妻が会社の飲み会で不特定多数の男性とキスを……

Q   今年のはじめに3年ほど付き合った女性と入籍しました。結婚後も、妻は同じ職場の上司と二人で食事をしていることを知り、結婚しているため今後はやめてもらうよう、妻と相手の男性にも直接電話をして、釘をさしました。ところが、相手の男性からの連絡は止まらず、妻は迷惑しているがやめてもらえないとのことでした。そこで、妻の職場の上司に私から相談をしたところ、あなたの妻にも原因があるとのことでとりあってもらえませんでした。半年ほどたった今になり妻から聞いたところ、会社の飲み会で不特定多数の男性とキスを繰り返していたとのことでした。私はこのまま結婚生活を続けていけるのでしょうか。妻は今、妊娠しています。

(34歳・男性)

シマジ:相談者の妻は慈母だな。

ミツハシ:出ました。シマジさんお得意の慈母。一応聞いておきますが、何ゆえ慈母なのでしょう。

シマジ:不特定多数の男にキスをプレゼントしてくれるのだから、慈母以外の何物でもない。ときどきいるんだよ、こういうキス魔の女というのが。だいたいはこの相談者のカミさんのように酒を飲むとやたらとキスをしたがるんだな。こういうのを酒乱慈母観音という。

ミツハシ:何だかありがたそうですね。

シマジ: そう、ありがたいんだよ。ほかには酒を飲むとやたらとおっぱいを見せたがる酒乱慈母観音もいる。俺が若い頃に通ったバーにこの手の巨乳女がいて、何度もありがたいご開帳にあずかった。うれしいことにこの観音様は、見るだけでなく、触ることも許してくれた。相談者の妻もなかなかの慈母ぶりだが、観音様としての位は、おっぱい慈母には敵わないね。

ミツハシ:相談者は、自分の妻がおっぱい慈母に勝ってほしいなんて全く思っていないと思います。

シマジ: 自分のカミさんがやたらと男の唇を奪っていると思うと心穏やかではいられないという気持ちは分かる。だが、それは焼きもちというものだ。何度も言っているように、嫉妬するより嫉妬される人間にならなければいけない。

ミツハシ:でも、この場合は仕方ないんじゃないですか。これで相談者を責めてはかわいそうな気がします

カミさんの上司に電話したのには驚いた

シマジ:女性が社会に出てどんどん働く時代になったのだから、こういうことはもう仕方がないと俺は思うね。これまで男たちは仕事のあとに職場の女性たちを誘って飲みにいったり、女性のいる店に通ったりしてきたんだ。そうした飲み会の席で、ちょっと色っぽい話をすることもあれば、酔って着ているものを脱ぎだす男もいた。やたらとキスをしたがる男もやはりいた。いまだとそういうのはセクハラになるから、相談者が心配すべきは、不特定多数の男とキスをするカミさんが職場の男性社員たちからセクハラで訴えられるリスクかもしれない。

 でもまあ、気の置けない仲間たちと酒を飲んだら、少々はしゃぐくらいいいじゃないか。相談者のカミさんはきっと明るく愉しい女なんだよ。酒が入るとなおいっそう明るく愉しくなるんだろう。そういう女というのは職場の男たちからしたらやはり慈母でありアイドルだ。きっと職場でも人気があると思うね。

ミツハシ:それだけに相談者は心配なのでしょう。それにキスのことだけでなく、相談者の妻は職場の上司と二人で食事をしているそうです。

シマジ:自分の妻が職場の男性上司と二人で食事をする。これも女が男と対等に働く時代には避けては通れないことだろう。これが男性の上司部下なら昔からある職場コミュニケーションだし、女性の上司部下が酒を飲みながら仕事の相談をするというのもいまなら珍しくないはずだ。これまでだと男性管理職というのは、女性部下を一人だけ誘って食事に行くというのはあらぬ疑いをかけられるかもしれないし、女性社員が多い職場だと特別扱いしているという反感をもたれる恐れがあるから、そういう状況を避けたものだが、これも時代かな。

ミツハシ:そこはどうでしょう。いまでも男性管理職が女性部下と二人だけで酒を飲むというのは、普通の職場ならちょっと軽率だと思われるんじゃないでしょうか。

シマジ:そのあたりは、相談者のカミさんが働いている職場の雰囲気が分からないからなんとも言えないが、俺が驚いたのは相談者がカミさんの上司に電話をして釘をさしたということだ。

ミツハシ:これは私も驚きました。妻に行動を改めてもらうよう意見するところまでは分かりますが、相手の男性に電話をするというのはすごいですね。潔癖症というか、真っ直ぐで正義感が強いというか……。

明るく情熱的なラテンの女だと思えばいい

シマジ:しかし、相手の男も驚いただろうな。部下の旦那から「私の妻と二人きりで食事をするのを止めてください」なんて電話が掛かってきたんだからね。だが、それでも誘い続ける男というのは、俺にはちょっと理解しがたい。そんな面倒な電話が掛かってきたら、君子危うきに近寄らずで、普通は距離を取るだろう。だが逆に考えると、それでも相変わらずということは、浮気の可能性は低いんじゃないか。純粋に気の合う飲み友達なんじゃないかね。「妻は迷惑している」というのは、まあ方便だろう。

ミツハシ:そうですね。これで相談者の妻と男性上司が男女の仲だとしたら、二人とも相当したたかな悪党ですよね。

シマジ:相談者のカミさんは、開けっぴろげで男性との距離感が近い女なんだよ。男と二人で酒を飲むのは、職場で冗談を言い合うことの延長くらいにしか思っていない。酔っ払ってのキスも彼女にとってはほんの挨拶代わりで、「それくらい何よ」と思っているじゃないか。そうだ、相談者は自分の妻が明るく情熱的なラテンの女だと思えばいいんだよ。

ミツハシ:それは無理な相談でしょう。何しろ相談者は「妻の職場の上司に私から相談した」というくらいですからね。これは妻と相手の男性の共通の上司ということだと思いますが、相手の男に直接電話し、男のさらに上司にまで連絡を取っている相談者はものすごく生真面目で、結婚している男女がほかの男女と親密にすることが倫理的に受け入れられないんだと思います。

シマジ:相談者とカミさんは男女の関係のあり方について感覚が違いすぎているんだろうね。

ミツハシ:それにしても共通の上司の「あなたの妻にも原因がある」という言葉もすごいですよね。「あんたのカミさんも愉しんでいるのだからしょうがないだろ」と言っているようなものじゃないですか。これも相当無責任な発言だと思いますよ。

 うーん、なんだか相談者がとても不憫に思えてきました。妻は会社の男たちとチュッチュッしていて、上司と一緒に酒を飲み、その上司に止めてくれと言っても聞き入れてもらえず、上司の上司に相談しても「奥さんも愉しそうだよ」と取り合ってもらえない。相談者からしてみたら、妻も妻の働く会社の人間も、自分の常識が全く通用しない異星人のように感じられるんじゃないでしょうか。

シマジ:きっとそうだろうね。

こういう問題は夫婦二人で解決すべきもの

ミツハシ:「私はこのまま結婚生活を続けていけるのでしょうか」。この相談者の魂の叫びにシマジさんはどう答えますか。

シマジ:まあ、ちょっと様子を見たらどうだ。相談者のカミさんは妊娠しているようだから、これからしばらくは酒を飲めない。今後、子供を生んだら、当分は子育てでやはり酒を飲む機会は激減するだろう。小さな子供を育てながら仕事をするとして、保育園の送り迎えなんかもあるだろうから、これまでのように会社の飲み会に夜遅くまで付き合うわけにはいかない。出産・育児の過程で母性が強まり、不特定多数の男とキスするなんて汚らしいと思うようになるかもしれない。奔放な女が子供を授かることで賢母に変わるというケースはたまにあるからね。急いで結論を出さなくてもいいんじゃないか。

 それから、余計なアドバイスかもしれないが、生まれてくる子供のDNA鑑定をしようなんてことは考えないほうがいい。それがカミさんの知るところとなれば、夫婦の間にひびが入る。秘密裏に鑑定ができ、その結果がシロだったとしても、妻を疑い鑑定をしたという事実は重いおりとなって相談者の心の中に残る。それは今後の結婚生活を重苦しいものにすると思うね。

 これも何度も言ってきたが、悩んだらパラダイムを変えるんだ。会社の男たちと愉しい酒を飲めるカミさんの良い部分は何かと考えればいい。自分のカミさんが職場で敬遠されているより、好かれているほうがずっといいだろう。

 それに不特定多数の男たちとキスをするカミさんは、相談者が不特定多数の女たちとキスをしても何も言わないはずだ。そこで文句を言うようなら、改めてカミさんに行動を変えてもらう話し合いのきっかけになる。まあ、たぶん彼女はキスくらいなんとも思っていないだろうから、相談者も遠慮しなくてよろしい。

ミツハシ:相談者は不特定多数の女性とキスをしたいわけでは……。

シマジ:ことによるとキス以上のことにも目を瞑ってくれるかもしれない。

 真面目に言えば、もっとカミさんと話をすることだね。3年付き合っていていまさらカミさんのキス魔を知るということ自体が会話不足なんじゃないのか。こういう問題は夫婦二人で解決すべきもので、カミさんの食事相手の上司や、上司の上司に連絡をするというのはやはり筋が違うと思う。男女が逆の立場なら分かると思うが、これはカミさんの職場の中での立場を危うくする行為でもある。自分の価値観や倫理観と合わないことを正すために猪突猛進してしまうところに俺はちょっと危うさを感じるね。

 人生は深刻になってはいけない。もう少し肩の力を抜いて、心を広く持ってほしい。「そんなにキスがしたいなら、毎日俺に100回キスするのがノルマだ」とでも言って二人で外に酒を飲みに行ったらどうだ。周りのお客にキスを見せつけてもいいし、ここで不特定多数のお客にカミさんからのキスをプレゼントしてもいい。お店を選ばないと出入り禁止になるだろうが、スナックなんかだと名物カップルになれるだろう。それも夫婦の愉しいイタズラだよ。せっかく酒乱慈母観音と縁があって結婚したんだから、それをどう愉しむかを考えてもいいんじゃないかな。

本記事は、 nikkei BPnet から転載したものです

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