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Janelle Monae "The Electric Lady"

前回は前口上的な文章を訳してみましたが、今回から曲ごとにみていきます。親切なことに、前作に引き続き各曲に“インスピレーションを受けたもの”が挙げられているので、それも気にしつつ。長くなるので最初に言っておきますが、『The ArchAndroid』と甲乙つけがたい傑作ですよ! 買ってない人は早く買いましょう!

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1. Suite IV Electric Overture

冒頭を飾るのは“メトロポリス・シリーズ”お決まりのオーケストラによる序曲。組曲風の構成になっているこのメトロポリス・シリーズでは、(おそらく)ストーリーに沿って章が設けられており、各章の頭に必ずこのオーヴァーチュアが配されている。今回だと、1曲目から10曲目までが第4章、11曲目から19曲目が第5章となるわけだ。ちなみに、デビューEP『Metropolis: The Chase Suite』では「March Of The Wolfmasters」というタイトルだったが、前作『The ArchAndroid』からは「Suite (章の数字) Overture」という曲名で統一されている。今回"Electric"という言葉が足されているのはアルバム・タイトルにちなんでのものだろう。それにしても、前作までは全4章となっていたのだが(ジャケット下に並んだ○の数)、本作から一気に全7章にまで増えている。EPでも○の数は4つだったし、きっと前作の好評を受けてやる気が出たんだろう。このままTHE 虎舞竜「ロード」のようにいつまでも続いていってほしいものである。
 
Roman-GianArthur-580x564荘厳なオーケストラを操るのはRoman GianArthur。これまでのすべての序曲、あるいは前作収録の大曲「BaBopByeYa」など、ジャネル・モネイの曲のオーケストレーションやアレンジを担当する作曲家である(ジャネル・モネイの頭脳、ネイト・ワンダーの兄弟説も)。クラシックからポピュラー音楽全般までを扱う懐の深さと、緻密な手つきでロマンティックな音像をつくりあげていく確かな腕の持ち主で、ジャネルの壮大なコンセプト/サウンドにおける彼の存在はとても大きい。この曲はこれまでの序曲と同様、アルバム収録曲(「The Electric Lady」「Look Into My Eyes」「Dorothy Dandridge Eyes」「Ghetto Woman」「Victory」)の断片を組み合わせつつ、The Wondaland ArchOrchestraによるストリングスやジャネルのヴォーカルを重ねて、重厚な物語の幕開けにふさわしい迫力のある曲に仕上げている。“デューク・エリントンとトランプをするエンニオ・モリコーネのイメージ”に着想を得たと書かれているが、確かに本曲で特筆すべきなのはマカロニ・ウェスタン風のアレンジだろう。冒頭の砂ぼこり舞うギターは、これから起こるであろうシンディ・メイウェザーとウルフマスターたちの決闘、アンドロイドたちによる反逆を予感させ、扇情的な調べのストリングスや複声ヴォーカルはそれを煽っている。
 


artworks-000041071176-mw48g6-t500x500話は逸れるが、ロマン・ジアンアーサーのソロ曲も素晴らしいので要チェックだ。ソロでの彼はジャネルの作品におけるスタイルとは異なり、ソウル~AOR調の曲が中心。しかも全曲でセクシーなヴォーカルも披露している。いまのところ発表されている曲は全部で4曲。初めてのソロ曲は、ジャネル・モネイが表紙を飾った『The Believer』音楽特集号の付属CDに収録されていた「Depraved Valet」。ジャネルと親交の深いオブ・モントリオールのケヴィン・バーンズをゲストに迎え、しっとりとアーバンなソウル・チューンで聴きものだ。同CDはジャネル・ファンであれば聴いておきたい一枚だが、この曲だけならここでDLすることができる。デビュー・アルバム『The Good Dreamer』(仮題、リリース未定)からの先行曲として公開された「Love's Not So Hard to Find」は70年代のスティーヴィ・ワンダーのようなバラード。スローなドラムに艶っぽく絡むモーグ・シンセサイザーがたまらない。これはYoutubeの視聴のみ。やはりDLはできないが、レディオヘッドとディアンジェロのカヴァーを合わせた「High & Dry ~ Send it on」も素晴らしい。いまのところの最新曲は「I-69」。もっちりしたグルーヴが心地好いAORナンバーで、洒脱なロマンの魅力がたっぷりと詰まっている(それにこの女声のバック・コーラス、ジャネルじゃないだろうか)。これはiTunesで購入可能だが、この優良フリーDLコンピレーションにも収録されている。とりあえず、下の動画を見ていただければ、彼がどれだけ伊達男かわかるだろう。ソロでもかなりイイところまでいけるんじゃなかろうか。あとは、アトランタの女性シンガー、Marian Mereba"Room For Living EP"にもギターで参加している。これはname your price。




3曲目くらいまで書こうと思ったけど、1曲で気力が果てたので、今回は終わり。こんなペースで19曲いけるんだろうか・・・。