博多のナポレオンダイナマイトの異名を持つ徳利の辞書に「不可能」の文字はない。不可能がない。それは徳利がすべてを兼ね備えた完璧な人物だということではない（決してない）。挫折を味わいながらも可能になるまで諦めないということだ。何もかもがうまくいってしまう超人には、不可能の意味がわからないはずだ。

ブラックビスケッツ「タイミング」のダンスがウケて校長から「ハッスルボーイ、ハッスルボーイ」と呼ばれて一躍人気者になるも、ヤンキーに調子に乗ってると目をつけられてボコボコにされる。初めて出来た彼女とファーストキスをしようと思ったら「風邪をひいている」と拒否され、思わず「今日ドラえもんスペシャルの日や！」と言ってしまう。徳利活動を本格化させたら、職場でバレて仕事を辞めることになってしまう。

徳利の人生は常に不可能に向き合い、膝から崩れ落ち続けるものだった。それは世の中の大半の人にも言えることだろう。ほとんどすべての人は、さまざまな局面で自分の能力の限界を感じ、世の不条理を嘆き、運命のいたずらに翻弄されている。しかし、そうした困難を乗り越えて今の自分がある。徳利の活動に共感する人の多くは、自分のダメな部分を重ね合わせ、それを克服して変わり続ける彼に惹かれているに違いない。




The Changing Same。変わっていく同じもの。リロイ・ジョーンズが『ブルース・ピープル』で黒人音楽の真理をついた言葉は、もしかしたら徳利のことを言っていたのかもしれない。「タイミング」のダンスを踊っていた中学生は、その約15年後に米米CLUB「sûre danse」でダンスをすることになる――変わっていく同じもの。メンズノンノのスナップに載った高校生は、その十数年後にファッション誌『2nd』に載ることになる――変わっていく同じもの。映画のオーディションを受けて挫折を味わった高校生は、その十数年後、現在絶賛公開中の『TOKYO TRIBE』の動画オーディションに募集要項を満たせなくて失格になる――変わっていく同じもの。

リロイ・ジョーンズがアミリ・バラカと改名したように、カシアス・クレイがモハメド・アリと改名したように、中の人は徳利として生まれ変わった。そしていま、蝶のように舞えず、蜂のように刺せないブルース・ピープルは、再び変わろうとしている。11/1にリキッドルーム恵比寿で開催される『今夜が田中面舞踏会5 LAST DANCE』において、ガチンコのボクシングをやるというのだ。かつてボクシング部を1年で辞め、暗い青春の鬱憤を1000人が集う高校の卒業式でヌンチャクを振り回すことで晴らそうとした彼が、今度は1000人の観客の前でボクシングをしようとしている……変わっていく同じもの。どんだけ変わっていく同じものなのだ。

ガチンコ・ボクシング・イベントの対戦相手は何と公募で選ばれるという。条件は体重が60～65㎏であることのみ。挑戦者が勝った場合はトロフィーと金一封、そして副賞を貰え、徳利が勝った場合は「OVER THE END 2014」を歌うらしい。徳利、いや、「博多の変わっていく同じもの」は一度逃げ出したことのあるボクシングを通して、過去の自分を打ち砕こうというのだろうか。

これは徳利が新たな自分を見つけるためのイベントだが、同時に挑戦者であるあなたの人生を変えるかもしれないイベントでもある。徳利を倒すことで、あなたのさえない日常にピリオドが打たれるかもしれない。徳利を倒したあなたが、新たに徳利を襲名することになるかもしれない（そう、徳利は世襲制でも良いのではないか）。 あるいは、次のDMM英会話のCMに出ることになるかもしれない。応募締切は10月11日土曜日。やってみませんか？

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【急募】徳利を倒したいヤツ

以下、引用。