『Team B』Team B
観客のまばらなゴミだらけのバスケ会場と傷だらけのメンバーが描かれたジャケは、ベイルートとアーケイド・ファイアの両方に参加しているケリー・プラットによる新ユニット、チームBのデビュー作のもの。ケリーがほぼ全ての楽器を担当しているが、ベイルート、アーケイド、それにLCDサウンドシステムのメンバーが参加していて、ずいぶん自嘲的なジャケとバンド名にも何となく納得。
バンドを知ったのは最近お世話になっているstereogum。ザック・コンドンは参加していない(2軍だから)けれど、ベイルートもアーケイドもどちらもファイナル・ファンタジーで知られるオーウェン・パレット絡みのバンドだし、ブラスやストリングスを多用した音だろうと思って聞いたらだいぶ違った。アップされていた「On My Mind」はメロウで物寂しげな味わいこそベイルートに共通するものの、ブラスもストリングスも無しの、レトロなキーボードを軸にしたブルー・アイド・ソウル。曲自体はシンプルながらも、キーボードのメロウな音色とケリー・パレットの哀愁を湛えた歌にはかなり胸にくるものがあり、そこに大きくエフェクトのかかったヨレヨレのギター・ソロが唐突に現れて端正な曲に歪みを加えるものだから、僕の心は揺さぶられ、思わず号泣した(してない)。
とは言え、この曲調で統一されているわけではなくて、良く言えば多彩な、悪く言えばとっ散らかった内容。グランジか!とツッコミたくなる轟音ギターの「No Purchase Necessary」、アイスランドのエレクトロ・バンドぽい「Misma」、チェロをフィーチャーしたルーファス気分の「Empty Hallways」、パトリック&ユージーンばりにダンサブルでコミカルでトラディショナルな「Life Is A Bore」と、節操なし。そんな中、アコギで歌うダウナーな「Hang Me」、フワフワしたキーボードとエフェクトをかけたヴォーカルがいい塩梅の「Tons Of Fun」、ベイルート風のブラスが挿されるもギターが完全に「イッツ・オンリー・ラヴ」な「Mystery Man」あたりは、ジョン・レノンを想起させてやまず、ケリー・パレットの音楽的な核は実はここらへんだったりして、とも思ったり。
それはともかく、期待した哀愁のブラスはついぞ装飾的にしか聞けなかったかと若干肩を落としかけるが、ラストにそれは待っていた。ドゥーワップ・コーラスも楽しい、実にオールド・タイミーな「Salad Day」(俵万智!)。明るくハッピーな雰囲気は当初のイメージとはだいぶ違うが、優しいブラスの音に浸っているうち、目に何だか温かいものが…号泣(はしない)。
正直まぁまぁ、もっといいものを期待していたのだけれど、ケリー・プラットお披露目盤と考えればこの散漫さもアリ、という気もしなくもない。個人的には「On My Mind」路線で一枚、もしくは普通にブラス、ストリングス全開で一枚が聞きたい。
【BEST ALBUM 2008 ロック/ポップス部門】
1. 『Welcome to the Welcome Wagon』the Welcome Wagon
2. 『The Movie』Clare & The Reasons
3. 『Fleet Foxes』Fleet Foxes
4. 『Skeletal Lamping』 of Montreal
5. 『með suð í eyrum við spilum endalaust』sigur rós
6. 『To Survive』Joan As Police Woman
7. 『We Brave Bee Stings And All』Thao with the Get Down Stay Down
8. 『Madam Owl』Jeff Hanson
9. 『Everything And Everyone』Patrick & Eugene
10. 『Obituaries』Kenneth Pattengale
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圏外
11. 『@#%&*! Smilers』Aimee Mann
12. 『Sunday Morning In Satuday's Shoes』Richard Julian
13. 『I'm Not There』O.S.T.
14. 『Jukebox』Cat Power
15. 『Vampire Weekend』Vampire Weekend
16. 『Team B』Team B
17. 『Modern Guilt』Beck
18. 『Golden Boy』Reuben Butchart
19. 『JIM』Jamie Lidell
20. 『The Hottest State』O.S.T.
21. 『Hercules and Love Affair』Hercules and Love Affair
22. 『23rd & Stout』Chuck E. Weiss
23. 『Asa』Asa
24. 『19』Adele
25. 『Warpaint』The Black Crows
26. 『The Odd Couple』Gnarls Barkley
27. 『The Rainbow Express』Ja Confetti
28. 『El Madmo』El Madmo
まだレコード会社と契約前でMySpaceを通じてのみの販売。僕は注文して2週間以上過ぎたのでメールを送ったら、ケリー本人から返信が来た。
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