いしいひさいちを読んでないなんて、人生損してるよ……。

いしいひさいち 仁義なきお笑い (文藝別冊/KAWADE夢ムック)  いしいひさいちのデビュー40周年ムックなるものの存在を知り、ソッコーで買った。買って読んだ。
 おれといしいひさいち、いしいひさいちとおれ。何度も書いたが、おれが日本語なるものをすこし読めるようになってすぐに手にとり、なんというのか、発想の根幹のようなところに多大な影響を与えたのがいしいひさいちと東海林さだおである。もちろん、年齢相応にウルトラマンや戦隊物、あるいは藤子不二雄の多くの漫画とアニメにも魅了されたが、今になって振り返ると、なんか根っこのところに残ってるな、と思えるのはその二人だ。
 東海林さだおについては、おれのなかにある種の昭和のサラリーマン的なものを刻みつけ(ただ、これについてはいまこの自分の経済状況下にあって面白く読めるかはわからん)、さらに日常生活の非常に細かいところを観察するなにかについて学んだ。また、小学校で作文を書くにしても、頭の中で手本にしたのは東海林さだおのコラムだ。
 まあ、今は東海林さだおの話ではない、いしいひさいちの話である。いしいひさいちはおもしろい。笑える。そう言い切る。なんというのか、人それぞれ好みもありましょうが、じゃねえよ、この笑いは絶対的なもんだよ。……みたいな気持ちになる。
 と、話は急に父との思い出になるが、幼少期のおれが自分で「バイトくんかってー」と言うわけもなく、父に与えられたか、勝手に読み始めたか、ともかくきっかけは父だ。おれの父は編集者だのサブカル誌の編集長などの経験があるらしく、よく「自分がおもしろいと思うものは万人にとっておもしろいものだ、という確信がなければあの仕事はつとまらない」などとふかしていて、それで、わりと家族に対してもそういうところがあっておもしろくなかったのだが(ただし、悔しいことに薦めてくるものはだいたいおもしろいのだが)、なんというのだろうか、いしいひさいちに関しては、そりゃもうすげえおもしろいよって。あの傲慢さをもって言い切りたくなるくらい、なんというのだろうか、説明なんていらねえだろ、おもしれえだろ、と。知らない人にこういう勧め方なんて逆効果ってことは、おれ自身の天邪鬼な性格からもよーくわかるけど、それでも、おれにとってはひとつの根っこ、笑えるかどうかの基準みてえな、そんなものなんだよ。
 ……と、力説するまでもないくらいのビッグネームですか。今更言うまでもない。そうですか。そりゃそうだ。いや、でも、このムック読んで、やはり大好きな西原理恵子が子供のころ『ベルばら』ではなく地底人と最低人の模写ばかりしてたとか、大友克洋が『B型平次』から「親分、停戦だ!」を採り上げてたりとか、秋月りす(モーニングも読んでいたが母が買う『OL進化論』も単行本で読んでいたっけ)が「オチもわかってるのに何度読んでもおもしろいのはなんでだろう」って言ってたりとか、なんつーのか、「そう、やっぱりそうだ、そこだろ!」みたなさ、取り上げられてるもののさ、いや、いいムックだ。しかし、あずまきよひこはすげえな。それでわりと、なんというか、おれは完全な読者(全部読んでる)ではないのだけれども、わりと押さえるべきところは押さえてたな、みたいな感じはある。
 が、まったく触れていないといっていいものがあって、朝日新聞で展開している『となりのやまだ君』〜『ののちゃん』シリーズだ。単純に言って漫画自体買う余裕がなくなった時期と重なっているというのもあるが、いや、やはり最初期にちょっぴり読んだんだ。まだ実家があって、新聞をとっていたころだ。連載開始を知って、なにかちょっと妙な不安になったのを覚えている。そして、掲載されたのを読んで、「ん、なんか弱いか?」みたいに思えて、どうも遠ざけてしまったところがある(新聞漫画では『コボちゃん』圧倒的だろみたいな感じも強かった。あ、うちはアンチ読売なので、単行本で買い揃えていたけど)。が、その後えらく展開しているらしいのをこの本で知り、読みたくてしかたなくなった。
 ただ、なんつーか、はっきり言ってどれから買っていいかわからんというか、どこまで読んでいるのかわからんというか。そのあたりは混乱をきたしている。ただ、何度読んでもおもしれえもんだから、かぶってもいいんだが、財布の中身というものもある。困ったもんだ。あと、実家消失時に骨肉の争いとはいわんが、相当量あった書籍と漫画が一族内で散逸してしまって、正直、今手元にかつて何度も何度も読み返したぶつがない、というのもあって、いやはやという気にもなる。ただ、「もう、無条件に絶対おもしれえんだよ」って誰相手にか言ってしまえるものについて、買い渋るというのもダセェって気もするのだが、まあ、おれもいい加減でけちな人間なので、まあ気が向いたらぼちぼちと揃えていこうかとか、そんなん思ってる。おしまい。

関連☆彡

 買ってよかったわ。というか、「でっちあげ」インタビューもボリュームあるし、一コマや一つの絵からも脳内再生できるというか、ビーム200号の読み切りで桜玉吉がCDを手放すのに「脳内再生できるからいいや」という気がわかったというか……。 まあともかく『B型平次』は間違いない。 おれは忍者シリーズも好きで、小学校のころは教科書にパラパラ漫画描いたりしてた。

関連エントリ☆彡
 あれ、ずいぶん遅れて読んだ『あずまんが大王』の感想とか貼ろうとしたら、ちょうどブログ放ってた時期に読んだりしてたのか。まあいいや。つーか、日常系だろうと萌えだろうと、おもしろいもんはおもしろいし、こないだ買った『咲日和』とかかなり好きなんだけど、まあべつの機会に。