産婦人科医逮捕・医師の危機感

 産婦人科医逮捕関連でここへ流れてくる方が増えているようなので、見出しをまとめてみました。随時更新します。
 僕はこの医師が不当に逮捕されたという思いから、実名をやたらと記載するのを避けようと思い、当初から記載を避けていました。もはやあまり実名を出さないことに意味がなくなってきましたが、当面そのままの方針です。そのため、実名を含むリンク先や記事からは、その部分を抜いています。

【外部リンク】

ある産婦人科医のひとりごと

http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/
報道はほぼ全て追いかけられています。

支援するグループ

http://medj.net/drkato/index.shtml

周産期医療の崩壊をくい止める会

→福島産科医師不当逮捕に対し陳情書を提出するホームページ

→周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページ

http://plaza.umin.ac.jp/~perinate/cgi-bin/wiki/wiki.cgi

ふか&もけ 産婦人科医逮捕起訴関連リンク集

http://fukanju.exblog.jp/3244511/
この事件に言及したテキストへのリンク集。

【産婦人科医逮捕関連】

帝王切開手術死で医師逮捕

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060219#p1
最初のテキスト。今回の事件の概要。

異状死

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060221#p1
異状死というものの定義。法医学会と外科学会。

産婦人科医不当逮捕関連

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060227#p1
事故報告書やリンク集など。
(リンク集 http://fukanju.exblog.jp/3244511/ )

産科婦人科学会の声明

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060228#p1
学会も逮捕にとまどっているという声明。

産婦人科医 派遣中止へ

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060303#p2
福島県内から一人医長撤退の方向へ。

支える会

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060304#p1
福島県産婦人科医会の立ち上げた「支える会」。募金活動など。

産婦人科医逮捕に対する声明

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060307#p1
神奈川県産科婦人科医会は、この逮捕が不当であると判断し、この暴挙に対して強く抗議する。

産科医逮捕に困惑(朝日新聞)

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060308#p1

産婦人科医逮捕への抗議声明

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060309#p1
相馬郡医師会・双葉郡医師会・いわき市医師会共同声明・支援グループ声明
(支援するグループ http://medj.net/drkato/index.shtml )

県立病院医師逮捕/応援の提案応ぜず

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060310#p1

福島県の県立病院の医師起訴についての声明(産科婦人科学会)

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060310#p2
信じがたいことに、不当起訴が行われました。

帝王切開手術中に死亡、福島県の産婦人科医を起訴

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060310#p3
読売新聞より。

福島産科医師不当逮捕に対し陳情書を提出するホームページ

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060310#p4
医局の教授名での陳情書。( http://www006.upp.so-net.ne.jp/drkato/ )

産婦人科医不当起訴関連

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060312#p1
起訴後の報道、検察の見解など。刑法38条。

戦うときに大切なこと

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060312#p2
落としどころとか。

大野病院関連

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060314#p1
参議院での質問など。

産婦人科医師逮捕・起訴に対する抗議声明

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060314#p4

回診中に逮捕

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060315#p2

大野病院関連・過誤と補償

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060316#p1
各団体からの抗議声明へのリンク。

大野病院事件

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060319#p1
一区切りとして。

外科学会・大野病院事件

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060402#p1
第106回外科学会での話題。

ふざけるな、福島県警!

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060417#p1
大野病院事件を表彰?

福島県警の不当「表彰」撤回要求

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060420#p1

極力福島県には立ち入らない

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060424#p1

大野病院事件・弁護団プレスリリース

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060801#p2
2006/7/21付プレスリリース。

大野病院事件・第2回公判前手続き

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060814#p1

「回診中に逮捕」訂正

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20070129#p2

大野病院事件・とうとう公判開始

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20070115#p1

あれから一年

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20070218#p1

2.18という記憶

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20080218#p1

「無罪判決」の人間を逮捕したことは正当なのか

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20080824#p1

【逮捕報道以前にたまたま触れていた産婦人科関連】

産婦人科医は何人?

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060203#p2
新研修制度を終えて産婦人科を専門に選ぶ人の少なさについて。

辞めたい

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060221#p2
激務の上、不可抗力の事故まで訴訟を起こされるような昨今を憂う替え歌。今回、まさにそんなことが起こったわけですが。

【その他広く医療問題】

信頼の医療

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20041213#p2
2003/11/15初出。すでにおかしな訴訟に怯え、萎縮医療を危惧していたのに。

転んで擦りむいたら病院?

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20050719#p1
少なくとも僕は、転んで擦りむいたりとかいう程度で病院に行くって発想がなかったのです。

献身と超人の限界

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060208#p1
スーパーマン医師の功罪。

Sorry Works!

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060209#p2
訴訟大国アメリカが「謝る」ということに加えて法整備を行っているという合理的な取り組みと、表面だけひろってあくまで改善のない日本の現状。

医療を刑法で裁くな

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060219#p2
医療過誤を刑法に当てはめることへの強い疑問。

あるレストランにて

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060220#p1
夜間救急をわがままに受診する人々をレストランの客と例えると。

実際に僕らが外来でどんなやりとりをしているのか

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060223#p1
実際はもっと滅茶苦茶なのもありますが、実際のどうしようもないやりとりのうちの一例。

素人

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060224#p1
もちろん、人と人として対等であるけれど、それをはき違えて、医療の専門性を尊重してくれない人が多いのではないかという考え。

同業者をかばう

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060228#p2
すべての医療事故をかばっているわけではないというお話。

医療ミスということ

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060309#p3
不幸な転帰がミスとは限りません。

刑事罰におびえながら当直しています

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060315#p3
当直のリスク。救急制度の不備。

訴訟を起こされるのは真実を語らなかったから?

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060317#p1
真実を語っていないわけではないかも知れません。

割り箸事件

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060329#p1
杏林大学割り箸事件に無罪判決。

医療崩壊

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060708#p3
医療と関わらずにはいられない全ての人に読んで欲しい一冊。

医療事故調パブリックコメント

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20080504#p1
厚生労働省「医療事故調」試案への提言。

産婦人科医 派遣中止へ

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000603030004

 県立医大の産科婦人科学講座は、産婦人科医を派遣している県立病院4院のうち3病院に対し、派遣を取りやめる方針を決め、2日までに県病院局に申し出た。先月18日に医師が逮捕された県立大野病院では今月11日から、産婦人科医の派遣をとりやめる。事故の背景に産婦人科医の不足が指摘されており、逮捕が直接の引き金になったものと見られる。

 医局が動いた? 当然の流れだと思います。本質的には、産婦人科医を増やし、労働条件を改善し、不当逮捕など起こりえないように法整備をした上で、産科医療僻地ができないようになればいいのですけれど。マンパワー不足を奉仕の精神で補っていたのに、「逮捕」という仇で返されれば、こうなるのは明かだったはずです。
 そして、いまでも非医療人は、産科医に限らず、多くの医者がこうやって極限状態で働いていることをミスの言い訳にしていると勘違いしているようですが、そういうことではないのです。もちろん、関連して勤務状況の改善も訴えてはいますが、「疲れていたから間違っても許してね」とは言っていません。
 僕らの多くは、極限状態であろうと、その環境下で正しい医療を行っていて、その場で明らかに間違った医療行為をしてしまえば、なんらかの処分は致し方ないと思っているのです。ただ、今回のケースはミスではなく、合併症による不幸な転帰だと考えます。「死という結果には必ずミスがある」という考え方がおかしいと思っているのです。「完全な医療を行えば、どんなケースでも助けられる」わけではないという大前提をよく考えて頂きたいのです。
 ちなみに、各所のサイトや掲示板では、非常にこの問題をよく理解している非医療人がいる一方で、確認のしようはありませんが、医師を名乗る方がどうにも耐え難き発言をしていたりと様々です。結局は、個々の理解度や考え方の違いであると思いますので、何度も「社会」「一般人」のように、集団をひとくくりにした表現をしてきたのは、あまり適切ではないかも知れません。
 ただ、これは、曖昧かも知れませんが、僕の感じたままなのです。本当は、医療も社会の仕組みのうちのひとつであって、いろんな歪みがきているのに、それを包み込む存在であるはずの「社会」が、個人を、時にいわれのない攻撃をしているという印象を受けているのです。
 また、司法関係者を名乗る人々が、重要なのは起訴されるか否か、あるいは裁判で明らかになる真実であって、逮捕の時点で騒がなくてもよいという発言をしていたりします。百歩譲って、今回の件も、民事訴訟や、賠償の件で争うというのであれば、まあある程度は納得できるのですが、「逮捕」というのはやはり釈然としません。仮に公判の結果で無罪を勝ち取ったとしても、そのダメージは相当なものであるのは、法律側の方のほうが詳しいかと存じます。法の適応についての思いは今まで書いてきた通りです。
 もちろん、今まで声をあげられなかった、マスコミのいう「弱者」である患者さんたちが、声をあげる手段を持つというのは、もちろん重要なことだと思います。それが妥当な範囲内であれば、民事訴訟という方法で声をあげられるというのは良い点もあると思います。細かい点では、民事訴訟にもいろいろ不満がありますけれど。少なくとも、この件ではすでに遺族へ謝罪し、死因を調査し、賠償の相談をするということをしていたのに、「逮捕」「刑事罰」というものを適応することが、どうかみ砕いても納得いきません。

PET検診、がんの85%見落とし

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060303-00000005-yom-soci
 PET単独でのすべての癌の早期発見は難しいことは当初から言われていたことだと思うので、個人的にはそんなに驚くべきことではありません。しかし、一部の医療機関の宣伝の仕方や、マスコミでの取り扱われ方は歪んでいたと思いますし、「PET検診ツアー」のような変な方向へ向かっていたのも確かです。
 僕の専門領域である消化器癌、特に消化管癌において、原発巣の評価に関しては、内視鏡に優るものはありません。ほんの数ミリのくぼみから癌を検出するのは、PETでもCTでも不可能だと思います。
 原発癌が見つかった状態で、CTスキャンなどとPET検査を組み合わせて行うことは、転移の評価に非常に効果的だと思います。CT画像では、ほとんど何もない場所に出現するリンパ節腫大に関しては比較的読影が容易ですが、場所によっては、そこにうつっているものがリンパ節転移かどうかうまく判断できないこともあります。所詮グレースケール画像ですから。そこに糖の取り込みをみるという全く違う画像を重ね合わせることで、評価がしやすくなっているのは確かです。最近では、PETとCTを一度に撮影でき、画像の重ね合わせが可能な、PET-CTも稼働しています。CT上の白い固まりの上に、糖の取り込みが亢進している場所は色を付けて示されるわけで、この利点は相当なものです。
 PETの利点は大きく二つだと思います。
 一つには、内視鏡など、若干の苦痛を伴う検査を受けずとも、癌が見つかるかも知れないということ。精度に関しては落ちることは、そこに関わる者としてはデータを蓄積するまでもなく当然のことと思っていましたし、患者さんにはそう説明して、癌の発見や術後再発の確認という意味では、PETを受けて頂くか否かに関わらず、内視鏡をすすめてきました。ここで、「ほとんど苦痛なく体の広い範囲の検査ができる」という部分だけ抜き出され、有効性について過大にとらえられていたということが問題なのです。
 もう一つは、冒頭で述べたような、現在広く用いられている画像診断に「加える」ことで、診断精度を格段にあげることができるという点です。僕が研修医の頃は、まだこれが保険診療になる以前でしたので、患者さんに説明の上、自己負担をお願いしていたので、その内容や有効性の説明は何度となく行ってきました。
 ただ、テレビで適当な知識を流されると、「PETやれば全部わかるんだったら、カメラなんて嫌だよ。先生、もっと勉強してよ」なんて言われてしまうんですよね。今回の報道以降は、「PETなんてやっても癌が見つからないって言っていたから、受けたくないよ」と言われるんでしょうね。もともと僕はPETだけで全てがみつかるという説明はしてきませんでしたが。
FDG-PETがん検診ガイドライン(2004)
日本核医学会・臨床PET 推進会議
http://www.jsnm.org/report/FDG-PET_gaidorain2004_part3.pdf

効果に関する誇張広告は慎むべきである。たとえば、「数ミリのがんが発見されることがある」というような宣伝をする場合は、大きさだけがPET での描出を決める因子でないことを述べて、「数センチのがんでも発見されないことがある」ということを付記するのが望ましい。

内視鏡による消化管の検査
内視鏡検査は消化管の癌の検査には必須であるが、FDG-PET 癌検診ガイドラインにおいてはその侵襲性を考慮し、含めることが望ましいという位置づけとする。ただ、癌死亡数のうち胃癌が16%、大腸癌が12%であり、この二つでの約3 割を占めていること、FDG-PET で早期胃癌、早期大腸癌が見逃されている可能性があることを知っておきたい。内視鏡検査を行わない施設では、内視鏡検査の必要性を受診者に説明しておく必要がある。

発見される代表的な腫瘍とその対策
全体的には、大きさの小さいもの、中枢神経系、尿路系に近接するもの、腫瘍組織内の細胞密度の低いもの、分化度の高いもの、glucose-6 phosphatase活性の高いものなどはFDG-PET検査偽陰性になりやすい傾向が認められる。具体的には、腎細胞癌、前立腺癌、膀胱癌、胃硬癌(スキルス)、気管支肺胞型腺癌(高分化型肺腺癌)、高分化型肝細胞癌などがFDGの集積が乏しい。

消化管癌
消化管癌全体に対して言えることであるが、我が国には、消化管造影検査、消化管内視鏡検査に関して優れた技術があり、早期癌の発見に関しては、FDG-PET 検査は無力であることを認識すべきである。FDG-PET 検査は、侵襲が軽いため、高齢者などで有用性がある可能性はある。