不動産マーケティング会社のアトラクターズ・ラボが提供しているデータが静かな話題を呼んでいる。それは、「想定成約中古価格」。過去の売り出し事例をもとに中古マンションの実際の成約価格を算出し、時点補正を加えることで、現在の取引価格を推計したものだ。

売り出し価格は6%高めに提示されている

 「想定成約中古価格」とは非常にわかりにくい言葉だが、これが意味しているのは、「物件を売り出して3カ月以内に成約する価格」のこと。要は時価。株式市場で言うフェアバリューと考えればいいだろう。

 「中古物件の80%は3カ月以内に成約する」(アトラクターズ・ラボの沖有人社長)と言われる。裏を返せば、3カ月以上も売れ残る物件は、価格設定を間違えているということだ。

 今回、アトラクターズ・ラボは「市場参加者の意見が概ね一致する妥当値」を過去のデータから推計、同社が運営する分譲マンション購入者向けサイト「住まいサーフィン」で無償公開を始めた(「マンション検索」というボックスにマンション名を入れると、中古価格が出てくる)。

 物件数は首都圏で約1万8000棟。1993年以降に分譲されたマンションの約90%をカバーしている。全体の取引事例数は33万件。1物件当たりの平均売買事例は19件に上る。

 一般的に、中古マンションの成約価格データは東日本不動産流通機構(東日本レインズ)などに加盟している不動産会社でなければ入手できない。それだけに、今回のデータは一般の消費者にとってみれば参考になるところが多い。

 せっかくなので、同社が開示しているデータを詳しく見ていこう。まずは全体の傾向だ。

 アトラクターズ・ラボによれば、売り出し価格と想定成約中古価格の乖離は全体で約6%。つまり、実際に成約する(と同社が見ている)価格は不動産サイトやチラシに掲載されている価格よりも6%低いということだ。もちろん、全体の平均値だが、時価よりも高めの値が提示されている。覚えておいて損はないだろう。

 次に、都区部の騰落率ベスト50とワースト50だ。

騰落率ベストは「プラウド表参道」

 新築分譲価格と想定成約中古価格の1m2当たりの単価を比較した騰落率を見ると、最も価格が上がっている物件は表参道の駅近にある「プラウド表参道」だった。新築時の1m2当たりの単価は151万円だったが、時価は246万円。上昇率にして65%である。表参道の徒歩圏でかつ総戸数19戸という希少性が評価されているのだろう。

 このほかにも、ルクセンブルグ大使館とマンションが一体になった、千代田区四番町の「ルクセンブルグハウス」、広尾の1等地に建つ「ザ・ハウス南麻布」など、千代田区や港区といった都心部の1等地が軒並み名を連ねている(ベスト50のリストは次ページ参照)。

都区部の騰落率ベスト50物件

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