2025年は乙巳(きのとみ)の年。「乙」とは発展途上の状態を、「巳」は植物が最大限まで成長した状態を意味するそうで、これまでの努力や準備が実を結び始める時期だとか。

 私も乙巳の流れに乗るべく今まで以上に精進しますので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。良い一年にいたしましょう。

 さて、そんな今年の第1弾は「30代の憂鬱」をテーマにあれこれ考えてみます。

 20代の初任給はファーストリテイリングが30万円から33万円、明治安田生命が24万円から27万円、三井住友銀行が25万5000円から30万円と、景気のいいニュースに沸いている。東京商工会議所の調査でも、25年は調査対象企業の52.2%が「初任給を引き上げた(引き上げる予定)」とのこと。

 どこの企業も「学生が集まらない! 学生がすぐ辞めちゃう!」と悩んでいるので、今後も新卒争奪戦は激化しそうだ。

 一方で、相も変わらず「できればお引き取りください」と「圧」をかけられているのが50代だ。

 24年は早期希望退職の波が復活し、6割が「今のうちに切っちゃえ!」の黒字リストラだった(東京商工リサーチ調べ)。25年もダイドーグループホールディングスや第一生命保険が50歳以上の社員を対象に大規模な早期希望退職募集を実施すると発表している。

 第一生命保険の隅野俊亮社長が朝日新聞の取材に1000人の希望退職を募った理由を語っていたけれど(朝日新聞1月7日付朝刊)、その内容は50代社員が人材の多様化と新卒や中途採用組の活躍の壁になっていることを示唆するものだった。

 25年4月には「65歳までの雇用確保」が完全義務化されるので、その対策として、50歳以上をターゲットにした早期希望退職の大規模募集は今後も増え続けるであろう。

 そんな中で私の関心事は「30代問題」である。

 新卒賃上げ合戦も、50代の大規模在庫一掃セールも、目的は生産性向上のはずだ。なのに、なぜか働き盛りの30代、特に30代後半にスポットが当たっていない。

 現場からは、「次のリーダーを選ぶにも任せられる30代がいない」「コロナ禍にごっそり30代が辞めてしまったので足りない」「トラブルがあって深夜に社員を緊急召集したところ、来たのは40代後半の課長と20代の若手だけ。なんとか最悪の事態が回避できたのは奇跡だ」「20代の時は頑張っていた社員が30代後半になると辞めてしまう」といった悲鳴ばかりが聞こえてくる。

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