すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】内側のポジションを見ると頭が痛い

2017-06-18 10:36:49 | サッカー日本代表
4-2-3-1か、4-3-3か?

 今節を終えてみて、収穫についてはすでに前回の記事の最後に書いた通りだ。そこで今回は今後に向けた見通しを考察してみる。大きく分けてポイントは、システムの選択と「内側のポジション」である。

 まずシステムについてはハリルジャパンではおなじみの4-2-3-1に加え、アンカーを置く4-3-3という新しい選択肢が登場した。さていったいどちらが最適解なのか?

 4-3-3はアンカーの両脇を狙われるのが欠点だが、それを気にして親善試合シリア戦前半のようにインサイドハーフが低くポジショニングしてしまうと攻撃面でノッキングを起こす。4-3-3はアンカーを任せられる人材がいるかどうかと、インサイドハーフのセンスと能力にかかっている。日本で唯一アンカー的にプレイできる長谷部を欠く現状とインサイドハーフの人材不足を考えれば、4-3-3を日本が破綻なくこなすのは難しいかもしれない。とすればやり慣れた4-2-3-1が無難に思える。

 ただし頑固なハリルがもしも本田のインサイドハーフ抜擢を容認するなら、4-3-3は非常におもしろい選択になる。この記事で考察したように、本田をどこで活かすか? という本田問題はハリルジャパンのゆくえを大きく左右するからだ。

香川のメンタルは強くなるか?

 さて一方、内側のポジション問題へ行こう。選手別にチェックしてみる。まずトップ下の香川は技術レベルこそ非常に高いが、メンタル面に致命的な欠陥がある。

 日本代表というプレッシャーからか試合前からフリーズしているゲームもあるし(消えることが多い)、決定的な場面で思い切ったシュートが打てずパスに逃げるシーンも見られる。

 またカラダを入れ合う激しいボールの競り合いをイヤがる傾向があり、守ってはコースを切るだけのアリバイ守備も散見される。決定的にデュエルがだめだ。アグレッシブな原口あたりとはまったく対照的で、「戦えない」「ファイトしない」選手の典型である。

 これらはすべてメンタル面に起因していると思うが、だとすればいくら技術があっても才能がないということになってしまう(同じことは宇佐美にもいえる)。厳しい言い方になるが、そこが改善しない限り私は香川にまったく期待していない。となるとトップ下は清武が有力な選択肢になるが、個人的には守備面に物足りなさもあり悩ましい。

「本田問題」の解決策は?

 お次は4-3-3のインサイドハーフへ行こう。UAE戦での今野のプレイを大絶賛する声は多いが、逆にいえば彼がよかったのはあの試合だけだ。確かに目先の最終予選を勝ち抜くコマとして今野は有力だが、年齢を考えれば疑問符がつく。将来性という意味ではあくまでセカンド・チョイスだろう。

 あるいは4-2-3-1にするにしろ、ロシアW杯の本大会で中盤の底に長谷部、今野という高齢コンビが居並ぶ姿を想像しにくい。仮にその組み合わせで勝っても日本の未来につながらない。

 さて問題は本田だ。彼は親善試合のシリア戦後半で、4-3-3のインサイドハーフに入り結果を残した。だが4-2-3-1の右SHを務めたイラク戦ではバックパスの比率がかなり多く、手放しでは喜べなかった。

 確かに気温37度の酷暑のなか、あれでタメができた、時間を作ったからスタミナ消耗防止に貢献したといえなくもない。だが逆にいえば(この記事に書いたように)速いショートカウンターを捨てたプレイであるともいえる。

サイドを放棄し中へ入りたがる本田

 サイドに押し込められてボールをもつ形になる4-2-3-1の右SHだと、乾のようなスピードと突破力がない本田はタテ方向に自分で局面を打開できず、前が詰まるとどうしてもボールを保持したまま回れ右してフィールドの内側を向きバックパスに逃げることになる。

 で、そうこうするうちサイドを放棄して中へ、中へと入ってくる。本田の生存本能がそうさせているともいえるが、それならやはり最初から中のポジションで使ったほうがいい。となれば本田の適所は4-2-3-1のトップ下か4-3-3のインサイドハーフ、あるいは偽9番だ。だがいずれにせよ、本田はまず所属チームで試合に出る環境を作るのがスタートラインである。そう考えれば代表でポジション争いする状況にない今の段階であれこれ言っても意味がない。

 結局、トップ下に絶対的な存在はいない。そしてこのチームは替えのきかない長谷部が復帰し、ゾーンを無視して人に食いつく山口蛍の尻拭いをしてバランスを取ってやり、かつ両サイドに「完調な」ときの原口と久保、ワントップに大迫がいて初めて機能する。選択肢自体はほかにあっても、成功例が少ない。

 もちろん今節、乾や昌子、遠藤航、井手口の台頭という大きな収穫はあったが、やはりハリルは海外ブランド信仰を改めてJリーグからもっと選手を発掘する必要がある。てなわけで結局最後は、例によって「ハリルは頑なな固執を捨てよ」みたいな話にならざるをえない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【イラク戦・プレイバック】相変わらずハリルの選手起用は謎だ

2017-06-17 12:34:30 | サッカー日本代表
奇策で自己主張する代表の「爆弾」

 日本代表でいちばん「個」が強いのはハリルだ。そのため彼は試合がくるたび、「どうだ? 俺の選手起用は。驚いただろう?」という奇策を連発する。そのことによって自分を主張する。成功すればもてはやされるだろうが、ハズすと「策士、策に溺れる」になってしまう。

 なんだか私は試合のたびに、あのトルシエの2002年W杯トルコ戦を思い出す。自己主張が強くはっきりモノを言い、戦術論はロジカルなんだけど試合になるとときに策に溺れて自爆する。ハリルはびっくりするほどトルシエに似ている。

 イラク戦でハリルは原口をトップ下で使った。アグレッシブで頑張れる彼を真ん中に置くことにより、イラクに前からプレスをかけて圧倒する狙いなのか? そう思いながら見ていた。実際、相手ボールになると大迫と原口が最前列で横に並んでコースを切っていた。だがその割にプレスをかける位置が低く、デュエルというほど激しさもない。

 もちろん気温37度、湿度20%のあのシビアな環境でハイプレスをかけ前からガンガン行くなど自殺行為だが、とすれば原口をあのポジションで使った意図は何なのか? おそらく原口は単に「玉突き」で弾かれトップ下に収まっただけなのだ。

 どういう意味か? ハリルの選手起用を見ていると、彼には「どうしても外したくない選手」が何人かいる。彼はそれらの選手に異常に固執する。もし同じポジションにいい選手が台頭すれば元の選手は外すのがふつうだが、ハリルはポジションを変えてでもその選手を起用することにこだわる。例えばアウェイのオーストラリア戦で本田を偽9番として使ったのもそれだ。

複雑なパズルを解こうとして自爆

 では今回はどうだったか? まず原口はハリルの中では今や替えのきかない選手である。そこに新しく「どうしても外したくない選手」として久保が台頭してきた。彼のポジションは右WGだ。本田とかぶる。だが本田は親善試合のシリア戦でいい結果を残しており、次のイラク戦でも使いたいーー。

 で、この3人が玉突き現象を起こし、わざわざ久保を左に回し原口を真ん中へ持ってきて複雑なパズルのピースを埋め、「どうだ? 俺の選手起用は。驚いただろう?」とハリルは大見得を切ってみせた。

 ふつうなら久保と原口を本来のポジションである左右に起き、トップ下に本田を置くのが自然に思える。だがハリルはそんな「当たり前のこと」はしない。かつ、「本田のポジションは右WGだ」と絶対に意地でも動かそうとしない。異常に自己主張が強くて頑固。いかにもハリルらしい選手起用である。

 そして我が日本代表はそんなハリルの小児性ゆえ、常に「トルシエの2002年W杯トルコ戦」自爆の日を迎える可能性があるのもまた事実である。

原口を交代させたダメージはデカい

 さて久保はシリア戦から続く不調と、試合途中からはケガで試合から完全に消えていた。彼を乾と交代させることと、下がり過ぎた全体のゾーンを押し上げること。この2つが実現していれば、あのゲームはまったく違ったものになっていただろう。そうすれば日本は追加点が取れ、酷暑のなかで2-0になればイラクの選手は戦意喪失していたかもしれない。

 その意味では運動量豊富で好調だった原口を倉田に替え、2枚目の交代カードを「ムダに」1枚使ってしまったのが大きい。他の2枚はケガによる余儀ない交代であり、そのため結果的にカードを使い切って切り札の乾を途中出場させることができなくなった。

 ハリルは「原口はバテた」と判断したようだが、私の目にはそうは見えなかった。ことにアグレッシブな原口は気温37度でケガ人だらけのこの試合のようなキツイ悪条件でこそ「次の一歩」が出せるガッツのある選手であり、そこの判断は疑問が残った。

昌子と遠藤航、井手口の台頭は大きな希望だ

「選手起用で過剰に自己主張するハリル」という地雷を抱えてはいるが、今節の代表はまったく新しい、そして大きな収穫があった。CB昌子とボランチの遠藤航、井手口だ。過去に何度も書いているがこのチームの最大の課題は世代交代であり、彼らの躍進は実に頼もしかった。

 昌子はタイトで知的なディフェンスと、正確なフィード能力を兼ね備えた逸材だ。2016年のクラブW杯でもすばらしいプレイをしていたし、なぜいつまでもベンチで腐らせておくのかとても不思議だった。もちろん今節はミスもあったが、トータルでいえば大きな収穫を得たといえるだろう。

 一方、全体のバランスを取りながらカバーリングのできる遠藤航は、(将来的に)長谷部の代わりが務まる日本で唯一の選手であり、このまま経験を積ませればロシアW杯本大会にも間に合いそうな気配がしてきた。積極的に前に出てゲームメイカー的な仕事もできる井手口とあわせ、非常にバランスの取れたいいコンビである。

 これに左WGは切り札の乾に原口、斎藤学を競わせ、右WGは久保、浅野、小林悠。ワントップは大迫、岡崎、武藤嘉則が絡めばとてもおもしろくなる。てなわけで日本代表はハリルという爆弾を抱えていながらも、こう見てくると相変わらずポジティブな要素ばかりが際立つ。

 え? シリア戦、イラク戦と2試合続けて格下と「1-1」の引き分け続き? いやもうやめましょうよ、そういうネガな悲観論は。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ロシアW杯最終予選】スタイルをめぐりチームに不協和音が?

2017-06-16 07:14:44 | サッカー日本代表
選手と監督の考えが一致しない?

 今回の召集で、練習中に監督のやり方と選手の考えに「食い違いが表面化した」と報道されていた。引き分けに終わったイラク戦後には、本田がそれを補足するような発言をしている。

 想像するに、たぶん「アレ」だろう。

 ハリルはロングフィードを有効に生かしタテに速い攻めをしたい。一方、選手は放り込みでなくパスをつなぎたいーー。まあ、例のやつだ。特にタメを作るのを好みバックパスを厭わない本田あたりは、ハリルの方針と真逆なのだ。

 本田は、マイボールになったら何度でもバックパスを繰り返し後ろから細かく組み立て直す「バルセロナ教」の遅攻の信者だ。彼はそのスタイルを変えるつもりはない。タテに速いショートカウンターを志向するハリルと考えが合うはずがない。

 そして本田の危うさは、そんな自分の考えるサッカーをチームメイトに説き、布教しているフシがあることだ。特に自身が代表でレギュラーをつかみかけている今だけに、彼の口が滑らかになりすぎる可能性は高い。そんな感じで選手と監督の認識のちがいがさざ波のように大きくなれば、チームは空中分解する可能性すらある。

マニュアル思考の日本人は「指示を待つ」

 日本人はマジメな上にマニュアル思考だから、監督に言われたことをそのままやろうとする。自分の頭で考えず、試合の状況がどうあれ愚直なほどに監督の指示一辺倒になる。自分の中で咀嚼し、状況に応じて別の対応をするということが苦手だ。「指示を守らなければ外される」というプレッシャーもそれを後押しする。

 そもそもハリルはこれまで、口を酸っぱくして言い聞かせても無視して指示を聞かないような「個の強い」人々がいる国で監督を務めてきた。そんな彼らに言うことを聞かせるには、自然と口調も強くなり、指示を守るまで同じことを何度も言うハメになる。

 言葉は悪いが「ムチを入れること」が必要だ。

 だがいろんな意味で個が弱く、むしろ指示待ちになる日本人にそこまで強くやる必要はない。なのにハリルは過去の経験で身についた指導法をそのまま実践している。で、その迫力に押されて選手が機械的に指示を守りすぎる状況が生まれる。これはハリルの監督就任当初から起きていた問題だ。

状況に応じてやり方を変えろ

 要はバランスの問題なのだ。

 本田の考えるサッカー一辺倒だと、必ず遅攻になる。ボールを奪えばいったんバックパスしてひと休み。味方の上りと、敵が守備の態勢を立て直すのを十分に待ってやってから攻める「ザックジャパン現象」が起きてしまう。

 だがそのスタイルが世界に通用しないことは、ブラジルW杯ですでに結論が出た。で、横や後ろにボールをつなぎ時間を作るのでなく、逆にハリルが主張する「タテへの速さが必要だ」という話になる。

 だがハリルの言うことばかり聞いていると、今度は状況がどうあれすぐタテに長いボールを放り込む、性急でアバウトなフィジカル勝負のサッカーになる。こうなるとむやみに競り合いが続いて体力が消耗し、タメがなく絶えずボールに追われてスタミナが削られる……。

 てなぐあいで事態は限りなく無限ループする。要はそのときの敵味方の配置など「状況に応じて対応を使い分ける」ことが必要なのだ。

オーストラリア戦はつないで攻めろ

 例えば10回、マイボールになったら「10回ともロングボールを入れる」などというのはおかしい。敵の守備隊形が完全に整っているのに、そこへボールを放り込んでも弾き返されるだけだ。

 だが逆に「10回すべてショートパスで攻める」のも不合理である。せっかく敵の陣形が崩れているのに、速く攻めずに時間を使うのでは相手に立て直しの余裕をあたえてしまう。

 特に相手チームが前がかりになり、意図的にバランスを崩して攻めてきたときボールを奪えたら? そのときは素早く攻守を切り替え(ポジティブ・トランジション)、敵の体勢が整わないうちにタテに速いショートカウンターをかけるのが有効になる。こんなふうに「そのときの状況はどうなのか?」を考え、状況に合わせたベストなプレイの選択が必要だ。

 例えば次節のオーストラリア戦などは、ハリルが考えるタテにロングボールを入れて競り合うような戦い方をすれば絶対に日本が不利だ。

 オーストラリアはそういうイングランド・スタイルが得意な上、そのやり方では彼らの強靭なフィジカルが生きる。逆に本田が考えるようなていねいにつなぐサッカーをベースにし、もしスキを見つけたら状況に応じてタテに速いショートカウンターを織り交ぜる、という戦い方がベストだ。

 サッカーはとにかくシチューション次第。ハリルも本田も、そのことを肝に銘じてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【オーストラリア戦展望】自分たちの武器(ハイボール&フィジカル)を捨てた彼らはこわくない

2017-06-15 09:09:23 | サッカー日本代表
悲観論が渦巻く論調にうんざり

「サッカー協会首脳がハリルに疑問符」とか、「オーストラリアに勝てなければ地獄のサウジ戦だ」とか、まあどうして日本人てのはこうもネガティヴなんだろうか?

「たかがオーストラリア」のくせに首位争いしている生意気なオージービーフを、ホームで完膚なきまでにぶっ叩けるまたとないチャンスなのだ。私なんて今からもうワクワクしてしようがない。

 前回の対戦を思い出してもみよう。

 日本に引きこもられ、ボールを持たされたあげく、アタフタとぎこちなく最終ラインからビルドアップするあのぶざまなオーストラリアの姿を思い浮かべると、とうてい日本が負ける相手とは思えない。いや楽観とか油断とかそんな話じゃなく、オーストラリア自体のレベルがそう高いとはとても思えないのだ。言葉は悪いが「世界の三流チーム」だろう。

 もちろんハイボールを競り合うようなフィジカル勝負の展開になれば彼らは難敵だが、前回みたいにグラウンダーのパスで丁寧にビルドアップしようとしてくれればちっともこわくない。日本のハイプレスが効く。なんせ彼らはかつてのイングランド・スタイルを捨て、今は「つなぐサッカー」を志向してるんだから飛んで火(プレス)に入る夏の虫だ。

 オーストラリアはスピードがなく動作も緩慢で、日本の速いパスワークやプレッシング、タテに速いショートカウンターについてこられるとは思えない。前回の対戦ではハリルが過度に警戒するあまり、自分に酔う奇策(引きこもり)で勝利を放棄したが、まともにやっていれば勝てたはずだ。しかも今度は大観衆が後押しするホームだし、日本がフルメンバーを揃えれば敵じゃない。

 だいたい万一、オーストラリアに負けるようなら、仮にW杯本大会へ出たって何もできずにグループリーグ敗退が関の山だろう。それなら日本で謹慎してろ、って話だ。

 さあ後がない痺れるようなオーストラリア戦、ぶちかまそう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ロシアW杯最終予選】勝ち点2を失ったが前を向け 〜イラク1-1日本

2017-06-14 09:30:37 | サッカー日本代表
アウェイで引き分けなら儲けモノ?

 日本は勝ち点1を得たのか、それとも勝ち点2を失ったのか? サッカーには付き物である永遠のお題が頭をかけめぐる。そんな試合だった。

 ハリルはこの大一番で若い遠藤航と井手口の2人をボランチで組ませ(彼らのデキはよかった)、トップ下には原口を。また久保を左WGに回して本田を右で使った。まさにスクランブル態勢の4-2-3-1。ケガ人を抱えていることもあってか、ハリルジャパンでは見たことがない選手の組み合わせと配置転換で臨んだ。

 日本は前半8分にFW大迫のヘッドでシナリオ通り早くも先制点が取れ、「あわよくば守り切ろう」という誘惑にかられる。前半20分頃からチーム全体の重心がズルズルと後ろに下がり、相手ボールになったらほぼ全員が自陣に引いた。立ち上がりから、ワントップの大迫とトップ下の原口が前に並んでイラクのボランチにプレスをかけていたが、次第に彼らの守備位置も低くなって行った。

 同じように引いて守るといっても、あのアウェイでのオーストラリア戦のときのように、自陣にブロックを敷いて「やってこい」としっかりオーガナイズされた状態では明らかにない。

 特に後半はイラクにペースを握られ、日本は運動量が落ち攻守の切り替えにモタついた。前からプレスがかからず、マイボールになっても前線で大迫が孤立する。久保もシリア戦と同様、デキが悪い。そうこうするうち後半27分に自ゴール前の混戦から押し込まれて同点にされた。

 これで曲がりなりにも日本は勝ち点17のグループ首位。2位サウジと3位オーストラリアが勝ち点16で並んだ。日本は残るオーストラリア戦かサウジ戦のどちらかに勝てばW杯本大会出場が確定するが、最終節の対サウジは厳しいアウェイだ。よって次戦、ホームのオーストラリア戦でぜひとも決めたい。

試合運びに疑問は残るが……

 この試合、判断は難しかった。気温37度の酷暑でアウェイ。先制点が取れたら無理せず自陣にブロックを敷き、機を見て追加点をうかがう試合運びをしよう、という選択肢はある。現にイタリアをはじめそういうやり方をするチームは世界に多い。

 だが日本は「受け身になったら負けだ」という国民性である。そんなイタリア人みたいなしぶとい勝ち切り方は苦手だ。ところがまるで蛾が明かりに吸い寄せられるかのように、じわじわとまさにその苦手なシチュエーションに日本は自らのめり込んで行った。

 それにしても後半27分の失点の場面。自陣ゴール前の混戦から自ゴールを向いたCB吉田は、GK川島にボールを譲ろうとした。難しい判断だが、少なくとも吉田があそこではっきりクリアしていれば失点はなかった。そのほかにも先制したあとゾーンを高く保ち積極的に戦っていれば? またボランチの井手口とSB酒井(宏)、久保の3人がケガしていなければ? など「たられば」を挙げればキリがない。

 だが死んだ子の年を数えても仕方ない。次はオーストラリア戦にすっきり勝ってロシア行きを決めよう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サッカー日本代表】シリア戦の後半がもたらす「大きな意味」とは?

2017-06-10 07:37:20 | サッカー日本代表
新戦力がチームを活性化する

 ひどいデキだった先日のシリア戦「前半」に警鐘を鳴らす声がなんだか多い。だが私はまったく心配していない。それだけ「後半」のもたらす意味が大きいと考えるからだ。つまり後半に出場した乾と本田、井手口の台頭である。

 ポイントは2つだ。まず第一に、チームというものは絶えず活性化が必要だ。これがなくなれば鉄板スタメンが固着して動脈硬化を起こしたザックジャパンの二の舞になってしまう。

 例えばここ数試合の貢献で原口はなんだか「不動のレギュラー」みたいになっているが、その同じポジションに乾が出てきた。2人は今後ライバル意識を持ち、激しいレギュラー争いをしながらハリルジャパンに刺激をあたえて行くだろう。

 その意味がチームにとってどんなに大きいか? もちろんこれは山口蛍がアンカー確定みたいな雲行きだったところに井手口が「待った」をかけたのも同じである。

中盤で「時間」を作れる本田

 そして第二のポイントは、右インサイドハーフに本田という大きな選択肢ができたことだ。個人的には、彼はあくまで中盤の選手であり、年を重ねたらひとつポジションを下げてボランチが適任だとずっと思っていた。だがインサイドハーフは攻撃的な本田に、より向いている。

 とかく「縦ポン」一辺倒になりがちなハリルジャパンの中盤にキープ力と展開力のある本田が入れば、タメを作ることができる。これは大きい。いやハリルジャパン最大の武器は(アバウトな放り込みでなく)狙い澄ました正確なタテへのロングフィードであることはいうまでもない。だがそればっかりではあのイラク戦みたいなドタバタにもなる。

 そこでキープ力と展開力に優れる本田が中盤でタクトを振れば、適度な「時間」を作ることができる。そのできた時間のあいだに味方がオーバーラップしたりダイアゴナルランしたり、マークを外す動きをしたりできる。つまり「仕込み」の時間が生まれるわけだ。これは大きい。

 タテに速いショートカウンターが来たかと思えば、お次はいったんタメて深みを作る。これにより対戦相手はたちまち的を絞りにくくなる。サッカーにはそういう柔軟性が必要だ。その意味で本田に中盤での見通しが立ったのはデカい。

 悲惨な内容だったシリア戦「前半」を分析し危機感を煽るのもいいが、サッカーのプレイと同じく批評にも柔軟性が必要なんじゃないだろうか?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【キリン杯】本田や乾が可能性を示した後半に光 〜日本1-1シリア

2017-06-08 09:42:03 | サッカー日本代表
前半はひどいデキだった

 日本は前半の立ち上がりからバタバタとずっと落ち着きがなかったが、後半にメンバーをガラリと替えてから有機的に機能するようになった。前半の出来の悪さより、むしろ後半に出場した本田や乾、井手口らの輝きに期待がふくらんだ試合だった。

 スタメンはGKが川島。CBには昌子が抜擢され吉田と組んだほか、SBは右の酒井(宏)と長友。アンカーは山口蛍が務め、インサイドハーフに今野と香川。FWは左から原口、大迫、久保が並ぶ4-3-3だ。

 前半の日本はコンビネーションに乏しく、ボールのつなぎも散発的でまったく試合をコントロールできなかった。前の選手が引いてボールを受ける場面が多く、そこからビルドアップできない。逃げのショートパスばかりですぐ前が詰まる。ハリルジャパン最大の特徴である急所を突くロングフィードがほとんど見られなかった。

 だが後半の頭から久保に替え本田を、53分にはアンカーに代表初出場の井手口を入れた日本はボールがよく動くようになり、立ち上がりに失点したものの58分に長友のクロスから今野が詰めて同点に追いつく。その後は終始、日本がゲームを支配した。

本田がインサイドハーフで輝く

 選手別では、後半途中から右のインサイドハーフに入った本田は、「やはり彼は中盤の選手だな」と感じさせた。キープ力と展開力で少し引いた位置から試合をコントロールした。

 思えば彼はミラン移籍から(持ち味と正反対の)スピードを求められる右WGに押しやられ代表でも同じ右WGに。自分の武器を出せないミスマッチなポジションでずいぶん時間を浪費した感がある。案外、本田の未来は「これから」かもしれない。彼のインサイドハーフは大アリだろう。

 また緩急の切り替え鋭いドリブルで敵を翻弄した乾は、大いに可能性を感じさせた。ボールをもち、マーカーと正対して前をうかがう彼の姿には風格があり、「あれはレアル・マドリーの選手では?」などと錯覚させるに十分だった。同サイドの長友をうまく使ったコンビネーションもよく、チャンスを量産した。その長友は運動量豊富に左サイドを駆け抜けチャンスメイク。酒井(高)と比べ1日の長があった。

 悲惨なデキだった前半を抜きにすれば、後半は全体にチームの完成度はまずまず。特に途中出場した新戦力が将来に希望をつないだゲームだった。ここまできたらもうポジティブに考えるしかない。香川はケガで交代したが、代わりにインサイドハーフとしての本田を発掘できた。乾や井手口も輝きを見せた。13日のイラク戦は、ハリルの大胆な選手起用に期待したい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする