犯罪国家メキシコでもまれな集団虐殺
2010年6月8日、麻薬関連の暴力多発地帯ゲレロ州タスコ市(Taxco in Guerrero state 首都メキシコシティから187km南)で麻薬取引で殺されたと考えられる20~25人の遺体が、南メキシコの人気のない銀山で発見され捜索が続行していたが、最終的に使っていない廃坑の地上にある排気口から地下200mに55人が投げこまれているのが確認され、最近半年間に使用され一部はミイラ化したり骨格だけになっていた。メキシコでは、2006年以降、麻薬抗争で約2万3000人の命を奪われているが、今回の発見は同国でも最大規模の集団虐殺事件となる。遺体の多くは手足が縛られた状態で発見され、身元の確認がほとんど不可能なほど腐乱している。被害者の中には近くの刑務所から誘拐された看守も含まれていた。警察は付近の廃坑なども捜索している。地理的にはこの辺の都市部で活動する新興勢力 ラ・バービー La Barbieとメキシコ最大のシナロア麻薬カルテルから分裂した ベルトラン・レイバカルテル Beltran Leyva cartelが抗争を繰り返している地域で、どのグループの仕業かの断定はできていないが、銀山の廃坑が秘密の墓地としてつかわれていたようだ。有名な銀のアクセサリーへの影響が懸念されている。9日時点で身元判明はわずか4遺体だけ。
7日には大西洋岸のカンクンCancun近郊の洞窟からも7遺体が見つかっている。同じカンクンから6月5~6日見つかった6遺体からは心臓が切り取られ、腹部にZの文字が切り込まれていた。残酷なことで有名なセタスZetasカルテルの犯行だろう、
右は投げ込まれていた立て坑の地上部分で、警察が捜索中。左下は6月4日、米国国境沿いのティファナTijuana州の国境の壁で見つかった150mのトンネルの入り口。密入国と麻薬密輸に使用された。写真はメキシコ側。メキシコ国際麻薬勢力分布図 2009年版、2010年勢力図は最下部のリンクで
2010年6月10日:メキシコ北東部の米国国境に近い大都市モンテレイMonterrey (Nuevo Leon state)でメキシコ軍は銃撃戦の末、首切など残虐さで有名なセタスLos Zetas drug cartelの北部での重要なリーダーの一人であるHector Raul Luna Luna 通称El Tori を逮捕した。この辺はガルフカルテルの本拠地で、セタスが北部へ勢力拡大しているのが分かる。(右)
2010年6月13日:10日から11日にかけてメキシコ北部米国との国境沿いでカルテルの抗争が激化し、39人の犠牲者が出たことでカルデロンメキシコ大統領Felipe Calderonは一層の対策強化の声明を出した。チワワ州の首都チワワChihuahuaではキリスト教系の麻薬更生施設a drug rehabilitation centreが30名ほどに襲われ19人が射殺された(写真右)。更生施設をギャングが隠れ蓑にしたり、小口の麻薬取引に利用しているのは公然の事実で、ここにいたシナロアカルテル Sinaloa cartel系の Los Mexicles一味が抗争中のフアレスカルテルJuarez cartel系Los Aztecos一味に襲撃されたようだ。
また、メキシコ湾沿いのTamaulipas州のMadero周辺で不明な集団による襲撃と処刑が横行し、警察とも交戦した。海岸や街周辺で20体の遺体が発見された。タマウリパス州では麻薬カルテル間の抗争が激化しており、元軍人が結成した「ロス・ゼタス」カルテルと、以前は友好関係にあった「ガルフ」カルテルが流血抗争を繰り広げている。これ以前の関連ブログ
2010年6月14日:麻薬密輸と密入国は西側のカリフォルニアに近いメキシコ~アリゾナ州国境付近でも多発していて、州兵との交戦も起きている。軍服姿のメキシコカルテルの進入を阻止するには3000人からの州兵の増員が必要だと軍の担当者が発言。この付近はメキシコのティファナカルテルの支配地区に近い。
シナロアカルテルの本拠地シナロア州の太平洋岸にある6000人収容のマサトラン刑務所the Mazatlan Center for the Execution of Crime’s Legal Consequencesで内部で暴動が発生し、29人(18人射殺、11人刺殺)の服役囚が殺害され刑務所員13名が死亡。鎮圧後には182個の薬きょうと7つの銃器、金属製武器多数を発見した。内部でシナロア構成員が釈放が近いセタス側20人を襲撃したと推測されている。右は惨劇の後、囚人の死体が山になっている。
2011年6月14日:メキシコ中央部ミチョアカン州シタクアロ市central city of Zitacuaro in Michoacan stateで警備担当の一行の車列が道路をバスで塞がれたうえで銃による一斉攻撃され10人が死亡(その後病院で2名死亡、計12人)13人が負傷、正体不明な犯人側も数名死亡した。ここはラ・ファミリアカルテルLa Familia Michoacanaの支配地区 同じころ北部Ciudad Juarezでは職員3名が射殺されている。右 シタクロアで待ち伏せ攻撃された車両
2010年6月17日:先の連邦警備職員12名に待ち伏せ殺害容疑でラ・ファミリアLa Familia drug cartelの構成員2名Alain Escutia, 20, Emilio Palacios, 22が容疑者として逮捕された。捕まった仲間の報復だと自供している。二人はカルテルのリーダー Nazario Moreno Gonzalez,通称El Chayoと Jose de Jesus Mendez Vargas,通称El Chango から命令を受けたと自白し、警察はリーダー二人にそれぞれに230万ドル(2億2千万円)の賞金を懸け指名手配した。(写真左リーダー格の二人手配中)
自供から。襲撃は29人と6人にわかれたグループが警官一行をハイウェイの橋2か所で待ち伏せ、Ak47自動ライフル、拳銃、手投げ弾、などで30分にわたり攻撃し、警官の反撃で1名死亡、数名が負傷し逃走したという状況だった。 その後の経過:コロンビアでスーパーカルテルせん滅作戦 これ以降の経過と2010年メキシコ麻薬勢力図