米アマゾン・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)アンディ・ジャシー氏は11月の全社会議で、週5日の出勤を義務付ける新たな計画は、それを理由に「事実上の解雇につなげるわけではない」と従業員向けに語った。
ただし彼のコメントは、決定に従わない従業員は他の仕事を探すことになり得る、とほのめかしたかつての上級管理職の発言を退けるものではなかった。
まん延する「ステルス解雇」
企業が経費を抑制し、職場における利益に結びつかない取り組みを抑え込もうとするにつれ、従業員は新たな恐怖、すなわち「ステルス解雇」の犠牲者になることを警戒している。
最近公表された(日産自動車、米ボーイング、米シティグループによるものも含めて)一連の大規模なレイオフ(一時解雇)と並行して、会社の方針、規則に対するささやかな違反を理由とした、表面化しない小規模な解雇を雇用主が正当とする事例が相次いでいる。
ここで焦点となるのは、余剰人員解雇計画の規模と範囲、管理職たちがその計画をいかに人道的に実施したか、または影響を受けた従業員に支援もしくは解雇手当が提供されたかではなく、これらの決定の背後にある特定の理由付けである。
例えば、フェイスブックなどを運営する米メタは、会社の食事券を不正使用したとして20人あまりの従業員を解雇した。また米大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)も、複数のトレーニング・ビデオを同時に見ていたことを理由に従業員数十人を解雇したと、英フィナンシャル・タイムズは報じた。
以前は、従業員がおそらく軽度の違反行為と解釈していた微罪が、今では解雇の理由になり得る。しかしこうした解雇は、時として、経費節減を偽装しているだけなのではないかとの疑念が湧く。
「ほとんどの物事と同じように、2つの側面がある」と、英グッド・コーポレーションのマネージングディレクター、レオ・マルティン氏は言う。同社は、組織が倫理および企業コンプライアンス計画を設計、構築し、改善することを支援する企業倫理コンサルティング会社である。
マルティン氏によれば「従業員の立場から見ると、彼らは非現実的な締め切り、仕事上の過度なプレッシャーに悩まされている。あるいは何が期待されているかについて、不明確な指示しか与えていないかもしれない。他方で雇用主は、従業員が特典を悪用し、手続きを省略することでシステムをむしばんでいるとしている。専門研修で不正行為に及ぶことは、根本的な信頼違反だと見なすだろう」と述べている。
見せしめ狙いの処分
従業員に対して厳しく対応する動機の一部は、規則違反者として見せしめにすることかもしれない。このように厳格な企業規律は、巨大なコンプライアンス機能を抱え、契約違反に対する重い罰則のリスクを抱える銀行業や金融サービス業のような規制の厳しい産業で、より一般的だった。
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