「エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)」という言葉をご存じだろうか。電気自動車のレースでも、ウエアラブル機器を活用したスポーツでもない。パソコン(PC)などを使ったゲームを、「娯楽」ではなく「スポーツ」や「競技」としてとらえるものだ。
日本ではなじみが薄いが、米国や中国、韓国などを中心に世界中で浸透しつつある。プロのプレーヤーも存在し、米国では入国時にプロスポーツ選手としてのビザが支給されることもある。
その代表例が、「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」。2006年に米国で設立された、ライアットゲームズが手掛けるPCを使ったオンラインゲームだ。5人一組の2チームで争い、相手の陣地を先に押さえれば勝利となる。
サービスの開始は2009年。コア・ユーザーを中心に熱狂的な支持を集め、着実にユーザー数を増やしている。ライアットゲームズによると、2013年に月間のアクティブ・ユーザー数は6700万人、ピーク時間帯の同時接続数は750万人を超えたという。
NBAファイナル並みの人気
リーグ・オブ・レジェンドは、北米、東欧、西欧、中国、韓国などでプロリーグが存在。昨年10月には、韓国ソウルにあるワールドカップスタジアムでプロリーグの世界大会の決勝戦が開催され、数万人の来場者が押し寄せた。
各地域のリーグ戦を勝ち抜いた上位2チームが対戦。優勝したのは「サムスンホワイツ」。その名の通り、韓国サムスン電子がスポンサーのプロチームだ。大会の模様は全世界に中継され、約2700万人が視聴したという。
この視聴者数は、米プロバスケットボールリーグの「NBAファイナル」の視聴者数に匹敵する。「ゲームはスポーツなのか」という結論は出せないものの、大規模なビジネスに成長していることは間違いないだろう。
ライアットゲームズは既に世界中で10を超える拠点を構え、リーグ・オブ・レジェンドのサービスを展開してきた。PCよりも専用機の規模が大きいこともあり、日本ではサービスを展開していなかったが、昨年4月に日本法人がようやく設立された。
具体的な時期は明らかにされていないが、いよいよ日本での展開に向けて動き始めたと言える。興味のある読者の方は、サービスが開始された際に一度試してみてはいかがだろうか。
人材採用に強いこだわり
サービス開始からわずか6年で、世界最大級のPCオンラインゲーム会社に成長したライアットゲームズ。日本法人の乙部一郎社長は、急成長の理由の一つとして「現場への権限委譲」を挙げる。「社内に組織図はなく、現場に任せることで迅速な意思決定を進めている」(乙部社長)。
優秀な人材がいなければ、現場への権限委譲は難しい。このため、ライアットゲームズではユニークな採用プロセスが導入されている。
実は人材採用は、現地法人のトップに最終権限があるわけではない。採用予定者は米国本社での最終面接をクリアする必要がある。「経営幹部の人材に対するこだわりは強い」と乙部社長は話す。
まずは、「パネル」と呼ばれる面接官数人が、リーダーシップやプロジェクトマネジメント、ソフトウエア開発力などの能力ごとに厳しく査定。「多い場合、5~6人と面接を重ねることになる」(乙部社長)。
最終的には、「スポンサー」と呼ばれる面接官が会社の価値観に合った人材かどうかを見極める。スポンサーは採用者と入社後もひもづけられ、採用の最終責任を負う。そのため、面接では厳しい質問が飛ぶことになる。
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