の品性を鑑賞するのに好適です。いまに至るまで、全くやり口が変わっていないところも興味深いですし。

なお、切込隊長氏のこのエントリも、コメントも含めなかなか味わい深いものがあります。

http://kirik.tea-nifty.com/diary/2007/12/post_e50a.html

いま改めて読み直してみると、切込隊長氏は

>もしこの手のフレーミングに審判員がいるのであれば、いま語られている内容ではなくて、論じるべき政策的課題(フリーター問題など)の題材を与えて二人にそれについての解説や処方箋を簡潔に書かせ、それを比べてどちらがより知性的か、論理的かを読み手が判断したほうが早いのではないだろうか。

と語っておられたのですね。

ぜひ、拙著をお読みいただき、わたくしの解説や処方箋がどれくらい知性的か、論理的かを一刀両断に批判していただければこの上ない幸いです。

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コメント

もとのエッセイに対する感想です。

もとのエッセイにあるようにジンメルの社会学の命題ですね。「外部の社会や集団と対立関係にある集団では、成員相互の連帯感が強まり、結合的な相互作用が促進され、集団として凝集性が高まりやすくなる」。対外緊張が対内緊密を高めるという有名な命題です。

この命題から、激しい企業間競争→各企業内の成員の連帯感を高めるという仮説が構築できます。

ただし、エッセイの著者が分析に利用しているアメリカのGSSの設問は、「人間一般に関する信頼度」を尋ねるもので、従業員間の信頼度を尋ねたものではないです。

言い換えれば、企業内の成員の連帯感が高まると人間一般への信頼感が高まることが検証されないと、このデータに基づいて、「激しい企業間競争→各企業内の成員の連帯感を高める」ことが証明できたことにならないのでないでしょうか。

これはこれは佐藤先生にコメントいただきました。

そうですね、原文では、「trust」の質問は、

>“Do you think that most people can be trusted or that you can’t be too careful in dealing with people?”

です。
ただ、フランソワたちは、それを企業内の労働者相互間の信頼感という風にとらえているようで、

>Each one of the many workplaces in the labour market constitutes a collection of workers tied together via the performance and continued existence of their firm. Shirking, or free-riding, is always good for the individual but bad for the group. Groups with more free-riders tend to under-perform, and when competition is intense, under-performance becomes very costly. This limits free-riding in competitive environments, and the more time one spends with people who don’t free-ride, the more one is likely to trust others.

仲間ががんばってるのにフリーライドするようなのがいるような企業は業績が落ちて云々という説明になっているんですね。

よく考えると、両者の間にはもう一段の説明が必要なのでしょう。

企業間競争が高まると、会社の人間は競争に負ける
事を前提にして企業内でリストラがあった場合に
備えて、自分だけが生き残ろうとし、同じ会
社内で足の引っ張り合いをするものですよ。

業界内の企業間の競争が激しければ激しいほど、競争に負けないようにがんばろうと、労働者の間の信頼は高まる

―――

業界内の企業間の競争が激しければ激しいほど、競争に負けないように、非正規社員を増やそうと、正規労働者の結束は高まる

が、事実でしょ。

通りすがりさんの立場は判らないけど、実際は非正規も正規もへったくれもなくて、まずは競争に勝とうとします。
ただ勝ち方が、企業内の各々の立場で異なるので、その辺で変な事になることは、洋の東西を問わず大企業にはありがちです。
誰の目にも負けが明らかになると、某ITゼネコン勤務者さんの書かれてる状況になり、負け方が加速します。

介護医療業界でいうとどうなりましょうか。
連帯感の薄かったであろう医師たちの逃散~立ち去り型サボタージュが顕在化する一方で全国医師ユニオン(や全国医師連盟)が実現するというのは”成員相互の連帯感が強まり、結合的な相互作用が促進され、集団として凝集性が高ま”った結果でしょうか。
そうすると対内緊密を高めた対外緊張はなんだったのだろうか…と

こんなのは、普通の英語力を持った人には「今更」なんですが、いなごさんは親分同様の英語力のようなので、念のため。

http://b.hatena.ne.jp/entry/eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-8afc.html

>捏造の捏造:The horizontal axis denotes the competitiveness of firms in a worker’s sector of employment.←労働市場での企業間競争ね。

「労働者が雇用されている業種における企業の競争力」と訳さないと、試験に落ちますよ。

短いのですから、原文をよく読みましょう。こんなことまでEY(英語が読めない)の親分さんに忠誠を誓う必要はありません。

ついでにいうと、わたくしを「馬鹿口」などとからかうのは全然かまいませんが、佐藤博樹先生まで巻き込むと、親分さんのためになりませんよ。

素直なイナゴさんだこと・・・。

さっとはてぶを書き換えましたね。

>apj_yamagata 専門家は都合よく捏造する、素人は都合よく誤解する。the competitiveness of firms in a worker’s sector of employment←労働市場での企業間競争と誤解した。いずれにしても、企業同士の競争が強いとき人間同士の信頼が強いと主張

どんな科目にせよ、先生から「これは間違いだよ」と親切に教えてもらったら、素直に学ぼうとするのが「学に志す」者の第一歩です。

イナゴさんはまず第一歩を踏み出したようですが、さて・・・。

おなじく、こっちは「お笑いみのもんた劇場」さんのところから。

これもいかにも池田信夫氏らしい「改竄」ですねえ。

http://montagekijyo.blogspot.com/2009/09/blog-post_27.html">http://montagekijyo.blogspot.com/2009/09/blog-post_27.html(池田信夫がコメント欄を改ざん)

http://montagekijyo.blogspot.com/2009/09/blog-post_26.html">http://montagekijyo.blogspot.com/2009/09/blog-post_26.html(池田信夫をいぢってみた)


デンマークといい、スウェーデンといい、池田信夫氏が馬脚を現す鬼門は北欧にありそうですね。

検索エンジンの限定オプション記事における「このブログはこんなにひどいからダメ」な言及は該当ブログへ読者を誘導する結果をもたらしたようで、やや滑稽ですね。

読んでもらえればどちらが正しいか判るから・・・じゃなくて趣意は読まれるとまずいことになるから遮断したい、なはずなのに。
逆効果?

意見を交わして問題点・相違を明らかにしたり合意形成・譲歩から逃げるという目標を達成するために都合の悪いことを情報遮断するという手段を用いる傾向がありますね。
・「○○はくだらないから○○だけ読んで捨てた・読むのを止めた(からもう議論は出来ない)」
・「○○については何度も述べたのでもう書かない」
・「違う意見を世の中の人に読ませないようにするために○○するべき(コントロール不可能な匿名禁止・検索エンジン制限)」
・どこに問題や意見の相違があるか、という指摘を入念に回避したため、反論を受ける余地や、その結果論破される可能性のない書評(他の書評との比較はされる)

ちなみに、わたしは水に落ちた犬を叩いたり、弱いものいじめをするのは大嫌いです。性に合いません。

わたしが叩いたり、いじめたりするのは、ねじけたエリート意識を振り回しすぎて自分で勝手にすっ転んだ輩だけですから。

池田信夫という人は、あらゆる分野で捏造と虚偽を繰り返しているんだと言うことが分かりました。参考になりました。ありがとうございます。

http://www4.synapse.ne.jp/nohoho/tanaka.html#children">http://www4.synapse.ne.jp/nohoho/tanaka.html#children
でも池田氏は捏造を行っています。
専門分野でも同じ事を行っているのを読んで驚きました。

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