ロック系をまとめて　その２ : キープ・クール・フール

『Dear Science』TV On The Radio
ライアーズやヤー・ヤー・ヤーズのプロデューサーとしても有名なデヴィッド・シーテック率いるニューヨークの5人組による4枚目。どよりと曇った空気の中を走り抜ける、重いベースとキレのあるギターと性急なドラムス。加えてアフロビート「Red Dress」やディスコ・チューン「Golden Age」、トゥンデ・アビデンベのファルセットがソウルフルな「Crying」などではトーキング・ヘッズばりのアフロ風味と体にまとわりつくようなタイトで肉体的なリズムを聞かせる。一方で「Family Tree」「Love Dog」「Stork & Owl」などではストリングスを取り入れつつ、ノイズや残響を大きく残し、それらを巧みに配置する繊細なサウンド構築を見せる。ブラスが吹き荒れマーチするラストの「Lover's Day」が圧巻。

「Golden Age」ライヴ

「Lover's Day」

『Real Emotional Trash』Stephen Malkmus & the Jicks』
元ぺイヴメントのスティーヴン・マルクマスはジックス名義で新作。これまでのソロ作のなかでも一番のバンド・サウンドで、へヴィなロックを展開。とは言ってもさすがのヘタウマぶりで、ダイナミックながらも常にどこかゆるさが残る。その、硬さが全くないバックが、ヘナヘナとしたマルクマスのヴォーカルによるいつも以上にポップなメロを引き立てていて、まるで二ール・ヤングのような長いギター・ソロを含め、マルクマスの魅力が十全に出ている。ソロでは最高傑作では。というかぺイヴメント再結成はどうなったんだろう？

『The Golden Age』American Music Club
stereogmで試聴した「All The Lost Souls Welcome You To San Francisco」に惚れてアメリカン・ミュージック・クラブの新作を買ってみた。「All～」以上の曲はなかったけれど、どの曲もゆったりとした滋味溢れるアコースティック・サウンドに、かすれ声で歌われる寂しげなメロディーがじわりで、体調によっては号泣できる。プロデューサーはウィルコの『Summerteeth』を手がけたデヴィッド・トランフィオで、哀愁漂うサウンドながらもどこかカラッとしていて重くはならず、あのアルバムが好きな人はグッと来る瞬間は多いと思う。長く聞けそう。