After Effectsのコラップスを使ってはいけない?
- 2014/08/23
「コラップスを使ってはいけない」と言うコンポジターがいます。After Effectsのレイヤーにはコラップストランスフォームという可愛らしいスイッチがあるのですが、これを使うべきではないと言うのです。私自身は(作業内容によりますが)コラップスはあまり使用しません。コラップス機能は、よく理解して使えば便利なのですが、たしかにむやみに使わない方が良いように思います。今回はこのコラップス機能のメリットやデメリットについて考えてみたいと思います。
「連続ラスタライズ」と「コラップストランスフォーム」を混同している人がとても多いのですが、これらは別の機能です。誤解のないように確認しておきましょう。
◆連続ラスタライズ
レイヤーがIllusutrator等のベクトルレイヤーの場合、このスイッチは「連続ラスタライズ」になります。Onにするとベクターデータで扱えるので、滑らかに変形できるようになります。
◆コラップストランスフォーム
レイヤーがプリコンポジションレイヤーの場合は、このスイッチは「コラップストランスフォーム」になります。
同じスイッチなのに、場合によって名前と機能が変わるのです。とても分かりにくいクレイジーな仕様です。さて、ここで話題にするのはコラップストランスフォームです。つまり、プリコンポジションの話をしなくてはいけません。
プリコンポジションも、初心者には誤解されやすい機能です。プリコンポジションとは何かをはっきりさせておきましょう。いえ、合成とは何かをはっきりさせましょう。例として、3つのレイヤーを合成するときに何が起きているかを考えてみたいと思います。
レイヤー1. 赤い丸 (加算ブレンド)
レイヤー2. 青い四角 (通常ブレンド)
レイヤー3. グレーの背景
◆プリコンポジションを使わないケース
まずは、プリコンポジションを使わない一般的な合成で何が起きているかを見てみましょう。
このとき行われている処理はこうです。レイヤーは下から合成されていくので、まずは「グレーの背景」に「青い四角」が通常合成されます。続いてその合成結果に、「赤い丸」が加算合成されます。
コンポジット作業とは、一番奥の背景に対して1つずつ前景を積み重ねていくということです。
◆プリコンポジションを使うケース
では、上の2つのレイヤーを「プリコンポーズ」するとどうなるのでしょうか?合成結果は異なるものになります。
これは合成の順番が変わってしまうからです。この場合、まず「青い四角」に対して「赤い丸」が加算合成されます。そしてその合成結果が、「グレーの背景」に対して通常合成されるのです。
プリコンポジションのプリ(Pre)とは、「前の」とか「先の」という意味です。プリコンポジションは直訳すると「事前合成」や「先行合成」といったものになります。これこそがプリコンポジションの本質です。プリコンポジションはもともと、合成の順番をユーザーが自由にコントロールするための機能です。
合成の順番をコントロールするメリットについて知りたい方は、ぜひ「After Effectsの作業スピードを上げるコンポジションの組み方」に目を通してください。
プリコンポジションが「事前合成」であることを考えると、コラップスはちょっと特殊な機能だと分かります。コラップスをOnにすると、まるで「プリコンポーズしていない」ような合成結果を得ることができます。
このことから分かるのは、コラップスは「プリコンポジション」のように見えますが、実際には「プリコンポジション(事前合成)」ではない、ということです。小さなスイッチが、処理を大きく変えています。
コラップスのメリットとしてよく説明されるのは、「プリコンポジションのブレンドモード(描画モード)が次のコンポジションに引き継がれる」とか、「プリコンポジションのレイヤーがクロップされない」といったものです。
ただし、コラップスを使う場合には注意点があります。コラップスをOnにした状態でも、エフェクトやマスク、ブレンドモードを使うとコラップスは自動的にOffになります。これほどユーザーを混乱させる機能はなかなかありません。
これは私の考えですが、そもそもコラップスは「プリコンポジション」とは根本的に別の機能として実装されるべきだった仕組みです。それを無理やりプリコンポジションの「おまけ」のような形で実装してしまったために、非常に分かりにくくなってしまったのではないかと思います。実際、このような混乱が起きています。「プリコンポジションを使うと事前合成される、ただしコラップスを使うと事前合成されない、ただしその場合もマスク、エフェクト、描画モードを使うと事前合成される」。……これでは初心者が混乱するのも無理はありません。
たまに「レイヤー数が多くなったタイムラインパネルを整理したい」と言ってプリコンポーズを行う人がいます。プリコンポジションを「フォルダ」のようなものと捉えているようです。このような人は、前述の「事前合成」という仕組みが邪魔になるのでコラップスを好んで使います。
しかし、レイヤーとは合成の「設計図」です。設計図は正確で分かりやすくあるべきです。コラップスを使ってレイヤーを整理すると、本来そこにあるべきレイヤーを隠すだけなので、実際には把握しにくい難解なコンポジションになる場合があります。
先に述べたように、合成とは「背景に対して前景を1つずつ積み重ねていく」という繰り返しです。しかしコラップスを使うと、その過程が見えにくくなくなってしまうのです。難解なコンポジションは、共同作業では特に嫌われます。コンポジターが「コラップスを使ってはいけない」と言う理由は、ここにあります。「タイムラインパネルを整理したい」という理由でプリコンポーズを行うのは、私も不適切だと考えています。
結局のところ「コラップスを使ってはいけない」というわけではない、というのが私の考えです。ある種の作業ではコラップスは大きな活躍をします。モーショングラフィックスのような映像をつくる場合には、大量のレイヤーを扱う上でグループとしてまとめる必要があります。あるいは、グループとしてまとめてアニメーションさせる必要が出てきます。このような場合について言えば、コラップスを利用するメリットは大きいと思います。
また、3Dレイヤーを使う場合もコラップスを利用するメリットがあります。3Dレイヤーは1つ1つは単純なものですが、プリコンポジションとコラップスを併用することでレイヤー群をグループ化し、より複雑な立体形状を表現できます。この場合、まるで1つの「オブジェクト」のように扱うこともできます。
コラップスは、そのメリットやデメリットを分かった上で使えば良いと思います。(まぁいろんな人の意見があると思いますけど!)
連続ラスタライズ・・・?
「連続ラスタライズ」と「コラップストランスフォーム」を混同している人がとても多いのですが、これらは別の機能です。誤解のないように確認しておきましょう。
◆連続ラスタライズ
レイヤーがIllusutrator等のベクトルレイヤーの場合、このスイッチは「連続ラスタライズ」になります。Onにするとベクターデータで扱えるので、滑らかに変形できるようになります。
◆コラップストランスフォーム
レイヤーがプリコンポジションレイヤーの場合は、このスイッチは「コラップストランスフォーム」になります。
同じスイッチなのに、場合によって名前と機能が変わるのです。とても分かりにくいクレイジーな仕様です。さて、ここで話題にするのはコラップストランスフォームです。つまり、プリコンポジションの話をしなくてはいけません。
プリコンポジションとはなにか?
プリコンポジションも、初心者には誤解されやすい機能です。プリコンポジションとは何かをはっきりさせておきましょう。いえ、合成とは何かをはっきりさせましょう。例として、3つのレイヤーを合成するときに何が起きているかを考えてみたいと思います。
レイヤー1. 赤い丸 (加算ブレンド)
レイヤー2. 青い四角 (通常ブレンド)
レイヤー3. グレーの背景
◆プリコンポジションを使わないケース
まずは、プリコンポジションを使わない一般的な合成で何が起きているかを見てみましょう。
このとき行われている処理はこうです。レイヤーは下から合成されていくので、まずは「グレーの背景」に「青い四角」が通常合成されます。続いてその合成結果に、「赤い丸」が加算合成されます。
コンポジット作業とは、一番奥の背景に対して1つずつ前景を積み重ねていくということです。
◆プリコンポジションを使うケース
では、上の2つのレイヤーを「プリコンポーズ」するとどうなるのでしょうか?合成結果は異なるものになります。
これは合成の順番が変わってしまうからです。この場合、まず「青い四角」に対して「赤い丸」が加算合成されます。そしてその合成結果が、「グレーの背景」に対して通常合成されるのです。
プリコンポジションのプリ(Pre)とは、「前の」とか「先の」という意味です。プリコンポジションは直訳すると「事前合成」や「先行合成」といったものになります。これこそがプリコンポジションの本質です。プリコンポジションはもともと、合成の順番をユーザーが自由にコントロールするための機能です。
合成の順番をコントロールするメリットについて知りたい方は、ぜひ「After Effectsの作業スピードを上げるコンポジションの組み方」に目を通してください。
コラップスとはなにか?
プリコンポジションが「事前合成」であることを考えると、コラップスはちょっと特殊な機能だと分かります。コラップスをOnにすると、まるで「プリコンポーズしていない」ような合成結果を得ることができます。
このことから分かるのは、コラップスは「プリコンポジション」のように見えますが、実際には「プリコンポジション(事前合成)」ではない、ということです。小さなスイッチが、処理を大きく変えています。
コラップスのメリットとしてよく説明されるのは、「プリコンポジションのブレンドモード(描画モード)が次のコンポジションに引き継がれる」とか、「プリコンポジションのレイヤーがクロップされない」といったものです。
ただし、コラップスを使う場合には注意点があります。コラップスをOnにした状態でも、エフェクトやマスク、ブレンドモードを使うとコラップスは自動的にOffになります。これほどユーザーを混乱させる機能はなかなかありません。
これは私の考えですが、そもそもコラップスは「プリコンポジション」とは根本的に別の機能として実装されるべきだった仕組みです。それを無理やりプリコンポジションの「おまけ」のような形で実装してしまったために、非常に分かりにくくなってしまったのではないかと思います。実際、このような混乱が起きています。「プリコンポジションを使うと事前合成される、ただしコラップスを使うと事前合成されない、ただしその場合もマスク、エフェクト、描画モードを使うと事前合成される」。……これでは初心者が混乱するのも無理はありません。
間違ったプリコンポジションの使い方
たまに「レイヤー数が多くなったタイムラインパネルを整理したい」と言ってプリコンポーズを行う人がいます。プリコンポジションを「フォルダ」のようなものと捉えているようです。このような人は、前述の「事前合成」という仕組みが邪魔になるのでコラップスを好んで使います。
しかし、レイヤーとは合成の「設計図」です。設計図は正確で分かりやすくあるべきです。コラップスを使ってレイヤーを整理すると、本来そこにあるべきレイヤーを隠すだけなので、実際には把握しにくい難解なコンポジションになる場合があります。
先に述べたように、合成とは「背景に対して前景を1つずつ積み重ねていく」という繰り返しです。しかしコラップスを使うと、その過程が見えにくくなくなってしまうのです。難解なコンポジションは、共同作業では特に嫌われます。コンポジターが「コラップスを使ってはいけない」と言う理由は、ここにあります。「タイムラインパネルを整理したい」という理由でプリコンポーズを行うのは、私も不適切だと考えています。
コラップスを使ってはいけない?
結局のところ「コラップスを使ってはいけない」というわけではない、というのが私の考えです。ある種の作業ではコラップスは大きな活躍をします。モーショングラフィックスのような映像をつくる場合には、大量のレイヤーを扱う上でグループとしてまとめる必要があります。あるいは、グループとしてまとめてアニメーションさせる必要が出てきます。このような場合について言えば、コラップスを利用するメリットは大きいと思います。
また、3Dレイヤーを使う場合もコラップスを利用するメリットがあります。3Dレイヤーは1つ1つは単純なものですが、プリコンポジションとコラップスを併用することでレイヤー群をグループ化し、より複雑な立体形状を表現できます。この場合、まるで1つの「オブジェクト」のように扱うこともできます。
コラップスは、そのメリットやデメリットを分かった上で使えば良いと思います。(まぁいろんな人の意見があると思いますけど!)
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